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 NHKのドラマといえば、朝の連続テレビ小説(通称朝ドラ)と大河ドラマが双璧だろう。
 昨日、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に関連して
 永井路子さんの『北条政子』を紹介しましたので、
 今日は現在放送中の
 朝ドラ107作めとなる「舞いあがれ!」に関連した一冊を紹介しましょう。

 その前に「舞いあがれ!」について。
 主人公は空が大好きなヒロイン舞(福原遥)。
 空を飛ぶという夢に向けての彼女の奮闘が描かれるというもの。
 始まったばかりでまだまだどうなるかわかりませんが、
 出足は好調です。
 今は大学の人力飛行機のサークルにはいったばかりの舞の姿が放送中ですが
 サークルの先輩の由良(吉谷彩子)と
 「アメリア・イヤハートって知ってる?」という会話をした回がありました。
 さすがに女性パイロットを夢みる二人ですから
 アメリア・イヤハートのことを知っていましたが、
 あまり知られてはいないのではないでしょうか。
 そこで、図書館でアメリアの本があるかと調べて見つけたのが、
 リチャード・テームズが書いた
 『アメリア・イヤハート それでも空を飛びたかった女性』です。

   

 この本は国土社から1999年2月に
 「愛と勇気をあたえた人びと」という児童向けの伝記シリーズの一冊として
 刊行されました。
 アメリア・イヤハート(1897年~1937年)は
 1928年に女性として初めて大西洋横断飛行をなしとげたアメリカ女性です。
 リンドバーグが単独の大西洋横断飛行を成功させたのは1927年ですから、
 まさに画期的な出来事でした。
 ただ、この時の飛行では彼女は操縦をしたわけではありませんでしたが、一躍時の人となります。
 その後、自身で操縦かんを握ることにもなりますし、女性の社会進出のリーダーにもなっていきます。
 そして、1937年世界一周飛行の途中で、彼女は飛行機ごと消息をたちます。
 アメリアはまだ40歳でした。

 リンドバーグのことはよく知られていますが、
 アメリア・イヤハートのことはそれほど知られていません。
 今回の朝ドラが契機となって
 そんな素晴らしい女性がいたことが
 多くの人に知られたら、どんなにいいでしょう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  1984年に亡くなった漫画家ちばあきおさんの評伝
  『ちばあきおを憶えていますか』を
  紹介します。
  書いたのは
  ちばあきおさんの息子さんの千葉一郎さん。
  この本の副題に
  「昭和と漫画と千葉家の物語」とあります。
  ここでいう「千葉家」の著名人は
  漫画家のちばてつやさん。
  ちばあきおさんはちばてつやさんの弟です。
  表紙の漫画は
  ちばあきおさんの代表作「キャプテン」。
  この漫画を見たら
  ちばあきおさんのことを
  思い出す人もいるでしょうね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  もちろん、覚えていますよ                   

 のちに「漫画の神様」と称されることになる手塚治虫が「新宝島」を出版したのが、1947年(昭和22年)だった。戦後漫画はそこから始まったといっていい。
 それから70年以上経ち、漫画世代もすでに何世代も経過したことになる。
 この本のタイトルにある「ちばあきお」は、昭和18年生まれで漫画家としてデビューしたのは24歳であるから決して早くない。まして、「キャプテン」や「プレイボール」といった作品で人気漫画家になるのは、30歳間近の頃だ。
 彼より早い世代の漫画家というと、兄ちばてつやがいる。
 兄てつやとは4歳違いだが、兄は20歳にして人気漫画家であったから、その違いは年齢の差以上に大きいといえる。

