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 第95回アカデミー賞で惜しくも受賞には至らなかったが、
 作品賞など7部門でノミネートされた話題作。
 なんといっても、
 あのスティーブン・スピルバーグ監督初の自伝的作品というから
 興味がわきます。
 日本では今年(2023年)3月に公開された
 映画「フェイブルマンズ」が早くもDVDになったので
 早速TSUTAYAでレンタルして観ました。
 今日は映画「フェイブルマンズ」の話です。

  

 映画「フェイブルマンズ」はスピルバーグ監督の自伝的作品。
 スピルバーグ監督といえば多くの映画ファンを魅了してきた名監督。
 日本で彼が注目を集めたのが「激突!」(1971年)で
 すごい若手監督が現れたと騒がしました。
 そのあと1975年に公開された「ジョーズ」でその才能が開花。
 あとは「未知との遭遇」「E.T.」など
 綺羅星のような作品を連発していきます。
 それだけではなく若い監督たちの作品をプロデュースしていくなど
 この人なしに映画史は語れません。

 そんなスピルバーグ監督の自伝的作品というから
 映画ファンはたまらない。

   人生の出来事、そのひとつひとつが映画になった。

 日本で公開時のキャッチコピーが示すように、
 スピルバーグ監督自身を投影したと思われる
 主人公サミー・フェイブルマン少年が映画にはまって、
 やがて自らカメラをまわすようになる姿などが
 見事に映像化されています。
 タイトルの「フェイブルマンズ」は
 主人公のサミー少年だけでなくその両親の話でもあることからで
 翻訳すれでさしずめ「フェイブルマン家の人たち」となるかな。

 母親が家族中が親しんでいた父親の部下で友人の男性に思いを寄せていることを
 自身が撮影したフィルムで見つけるサミー少年。
 この母親を演じているのがミシェル・ウィリアムズで、
 彼女はこの作品でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされました。
 優しい夫がありながら、
 それでも別の男性に魅かれていくそんな女性を見ていると
 ミシェル・ウィリアムズの名演技もあって
 切ないという感情に押しつぶされそうになります。

 映画というのは面白いだけでなく
 人間のいろいろな感情をそこに映し出すことができる魔法のようなもの。
 スピルバーグ監督の伝えたかったことは
 そういうことだったのでしょう。

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 沢木耕太郎さんの文庫版『深夜特急』第2巻は、
 マカオでの博打生活に危うさを感じた沢木さんが、
 マレー半島からシンガポールへとめぐる旅を描く。
 第4章「メナムから」、第5章「娼婦たちと野郎ども」、
 そしてシンガポール篇である第6章「海の向こうに」で
 構成されている。

  

 中でも面白いのは、やはりペナンの娼婦の館に滞在した日々だろう。
 香港での「黄金宮殿」という華麗な名前の貧乏宿もそうだが、
 沢木さんのこの旅は貧乏旅行ではあるが、
 あまりにも危険と背中合わせといっていい。
 もしかしたら、命の危険があるかもしれないそんな暮らしぶりに飛び込んでいく姿が
 ある意味若さの代名詞のようでもあって、
 そのあたりがこの長い旅行記が今でも人気のある所以だろう。

 この2巻でもっとも重要なのが、
 おそらく第6章だろう。
 そこには沢木さんがこの旅に出た思いが綴られているからだ。
 当時沢木さんはジャーナリストとして自分の場所を固めつつあった。
 それでも、26歳の彼はそれを捨てることになる。
 「多分、私は回避したかったのだ。(中略)何かが固定してしまうことを恐れたのだ」
 沢木さんのように思うことが誰しもある。
 しかし、沢木さんのように旅立つことはできない。
 だから、『深夜特急』はいつまでも蜃気楼のようにある。
 追っても追っても捕まえられない憧れといっていい。
 さあ、もっと先を目指そう。

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 この春から半年かけてラジオでの朗読番組として
 オンエアされるということで今また話題になっているのが
 沢木耕太郎さんの『深夜特急』だ。
 最初に「第一便」として刊行されたのは1986年5月で、
 沢木さんの26歳のユーラシア大陸をめぐる旅行記は
 全3巻としてまとめられた。
 その後、新潮文庫に6分冊になって刊行。
 それらの総出版部数は600万部にもなるというからすごい。

  

 私が持っているのは単行本の3巻ものだが、
 現在購入しやすいだろう新潮文庫版にそって
 もういちど沢木さんと旅に出ようと思う。
 もしかしたら最初にこの本を読んだ30歳になったばかりの私に出会えるだろうか。

