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 私が映画にはまったのは高校生の頃だから
 ちょうど70年代になったあたりだろうか。
 この時期に映画に夢中になって運がよかったのといえるのは
 日本でチャンプリンの映画がまとめてリバイバル上映されたことだろう。
 1972年秋から1975年にかけてリバイバル上映された企画は
 「ビバ!チャンプリン」と題されて、
 その第1回めが「モダン・タイムズ」だった。
 その当時購読していた映画雑誌「キネマ旬報」では映画シナリオも掲載されていて
 特集されていたチャンプリンの映画のシナリオも載っていたし、
 この時映画館でチャップリン映画を観ることもできた。
 それから半世紀以上経つが、
 今ではもちろんDVDなどで鑑賞はできるが、
 やはりあの時の熱気はいい思い出だ。

  

 そのチャンプリン映画が今また注目を集めているのは
 ロシアによるウクライナ侵攻で
 チャップリンの代表作のひとつ「独裁者」が反戦をテーマにした作品だからだ。
 だから、大野裕之さん(日本チャップリン協会会長というすごい肩書も持っている)の
 『ビジネスと人生に効く 教養としてのチャップリン』を読むと
 映画人チャップリンがいかにすごい人であったかがよくわかる。
 それはヒトラーと対峙した「独裁者」だけでなく
 「モダン・タイムズ」「街の灯」「黄金狂時代」といった作品を観れば
 歴然だろう。

 この本はチャップリン映画が大好きという人だけでなく
 まだチャップリン映画を観たことのない人でも、
 チャップリンの生涯や作品講座、また現代に通じるテーマなど
 興味深い論考になっている。
 「論考」と書いたが、大野さんの文章は難しくはない。
 どちらかといえば、とても軽妙。それでも深いのは
 チャップリンの映画によく似ている。

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 村上春樹さんの6年ぶりとなる長編小説が4月13日に発売となる。
 最初発売日の告知だけで本のタイトルも出なかったが、3月にはいって、
 『街とその不確かな壁』というタイトルも公表された。
 順に気分を煽っていくやり方がいいかどうかはともかく、
 村上さんの場合、そうやってこれまでにも世界観を醸し出してきた。
 だからというわけではないが、
 『村上春樹 映画の旅』という2022年10月に出た本を読んでみた。

  

 実はこの本は、
 村上さんの母校である早稲田大学演劇博物館で開催された
 2022年度秋季企画展「村上春樹 映画の旅」の図録になる。
 ただ単に図録というよりは、
 数編の「論考」や村上作品を映画化したイ・チャンドン監督や
 濱口竜介監督のインタビューも掲載されているから
 村上春樹論の一冊としても十分価値がある。

 そもそも十代から二十代前半にかけての村上さんは
 映画に夢中になっていて、
 早稲田大学文学部に入学してシナリオ作家になりたかったそうだ。
 それで大学にある演劇博物館に通って
 映画のシナリオを読みまくったというから、
 映画との関係は切り離せられない。
 この図録を読めば、
 村上さんの作品に映画のタイトルや一場面の切りとったような文章が
 随所にあることがわかる。
 巻末にある「村上春樹著作登場映画リスト」を見ると、
 その数に圧倒される。
 「村上春樹作品年譜」とともに資料として
 手元に置いておきたくなる。

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 現在放送中(2022年度後期)のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)舞いあがれ!」も
 残りわずかとなってきた。
 この作品が朝ドラ107作めで、作品の出来もよく毎日楽しく見ている。
 何しろ前作「ちむどんどん」の出来がひどく、
 よくあれで視聴率が落ちないものと妙な感心もしていた。
 一方、ネットの世界では「#ちむどんどん反省会」なるものが登場し、
 あの場面はおかしい、その人物に問題ありとかなり盛り上がっていたようだ。
 その点、今回の「舞いあがれ!」にそんな批判は少ないようだが、
 だからと言って言って視聴率がすごくあがったかというとそうでもない。
 ドラマの人気の不思議なところだ。

  

