fc2ブログ
 橋本忍
 戦後の日本映画を牽引した脚本家。
 彼の名を一躍高めたのは、おそらく1974年公開の「砂の器」(野村芳太郎監督)だろう。
 もっとも映画に深く関心のある人なら、「張込み」(1958年)や「切腹」(1962年)、
 さらにはTV草創期の名作ドラマ「私は貝になりたい」の脚本も知るところだろう。
 いやいや、橋本のデビュー作はあの黒澤明監督の「羅生門」(1950年)とくれば、
 橋本忍という脚本家がどれだけすごい人だったかわかるはずだ。

   9784163917009_1_5_convert_20240415113210.jpg

 橋本は1918年生まれ。亡くなったのは2018年100歳の時。
 戦時中に結核を病み、その療養中に独自でシナリオの勉強を始めた。
 当時日本一の脚本家として知られた伊丹万作に師事し鍛えられていく。
 そんな橋本の人生を、
 生前行われたインタビューと関係者への聞き取り、
 橋本が残した資料や関係文献を緻密に取材したのが
 春日太一さんの『鬼の筆』だ。
 取材開始から本の刊行までに12年かかったというから、
 労作というしかない。
 そして、労作だけあって、読み応え十分といえる。
 橋本作品のファンだけでなく、日本映画に興味のある人にとっては
 欠かせない一冊になるだろう。

 橋本の代表作といえば「砂の器」であったり「八甲田山」であるのは間違いないが、
 橋本のフィルモグラフィを見ると、この2つの作品は後期に分類される。
 そのあと、彼は駄作を連発していく。
 この本の副題で使われている「栄光と挫折」はそのことを差している。
 だからといって、橋本が残した名作の光は日本映画史から消えることはない。
 そういえば、筆者の春日太一さんの肩書は「映画史研究家」でもある。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 NHKの第110作めとなる連続テレビ小説(通称 朝ドラ)「虎に翼」
 2024年4月から始まりました。
 今回は日本初の女性弁護士となった三淵嘉子さんがモデルとなっています。
 長尾剛さんの『三淵嘉子 日本初の女性弁護士』は2024年3月に刊行された文庫本で
 もちろん朝ドラを意識した小説仕立ての評伝です。

   9784022620941_1_3_convert_20240412180356.jpg

 三淵嘉子さんは大正3年(1914年)11月13日。
 この年の干支は寅で、朝ドラの主人公が「寅子(ともこ)」となっているのは、
 そういうところから。
 ちなみにタイトルの「寅に翼」とは「強い上にもさらに強さが加わる」という
 中国の韓非子の言葉らしい。
 この大正時代、まだまだ女性の地位が低い頃で、
 三淵さんのように女性が弁護士になるなんて到底考えられませんでした。
 「学問や自己主張が女の美徳にならなかった時代に成人して、
 戦後もまだまだ尾を引く学歴社会で命じられるままに働き、心が存分に手足をのばす場、
 自分をほんとうに生かす場、は乏しかったと。」と書いたのは、
 三淵さんから6年後の1920年に生れた詩人石垣りんですが、
 おそらく三淵さんも同じような時代を生きたのだと思います。

 三淵という姓は、再婚の相手のもの。
 最初の夫は戦病死というつらい時代を彼女も生きたことになります。
 朝ドラ「虎に翼」は始まったばかりで、
 この作品を読むのはかなり早すぎる予習ですが、
 やっぱり気になりますもの。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 NHKの連続テレビ小説(通称 朝ドラ)は、
 始まった当初は一年間での放送期間でしたが、
 1975年(昭和50年)の「水色のとき」(主演は大竹しのぶ)から
 放送期間が半年になり、それが今も続いている。
 前期が4月から9月、後期が10月から翌年3月まで。
 現在放送中の第109作めの「ブギウギ」は後期の朝ドラだから、
 2024年3月に終了する。