 インドのデリーからロンドンまでおよそ2万キロを
 乗合いバスで旅してみようと思い立ったのは、26歳の時。
 沢木さんはこの時すでにルポライターとして
 いくつかの仕事をしていたという。
 それを捨てて沢木さんが旅に出た、そういうこと自体が
 若い読者の感銘を誘うのだろう。

 文庫版第1巻では、旅の発端となる「朝の光」、
 香港での奇妙でそれでいて熱におかされるほどまでの暮らしぶりを描いた「黄金宮殿」、
 そしてマカオでの博打にはまりこむ「賽の踊り」が収められている。
 なんといっても、「黄金宮殿」が面白いが、まだ旅は始まったばかり。
 まずは、前に進んでみようではないか。

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 今年(2023年)の初め、NHKEテレで放映された「趣味どきっ!」という番組は、
 「読書の森へ 本の道しるべ」と題した、8人の著名人による読書ガイドでした。
 そのうちの一人が、料理愛好家の平野レミさんで、
 番組で、2019年に亡くなった夫・和田誠さんの多くの著作で一番好きだと語っていたのが、
 この『わたくし大画報』でした。
 この本はおそらく和田誠さんの著作の中でも結構初期のもので、
 1982年に出版されています。
 初出は小説誌で、1974年から2年季刊連載された「家庭大画報」と、
 1979年から隔月連載された「渋谷大画報」での構成になっています。

  

 タイトルは違いますが、ともにエッセイで、
 仕事のことや和田さん得意の映画や芝居のことなどが、
 和田さんのイラストとともに自由に描かれていることは同じです。
 そして、おそらくここが平野レミさんの大好きな点だと思いますが、
 家庭で起こったあれこれが軽妙に描かれていて、
 今読むと思い出のアルバムのようになっています。

 「家庭大画報」では初めての出産、続く「渋谷大画報」では子供は2人に増えて、
 まさに新米パパママの奮闘ぶりがほほえましい。
 こんな小さな子供たちも今はすっかり大人(おじさん?)になり、
 新しい家庭を持っているのだから、
 他人の家のこととはいえ、なんだかちょっとうれしくなります。
 レミさんがこの本が大好きな理由、それは大好きな家族が描かれているからでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  川上弘美さんの『東京日記7 館内すべてお雛さま。』は、
  書名に「7」とあるように、
  シリーズ7冊めの作品です。
  最初に刊行されたのは、2005年ですから、
  もう18年も前になります。
  このブログでもちゃんと全巻紹介しています。
  このシリーズを読んで
  タメになるとか感動するとかないのですが、
  なんでしょうね、
  つい読みたくなります。
  それって、おいしい水みたいかな。
  味ってあまりないのに、
  とってもおいしく感じる時ありますよね。
  あんな感じの作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  コロナ禍であっても彼女は彼女                   

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、インフルエンザと同様の「5類」に変更されたのは、2023年5月。
 だからといって、ウイルスが消えた訳ではないのに、なんだか気分が違う。
 コロナが騒がれだしたのが、2020年はじめだから、実に3年という長い期間、私たちの生活はあっちにいったりこっちに追いやられたしたことになる。
 日記をつけている習慣の人にとっては、貴重な3年の記録として残っているのではないだろうか。

 では、この人の場合はどうだろう。
 「WEB平凡」で長期連載となっている川上弘美さんの『東京日記』の7巻目が出た。
 連載期間は2019年3月から2022年1月までで、世界中がコロナ禍で暗澹としている時期である。
 「新型コロナが日本にもしだいに広がりつつあり、外出や集会の自粛が要請される毎日」と書かれているのは、「三月某日 晴」とあるが、おそらく2020年の3月のことだろう。
 続く、「四月某日 晴」、「新型コロナ感染による緊急事態宣言が発出される。」とある。
 この時期、世の中はかなり神経質になっているが、川上さんの文章はあまりそう感じない。
 それが、この『東京日記』の良さであり、面白さといえる。
 何しろ、こんな大事な時期の日記ながら、書名は『館内すべてお雛さま。』なんですから。

 それで、一冊の本としてまとめあげられた「2023年初春」、川上さんは「あとがき」にこう書いている。
 「それほどに「日常」は強いものであるという驚きがありますが、反対にいえば、「日常」がまだ続いていることのありがたさも、身にしみます。」
 なんだかんだあっても、やはり川上弘美さんも緊張していたのかもしれない。
  
(2023/05/30 投稿)

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