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 「本の雑誌」という雑誌が「本の雑誌社」から出ています。
 ややこしいな。
 「本の雑誌」というくらいですから
 書評を中心に本と活字にまつわる様々な話題を扱った月刊誌です。
 創刊されたのが1976年で
 今年創刊45年を迎えました。
 そもそもが
 椎名誠さん沢野ひとしさん目黒考二さん木村晋介さんによって設立されたことなど
 本好きの人にとって
 常識でもあり伝説でもあるくらい
 とっても有名な雑誌なのです。

 そんなに有名な「本の雑誌」を今回初めて
 恥ずかしながら、購入しました。
 「本の雑誌」10月号(750円+税)、
 「サンマ高飛び号」(?)となっています。

  

 何故、今さら、恥ずかしげもなく「本の雑誌」を買ったのか。
 その答えは、この号の特集にあります。
 「定年後は本当に本が読めるか!?
 まずは、そのリード文から。

   本好きなら誰もが夢見る定年後の晴読曇読雨読パラダイス。
   さあ、朝から晩まで読みまくるぞ!のはずが、
   どうも思ったほど読めないらしい。
   それは本当か。
   オレが定年後に読もうと積んでいる本の山は
   いったいどうなってしまうのか!?


 ね、定年後を過ごしている皆さん、
 これから定年を迎える皆さん、
 とっても気になりますよね。
 編集者や書店員の皆さんの定年後の読書事情や
 永江朗さんの「老後読書と電子書籍」、
 「私の老後読書アイテム」(老眼鏡などやはり衰える眼のケアですね)、
 伝説の書店員田口久美子さんの持っている本の処分の方法や
 「老後に読みたい本」という読書アンケートまで
 ずらりと並んでいます。

 特集を読んだ感想を書けば、
 時間がある定年後だからといって
 読書数が増えるということはないようです。
 今まで読めなかった長編小説を読もうという人もいますが
 それも実際はうまくいかない。
 私の実体験で書くと、
 定年後になったら読み返したいと思って取って置いた本はあります。
 「年度毎のベスト・エッセイ集」とか文庫になっている「天声人語」シリーズ、
 司馬遼太郎さんの「街道をゆく」とか
 夏目漱石だって岩波文庫で揃えたし。
 ところが、哀しいかな
 昔の本って活字がメチャ小さいんですよね。
 なので、最近出版される「新装版」は活字が大きくなっています。
 つまり、持っていても読むのがつらい。

 まあ、そうはいっても
 本が手放せないことは変わりません。
 「本の雑誌」を開けば、読みたい本が出るわ出るわ。
 いやあ、定年後も忙しいことで。

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   きみ、人間一生かかって、そんなに本は読めるものじゃァない。

 これは民俗学者の柳田国男の言葉だと、
 作家の戸板康二さんがエッセイ「耳ぶくろ」で紹介している。
 そうだよな、そんなに読める訳ない。
 何しろ一年間に出版される点数だけでおよそ8万点。
 つまりほとんど無理なのだ。
 しかも、本棚には一度読んだ本たちが並んでいる。
 今年は本棚に並んだ本を
 せめて毎月3冊程度は読んでいくことを目標にしている。
 今日紹介する
 日本エッセイスト・クラブ編の
 『’83年版ベスト・エッセイ集 耳ぶくろ』は
 そんな一冊。

  

 このシリーズだけで29冊あって、
 毎年一冊読んでいたら
 一体いくつになってしまうことか。
 この本はまずは単行本で出て、
 その後文庫本化されている。
 この『耳ぶくろ』の場合だと
 単行本として出たのが1983年で、
 文庫化は1986年になっている。
 なので、今回読むのは3度めということになる。
 文庫本で買い揃えていた時は
 もちろん私も若かったので
 いずれ退職したあとは余生としてまたじっくり読みたいと
 思っていたものだ。
 今が余生かどうかは別にして。

 1983年といえば
 まだ20代の頃だ。
 昭和でいうと58年。
 年表をひもとくと
 パソコン・ワープロが急速に普及したり
 ロッキード事件で田中角栄元首相が有罪になったり
 NHKの朝ドラ「おしんが人気になった
 そんな年だった。
 東京ディズニーランドが開園したのも
 この年で
 私の下の娘が生まれたのも
 この年の暮れだった。

 この本に収められている61篇のエッセイの書き手たちを見ても
 井伏鱒二、開高健、野坂昭如、山口瞳、三浦朱門など
 多くの人が鬼籍に入っている。
 そりゃそうだな、
 ほとんど40年前だもの。
 読んだ当時は
 いずれここに収められたエッセイのような
 歯切れのいい、
 情緒のある文章を書きたいものだと思ったものだ。
 今回読んで思った。
 いい文章は古びない。

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 中原中也に不思議な詩があります。

   菜の花畑で眠つてゐるのは……
   菜の花畑で吹かれてゐるのは……
   赤ン坊ではないでせうか?

   いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
   ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
   菜の花畑に眠つてゐるのは、赤ン坊ですけど


 これは「春と赤ン坊」という詩の一節。
 中也らしいといえばそうですが
 なんとも不思議な感じがします。

 そんな中也の詩に誘われた訳でもないですが
 友人たちと
 千葉を走る小湊鉄道の花めぐりをしてきました。

 養老渓谷の近くの菜の花畑の光景です。

  1522659681890_convert_20180402180825.jpg

 こんな光景を見ると
 確かにどこかに赤ン坊が眠っていても
 不思議ではない、
 そんな気分になります。
 山村暮鳥という詩人に
 この光景にぴったりの詩を見つけました。
 「風景」という詩の一節。

   いちめんのなのはな
   いちめんのなのはな
   いちめんのなのはな
   いちめんのなのはな
   いちめんのなのはな
   いちめんのなのはな
   いちめんのなのはな
   かすかなるむぎぶえ

   いちめんのなのはな


 こんな詩句が続きます。

 そこにちょうど
 小湊鉄道の列車がやってきて
 あわてて、パチリ。

  1522659694171_convert_20180402180933.jpg

    一輌の電車浮き来る花菜中    松本 旭

 「花菜」は菜の花の別名。

 小湊鉄道の沿線には
 写真愛好家に人気の
 絶景スポットもあって
 これは「飯給(いたぶ)」駅の桜。

  1522659733198_convert_20180402181010.jpg

 実はこの写真のまわりには
 ずらりと何十人もの写真愛好家の人たちが
 列車の到着を待っていました。

 今年の春は
 駆け足で過ぎていきそうですが
 友人たちのおかげで
 いい春を楽しめました。

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 今日は海の日

    海の日の国旗疎らに漁夫の町    千田 一路

 そして、今年も夏の文庫祭りがやってきました。
 本屋さんに行くと
 イベントコーナーにずらりと並んでいます。
 当然、子どもたちが長い夏休みになるので
 この季節、しっかりと
 文庫本を読んでもらおうという
 出版社の企画です。
 でも、文庫本を出している出版社は多いですが
 目だった企画をしているのは、3社。
 文庫14
 新潮文庫角川文庫集英社文庫
 あとの文春文庫とか講談社文庫とか岩波文庫
 そういったことは
 あまりしていません。
 すればいいのに。

 その三つの文庫本では
 キャッチコピーやキャラクター、
 あるいはキャンペーン用の小冊子と気合がはいります。

 なかでも
 なんといっても新潮文庫
 おなじみの

   新潮文庫の100冊

 として、今年の夏もがんばります。
 「ようこそ、宇宙よりも広い世界へ 新潮文庫の100冊へ」というのが
 今年のキャッチコピー。
 今年はパンダのキャラクターはありません。
 小冊子には、極めつけの一行が
 紹介されています。
 夏休みの定番ともいえる宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』からは

   どこまでもどこまでも一緒に行こう。

 この企画、とってもいいですね。
 名作の中から自分のお気に入りの一行をさがしてみるのは
 面白い。
 だから、新潮文庫のこの小冊子そのものが
 面白い。
 本屋さんに行けば無料で手にはいりますので
 ぜひ。

 角川文庫にいきましょう。
 今年のキャッチコピーは

   本を開けば、始まるよ。

 老舗の新潮社に対抗して
 最近の話題作なんかもラインナップにしている角川文庫
 新潮文庫と比べて
 見劣り感があります。

 それとよく似ているのが集英社文庫

   心に、冒険を。

 が、今年のキャッチコピー。
 今年の夏公開の『るろうの剣心』で主演する
 佐藤健さんがイメージキャラクター。
 集英社文庫の小冊子もよくできています。
 それぞれの作品に
 「この本のポイント」がついています。
 例えば、太宰治の『人間失格』には
 ① 恥の多い人生 ② 太宰の遺書 ③ 心刺す自意識
 と、あります。
 読む時のヒントになればということかな。

