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 またあの日あの時がめぐってきました。
 2011年3月11日14時46分。
 東日本大震災が起こりました。
 あれから9年。
 もしかしたら、
 今年の春があれ以降もっともつらい春に
 なっているかもしれません。
 新型コロナウイルスの影響で
 追悼式も中止になりました。

 あの日以降
 あの年の春は悲しくつらいものになりました。
 卒業式もできなかったところもあります。
 被災地だけでなく
 多くの場所でたくさんのイベントが中止になりました。
 そして、今年もまた。
 いつもなら
 希望にあふれているはずの春なのに
 どうしてとつい思ってしまう。
 それで
 池澤夏樹さんが2011年9月に出した
 『春を恨んだりはしない』を
 読み返しました。

  

  春を恨んだりはしない

 これはヴィスワヴァ・シンボルスカという人の
 「眺めとの別れ」という詩に出てくる一節です。
 でも、
 あの日の、そして今年の
 私たちの心のつぶやきのようでもあります。
 池澤夏樹さんはこの詩の紹介のあと
 こんなことを綴っています。

   我々は春を恨みはしなかったけれども、
   何か大事なものの欠けた空疎な春だった。
   桜を見る視線がどこかうつろだった。

 池澤夏樹さんのこの本は
 東日本大震災をめぐって書かれた
 いくつかの文章でできています。
 「あの日、あの後の日々」と題された文章では
 あの日の池澤夏樹さんがどこで何を体験したかが
 綴られています。
 誰もがあの日の記憶を持っていることでしょう。
 追悼式はないけれど
 今こんな春だからこそ
 もう一度あの日と、あの後の日々を
 思い出してみたいと思います。

 中に「政治に何ができるか」という章が
 あります。
 その冒頭の文章。

   政府の動きについてさまざまな不満が表明されてきた。
   緊急の場合だからすべきことは多いのに
   実際には何もできていない。
   打つ手がどれも見当違いで、国民の生命と財産を危険にさらし、
   不安をあおっている。

 これは東日本大震災についての記述です。
 でも、これを今の新型コロナウイルスのこととして読んでも
 まったく同じ印象を受けないでしょうか。

 春を恨んだりはしない。
 どこから発生したかわからない病原菌を
 恨むこともできない。
 それでも
 つらい。
 悲しい。

 東日本大震災から9年。
 私たちは再び大きな瀬戸際にいるように
 思います。

 負けるな、わたしたち。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今1本の映画が封切られています。
  新型コロナウイルスの影響で
  映画館に行くのがためらわれて
  観ずにいます。
  映画のタイトルは「Fukushima50 フクシマフィフティ」です。
  原作は門田隆将さんの『死の淵を見た男』。
  3月4日の朝日新聞
  作家の池澤夏樹さんが連載エッセイ「終わりと始まり」で
  この映画を観た感想を
  載せています。
  「役者がうまいこともあるけれど、
  実際こうだったのだろうと思わせるリアリティーがある」としながらも
  2号炉が決定的に壊れなかった
  その説明がなかったと書いています。
  「偶然のおかげで」「この国そのものがかろうじて生還したのだ
  「我々はそれを忘却している
  安心してこの映画を観られるのは
  いつになるのか。
  今日は2018年に書いたものを
  再録書評で。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの日あの場所で戦い続けた人たちの物語                   

 泣いてはいけない、そう思っていた。
 この作品、2011年3月11日に起こった東日本大震災をきっかけにして起こった福島第一原子力発電所の事故とその危機迫る現場で何が起こっていたかを描いたノンフィクション作品は、原子力エネルギー政策に走ったこの国の政治と多くのことを利益優先で怠った東京電力という大企業が為した結果を冷静に読まないといけないと思いつつも、全22章の最後の3つの章、「家族」「七千羽の折鶴」「運命を背負った男」に至ると、もう涙が止まらなかった。
 人災とまでいわれる原発事故。あれから7年の歳月が過ぎても故郷に帰れない多くの避難者がいる現実。あれだけの事故があってもまだ原子力はこの国の重要なエネルギー源であり、経済の資源であり続けている。
 そういう批判の描き方はさまざまあるだろうが、この作品で描かれているのは原発事故の「悲劇の実態」だけではない。
 その「悲劇」に命をかけて挑んだ人たちの物語がここにある。

