11/23/2022 俳句いまむかし みたび(坪内 稔典) - シリーズも三冊目となりました

昔の新嘗祭が起源といいますから、
祝日としては年期がはいっています。
もちろん、冬の季語にもなっていますが、
言葉としては長いので
作句をする時は、「句またがり」となる季語です。
「旅に出て忘れ勤労感謝の日」(鷹羽狩行)のように。
これなどは、
坪内稔典さんの『俳句いまむかし』でいえば、
「むかし」に分類されるかも。
では、「いま」ならどんな句になるのか。
『俳句いまむかし みたび』の中に見つけました。
「バーモンドカレー勤労感謝の日」(塩見恵介)
随分、ちがうものです。

『俳句いまむかし』シリーズの3冊目になります。
初出は毎日新聞に連載されている「季語刻々」で、
2010年5月からのものから400回分を選んだもの。
同じ季語で「いま」の句と「むかし」の句を並べ、
それぞれに稔典さんの短いコラムがつきます。
選句も味わいがありますが、
稔典さんのコラムがよくて、これが楽しい。
ちょうどこの時期、世の中コロナ禍で、そんな中、
稔典さんはこんなことを書いています・
「コロナが落ち着いたらしたい、ということがどんどんたまっている。(略)
行きたい、会いたい、見たい、食べたい、飲みたい、
そして、存分にしゃべりたい、議論をしたい。」


応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


11/16/2022 わたしの金子みすゞ(ちば てつや) - すこし昔の、日本人が本当に日本人だった頃の世界

それは間違いではない。
あるいは、「ハリスの旋風」にみられるワンパクな少年を主人公にした系譜をたどることもできるだろう。
しかし、忘れてはならないのは、そんなちばさんが少女漫画でメジャーデビューしていることだ。
1958年の「ママのバイオリン」で雑誌連載を始め、
その後「ユキの太陽」「みそっかす」などの少女漫画の発表がつづく。
2002年に刊行され、2022年9月にちくま文庫に収められた
ちばてつやさんの『わたしの金子みすゞ』の文庫解説を書いた里中満智子さんは、そんなちばさんのことを
「控えめで口数の少なそうな少女の佇まい、少女漫画でメジャーデビューし、
昭和三〇年代の少女の読者に「男子に媚びないヒロイン」を示してくれた」と
深く敬愛している。

イラストと短い文章をつけて書かれたのが、本書である。
金子みすゞの詩の解説というより、
その詩をちばさん自身がどう感じ、それがイラストにどのように反映していったかを
読者は楽しめばいい。
そして、そのイラストにたぶんちばさんが根っこで持ち続けている詩情を味わえるはずだ。
ちばさんは金子みすゞの詩の世界を
「すこし昔の、日本人が本当に日本人だった頃の、懐かしいみすゞさんの世界」と
表現しているが、
同時にそれはちばてつやさんの世界でもある。

応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


08/25/2022 中島みゆき詩集(中島 みゆき) - 「にほんの詩集」の一冊として

私が二十歳の頃だ。
同じ年に「時代」が第6回世界歌謡祭でグランプリを受賞。
「時代」は今に歌い継がれる「日本のうた」になる。
当時大学生だった私は、中島みゆきの歌がFMで流れるたびにカセットで録音したものだ。
その頃だった、友人から「暗い歌だな」と言われたのは。
中島みゆきよりもっと暗い、山崎ハコにもハマっていた私は、
決して中島みゆきを暗いとは思っていなかったが。

私が過ごしてきた時間とともに歩んでくれたように、中島みゆきの歌はあった。
その時々で、同じ涙を流し、そっと目をふせ、時に励まされ、時に怒りにふるえた。
その力は、中島みゆきが書いた詩の力といっていい。
決して研ぎ澄まされた言葉ではなく、だから心を寄せあえる。
中島みゆきの詩の力だ。
「こんな言葉を 今どきわかる人がいるかしら
言葉は変わる 暮らしは変わる」 (「終り初物」)

メロディが詩からわきあがる瞬間を、この『中島みゆき詩集』を読みながら、
何度感じただろう。
「まわるまわる時代はまわる
別れと出逢いをくり返し」 (「時代」)
この詩からメロディを消すことは、
私にはできなかった。
もしかしたら、中島みゆきの詩を純粋に詩として読む世代が生まれるかもしれないが、
私はメロディがわきあがる詩があっていいと思う。

