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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  図書館流通センターの役員である
  谷一文子さんの
  『これからの図書館』という本を
  紹介します。
  図書館流通センター、略してTRC
  皆さんの近くの図書館も
  もしかしたら運営しているかもしれません。
  副題に
  「まちとひとが豊かになるしかけ」とあるように
  図書館は町おこしにも重要なファクターであることは
  間違いありません。
  単に本の貸出しをしている図書館ではなく
  人と人が触れ合う
  さまざまな仕掛けをする
  それがこれからの図書館のありかただと
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  図書館好きのあなたならきっと喜ぶ一冊                   

 図書館が好きだ。
 毎週必ず一度は行く。
 最近は図書館もシステム化が進んでいるのから、インターネットで新刊の入荷状況もわかるし蔵書の有無も簡単に検索できる。予約もインターネットでできるし、その本が入荷したのもメールで教えてくれる。
 そのことで便利になったとは感じているが、以前のように図書館の棚から棚を見て歩くことがなくなったのはちょっと残念だ。自分が歩けばいいだけなのだが。
 利便性はある意味思いがけない出会いをなくしてしまいかねない。
 図書館には自分が知らない世界がうんとあるはずだ。
 だから、図書館は面白いのだ。

 この本の著者谷一文子(たにいち あやこ)さんはかつて図書館流通センター(TRC)の社長や会長をされた方で、現在も同社の取締役をしている。
 図書館流通センターは図書館への配本だけでなく運営にも関わっている会社で、近くのちょっと素敵な図書館があれば、もしかしたらTRCが運営しているかもしれない。
 最近の図書館には汚い暗い臭いといった3Kのイメージはない。
 すっかり明るくなった図書館だがそれでもまだまだ問題点はある。
 この本では著者が図書館とともに歩んできた日々だけでなく、現在の図書館事情や図書館の楽しみ方まで書かれていて、図書館に関わる人だけでなく図書館が好きな人にはたまらない一冊になっている。

 なかでもジャーナリストの猪谷千香さんやブックディレクターの幅允孝との二つの対談は刺激的で興味深いものだった。
 巻末には著者おすすめの図書館が日本だけでなく海外のもあって、行けなくても読んでいるだけでわくわくしてくる。
  
(2020/01/18 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  この15日に
  第162回芥川賞直木賞が決定しました。
  芥川賞は古川真人さんの『背高泡立草』
  直木賞は川越宗一さんの『熱源』
  大きな文学賞ですが
  ここからがスタート。
  これからどんな作品を書くかが大切です。
  今日紹介する
  『グッドバイ』を書いた
  朝井まかてさんは
  第150回の直木賞受賞者
  2014年ですからもう6年前になります。
  そこからの朝井まかてさんの活躍は
  誰もが認めるところでしょう。
  この作品も期待通り。
  まかてワールドを堪能下さい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  幕末こんな女性もいたのだ                   

 この長編小説の主人公大浦慶(若い時は「お希以」と表記していた)は、幕末の長崎で三女傑の一人にあげられるほどで、日本茶の輸出に大きな功績を残した女性だ。
 ちなみに残る二人はシーボルトの娘で女医の楠本イネとホテル業で営んだ道永栄だそうだ。
 幕末の長崎といえば、それだけで沸騰しそうな熱を感じますが、元々は油問屋であった大浦屋の次女として生まれたお慶はその熱の中心とはいかなくてもかなり温度の高いところにいたことでしょう。
 何しろあの坂本龍馬や大隈重信、さらには岩崎弥太郎やグラバー邸の主グラバー(小説ではガラバアとなっている)など歴史上の有名人が続々と登場するのだから、さすが女傑と呼ばれるだけのことはある。

 龍馬と共に亀山社中を作ったといわれる近藤長次郎(彼は30歳になる前に切腹することになるのだが)をこのお慶が可愛がっていたと、朝井のこの作品ではなっているが、これは朝井の創作かもしれない。
 若い志士が海の向こうの世界に夢を持ったその姿にお慶の心情を共鳴させたのは、お慶という人物に深みを与えることになって、朝井の巧みさを感じる。

