プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  岡野雄さんの『ペコロスの母の忘れもの』を
  紹介します。
  この本は基本、漫画ですが、
  中に5編のエッセイも収められています。
  その中のひとつが「母ちやんは兄ちゃんばひいきする」は
  兄と弟の
  それぞれの鬱屈が描かれていて
  読ませます。
  兄は兄で
  母の横で楽し気に話する弟をうらやみ、
  弟は弟で
  エッセイのタイトルのような思いで
  ずっと過ごしてきた。
  兄と弟も
  悩ましい関係です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  人に歴史あり                   

 岡野雄一さんの「ペコロス」シリーズと呼びたくなるほど、話題となった『ペコロスの母に会いにいく』からもう何冊も「ペコロス」と名のつく本が刊行されている。
 最初は母の介護の様子をコミカルに、時に切なく描いた作品であったが、作品刊行のあと、平成26年にその母が91歳で亡くなってからは、母の思い出だけでなく、若い時には酒乱で母に包丁まで向けた父が年老いて穏やかになっていく様や弟との関係など、岡野さんの生活そのものを描いてきた。
 この作品集に収められているエッセイ「扉を叩くオバアサン」の最後に、岡野さんは「くり返し書きたいのです、いまだに母の、いや両親の、掌の上に居る、と」と書いていますが、「掌の上」というのは岡野さんの謙遜で、岡野さんがしっかりとつないだ両親の手であり、家族の手であり、親戚や友人たちの手、つまりは大きなつながりだと思います。

 さらにいえば、つながるということは歴史でもあります。
 本作の中で長崎に投下された原爆で幼い妹を亡くした父の悲しみも描かれていたり、子供の頃に病気で命をおとした母の幼なじみのことも描かれていたり、私たちは今だけであるのではなく、生まれた時からつながる時間もまた、多くの作品で描かれています。
 すでに、母の介護漫画ではなく、人としてのありよう、過去現在未来とつながる時間軸までもを描く、壮大な作品に仕上がっています。

 それにしても、母みつえさんのなんと優しい笑顔はどの作品でも変わることはありません。
  
(2018/03/13 投稿)

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  今日はバレンタインデー

    いつ渡そバレンタインのチョコレート    田畑 美穂女

  バレンタインという言葉だけで
  6文字ありますから
  俳句を詠むのもなかなか難しいですが
  上の句、
  見事にその情景を描いています。
  女性は
  この気持ちよくわかるのではないでしょうか。
  そんな恋の日に
  ぴったりの本を紹介しましょう。
  益田ミリさんの『すーちゃんの恋』。
  再録書評ですが
  甘い恋のお話です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  すーちゃんってこんなひと                   

  益田ミリさんの「すーちゃん」シリーズの4冊目。今回は主人公すーちゃんの切ない恋が描かれます。
 すーちゃんを知らない人にプチ知識。
 すーちゃんの本名は、森本好子。そういえば、亡くなった元アイドルグループキャンディーズのメンバーのすーちゃんは田中好子さんでしたね。
 好子さんって、全国的に「すーちゃん」と呼ばれてるんでしょうか。余談ですが。
 年令は37歳。「エーッ、すーちゃんってもうそんな年なんだ」と思った人は、長年の「すーちゃん」ファンですね、きっと。ご自身もそれだけ年令を重ねていることをうっかり忘れてることってよくありますよね。これも、余談ですが。
 出身は鹿児島。鹿児島の女性の気質は、しっかり者らしい。
 もともと男尊女卑の根強い国だったらしくて、女性は控え目で真面目。もっとも根性は座っているようです。すーちゃんを見てると、結構メゲたりしますが、最後は自分をしっかり見ています。そのあたりは鹿児島の女性らしいのですかね。