 それぞれの文庫が
 特長のあるラインナップと工夫をこらした小冊子で
 この夏もがんばっていますが、
 やはり新潮文庫
 今年の夏も一番かな。
 みなさんはどうでしょう。
 本屋さんで見比べてはどうでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

   今、土曜日の夜NHKで
  5回連続で村上龍さん原作の
  『55歳からのハローライフ』が
  放映されています。
  今夜の放送が4回めになります。
  そこで今日は
  『55歳からのハローライフ』の再録書評です。
  このドラマは
  まず主演陣が豪華なんですよね。
  「キャンピングカー」という作品ではリリー・フランキーさんが主演、
  奥さん役は戸田恵子さんが演じていました。
  「ペットロス」には風吹ジュンさん。
  私は風吹ジュンさんが好きです。
  上手に年を重ねてきた女性という印象があります。
  年を重ねるごとにきれいになっているような気がします。
  「結婚相談所」と言う作品は原田美枝子さん。
  この人も素敵ですね。
  ここまでがすでに放映されています。
  今夜は第4回めで
  「トラベルヘルパー」。
  主演は小林薫さん。
  いうまでもなく、朝の連続ドラマ「カーネーション」で
  父親役を熱演した名優です。
  見ていない人は
  今夜からでも。
  ぜひ。

  じゃあ、読もう。

55歳からのハローライフ55歳からのハローライフ
(2012/12/05)
村上 龍

商品詳細を見る

sai.wingpen  限りなく憂鬱に近いグレイ                   

 この本を本屋さんの店頭で見かけた時、てっきり「55歳からのハローワーク」だと勘違いしてしまった。何しろ村上龍さんには大ヒットした『13歳のハローワーク』という作品があるくらいだ。
 ハローワークっていえば、13歳よりは55歳の方が現実的である。だからといって、あまりにも短絡的な勘違いだった。
 笑えるが。
 この本、ちゃんといいますね、『55歳からのハローライフ』は中高年の男女を主人公にした連作中編集だ。
 村上龍さんが『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞を受賞したのが1976年だから、それからおよそ40年近くなる。あの作品で若者の風俗を描いた村上さんだが、こうして中高年の姿を描くようになった、そのことに感慨深いものがある。
 当時村上さんがこのような作品を描くなど、誰が想像しただろう。
 時代は変わった。
 変わったというのが妥当かどうか、少なくとも村上さんの、この国の、橋の下をたくさんの水が流れたことは確かだ。

 夫と離婚し新たな相手を探そうとする女性を描いた『結婚相談所』、ホームレスになる不安を持った男がホームレス状態のかつての同級生と出会う『空を飛ぶ夢をもう一度』、早期退職で会社を辞めたもののそれ以降の生活や転職活動に悩む男の姿を描いた『キャンピングカー』、会社をやめ家にいる夫とそりが合わず愛犬に愛情を注ぐ女性の切ない姿の『ペットロス』、中高年の淡い恋を描く『トラベルヘルパー』の、5篇。
 そのどれもが現在(いま)の中高年が迎えている危機であり、苦悩ともいえる。
 夫がいて、妻がいて、息子や娘たちは独立し始めている。年金の支給時期が延長され、再雇用制度で若い年下のものから指図される。早期退職という誘惑にはまったものの、隠居するにはまだまだ元気だ。
 それが現在(いま)の平均的な中高年の姿かもしれない。
 その姿を憐れむのでもなく、同情するのでもない。淡々と描きうる作家としての力量は、経済問題にも詳しい村上さんならではこそといえる。

 一番身につまされたのが『キャンピングカー』という作品だった。
 会社を辞めたあと夫婦でキャンピングカーに乗って日本中を旅したいと夢みていた主人公。しかし、その夢は相棒だったはずの妻から拒否される。夫は長年の暮らしの中で妻にも別箇の人格があることを見失っている。「誰にも自分の時間を持っている」という簡単な事実。
 中高年の端くれとして、この作品集は重い。
  
(2013/01/19 投稿)

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