 大浦慶は明治になってのちに「遠山事件」と呼ばれる詐欺まがいの事件に巻き込まれる。
 そのため築いてきた財産をほとんど失うはめに陥るが、それも完済。
 そんな汚名を被りながらも、幕末の業績を讃えられるほどであるからさすがに女傑である。
 朝井の筆はそんな女性の熱気に溢れた波乱の生涯を見事に描いている。
 しかも、エンターテイメントとしての面白さを忘れていないのがいい。
  
(2020/01/17 投稿)

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  評論家でエッセイストでもあった
  坪内祐三さんが亡くなりました。
  朝日新聞の記事からです。

    評論家の坪内祐三さんが13日、心不全で死去した。61歳だった。
    1958年、ダイヤモンド社元社長の坪内嘉雄さんの長男として生まれた。
    雑誌「東京人」編集者を経て独立。コラム、書評、評論など執筆活動を始める。
    夏目漱石や南方熊楠ら同年生まれの青春時代をたどる
    『慶応三年生まれ 七人の旋毛(つむじ)曲(まが)り』で講談社エッセイ賞を受賞した。

  私は以前坪内祐三さんの本にはまったことがあって
  それというのも年が近いこともあって
  時代の気分がとてもよく似ているように感じていたせいだと
  思います。
  61歳という年齢は
  亡くなるにしてはあまりにも早すぎます。
  現在もたくさんの連載をかかえていた坪内祐三さん。
  一番悔しかったのは
  坪内祐三さん自身でしょう。
  今日は
  2005年に書いた
  坪内祐三さんの『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』の蔵出し書評です。

  ご冥福をお祈りします。

  さようなら、坪内祐三さん。

  

sai.wingpen  追悼・坪内祐三さん - 同じ時代の空気をまとって                   

  「同時代」という言葉は今でも使われているのだろうか。
 この大仰な言い方は、それでも時代の気分というものがあり、それを口にするだけでいくつかの時代の謎が解けていったような気がする。
 一九五八年生まれの坪内祐三は一九五五年生まれの私にとってまさに「同時代」の著作家であり、坪内の作品に書かれた内容以上に共鳴するのは、この「同時代」という言葉がもっている雰囲気によく似ている。

 坪内はこの本のことをこう書いている。
 「私が出会い、何らかの影響を受けた、あるいはその時代を象徴していた雑誌について、私の個人的体験を描きながら、一つの時代の精神史(とは少し大げさであるが)を書き残そうと思った」。
 坪内と「同時代」を過ごした者として、個人的な体験は大きく違うものの(坪内は東京の街の子であるが、私は大阪の郊外の小都市の子供であった)、この本の中で彼が紹介する雑誌の多くが懐かしく、これこそが「同時代」を生きた者だけが共感しうる思いだと、この本を読みながら何度ほくそえんだことだろう。

 坪内が中学時代に出会ったという映画雑誌『スクリーン』。この本の中の図版として紹介されている『スクリーン』の表紙はキャンデス・バーゲンである。
 それがいつの号かはわからないが、この表紙には見覚えがあった。
 当時坪内同様、映画に夢中になりかけた私もまた、彼女が表紙の『スクリーン』を買ったのは間違いない。そして、坪内と同じようにこの『スクリーン』に掲載されていた双葉十三郎や淀川長治の連載記事に夢中になっていたのも事実だ。

 坪内のこの本の魅力は、例えば子供の頃に使っていた机のひきだしからメンコとかおまけのシールとかを見つけた時の思い、だろう。
 ひきだしには子供の頃の宝ものがいっぱいつまっている。
 今では何の役にも立たないけれど、その一つひとつがあの頃の自分を思い出してくれる。
 思い出は、ほろ苦く、甘酸っぱい。
 それこそが「同時代」的な感傷かもしれないが、どうしようもなく惹かれてしまう。
 坪内は書き留めた雑誌たちは、確かに一つの時代の精神史を彩ったものだったに違いない。
  
(2005/05/24 投稿)

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  昨日映画監督の是枝裕和さんの
  『希林さんといっしょに。』という本を
  紹介しましたが
  その中で脚本家向田邦子さんと樹木希林さんの
  交際の話もでてきました。
  脚本家と女優といえば
  橋田壽賀子さんと泉ピン子さんも
  関係性が深い。
  橋田ドラマには泉ピン子さんが欠かせられないですものね。
  今日は
  その橋田壽賀子さんの「私の履歴書」である
  『人生ムダなことはひとつもなかった』を紹介します。
  残念なのは
  書評にも書きましたが
  泉ピン子さんのことをもっと
  聞きたかったな。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  橋田壽賀子という女の一生                   

