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 以前紹介した猪谷千香さんの『小さなまちの奇跡の図書館』という本は、
 鹿児島県指宿市の公立図書館の活動を通して
 まちの人たちと図書館がどううまくつながっているのかを紹介した
 ノンフィクション作品でした。
 その中に市の指定管理者として図書館運営に携わった
 NPO法人本と人とをつなぐ「そらまめの会」の奮闘する姿が
 読者に勇気を与えてくれました。
 そこにもたびたび出てきたのが、
 その「そらまめの会」の皆さんが編著となった一冊の本、
 『私たち図書館やってます!』です。

  

 この本は2011年5月に出版されています。
 なので、最近出た猪野千香さんの本の方が、
 その後の活動まで書かれているのですが、
 この本は「そらまめの会」の人たち自身が実際やってきた活動のことが記された
 生の記録といっていいでしょう。
 セミの羽化観察会や高校生のおはなし会、
 高齢者向けのサービスや図書館での写真コンテストなど
 この人たちがいればこそ、ここが「奇跡の図書館」と呼ばれるようになったのが
 よくわかります。
 また、この本には以前書かれた「指宿図書館の歴史」や
 図書館員によるブログ記事なども紹介されています。

 猪谷千香さんの本がなければこの本にたどり着くことはなかったでしょう。
 猪谷千香さんの本は「ちくまプリマー新書」の一冊ですから
 本屋さんで購入するのも容易でしょうが、
 この本は鹿児島市の南方新社というところから出ているので、
 なかなか本屋さんでは見つけられないかもしれません。
 そういう時こそ、まちの図書館に訊いてみるといいでしょう。
 図書館ならこの本を並べていると思います。
 何故なら、この本は図書館のための本なのですから。

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 昨日、今注目を集めている広島の小さなまちの「本屋さん」のエッセイ、
 『本屋で待つ』という本を紹介しましたが、
 今日は同じように話題となっている「図書館」の本を紹介します。
 すでに『つながる図書館』などの著作もある猪谷千香さんの
 『小さなまちの奇跡の図書館』です。

  

 タイトルにある「小さなまち」は、
 鹿児島県指宿市。温泉地としても有名なところです。
 そこの図書館が何故最近注目を集めているのか、
 それはさびれつつあった公立図書館を見事に蘇らせた人たちがいたからです。
 近年公立図書館にも指定管理者制度が適用され、
 指宿市の図書館もそうなります。
 その時指名されたのが、地元女性たちが立ち上げたNPO「そらまめの会」でした。
 彼女たちが図書館運営をまかされて
 初めて取り組んだのが周辺の草取りだったそうです。
 そこから随所で女性の優しい目配りが
 図書館を見違えるものにしていきます。
 猪谷さんのこの本は、
 彼女たちの活動をその立ち上げから時間を追って描いています。

 この本を読むと
 図書館というのは単に本の貸し出しだけでなく、
 地域の人たちの集まる場所だということがよくわかります。
 ただし、図書館があるから人が集まるという単純なことではありません。
 「そらまめの会」の女性たちがしてきたような丁寧できめ細かい活動が
 必要です。

 本屋さんにしろ図書館にしろ、
 地域根ざしたものが生き残るヒントを与えてくれるように思います。

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 若い頃、だから随分昔のことになるが、
 直木賞など見向きもしなかったものだ。
 文学といえば、「純」文学。
 芥川賞を受賞するような作品。
 その一方の直木賞の受賞作など「大衆」小説。
 つまりは、三文小説でしょ。
 と、今思えば随分もったいない思い込みをしていたものだ。
 自身の間違いを他人のせいにするならば、
 芥川賞と直木賞という文学賞がなければ、
 そんな誤解も生まなかったのではないだろうか。
 今ならこういう。
 直木賞の作品は面白い。
 そう、文学には面白いかそうでないかという区分けしかない。

  

