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 毎日新聞の書評欄は、故・丸谷才一さんが力を注いだコーナーとして、
 本好きには定評のある読書ガイドとなっている。
 丸谷才一さんの精神を継いで、
 今は池澤夏樹さんが顧問みたいにして書評欄「今週の本棚」をこしらえているようだ。
 その池澤さんの提案で、昔の本を扱う欄ができたそうだ。
 昔の本といえば、「古典」となるが、
 ここではもっと身近な「本を読む人ひとりひとりの個人的な古典」ということで、
 決して世間でいわれているような評価の定まったものとは限らない。
 つまりは、「他の人の評価などどうでもいい自分だけの一冊」。
 そういうコーナーができて、50人分が集まったのでできたのが、
 この『あなたのなつかしい一冊』で、池澤夏樹さんの編纂となっている。

    

 こういう本の面白いところは、有名なあの人がこんな本をなつかしんでいるのかと知ることだろう。
 例えば、建築家の隈研吾さんの一冊は『ドリトル先生、アフリカゆき』だったり、
 音楽家の近田春夫さんがバージニア・リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』だったり、
 直木賞作家桜木紫乃さんが沢木耕太郎さんが藤圭子さんのことを書いた『流星ひとつ』だったりする。
 こうして読んでいくと、読書というのは極めて独りきりの作業だとよくわかる。
 よく本屋さんは最近読まれている本を薦めたりしているが、
 実は自分の一冊はそこにはないのかもしれない。

 池澤さんは「まえがき」の中で、
 「この本はまた新しい読者を得るだろう。ぼくだってそれを知らなかったと欲望を感じる本が少なくない。みなさんご用心。」と書いているように、
 あの人のなつかしむ一冊を読んでみたいと、そう思える本が必ず見つかるだろう。
 それも、また愉し。

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 「夏葉社」は、今注目の出版社だ。
 その代表で、営業担当でもあり、総務担当でもあるのが、島田潤一郎さんだ。
 つまり、夏葉社は一人出版社なのだ。
 島田さんのこと、夏葉社のことを知ったのは、
 8月6日の朝日新聞の土曜別刷りの「フロントランナー」という記事だった。
 その中で、2014年に晶文社から刊行された
 島田さんの出版社を起こす「甘酸っぱい日々」を綴った『あしたから出版社』という本を知って、
 読んでみた。
 こんな面白い本が、自分の出版社でなく、他の出版社から出ているのが、もったいないくらい。
 でも、そういうあたりが、島田さんの出版に対するまっすぐな思いなのかもしれない。

  

 夏葉社は2009年、島田さんが33歳の時に設立された。
 それまでの島田さんは決して出版業界に詳しかったわけではない。
 むしろ、なかなか就職もできない「負け組」の青年だった。
 その島田さんが何故出版社をやってみようと決意したか。
 仲がよかった従兄の突然の死、それを悲しむ叔父と叔母。
 島田さんは二人のために、本をつくってみようと決める。
 この『あしたから出版社』には、
 島田さんが出版社を始めた経緯や、まだ何者でもなかった20代に出会った人たちのこと、
 出版社を立つあげて向き合った本の話など、
 もしかしたら、今絶望している人にも勇気を与えてくれるような話がいっぱいだ。

 「本は情報を伝える媒体というよりも、
  こころを伝える「もの」であるように思える

 島田さんの、そんな言葉にじんときた。

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 どんな本を読むかというのは、やはり自身のお気に入りワードがあって、
 私の場合、そのひとつは「読書」ということになる。
 そこから派生する「読書会」もそうで、ましてやこの新書のように
 『読書会という幸福』と直球でズバッとこられると
 つい手が出てしまう。

    

 翻訳家で学校の司書でもある著者向井和美さんは、自身もまた30年近くある読書会に参加されている。
 そういう経験から読書会がうまく運営されるための作法やさまざまな形式の読書会を紹介している。
 向井さんが参加されている読書会は、全員が同じ本を読んできて意見を語り合う形式で、
 課題本の多くはなかなか一人の読書では手が出ない古典が中心になっている。
 新書巻末には、向井さんが参加されている読書会が30年以上の期間に取り上げてきた課題本一覧が載っていて、
 圧倒される。

 読書会の形式には、ほかにも「おすすめの本を紹介し合う」ものもある。
 ちなみに私が参加している読書会はこの形式で、
 自分だったら絶対手にしない本がメンバーから紹介されて読書欲が沸くということがよくある。
 どの形式の読書会がよいかというのは、自分に合っていればそれでいいので、
 無理をしないことが継続につながっていく。
 気をつけないといけないのは、あまりに楽し過ぎて、つい喋りすぎてしまうことだ。
 これは向井さんの読書会の作法でも、厳に注意されている。

