FC2ブログ
プレゼント 書評こぼれ話

  ずっと佐野洋子さんのことが気になっていました。
  佐野洋子さんといえば、
  絵本のロングセラー『100万回生きたねこ』を書かれた人で、
  今でも新刊が常に本屋さんの平台に積まれている程の
  人気作家なのです。
  で、読もう読もうと思い続けていたのですが、
  なかなかご縁がなくて読まずにきた作家の一人です。
  今回はその奇妙な書名『クク氏の結婚、キキ夫人の幸福』にまずひかれ、
  表紙の佐野洋子さんの絵にひかれ、
  やっとめぐり合えた作品です。
  二編の恋愛小説が収められていますが、
  私は『クク氏の結婚』の方が愉しく読めました。
  そして、官能度もこちらの方が高いのではないかと
  思います。
  わずか93ページの本ですから、
  眠る前にでも読むと、
  案外いい夢を見れるかもしれません。

クク氏の結婚、キキ夫人の幸福クク氏の結婚、キキ夫人の幸福
(2009/10/07)
佐野 洋子

商品詳細を見る

sai.wingpen  助数詞                     矢印 bk1書評ページへ

  助数詞とは、
  数を表す言葉のうしろについて、どのような事物の数量であるかを
  あらわすのだという。

  では、
  男にはどんな助数詞がつくのだろう。
  では、
  女にはどんな助数詞がつくのだろう。

   男が一匹、女が三匹。
   男が二本、女が三穴。
   男が一体、女が三体。

  性はどうか。

  単に、一回、二回だろうか。

  詩のように
  一篇、二篇では、よくないだろうか。
  戦いのように、
  一戦、二戦では、よくないだろうか。

  男がひとつ、
  女でふたつ、
  死んだように眠っている。


 絵本作家でエッセイストである佐野洋子さんがもう二十年近く前に書いた恋愛小説二編である。
 自身、本書の「あとがき」に「すけべで嫌らしい」と書いているが、官能とはなんだろう、男と女とは何だろう、と少々愉しませてもらった。
 佐野さんがこの物語を書いた時は五〇を過ぎたばかりのことで、まだまだ「嫌らし」かったのにちがいない。そんな気分に溢れている二編である。
  
(2009/11/10 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス

プレゼント 書評こぼれ話

  星野道夫さんの新しい写真集が出版されるのを
  知った時には、本当にびっくりしました。
  星野道夫さんが亡くなったのは1996年ですから、
  もうたくさんの水が流れ、星は動いています。
  でも、こうして、私たちは新しい星野道夫さんからの贈り物、
  『カリブー 極北の旅人』を
  手にできるわけです。
  なんと幸福でしょう。
  そして、それは星野道夫さんの幸福でもあります。

    浅き川も深く渡れ

  これは星野道夫さんが小学生の卒業文集に書き残した言葉ですが、
  星野道夫という生き方を象徴しているように思えてなりません。
  星野道夫さんにとって、44年という生涯はけっして短いものではなかった。
  星野道夫さんは、その生涯をとても深く渡っていったのでは
  ないでしょうか。
  私にはそう思えてなりません。
  ぜひ、みなさんもこの写真集を手にして、
  カリブーの躍動感とアラスカの自然を満喫してください。
  そして、かれらとつながる
  私たちを感じてください。
  それが、星野道夫さんの願いだったのではないでしょうか。

カリブー 極北の旅人カリブー 極北の旅人
(2009/08/26)
星野 道夫

商品詳細を見る

sai.wingpen  空をささえるもの                矢印 bk1書評ページへ

  天にのびた おまえの大きな角は
  まるで 落ちてくる 空を 支えているようだ

  おまえの太い四本の足が
  アラスカの凍土を駆けめぐる時
  おまえはどのような衝動に
  突き動かされているのだろうか

  休養せよ

  おまえの仲間たちの長い隊列が
  緑の谷を越える時
  おまえには 何が見えているのだろうか
  先頭を行く 仲間の声か
  群れから堕ちていく 弱き友か
  生まれくる 新しい生命か