 あの日刻々で変化していく福島第一原発はまるで悪魔の生き物であった。
 それに挑んだ吉田昌郎氏(彼はこの時所長という立場で現場を指導。しかし、この本が刊行されたあと、2013年7月、58歳で死去)をはじめとした東電の社員、協力会社の人たち、自衛隊の隊員たち、彼らは死の恐怖に直面しながらも、必死になって最大規模の事故だけは防ごうとした。
 その思いを著者の門田氏は「何か」と書いた。
 「それが使命感なのか、責任感なのか、それとも、家族と故郷を守ろうとする強い思いなのか」、それでも表現できない「何か」。
その「何か」は福島第一原発だけではない。
 東日本大震災に直面した多くの日本人の心に宿った、「何か」だったと思う。
  
(2018/03/10 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  いい作品に出合えると
  本が好きでよかったと
  実感できる。
  この本もそんな一冊だ。
  新聞記者であれば冷静に
  報道することに徹すべきかもしれないが
  この本、『南三陸日記』の著者
  三浦英之さんは
  しばしば涙を流す。
  泣くことで人間であり続ける、
  それは「報道」とは違うかもしれないが
  より「人間」らしくある。
  いい作品に出合えると
  自分も少し「人間」らしくなる。
  とってもいい本です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  私たちが向き合わないといけないこと                   

 文庫本のカバーのそでに記載された著者三浦英之氏の略歴には、2015年に受賞した第13回開高健ノンフィクション賞をはじめとして次々とノンフィクションの各賞を受賞していることが記されている。
 三浦氏は専業としてのノンフィクション作家ではない。
 今でも朝日新聞の記者である。
 そんな三浦氏がノンフィクション作家として事実に向き合う原点のような作品が、もしかしたらこの作品かもしれない。

 「南三陸」という地名で、しかも単行本が刊行されたのが2012年3月という日付で、このルポタージュが2011年3月11日に起こった東日本大震災に関するものだということがわかるだろう。
 三浦氏は地震のあとの5月、「がれきに埋もれた宮城県南三陸町」に新聞記者として赴任することになる。
 その赴任先で記者である三浦氏が「感じた日常の変化や人々の心の揺れ」などをコラムの形で綴ったのが、この作品である。

 そのなかで度々綴られているのが震災の6日前に結婚式をあげたものの震災で夫を亡くした女性の姿だ。
 彼女はしかも妊娠していて、2011年7月に女の子を出産する。
 単行本が出てから文庫本になるまで7年、この文庫本の表紙に写るかわいい女の子こそ、その時に誕生した子供なのだ。

 その女の子がじっと見つめるのはなんだろう。
 三浦氏は被災後の「南三陸」でこの女の子のような眼とどれだけ向き合ったことだろう。
 このコラムにはそんな視線がどのページにもある。
 その視線があるからこそ、三浦氏はノンフィクション作家として書き続けてきたのではないか。
 そんなことを思った。
  
(2019/05/10 投稿)

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  東日本大震災から8年。

  2011年3月11日午後2時46分。
  あれから8年、その歳月を
  長いと感じるか
  短いと思うか
  それは人それぞれ。
  平成がまもなく終わろうとする中、
  決してあの日のことを
  歴史の向こう側においやってはいけない。
  今日紹介する
  『生きる』という本は
  東日本大震災から1年が経って刊行された写真集で、
  この本自体もう7年前のものです。
  けれど、ここに収められた写真に
  涙する人がいるかぎり、
  生きるとつけられた意味は大きいと思います。
  私たちは
  これからも「あの日」とともに
  生き続けるのです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの日のことを忘れない                   

