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プレゼント 書評こぼれ話

  文章を書いている時、気にしていることは、
  一人よがりの文章になっていないかということです。
  思わず熱い文章を書いてしまうことのないよう、
  できるだけスカすようにしているのですが、
  なかなかそううまくいかない時もあります。
  今回紹介しました小宮一慶さんの、
  『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』の書評を
  書いていると、つい私も作者以上に熱くなってしまいそうで、
  結構難儀しました。
  著者が熱くなる分は一向に構わないのですが、
  それが書評となると、やはり冷静に読むことが必要です。
  今回の本の中で小宮一慶さんが肺ガンの告白をして、
  それに続く文章に思わずグッときて、
  その分だけ私の文章も熱くなってしまいました。
  この『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』には、
  名言ともいえる文章がいっぱい出てくるのですが、
  そのうちのいくつかを書きとめておきますね。

     自分という蛍が一番光り輝く仕事を選びなさい。

     散歩のついでに富士山に登った人はいない。

     よく働いた一日はよく眠れる。よく生きた一生はよく死ねる。

  こういう言葉の宝石がたくさんある本です。
  
あたりまえのことをバカになってちゃんとやるあたりまえのことをバカになってちゃんとやる
(2009/04/13)
小宮 一慶

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sai.wingpen  よく働いた一日はよく眠れる           矢印 bk1書評ページへ

 この本はこれまでの小宮一慶さんのものとは少し色合いが違います。
 それまで書いてこられた本は、たとえば「ビジネスマンのために」といった一連のシリーズのように、どちらかといえば働く人の「スキルアップ」を意識したものでした。それは、小宮さんが経営コンサルタントという職業ですから、当然といえば当然です。小宮さんの本で、仕事に対する考え方なり方法を変えた読者も多いと思います。
 今回の本も書名が示す通り、そういう面ももちろんありますが、仕事だけにとどまらない、もう少し広い、人生の指南書的な要素が強く出た本だといえます。
 本書の中で小宮さんは2年前に受けられた肺ガンの手術について告白されていますし、今に至る自身の仕事の話や転職の事情といった、かなり個人的なことにもふれています。
 「これまでのビジネスマンとしての自分の人生をひととおり振り返ることができた」という小宮さんはその文章に続いて、「つくづく幸せな人生を送れている」と述べています。
 この述懐には仕事の「スキルアップ」だけではない、人生の奥深さがあります。
 そして、その奥深さは書名である「あたりまえのことをバカになってちゃんとやる」という、それこそあたりまえのような言葉からつくられてきたということが、本書を読むとよくわかります。

 最近「セレンディピティ」という言葉をよく聞きます。
 簡単にいえば、ふとした偶然をきっかけにして幸運をつかむ能力といっていいと思いますが、小宮さんの転職のエピソードなどはまさしくこの「セレンディピティ」の実現でしょう。
 しかし、誤解しないで頂きたいのですが、これは「運」の力ではありません。
 小宮さんの文章で書けば「偶然を生かすためには、それなりの準備が必要」であり、「チャンスは準備ができている人にやってくる」のです。そして、そのおおもとにあるのが「あたりまえのことをバカになってちゃんとやる」ということです。

 小宮さんは本書の冒頭に「人生は一度きりであることを、けっして忘れないで下さい」と書きとめています。
 一度きりの、私たちの人生はけっして平坦ではありません。
 それだからこそ、面白いのだともいえます。
 そして、それでも迷ったり悩んだりすれば「あたりまえのことをバカになってちゃんとやる」ことから始めればいい。この本はそう教えてくれています。
  
(2009/05/30 投稿)


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