 ましてや、兄てつやには「あしたのジョー」という名作があり、その当時はあきおはまだ兄てつやのアシスタントでしかなかった。
 兄てつやを愛読した世代にとって、あきおは「ちばてつやの弟」でしかなかったかもしれない。
 もちろん、あきおの作品をリアルタイムで読んだ世代にとっては、ちばあきおは独立した漫画家だっただろうし、そういう点ではちばてつやとちばあきおとは全く世代の違う漫画家といっていい。
 ただ、あきお自身はそう考えたかどうか。
 やはり意識として、「ちばてつや」というビッグネームの重しがあったのではないだろうか。

 のち、あきおは酒におぼれ、漫画を描けなくなっていく。そして、41歳の時自死する。
 兄てつやの数多くの作品群に比べ、あきおの作品は少ない。
 けれど、彼の作品を愛するファンは多い。
 「ちばあきおを覚えていますか」はこの本の著者で息子一郎の思いだろうが、きっと「もちろん忘れてませんよ」という世代の人はたくさんいるだろう。
  
(2022/06/08 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  「河野裕子との青春」と副題のついた
  永田和宏さんの『あの胸が岬のように遠かった』を
  紹介します。
  この本を読んでいる間じゅう、
  私の脳裏によぎっていたのは
  『二十歳の原点』を書いた高野悦子さんのことです。
  調べると
  高野悦子さんは1949年生まれで、
  河野裕子さんや永田和宏さんとほぼ同時代に
  京都の町で学生生活を送っていたのではないかと思えました。
  今回のこの本には
  河野裕子さんの日記からの引用も多くあり、
  それが高野悦子さんの日記とも重なるように
  感じました。
  『二十歳の原点』が今も若い人に読まれているように
  この本も青春の書として
  読まれるだろうと思います。
  書評のタイトルは
  河野裕子さんのこの短歌からとりました。

    たとへば君 ガサッと落葉すくふやうにわたしを攫って行つて呉れぬか     

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  わたしを攫って行つて呉れぬか                   

 学者としての研究の道か、文学者としての歌人の道か、それに結婚を誓う恋人がいて、自殺未遂を為すほどに悩んだ青春期、それでもその時代を辿ろうと歌人で細胞生物学者の確固とした地位を築いた永田和宏氏が決断したのは、2010年8月に乳がんで亡くなった妻で歌人の河野裕子さんが残した青春期の日記と手紙があったからだ。
 亡くなった人とはいえ、個人的な日記を読み、そしてそのことを文章にする。
 そのことに「強い困難と逡巡」があったことを、永田氏は「はじめに」で綴っている。
 しかし、二人の長い交際のあと結婚に至るまでの日々を描くことで、永田氏は歌人河野裕子の青春だけでなく、自身のそれをも描き切っている。

 互いの高名な歌人として生きた二人にとって、時にぶつかり、時に慰め合ってきた長い時間の果てに、すでに亡くなった妻がまるでこの世界に舞い戻って、ともに自分たちの青春の、美しく、悲しく、切ない時間を、永田氏の執筆を支えてきたような気さえする。

 河野さんは1946年生まれ、永田氏は1947年生まれ、そんな二人が出会い、邂逅した青春期はまさに学生運動が盛んな時期であった。
 そんな中、河野さんは二人の男性への思いに悩み、歌を詠み続ける。永田氏は自身の将来への方向に悩み、歌を詠んでいく。
 おそらくここに記された青春期は決して特異なものではないだろう。
 きっと多くの若者の心情にシンクロするだろう。それゆえに、この書はこれからの青春期の一冊として読み継がれていくような気がする。
  
(2022/05/06 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  文庫オリジナルという出版方法があります。
  読者としては
  新しい作品を廉価で読めてありがたいのですが
  時に
  こんないい作品なら単行本でも売れたのにと
  思わないこともない作品に
  出会うこともあります。
  今日紹介する
  谷口桂子さんの
  『食と酒 吉村昭の流儀』も
  そんな一冊です。
  別の機会に
  写真付きの単行本で読みたいとも思う
  いい作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  吉村昭さんと一緒に吞みたかった                   