  おまえは 走る
  おまえは 闘う
  おまえは 渡る

  おまえが残した 大きな角に
  アラスカの大きな空の匂いが するようだ

 1996年に不慮の事故で逝去した写真家星野道夫があれほどの情熱を傾けながらも生前一冊の本としてまとめることができなかった幻の写真集が刊行された。被写体は「マイナス五十度までに下がる極北の自然の中で」「唯一そこに適応したシカ科の動物」、カリブーである。
 アラスカの大地を移動するカリブーの群れは毎年同じルートをたどるとはかぎらない。その出会いを求めて何日もテントに閉じ込められる星野の様子は、この写真集の巻末に収められて「カリブーの撮影日誌」で窺い知れる。やがて、群れと遭遇する歓喜。
 星野が残したカリブーとアラスカの写真の数々は、そのような歓びの贈り物であるとしかいいようがない。
  
(2009/10/19 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介する、谷川俊太郎さんの『詩の本』は、
  先日の「さいたまブッククラブ」で私が紹介した詩集です。
  8月の「さいたまブッククラブ」では、
  吉村昭さんの『炎天』という句集を紹介したのですが、
  詩集というのも、なかなか読む機会が少ないだろうと思い、
  紹介することにしました。
  谷川俊太郎さんの処女詩集は『二十億光年の孤独』(1950年)で、
  この時谷川俊太郎さんはまだ21歳の青年でした。
  やはり、詩の感性と青春期の感性は
  よく共鳴しあうものだと思います。
  きっとその時の詩篇は、21歳の青年でしか描けなかったと思います。
  その後、谷川俊太郎さんは常に先頭走者として
  走り続けてきました。

   ♪ 空をこえて ららら 星のかなた
     ・・・
     心やさしい ららら 科学の子

  という、アニメ「鉄腕アトム」の有名な主題歌は、
  谷川俊太郎さんの作詞です。
  私は谷川俊太郎さんの『うつむく青年』(1971年)という詩集に
  すごく感銘をうけたことがあります。
  ちょうど、高校生の頃でしょうか。
  そのタイトルとおりに、前を向いて歩き出すことが
  なかなかできない心境にあった頃のことです。

詩の本詩の本
(2009/09)
谷川 俊太郎

商品詳細を見る

sai.wingpen  声にだして                     矢印 bk1書評ページへ

 声にだして 詩の本を読もう
 あ の音と
 い の音は あたりまえだけど ちがう音
 ましてや あいは
 はずかしい

 手にとって 詩の本を読もう
 空気でもない この重さ
 花の香でもない この匂い
 これが 詩の一部だと 
 詩人はいう

 声にだして 詩の本を読もう
 わたしの声は
 誰かの声になって
 遠くの空から
 降ってくる

 光のように
 しずくのように

 詩人谷川俊太郎さんの、単行本未収録の詩篇にさらに書き下ろしの詩「詩の本」を加えた全52篇の詩集は、ずばり『詩の本』と書名がつけられています。谷川さんはいまさら書くまでもなく、そのなりわいが六〇年に及ぶ、この国の第一級の詩人です。それでも、こうして常に新しい言葉を紡いでこられていることの、なんと素晴らしいことでしょう。。
 今回の詩集には、茨木のり子さんや岸田今日子さん、市川昆さんといった故人へ捧げた詩篇も収められていますが、それらの詩はまさに天上へと立ちのぼる言霊のようでもあります。
 それらも含め、あなたを「夢のかなたの未知の朝へと」(「詩の本」より)いざなってくれる一冊です。
  
(2009/09/29 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
プレゼント 書評こぼれ話

  久しぶりに「書評詩」を書きました。
  今日紹介した本は、最近結構ハマっている、
  山崎ナオコーラさんの新しい本『モサ』なのですが、
  こういう本ってなかなか散文で表現がしにくいですね。
  そもそも荒井良二さんの絵が、そういう山崎ナオコーラさんの
  書きたかったところを一番表現しているように思います。
  娘たちが小さかった頃、
  やはりこんな荒井良二さんの絵のような『モサ』を
  書いていましたが、
  あれは娘たちの幼児性だったのでしょうか。
  山崎ナオコーラさんの、こんな作品を読むと、
  小さいながらに表現しようとする心の表れだったようにも
  思います。
  そして、それがうまく表現できないから、
  最後にはイライラして、ぐちゃぐちゃにしてしまうのですが。
  今回の書評詩に興味をもった人は、
  ぜひ本屋さんで実際にページを繰ってみて下さい。
  そして、この不思議な世界を体感してみて下さい。

  ◆「ブログランキング」に参加しています。
  下の「ひよこちゃんバナー」をクリックして下さい。

  