 持っている資格は、調理師免許。
 この巻では以前働いていてお店を辞めて、保育園の給食調理師としてがんばっています。
 意外なのは、そろばん4級。普通だったら、3級まで取りますよね。どうして4級でやめたのかわからないけど、すーちゃんらしいといえば、調理師より、そろばんの方かも。
 趣味は料理。保育園の給食調理師になったすーちゃんは子どもたちに楽しんで食べてもらおうと、家に帰っても勉強熱心。趣味を生かしています。
 友人はそんなに多くはない。親しいのは、さわ子さんとまい子さん。
 さわ子さんは41歳で未婚。すーちゃんが結婚で悩んでいる以上に、さわ子さんの方がもっと深刻。「子供を産まない人生なら、あたしの生理ってなんのためにあったんだろ」なんて、ため息をつく。男性読者にとっては、ドキッとするようなせりふ。
 「すーちゃん」シリーズは女性に人気だけど、男性諸君、さわ子さんのこの名言忘れてはなりませぬぞ。
 まい子さんは一児の母。だけど、これでいいのかなぁ、と悩みはつきない。

 さて、問題の一項目。
 すーちゃんは独身。好きな人? います、います。
 以前働いていたお店の近くにあった本屋さんの店員の土田君。33歳ですから、すーちゃんより年下。しかも、恋人あり。あれれ。すーちゃんつらいよね。
 というわけで、プチ知識ですまなくなりました。
 すーちゃんの切ない恋は、本書で、じっくり。
  
(2013/01/26 投稿)

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  今日は
  益田ミリさんの
  『オトーさんという男』を
  紹介しますが、
  読みながらつい笑ってしまいました。
  文章もいいですが
  なんといっても
  益田ミリさんの漫画が
  とってもいい。
  よく見ると
  益田ミリさんの絵は
  その名前の通り
  ミリ単位の線とか影とかで
  表情を変えるのですから
  すごいものです。

  じゃあ、読もう。

 

sai.wingpen  何をどう書いてもオトーさん愛全開!                   

 コミック・エッセイのトップランナー(ワァ、カタカナばかり!)の益田ミリが自身のオトーさんの姿をコミカルに描いた本作品を読んでいると、これは益田ミリさんのオトーさんのことではなく、読者であるワタシのことではないかと勘違いしてしまいそうになる。
 大阪出身の益田さんだから、オトーさんも大阪人ということになるから、大阪出身のワタシに似ていておかしくもないが、もしかしてワタシの娘たちも益田さんのような視点で観察しているのではないかと、思わず顔をあげてしまった。

 では、どのあたりが似ているか具体的に示そう。
 まず、「定年後、父は家の近所で畑を借りた」とある。ワタシもそうだ。
 わざわざ「父の野菜作り」という項目があって、そこに野菜作りに勤しむオトーさんの愛すべき姿が描かれている。
 その項目の最後の文章、「借りた畑で野菜を育てている父は、とても生き生きしている」。
 娘たちよ、ワタシも「生き生きしている」か。

 次の似ている点は「よそいきの顔」にある。
 その書き出しがすごい。「恥ずかしかった」なのだから。
 つまり、オトーさんと出かけるのが恥ずかしかったと益田さんは綴る。
 何故か。「道を歩いているときも平気でオナラをするし、お店でご飯を食べているときも、「これ、あんまりウマないな~」などと、発言してしまう」とある。
 ワタシそのままだ。
 そういえば、外出時に娘たちの顔がひきつるのが何度もあった。アレはコレか。

 まあ、そうはいっても、この作品、益田ミリさんのオトーさん愛全開の一冊だから、ワタシも大丈夫かもと思っているが。
 はて。
 さて。
  
(2018/01/27 投稿)

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  昨日「赤塚不二夫」展での
  編集者武居俊樹さんと赤塚りえ子さんの
  トークショーのことを
  書きましたが、
  その中で赤塚不二夫さんが生前しきりに
  武居俊樹さんがいなかったら
  あれらのギャクマンガができなかったと
  語っていたことも
  話されていました。
  武居俊樹さんにとって
  赤塚不二夫という漫画家に出合ったことは
  自身の人生さえも
  変えたのだと思います。
  それぐらい
  編集者と作者の関係は密なもの。
  今日紹介する
  川崎昌平さんの『重版未定2』でも
  それはよくわかります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  編集者という仕合せな仕事                   