 芥川賞にも直木賞にも縁のなかった
 小谷野敦さんによる『直木賞をとれなかった名作たち』は
 「候補になってとれなかった」作品や作家だけでなく、
 候補にすらならなかった作家やもし候補になるならこの作品といったものも
 ずらり並ぶ。
 しかも、あの作家とあの作家は仲が悪かったとか、
 どうして文壇の評価が低いとか
 いわゆる「文壇ゴシップ」満載でそれを読むだけで楽しめる。
 それ以上に、
 これは小谷野さんの執筆意図とは違うかもしれないが
 ブックガイドとしても十分活用できる。
 この本を読んで、そのまま図書館に予約した本もあったりする。
 (ここで紹介されている本を新刊書店で探すのはかなり難しい)

 目次に並んだ作家たちの名前を見ていくと、
 まだまだ読みたい作家や読んでおきたい作品がたくさんある。
 これでは、最近の受賞作まで手が届かないではないか。

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 今年(2023年)は、作家司馬遼太郎の生誕100年にあたる。
 それを意識しなかったはずはないだろうが、
 福間良明氏による『司馬遼太郎の時代』は2022年10月に刊行されている。
 ただ執筆に至る経緯を記された「あとがき」によれば、
 当初は「司馬遼太郎の時代」から昭和史を再考してみたいということであったようだ。
 ちなみに福間氏は大学教授で、専門は歴史社会学・メディア史であるという。

  

 著者は、司馬遼太郎がなぜ「国民作家」と呼ばれるほどまでになった背景を、
 「昭和50年代」にみている。
 本文に「司馬の歴史小説は明らかに、「昭和五〇年代」の大衆歴史ブームに重なり合っていた」とある。
 なかでも、ビジネスマンやサラリーマンたちに支持されたと。
 その要因として、NHK大河ドラマの原作に何作も取り上げられたことや、
 その頃の文庫隆盛が司馬という名前を格段に高めたのではないかとしている。

 さらに、司馬の作品にたびたび登場する「余談」について、
 そこに記された内容が「読者の教養への憧憬を刺激した」と見ている。
 確かに司馬の作品には単に文学的な面白さだけではない、
 「文学・思想・歴史方面の読書を通じて人格を陶冶しなければならない」という
 教養主義にあこがれた人々にとって、
 明らかに他の歴史小説家とは一線をひいていたといえる。

 司馬遼太郎とは何者だったのか、司馬文学をどう読み解くのか、
 司馬遼太郎生誕100年にあたり、
 面白く読めた一冊だった。

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 昨日、第168回芥川賞・直木賞の受賞作の発表がありました。
 芥川賞は、佐藤厚志さんの『荒地の家族』と井戸川射子さんの『この世の喜びよ』、
 直木賞は、小川哲さんの『地図と拳』と千早茜さんの『しろがねの葉』。
 芥川賞直木賞ともに2作の受賞で、驚きました。
 なんか大盤振る舞いみたいですが、
 新しい書き手に門戸を開くとしたら、それもアリかな。
 かつて、多くの芥川賞直木賞の単行本化の際に
 装幀を担当した人がいます。
 それが、菊地信義さん。
 今日は芥川賞直木賞受賞のお祝いに
 菊地信義さんの『装幀百花 菊地信義のデザイン』を紹介します。

  

 菊地さんは数多くの装幀を手掛けた装幀家で、
 2022年3月28日、78歳で亡くなっています。
 この本は、菊地さんが講談社文芸文庫の創刊以来、
 実に1300点余の文庫デザインの中から選ばれた作品が
 カラー版で紹介された「決定版作品集」です。
 菊地さんの装幀した本を見かけないことがないほど、
 菊地さんは文芸文庫に限らず、
 数多くの装幀を手掛けてきました。
 その数、なんと1万5千点以上といいますから
 すごいものです。

 菊地さんといえば、「斜体」文字がやはり印象的。
 なので、表紙の装幀で、これは菊地さんの作品だとすぐにわかったものです。
 そのほかにも、「変形」であったり、「図像」であったり、
 「字体」に変化をつけたり、「構成」では余白を生かしています。
 「視覚的な効果で、読んでみようとかと思う心をゆする。」は、
 菊地さんのエッセイからの一文。
 菊地さんの装幀に心を揺すられて、読んだ本もたくさんあります。

 「やっぱり本というのは、どこか品があって、格があって落ち着いて」と
 考えていた人だから、
 菊地さんの装幀には淀みがないのです。

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