モサ (ダ・ヴィンチブックス)モサ (ダ・ヴィンチブックス)
(2009/06/17)
山崎ナオコーラ/荒井良二

商品詳細を見る


sai.wingpen  ともだち                     矢印 bk1書評ページへ

 丸い心に 四角い紙をあてがって
 自由に描いてみようじゃ ないか
 あなたのともだち を

 太いクレヨン 細い色鉛筆
 よじれた絵の具 まっすぐな絵筆
 自由に描いてみようじゃ ないか
 あなたのともだち を

 ともだちは すこし ひねくれ
 ともだちは すこし さびしい
 ともだちは すこし くやしい
 ともだちは すこし かなしい

 赤い心に 白い紙をあてがって
 自由に描いてみようじゃ ないか
 あなたのともだちのともだち を

 だって
 ともだちはひとりじゃ かわいそう

 山崎ナオコーラの、不思議な物語。荒井良二のさし絵とともに楽しめる、童話のようでもあります。
 主人公のモサは東京近郊のニカイという町に住む、14歳のニートですが、人間ではなく、カルガリ族の男の子。 粗筋はありますが、実はそんなものをおいかけても意味はありません。自由に読むといい。
 モサの正体とかモサの悩みとか、山崎ナオコーラが何を書きたかったなんて考えることはありません。読み終わったあと、ふっともう一度表紙のモサにもどって、やさしくなでてあがれたら、それでいい。あなたの心のなかにモサがいるか、たずねてみれば、それでいい。
 ちょっと天文台に行きたくなるような、一冊です。
  
(2009/07/24 投稿)

プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した『だれでも詩人になれる本』の著者は、
  ほとんどの人がご存知の、やなせたかしさん。
  言うまでもなく、『アンパンマン』の著者です。
  『アンパンマン』があまりにも有名になりすぎて、
  そのほかのやなせさんの作品が小さくなるのも
  どうかと、私は思っています。
  私の娘たちがまだほんの子供だった頃、
  やなせさんの『やさしいライオン』をよく読んだことを
  覚えています。
  今、思い出しましたが、
  上の娘が幼稚園の頃、「アンパンマン音頭」というのを
  習っていましたね。
  もう20年以上、昔のことです。
  そのほかにもやなせさんは作詞もされていて、
  あの『手のひらを太陽に』もそうです。
  これは私が小学6年の時の運動会の時、
  団体で踊って記憶があります。
  こういう記憶っていつまでも残りますね。
  今回の書評詩の書き出しは、この本の中にでてきます。
  引用しますね。

  もしも、なんにもかけなくなったら、動物園にいくか、ちいさな子供たちを
  ぼんやりと眺めなさい。なにかをかならず教えてくれます 
(35頁)

  そこから、浮かんだ書評詩です。

あなたも詩人 だれでも詩人になれる本あなたも詩人 だれでも詩人になれる本
(2009/02)
やなせ たかし

商品詳細を見る


sai.wingpen  もしも、なんにもかけなくなったら              矢印 bk1書評ページへ

  もしも、なんにもかけなくなったら、
  動物園に行こう

  檻に閉じ込められたライオンを哀れむのではなく
  堀に仕切られたサルを蔑むのでもなく
  野生はなくても
  勝手きままに 吼え
  食べ 小便してる
  動物たちを ぼんやり眺めていよう

  もしも、なんにもかけなくなったら、
  小学校に行こう

  校門の固く閉ざされた門の前で
  うろうろしてたら 怪しまれるから
  校庭を見下ろす丘に登ろう
  規則正しい子供たちの行列に
  あくびがでても
  きっと誰かが いまに 駆けだすだろう

  もしも、なんにもかけなくなったら、
  詩集を読もう

  すでにかかれた たくさんのことに
  げっぷがでたら
  それが
  わたしの 詩
  自分だけの 詩

 本書は今年(2009年)九十歳になるやなせたかしさんが、三十年以上前に書かれた『詩とメルヘンの世界 もしも良い詩がかきたいなら』(1977年)を再編改訂したものです。
 氏の『アンパンマン』が国民的人気を経た今も、基本的には「詩に対する考え方は変わっていない」とやなせさんは「あとがき」に書かれています。
 やなせさんのいう詩とは「こころのありよう」です。
 そうだとしたら、書名のように「だれでも詩人になれる」かもしれません。ただ自分をごまかさなければ。
  
(2009/05/07 投稿)