 この本は、日本経済新聞朝刊の人気コラム「私の履歴書」に2019年5月に連載されたものの単行本化。
 2019年5月といえば元号が令和に改まって最初に迎えた月で、やはり新聞の編集部としてはそれにふさわしい人をと考えたに違いない。
 その点橋田壽賀子さんは昭和58年(1983年)に日本中を熱狂させたNHK朝ドラ「おしん」を始めとして平成にはいって始まったTBSの「渡る世間は鬼ばかり」が国民的ドラマになるなど時代をつなげていく脚本家として見込まれたのだろう。

 橋田さんは大正14年(1925年)生まれで、連載時には94歳。
 その最初に「夫の死」と題された、1989年に死別した夫岩崎嘉一さんの死の直前の様子が描かれ、最後に「本名、岩崎壽賀子。94歳。脚本家。天涯孤独。」という言葉が記されて、半生が綴られていく。
 まさのドラマの導入部のような書き方で、こんな風に書かれると続けて読みたくなる。
 読者(橋田さんにとっては視聴者)の心理がさすがによくわかっておられる。

 そんな橋田さんにもっとも影響を与えたのが石井ふく子プロデューサーだろう。
 橋田さんは石井さんからテレビドラマのあり方を学んだという。
 そのきっかけが昭和39年(1964年)4月、そう前回の東京オリンピックのあった年、に放送された「愛と死をみつめて」だった。橋田さん、38歳のこと。

 この履歴書には「おしん」の話が何回分かあるが、面白かったのは主演の田中裕子さんが撮影中橋田さんとは話さないどころか目も合わさなかったと記されていること。
 今だから話せる撮影裏話なのだろう。
 できれば、橋田さんとのコンビが多い泉ピン子さんについてももっと書いて欲しかったが。
  
(2020/01/15 投稿)

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  今日紹介するのは
  映画監督の是枝裕和さんが
  樹木希林さんにインタビューしたものを集めた
  『希林さんといっしょに。』です。
  表紙の樹木希林さんの写真がいいですね。
  中に、樹木希林さんが
  向田邦子さんについて語っている箇所が
  随所にあって
  若い時は随分仲がよかったそうです。
  それが向田邦子さんがシリアスになっていくと
  交際が途絶えていく。
  そのあたりの経緯をもう少し聞きたかったですが
  大人の微妙な関係があるのかな。
  是枝裕和さんが樹木希林さんにこだわったのは
  母親の姿を重ねたからかもしれません。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  「女優」樹木希林さんを読む                   

 令和という新しい元号に変わった2019年の出版界において、「樹木希林」というワードは特筆すべきだった。
 一体どれだけの関連本が出たのだろう。その中には思った程売れなかったものもあっただろうが、すべての総数でいえばすごい数になったことは間違いない。
 そんな中、関連本としてはなんとも遅い出版(初版は2019年9月)となった本書であるが、女優樹木希林としてのインタビューを集めた点では他にはない「樹木希林」を読めるだろう。

 聞き手は晩年の樹木希林の主要な作品のメガホンを撮り続けた映画監督の是枝裕和氏。
 是枝氏が2007年に希林さんと初めて出会ってから2018年に亡くなるまでの間に雑誌「SWITCH」で行ったインタビューをまとめたもので、樹木希林さんが信頼を寄せていたということもあるだろうが、二人の会話が生き生きと弾むようである。
 中でも第5章「出会いと別れと」と題された2016年3月のインタビューでは希林さんの怪演技のもととなった森繫久彌さんや長い間コンビを組んだ久世光彦さんとの楽しい時間、そして向田邦子さんとの思い出などとても興味深かった。
 早い晩年を迎えた向田さんは最終幕では希林さんが登場するドラマを書いていない。
 もし向田さんがもっと生きていたら、晩年の希林さんが登場するドラマを書いていたかもしれない。
 そんな想像さえ許される、いいイタンビューだと思う。

 この本には多くの「註」がついていて、それも読ませる。こんなに楽しく「註」を読んだことはない。
 そして、最後には是枝氏が記した「弔辞」も掲載されている。
  
(2020/01/14 投稿)

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