09/19/2023 これはわたしの物語(田尻 久子) - これも読みたい、あれも読みたい

熊本で「橙書店 オレンジ」という本屋の店主である。
その一方で、すでに『みぎわに立って』『橙書店にて』など
数冊の著作ももつ文筆家でもある。

本のことを綴った数編のエッセイで出来ている。
そのエッセイの中のひとつ、「本をすすめる」で
「私が書いている文章を「書評」だと言ってしまえばおこがましいし、
書評家や研究者の方々に失礼な気がする。」と書いているが、
なんのなんの、田尻さんの文章は
とても丁寧で、その本への目線がやさしい。
いってみれば、おいしい珈琲を頂いたような文章である。
香りが深く、味わいが濃い。

意外に海外文学(田尻さんは「翻訳文学」と書く)が多いことに気がつく。
これもエッセイの中のひとつ、「国境を越える蝶」の中で
「私は自身を持って翻訳小説をおすすめする。
翻訳物には「当たり」が多いと思っている。他国で刊行されている時点で、
その本にはすでに多くの読者がいるはずだから。」と書いている。
そして、翻訳者への感謝の言葉が続く。

「文章はつたなくとも、すすめた本を読んでほしいという気持ちは確か」と。
そして、「ここに登場する本を一冊でも読みたくなってくださいますように。」と。
きっと、そんな本がこの本から見つかりますよ。

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09/14/2023 知りたい気持ちに火をつけろ!(木下 通子) - 学校図書館も大きく変わっています

埼玉県でも有数の「超進学校」である県立浦和第一女子高校に
勤務されています。
同時にさまざまな活動を通じて、本と人をつなげていこうとしている。
活動の話はこの本の中にも書かれていて、
「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」は県内の書店でも
本が紹介されていたりします。

副題で「探究学習は学校図書館におまかせ」となっているように
「探究学習」(自分の問題意識に関する答えを求めること)の話が
主たる軸になっています。
それ以上に感じたのは、この新書が書かれた時期がまさにコロナ禍のことで、
学校が何か月も臨時休校していた時に、
学校図書館がどのような活動をしていたかがきちんと記録されている点です。
そのことは第4章の「コロナ禍で進んだ学校図書館のDX化」に詳しく記述されている。
そもそも「DX」とは「デジタル技術を使って生活をより良いものへと変革すること」で、
高校図書館の現場でも大きく変わってきているようです。
もちろん浦和一女の場合はかなり進んでいると感じました。
電子書籍サービスができる高校もあまり多くはないでしょう。
実際、木下さんの高校でも「率先して利用する生徒が少ない」など、
まだまだ検討の余地はあります。

たびたび書かれています。
そのためにも図書館をもっと利用すればいい。
この新書を若い世代に読んで欲しい。
だって、「岩波ジュニア新書」ですから。

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08/29/2023 子どもの本の森へ(河合 隼雄/長田 弘) - 窓から出入りできる大人になってみますか

臨床心理学者の河合隼雄さんと詩人の長田弘さんの対談集
『子どもの本の森へ』です。
駒井さんはこの本のことを
「大人が子どもの本を読む意味を、これほど明確に語っている本を他に知りません」と
書いています。
この対談集は1998年に出たものですが、
今読んでもとても参考になる児童文学のすすめです。

たくさんの示唆に富んだ言葉がたくさん含まれています。
「大人と子どものいちばんの違いは、」と語っているのは長田さん。
「子どもは窓を乗り越えて出入りできる人間」で
「大人というのはもう窓を乗り越えなくなった人間」という意見に
詩人の感性を感じました。
あの『ピーター・パン』がまさにそんな少年だったことを
思い出しました。

長田さんが言っていますが、
大人がこの対談集を読む意味は
そういう「心に残っている」「読みたい本」を見つけだす
手伝いになってくれることでもあります。
この対談集ではたくさんの児童書。絵本が紹介されています。
きっとその中に、「読みたい本」が見つかるでしょう。
もしかしたら、児童文学は大人だから楽しめるジャンルかもしれません。
さあ、「子どもの本の森へ」踏み出しましょう。

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08/25/2023 編集者の読書論(駒井 稔) - 次の一冊がきっと見つかる

だからでしょうか、書店に行けば「今読まれている本」なんて
丁寧(?)に教えてくれています。
『編集者の読書論』というこの本のいいところは、
副題にあるように「面白い本の見つけ方。教えます」ですから、
読書嫌いの人や自分に合った本を探せられない人にオススメの一冊です。

2006年に当時画期的といわれた光文社古典新訳文庫の創刊に携わり、
その後10年にわたり編集長を務めた、生粋の「編集者」です。
なので、この本の中には「編集者」という仕事のことや
海外の「編集者」事情も書かれています。
なかでも海外の「編集者」の話を読むと、出版者に近いそんな印象を受けます。
そういうこともあって、
「世界の<編集者の>読書論」という章で、ほぼ3分の1占めています。

「面白い本」を紹介してくれる、読書ガイドとして読むといい。
特に古典新訳文庫の元編集長ならではの、オススメ古典が
たくさん紹介されています。
私のオススメは「児童文学のすすめ」の章。
子供の頃に読んだ児童文学をもう一度きちんと読み直してみてはと誘ってくれます。
そこで紹介されている、『若草物語』や『宝島』といった懐かしい文学に
読者意欲が掻き立てれました。


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06/23/2023 川端康成の話をしようじゃないか(佐伯 一麦/小川 洋子) - まず何から読もうかな

もちろん知ってます。
日本人で初めてノーベル文学賞を受賞しました(1968年)。
その4年後の1972年にガス自殺しました。72歳でした。
代表作はなんといっても『伊豆の踊子』じゃないかな。何度も映画化されてるし。
それに『雪国』。冒頭の文章なんか誰もが知っているのじゃないかな。
でも、私の川端康成はそこまで。
作品名は知っていても、ほとんど読んだことがない。
だから、『川端康成の話をしようじゃないか』と言われても、黙っているしかない。
そんな私でも、佐伯一麦さんと小川洋子さんの対談形式の
「川端康成の話」は面白かった。

「いまだに読み継がれている作家って、おれは幸せですよ。」と語っていて、
そうか、川端康成はそんな稀有な作家なんだと
あらためて見直しました。
では何を読むか、この対談では『伊豆の踊子』や『雪国』よりも
『掌の小説』のことが多く語られていて、わざわざ一章まるごと
この作品の話になっているから、このあたりがいいかな。
それに『みずうみ』(これは佐伯さんのオススメ)とか、
『眠れる美女』『片腕』(この2作は小川さんのオススメ)だろうか。

できればほとんどの作品を読んでいるに越したことはないですが、
少なくとも代表作といわれるものは読んでおきたい。
川端康成、今さらながらですが、読んでみようかな。

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