 フリーライターの木俣冬さんの『ネットと朝ドラ』は、
 木俣さんがネットの世界でその時々の朝ドラを批評してきた記録本で、
 この本で紹介されているのは、
 朝ドラ第96作めの「ひよっこ」(2017年前期)から、
 「わろてんか」「半分、青い。」「まんぷく」「なつぞら」「スカーレット」
 「エール」「おちょやん」「おかえりモネ」
 そして第105作めとなる「カムカムエヴリバディ」(2021年後期)までの
 10作品の批評が収められている。
 実際これらの作品はすべて見てきたが、
 さすがに場面の説明があってもさすがに覚えていないことも多く、
 実は朝ドラは半年にわたる長いドラマだが、
 いくら主要な場面であってもその全部を覚えていることはできない。
 そういう点では、朝ドラとネットとは
 とても相性がいいといえる。

 永遠に残るドラマではなく、その時々に観る者を感動させる
 それが朝ドラといえる。
 そのようなドラマを書き留めるとしたら、
 新聞でも雑誌でもなく、
 ネットがやはり有効のように感じる。

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 今日も向田邦子さんの本。
 ただし、この『家業とちゃぶ台』は
 2022年7月に刊行されたもので、
 向田さんが生前発表したテレビドラマの脚本3本と
 その幕間にエッセイがはめこまれた
 向田ファンにとっては
 とってもうれしい一冊だ。

   

 書名にある「家業」は「広辞苑」によれば
 「① 一家の生計のための職業。②家代々の職業」とある。
 収録されているドラマは、
 「はーい・ただいま」(1972年)は旅館だし、
 「時間ですよ2」(1971年)は銭湯だし、
 「寺内貫太郎一家2」(1975年)は石材店と、
 こう並べるとしっかりとした「家業」を舞台にしたものだといえる。
 面白い
 向田さんの父親は保険会社の社員で
 典型的なサラリーマン一家だったはずだが、
 どうして向田さんは「家業」にこだわったのだろう。

 もうひとつの「ちゃぶ台」は昭和の生活の中で欠かせない家具だが、
 向田さんにとって「家業」も「ちゃぶ台」も
 懐かしい風物としてのものではなく、
 私たちが失ってはいけないものの代名詞のようなものだったのではないだろうか。
 それはテレビドラマの脚本の中にも
 幾重にも染みこませている。

 エッセイには、捨てられる台本を嘆く「胃袋」や
 少し長めの「せりふ」という作品が印象に残った。
 特に「せりふ」は脚本家をめざす人にはぜひ読んでもらいたい、
 向田邦子流脚本の心得になっている。

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 近年、映画を鑑賞できる媒体が増えて、
 映画ファンにとってはうれしい。
 映画館はいうまでもなく、
 レンタルビデオ店、CSの専門チャンネル、
 そしてインターネット配信。
 おかげで思いもかけない昔の映画を観る機会も増えた。

  

 熊本を中心に活動している映画解説者上野祥浩氏による
 『旅と女と殺人と 清張映画への招待』は、
 松本清張原作の映画36本を実に巧みに紹介した映画ガイドだ。
 松本清張の原作の映画化の最初は
 1957年の「」になる。
 その次の作品は今でも評価の高い「張込み」(1958年)で、
 さすがのこういう作品になるとレンタル店でも常備されている。
 ところが、1950年代の作品は白黒映画や地味なものも多いせいか、
 なかなか観る機会がなかったが、
 最近ネット配信で思いがけなく観る機会に恵まれた。
 そうなれば、「影の車」「砂の器」など名作ぞろいの
 1970年代の松竹映画を観たくもなって、作品をおいかけるようにもなる。

 そういう追いかけが、
 この本にまでたどり着かせることになる。
 そして、この本がとてもよく出来ていて、面白いのだ。
 よく出来ている側面は、
 映画側の視点で書かれている点だ。
 監督だけでなく出演した俳優さんたちの
 ちょっとしたプロフィールもまとめられていて
 映画ファンとしていうことない。
 もちろん、松本清張の側からも
 原作との違いなど興味をひく記述があって
 楽しめる一冊になっている。

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