同じ北海道出身の直木賞作家桜木紫乃が書いている。

応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


06/09/2022 基礎からわかるはじめての短歌(監修 高田ほのか):書評「まずは始めてみること」

いつからだったか
憶えていないが
俳句を詠みだしたのは随分昔になります。
ところが、
短歌にはほとんど興味が向かなくて
わずか14音の違いなのに
手も足もでないような感覚でした。
最近永田和宏さんの本などを読んだり
新聞の投稿欄などを見ると
短歌はもしかしたら
とっても自由に表現できるのではないかと
思うようになりました。
そこで手にしたのが
歌人の高田ほのかさん監修の
『基礎からわかるはじめての短歌』。
新しいことへのチャレンジです。
じゃあ、読もう。

本のタイトルでわかるように、この本は短歌を詠んでみたいと思っている人のための「基礎からわかる」入門書だ。
そもそも日本の詩歌には短詩と呼ばれる文学があって、短歌・俳句・川柳がその主なもの。
入門書であるこの本でも、この3つの短詩の違いが簡単にまとめられている。
歴史的に古いのは短歌で、昔は和歌と呼ばれていた文芸だ。
3つの短詩のもっとも大きな違いは、その音数。俳句と川柳が五・七・五に対し、短歌は五・七・五・七・七と14音多い。
この14音多いことが、短歌をより主観的にしているのではないだろうか。
入門書であるから、まず「本書の使いかた」を読んでおくことが大事。
テーマごとに「例歌」があって「解説」が書かれている。
作者の名前のない「例歌」もあるが、一方で与謝野晶子や北原白秋といった有名歌人の歌も取り上げられたりする。
その「使いかた」がわかったら、ページを進めてみよう。
最初の章が「短歌の歴史とルール」。このあたりはしっかり学習したいところ。
次に「短歌をつくるコツ」があって、ここでは「取り合わせ」や「オノマトペ」、「比喩」といったことが学べるようになっている。
そして、いよいよ「短歌の作成」になる。特に「短歌づくりの手順」など、初心者でもなんとか短歌らしい歌が詠めそうな気がしてくる。
最後が「短歌が楽しくなる習慣づくり」。
この本は、そんな習慣づくりの第一歩といっていい。
(2022/06/09 投稿)

応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


レビュープラス
12/17/2021 俳句いまむかし ふたたび(坪内 稔典):書評「美しい日本語ふたたび」

今日も
昨日に続いて俳句の本の
紹介です。
坪内稔典さんの
『俳句いまむかし ふたたび』。
坪内稔典さんは1944年生まれで
本書の中でも「後期高齢者」となったと
書かれています。
午前3時には目を覚ますともあって
もしかしたこの本は
シニアの人向けの
生活術としても読めるのではと
思えたりもして。
いろんな読み方ができるのも
本を読む楽しみのひとつです。
じゃあ、読もう。

毎日新聞に連載されている「季語刻々」から400回分を選んで編まれたこの本は、タイトルでもわかるように2020年8月に出た『俳句いまむかし』の続編である。
わずか1年で続編が編まれるのは、新聞連載が2010年からあってすでにかなりの記事の蓄積があるからだろう。
もっともこの本の中には「マスク」という冬の季語に、コロナについての記述もあったりする。
ネンテンさん曰く、「マスクは冬の季語だったが、コロナの日々の今年、マスクは季節を問わない日常品になっている」という風に。
続編となったこの本でも先の本の編集、「一つの季語について、今と昔の句を挙げ、感想を書くというスタイル」を踏襲している。
ネンテンさんは本書の「まえがき」で「季語は俳句を詠むことで、その都度に新しく作られている」と書いているし、短い感想の中でも、「チーズフォンデュやもつ鍋を季語にしたい」と書いていたりする。
ちなみにそう書いた回は会津八一の「闇汁の納豆にまじる柘榴かな」を引用し、「闇汁は正岡子規や高浜虚子が詠んでできた季語」と説明している。
「いま」と「むかし」の俳句を比べると、「いま」の俳句にカタカナ文字が多いことに気づく。くぼえみさんの「ユニクロの若草色へ日脚伸ぶ」という句には一瞬ハッとさせられた。おそらく私たちの日常は思った以上にカタカナであふれているだろう。
そんなことも気づかさせられる一冊である。
(2021/12/17 投稿)

応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


レビュープラス