 この新書は「読書会」だけでなく、
 向井さんがこれまで「読書会」を通じて読んできた作品の紹介もあって、
 ブックガイド的にも読めるのがいい。
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 森鷗外の忌日は「鷗外忌」と素っ気ないが
 よく目にするのが亡くなった人特有の言葉との組み合わせで
 有名なのが太宰治の「桜桃忌」や芥川龍之介の「河童忌」で
 すでに季語として『歳時記』にも載っている。
 まだそこまでの認知はないが
 作家吉村昭の忌日は「悠遠忌」と呼ばれている。
 吉村昭が亡くなったのが、2006年7月31日。
 もうすぐ16回めの「悠遠忌」がやってきます。

  

 吉村昭は79年の生涯で
 小説371作を残しました。
 その他にも数多くのエッセイも書いていて
 没後16年経っても、多くの読者を持つ稀有な作家の一人です。
 その硬質な文体から
 男性の読者からの支持が多いと思いますが、
 この『吉村昭の人生作法』の著者である谷口桂子さんのように
 女性の読者をも惹きつける作家だったといえます。
 谷口さんの場合、
 あまりにも吉村昭が好きすぎて
 すでに『食と酒 吉村昭の流儀』という本があるぐらいです。

 この本ではもう少し幅広く
 吉村昭という人の生きてきた姿勢が描かれています。
 それを「日常」「仕事」「家庭」「余暇」「人生」の五つの場面ごとに
 まとめられていて、
 特に最後の「人生」についての章には
 「幸せだなあ、と毎朝つぶやいて」という
 吉村昭の晩年の思いが添えられている。
 若い頃死病といわれた結核の病から手術により一命をとりとめたその命を
 吉村昭は終生大事にしていたという。
 誰もが年を老い、死と対峙する日々を迎える。
 そういう時、吉村昭の過ごした晩年なり死生観は
 私たちに勇気を与えるだろう。

 吉村昭をこれから読んでみようと思う若い読者にも
 もう一度吉村昭を読んでみようと思っている読者にも
 吉村昭という人生を知る
 道しるべのような一冊だ。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日はみどりの日
  今年の大型連休は
  新型コロナウイルスによる行動制限がないことから
  各地でも「3年ぶり」の催しが多く見られます。
  博多どんたくもそのひとつ。
  「どんたく」は『歳時記』にも載っています。

    どんたくの鼓の音ももどりたる      吉岡 禅寺洞

  それに今年は長く休みがとれる人で
  10連休という人もいるようで
  車の混雑も報道されています。
  昨日『東京の美しい図書館』という本を紹介しましたが
  そういえば
  同じ立野井一恵さんの本で
  『日本の最も美しい図書館』があったので
  今日はその本を再録書評で紹介します。
  遠出をしたついでに
  こんな素敵な図書館に足を伸ばしてみるのも
  いいですよ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  そうだ、図書館行こう                   

 図書館は、図書館法で「図書、記録その他必要な 資料を収集し、整理し、保存して一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、 レクリエーション等に資することを目的とする施設」と定義されています。
 つまり、「施設」なのです。
 では、屋根があって壁があって、出入り口がああって書棚があればいいかといえば、そうではない。やはり快適性や機能性が欲しいし、できれば美しくあって欲しい。
 この本は日本全国の図書館の中から、これはという美しい図書館を多彩な写真で紹介している、図書館好き、本好きにとっては、垂涎の一冊です。

 この本には41館の図書館が紹介されています。
 一例を紹介すると、「本のコロセウム」をテーマとした半円のデザインの国際教養大学中嶋記念図書館(秋田市)、小学校を再利用した京都国際マンガミュージアム(京都市)、アートのような多摩美術大学図書館(八王子市)、何かと話題の武蔵野プレイス(武蔵野市)や武雄市図書館(佐賀県武雄市)。どれもが目を見張ります。
 上野にある国立国会図書館国際子ども図書館や大阪の大阪府立中之島図書館の時代を感じさせる重厚な建物もいい。

 この本を見ていて思ったのが、小学校の跡を利用した図書館が結構多いということです。
 京都国際マンガミュージアムもそうですし、京都芸術センター図書室や甲良町立図書館(滋賀県)もそうです。
 少子化現象で小学校の廃校が多くあります。それを生かして図書館にする試みはもっと広がってもいいように思います。かつての子どもたちの歓声が聞こえるような、そんな図書館で本を読むのもいいではないですか。

 北陸新幹線の開通でにぎわう金沢にある金沢海みらい図書館も素敵です。福井市の福井県立図書館もいい。長野県小布施の小布施町立図書館まちとしょテラソは栗のおいしい季節には最高かもしれません。
 観光といえば温泉やグルメですが、それに「最も美しい図書館」を組み合わせると、深みがちがってくるような気がします。

 それにしても、こんな美しい図書館を活用している地元の人がうらやましい。
 引っ越ししたくなります。
  
(2015/09/15 投稿)

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