 亡くなって15年経つが、今でもその簡潔にして硬質、緻密な作風に人気がある作家吉村昭さん(亡くなったのは2006年7月31日)の生きざま(それは本作のタイトルにもある流儀ということだろうが)をエッセイなどから遠くから拝見すると、いかにも昭和の男という印象を受ける。
 頑固であり、人情にあつく、習慣といった行事にこだわる。
 そんな吉村さんは、書くこと以外に趣味らしいものはあまりなかったようで、唯一愉しみにしていたのが、お酒と食べることであったという。
 多くの著作にもそのことを書かれた箇所があって、俳人で作家でもある著者谷口桂子さんはそれらを丹念に読み解き、「食と酒」というところから吉村昭という人物を描き出していく。
 さらに、そもそもの執筆のきっかけともいえる吉村昭の奥さんで作家の津村節子さんの姿も浮き上がらせていて、津村節子ファンにもうれしい一冊だろう。

 吉村さんは「酒は大好きだが、酔っぱらいはきらい」だったという。
 それでも、たまには酔って、都都逸、さらにはソーラン節を熱唱することもあったという。
 吉村さんは歴史小説を執筆するに際して、現地を何度も訪ねた逸話は有名だが、そこでも吉村さんは食べ物にこだわり、気に入った料理屋を手帖につけていたという。

 この作品は「当初は単行本で、地方のゆかりの店」を訪ねて写真入りで紹介する予定だったそうだが、コロナ禍で文庫オリジナルのこの形に変更された。
 写真は入っていないが、吉村昭さんが愛した味は十分楽しめる一冊になっている。
  
(2021/11/02 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  ショーケンと呼ばれた
  萩原健一さんが亡くなったあと
  女優の桃井かおりさんは
  こんなコメントを残しています。
  「可愛くていけない魅力的な生き物でした。
   同じ時代に生まれ、同じ時間を過ごせた偶然に、感謝。ありがと」
  もしかしたら、
  ショーケンや桃井かおりさんたちと同じ時代を生きた人たちにとって
  彼女のコメントは胸にジンときたのではないでしょうか。
  それくらい
  ショーケンはかっこよかった。
  今日は
  そんなショーケンの評伝ともいえる一冊、
  大下英治さんの
  『ショーケン 天才と狂気』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あいつの笑顔が忘れられない                   

 10代の時につけられたニックネーム「ショーケン」で、2019年3月に68歳で早逝するまで呼ばれ続けた男、萩原健一。
 その人生をかつて三越の社長退陣のきっかけとなった作品など数々のノンフィクション作品を発表してきた大下英治氏が書くというので興味をひかれた。
 何しろショーケンといえば、生まれた時から波乱に満ちていて、家族との関係、10代の頃のやんちゃぶり、GS時代のスター、そして俳優となってからの悪行、奇行、華々しい女性遍歴、さらには薬物使用による逮捕、傷害事件、恐喝未遂、と書く材料に困ることはない。
 しかし、大下氏はそういったプライベートな側面について、ほとんど書いていない。
 もちろん、そうはいっても女性との関係など書かないわけにはいかないが、そのほとんどをショーケンが出演した映画やドラマの制作現場での姿に終始している。

 ショーケンは俳優として稀有な存在であった。まさにタイトルにある「天才」は、他の俳優たちの追随を許さない部分だろう。
 その一方で「狂気」もあった。
 撮影現場に現れるショーケンは畏怖される対象でもあった。暴言、暴力、わがまま、多くの制作スタッフは、彼とともに仕事をすることを嫌がったという。
 しかし、それでもショーケンは多くの作品に出続けた。
 つまり、持っていた「狂気」以上の存在感が彼にはあったということだろう。
 ショーケンという男が演じようとしたものは、そういう評価を超えたところにあったともいえる。
 そういう意味では、ショーケンは時代とともに生きた男だったのだろう。
  
(2021/10/15 投稿)

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