 弱小出版社の編集部員の仕事をコミカルに描いて、見事「重版出来」まで版を重ねた前作に続く、これがその続編。
 主人公は前作と同じ弱小出版社・漂流社の編集部員。
 いきなり「転職」というタイトル章で始まるこの巻だが、彼だって「売れる本も編集したいと思っています」(というのが、この巻のサブタイトル)。
 売れ残った本を「断裁」する現場に立ち会い、これではいけないと一念発起した主人公、「売れる本より残る本をつくります!」と新しい企画に挑戦することに。

 企画を進める過程で、さりげなく出版業界の業務や「取材」の極意を入れ込むあたり、お仕事漫画らしい描き方になっている。
 中でも主人公が見つけてきたライターに言うセリフが決まっている。
 曰く、「編集者が信じなかったら誰が著者を信じるんですか」。
 作品を生み出すのはライターで、編集者はあくまでも黒子なんだろうが、ライターが作品を生み出す力を与える重要な役割も持っているのは、しばしば耳にすること。
 もちろん、だからといってライターの存在意義まで否定することではない。

 ところが、この物語ではとうとうライターは執筆に頓挫してしまう。
 さあ、そうなると出版はどうなるのか。
 ここから主人公がとったような行為が本当に行われているのかわからないが、いずれにしても編集者の仕事は大変だとわかる。
 ただいえることは、そんなきつい仕事以上にいい本が生まれた時の満足感はほかでは味わえないものなのだろうということ。
 仕合せな仕事なんだろうな、きっと。
  
(2017/10/04 投稿)

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  今から思えば
  どうも私は働くということでは
  自覚が足りなかったような気がする。
  本が好きだからとか
  書くことが好きだからとか
  だから漠然と出版関係の仕事につきたいなと
  思ったりしていたのですが
  それは単なる憧れで
  本当ならどんな業界なのか
  どんな仕事なのかを
  研究しないといけなかったんでしょうね。
  就職とは関係ない年齢になって
  ようやくそんなことに
  気がつくなんて。
  今日紹介する
  川崎昌平さんの『重版未定』が
  昔に出ていたら
  よかったのに。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  編集者という仕事は大変だ                   

 この本のジャンルはといえば、やはり漫画になるのだろう。
 では、よく似たタイトルの松田奈緒子さんの『重版出来!』と同じお仕事漫画かというと、確かに業界漫画ではあるが、『重版出来!』が大手の出版社から出ている漫画雑誌の人気連載なのに対して、こちらは弱小の出版社で編集の仕事をしている著者は好きが高じて同人誌として作成したものだ。
 それがきっかけとなって、こうして河出書房新社という大手出版社から刊行された。
 しかし、描かれている内容は創業者一族の資産にもたれかかってなんとか赤字経営が続けられているような弱小出版社の、そしてきっとそのような出版社の方が多いのだろうが、編集者の身につまされるお仕事である。
 編集者という仕事は大変だ。

 出版社の数はどれくらいあるかというと、この本によれば2015年時点で3489社だという。こんなにあるのと驚くが、これでも1992年からすれば1000社近く減っているのだそうだ。
 出版不況といわれる昨今、それでもこんなに出版社があるとすれば、どうしても玉石混交にならざるをえない。
 ではこの本はどうかといえば、出版業界に就職したいと思っている人は一度は目を通しておく方がいい。
 そのハードな仕事ぶりに恐れをなすかもしれないが、著者はけっして残酷物語を描いたのではない。
 そういう過酷な仕事のなかにも出版業界で働くことの矜持を描きたかったのではないだろうか。

 きっとそんなことありませんと著者の漫画なら言いそうだが。
  
(2017/09/08 投稿)

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