 名取市閖上小学校の体育館いっぱいに吊り下げられた写真の数々。
 それらの写真は被災地の瓦礫の下から自衛隊や消防隊の人たち、あるいはボランティアの人たちが見つけたきたもの。波や泥をかぶったそれらの写真を丁寧に洗い、こうして乾かしている風景だ。
 その中を一人の幼い少女が佇んでいる。
 その一瞬をとどめたこの写真は、2011年5月11日に撮影されたものだ。
 東日本大震災が起こってから2ヶ月めの、光景だ。

 この写真集は日本写真家協会が「東日本大震災から一年」になることを契機に編まれたもので、2012年2月に刊行されている。
 この写真集に収められた、震災当日の津波のものも、「ふるさと」というタイトルの章に収められた昭和30年代の東北各地の写真も、あるいは震災のあと懸命に生きる被災者の皆さんのそれも、写真が持っている「記録性」という点では強いインパクトを感じる。
 しかも、それだけではなく、これらの写真には写真家たちが写せなかった悲しみや悔しさまでもが写り込んでいるような気がする。
 それは写真家が写したものだからということではない。
 冒頭に書いた、体育館いっぱいに吊り下げられた写真は、それを撮っただろう人たちの思いが熱気のようにして立ち上がっている。

 巻頭に「解説」として作家の伊集院静さんの文章が収められている。
 そのタイトルもまた「生きる」。
 そこにこう書かれている。
 「やがて遠い日の記憶に、あの日がなろうとしても、あの日を身体で、こころで感じた私たちは語り継いでいかなくてはならない」と。
 あの日を忘れないことも、ささやかだけど大切な、支援のような気がする。
  
(2019/03/11 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  あれから7年。
  2011年3月11日に起こった
  東日本大震災から7年という月日が
  流れました。
  あの日から
  多くの東日本大震災関連本を読んできましたが
  この池澤夏樹さんの
  『春を恨んだりはしない』は
  再読しようとずっと思ってきた一冊です。
  今回は中公文庫となった作品で
  再読をしました。
  その中で
  池澤夏樹さんはこんなことを書いています。

    亡くなった人たちを中心に据えて考えれば、
    我々がたまたま生き残った者でしかないことは明らかだ。

  生き残った者として
  誇れる7年であったか
  もう一度考える必要があるかもしれません。
  政治のこと
  原子力のこと
  地方のありかた、
  この国の未来のこと。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  生き残った者として                   

 あの日、2011年3月11日、あの時、午後2時46分、のちに東日本大震災と名付けられることになる大地震が東北地方を襲った。その地震に続いて大津波が関東から東北にかけての沿岸地域に到達し、2万人近い死者と行方不明を出した。
 そのあと、作家の池澤夏樹は何度か被災地を訪ねたり、ボランティア活動に参加した。それらを通じて、あるいは池澤がそれまで経験してきたことから、考えたいくつかのことをヴィスワヴァ・シンボルスカという詩人の詩の一行からとったタイトルのエッセイにまとめ、2011年9月に刊行した。
 その二ヶ月後、青森の三沢から福島のいわきまでの三陸地方を縦断した記録を「東北の土地の精霊」と題して、雑誌「考える人」の2012年春号に掲載する。
 そして、2016年1月、単行本のエッセイと雑誌に掲載した文をまとめて、中公文庫の一冊とした。この時、「東北の土地の精霊」は「東北再訪」と変更された。

 だから、この文庫本には2011年8月に単行本のために書いた「書き終えて」と、文庫化にあたって2015年12月に綴った「文庫版のためのあとがき」という2つの文章が掲載されている。
 特に後者の「あとがき」は震災から四年と三カ月を経て書かれたものであるから、「この五年の間に事態は想像もしないほど悪い方に動いた」と書かざるをえなかった作家の苦悩がにじみでて、その時からさらに2年を過ぎた2018年にそれ以上の「悪い方」に私たちは向かっていったかもしれないと、暗い気持ちにならないわけではない。
 しかし、それでもこの「あとがき」の最後に、「我々はやはりあの日に何かを学んだのだろう」とある池澤夏樹の言葉を信じて、これから先も、春を恨むこともなく、前に進むしかないのではないだろうか。
  
(2018/03/11 投稿)

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