  9784885464362_1_2_convert_20240304163342.jpg

 朝ドラの主人公が実際の人物をモデルとした時は、
 出版界もその人物の関連本で賑わう。
 今回の「ブギウギ」は、戦後「ブギの女王」として人気を集めた
 笠置シヅ子をモデルとしているから、
 やはり関連本も多く出版されている。
 この新井恵美子さんの『笠置シヅ子物語』もそんな一冊で、
 150ページほどのボリュームで笠置シヅ子の出生からその死までを
 うまくまとめていて、読みやすい評伝になっている。
 ただそうはいっても、これだけのボリュームだから
 書けなかった挿話も多い。
 この本一冊で終わらせるには、笠置シヅ子の生涯は語り尽せないだろう。
 ただ、笠置の周辺の人物、服部良一エノケン、あるいは美空ひばりなど
 うまく配置され、それなりに関係性がつかめるように工夫されている。

 朝ドラの残り数週間をこの本で先取りするか、
 あらためて朝ドラの半年を振り返るか、
 どちらにでもいい、一冊である。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 今年(2024年)に入って、日経平均株価はバブル期に記録した高値を更新する勢いだ。
 そんな中、下着メーカー、ワコールの業績がよくない。
 低収益店舗の撤退や早期退職の募集などが噂されている。
 業績不振の要因はいくつもあるだろうが、女性の嗜好の変化もそのひとつだろう。
 ノンフィクション作家北康利氏によるワコール創業者の塚本幸一の評伝、
 『ブラジャーで天下をとった男』にあるように、
 ワコールが強みとしていた「ブラジャー」そのものが
 ユニクロのブラトップとかに押されているのも大きな要因だろう。
 そんな厳しい経営環境のなか、この本が2023年6月に上梓されたのは、
 ある意味ワコールへの応援ともいっていい。

  9784833425025_1_5_convert_20240214201841.jpg

 確かに創業以来、ワコールは順調に拡大していった。
 しかし、この本にあるように、実際には倒産の危機に何度も直面している。
 そのたびに創業者である塚本幸一や彼を助けるブレーンが
 必死の思いでその危機を脱してきたのも事実だ。
 1970年代に起こったウーマンリブの運動が活発になった時もそうだ。
 世界中で「ノーブラ運動」が巻き起こって、ワコールは苦境に立たされる。
 その際には塚本は自身丸坊主になって陣頭指揮したという。

 塚本幸一のこの評伝を読むと、
 彼が第二次世界大戦中の悲惨なインパール作戦の数少ない生存者で、
 そのことが彼の生きざまに強く影響していたことがわかる。
 そして、ワコールが成長していく過程には
 何人もの優秀な女性従業員がいたことも見逃せない。
 不振にあえぐ今こそ、この本に描かれた創業者と先人たちの思いに立ち返り、
 ワコールが元気になることを期待している。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
 NHKの連続テレビ小説、通称「朝ドラ」の影響は大きい。
 昔のように視聴率が20%を優に超えるということもなくなったが、
 それでもどんなドラマよりも多くの人に見られているのは間違いない。
 そして、その主人公が実際の人物をモデルにしたとなれば、
 出版界もその人気に便乗するのは世の常といえる。
 2023年下半期放送の「朝ドラ」第109作めとなる「ブギウギ」の場合も同じで、
 主人公のモデルとなったのは戦後「ブギの女王」として一世を風靡した笠置シズ子
 といっても、1985年(昭和60年)に亡くなった彼女のことを知っている人も多くはない。
 となれば、書店の多くの笠置シズ子関連本が並ぶのも不思議はない。

  9784046065995_2_convert_20231223091407.jpg

 たくさんの本が並ぶ中、
 青山誠さんの『昭和の日本を彩った「ブギの女王」一代記 笠置シズ子』は
 お手軽な文庫でかつ彼女の出生から亡くなるまでの日々が
 とてもうまくまとめられている。
 青山さんは以前にも「朝ドラ」のモデルとなった浪花千栄子牧野富太郎などを
 こういう評伝の形でまとめられているから、
 その文体も内容も安心して楽しめる。

 ドラマはまだ半分が放送されてばかり。
 これからどうなるのか、その先は気になる人には
 うってつけの一冊だろう。
 青山さんは笠置シズ子の一代記のおわりにこう綴った。
 「偶像はその時代の大衆の求めに応じて生まれてくる。
 そして、役目が終われば、時代遅れになって消えてゆく。世の中はその繰り返し。
 しかし、笠置シズ子のようにこうして再び脚光をあびることも時にある。

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