プレゼント 書評こぼれ話

  最近テレビのワイドショーや週刊誌を
  賑わせているのが
  和歌山の資産家の男性の
  怪死事件。
  資産家の愛犬も数週間前に亡くなっていたので
  その死骸も掘り起こされたというから
  素人探偵が騒ぐのもわからないではない。
  こんな時、
  ポアロ探偵がいたらなと
  誰もが思う。
  今日紹介する
  アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』も
  死因は毒殺。
  なんだか和歌山の資産家の怪死と
  似ていなくもない。
  はたして
  謎はとけるだろうか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  デビュー作とは思えない完成度                   

 ミステリーの女王と呼ばれたアガサ・クリスティーの、この作品はデビュー作(1920年)。
 デビュー作であるが、のちにアガサ・クリスティーの代表シリーズともなるエルキュール・ポアロを登場させるなど、処女作という印象ではなく完成度の高さを感じる。
 何しろこの作品の中のポアロはすでに難事件をいくつも解決した名の知れたベルギー人探偵として構築されているところからすると、アガサは入念に人物設定をしていたのだろう。
 あるいは、これから先何度もポアロとコンビを組むことになる、語り部となるヘイスティングズの立ち位置もいい。彼のなんともいえない呆けっぷりも楽しめる。

 さて、今回の事件であるが、閑静なところにある別荘スタイルズ荘でその所有者である富豪の老婦人が毒殺される。
 その別荘には彼女と関係する数組の男女と若き夫がいた。
 遺産を狙ったとまず疑われたのは若き夫であるが、その村にたまたま居合わせたポアロは彼の無実を証明する。
 では、老婦人を毒殺したのは誰か。
 事件解決まで一転二転するから、読者はきっと最後までその犯人にはたどりつけないのではないだろうか。

 アガサ自身はこの作品を書くまでに薬剤師の助手として働いていた経験があり、毒薬の知識は持っていたようだ。
 まさにこの事件のトリックにはその知識がないと解けないかもしれない。
 そして、アガサはこの小説でトリックだけを描こうとしたのではなく、「一人の男と一人の女の間の幸福は、この世の中での最大のこと」を示そうとしたはずだ。
  
(2018/06/22 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は長編小説の紹介です。
  辻村深月さんの
  『朝が来る』。
  単行本で346ページ。
  最近の小説は
  これぐらいのボリュームは
  あたりまえのようになってきました。
  実はこの作品、
  内容をまったく知らずに読み始めたのですが
  社会派ミステリーの
  社会派は「特別養子縁組」制度のあたり。
  まさにそのことが
  この物語の核になっています。
  タイトルにある「朝」に惑わされた感じです。
  結構重い内容でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  第1章のおわりはゾクッとします                   

 直木賞作家辻村深月さんが2014年1月から翌15年3月まで「別冊文藝春秋」に連載した社会派ミステリー。 
 
 四つの章に分かれた、その最初の章がなんといっても不気味な感触だ。
 住みたい街にランキングされる武蔵小杉のタワーマンションに住む佐都子のもとにかかってくる無言電話。夫と幼稚園児の息子朝斗との平穏な暮らしに、それは小さな棘のようにんって佐都子を悩ましている。
 そんな時朝斗が幼稚園で友達を突き落としたとされる事故が起こる。
 朝斗は否定し、佐都子も夫もそんな息子を信じようとする。やがて、事故は朝斗のいうとおり友達の嘘が判明する。
 そんな中、ついに無言電話の主が正体をあらわす。それは朝斗の実の母親ひかりを名乗る女性で、朝斗が佐都子たちの実の子でないことをバラすと脅迫してきた。
 そして、佐都子と夫は実の母親だという女性と会うことになる。
 朝斗は特別養子縁組で佐都子たちの子供になったのは間違いなく、一度だけ佐都子たちは実の母親に会ったこともある。しかし、今佐都子たちの目の前に現れた女性はひかりとは別人のようであった。
 ―あなたは一体、誰ですか。
 しかも、彼女は佐都子たちの前から姿を消したあと、行方が知れなくなっていた。
 佐都子たちの前に現れた女性は誰なのか。

 二章以降、佐都子たちがどのようにして朝斗とめぐりあい、実の母親であるひかりがどのようにして朝斗を生み、手離し、そして流浪していく様が描かれていく。
 主人公は佐都子のようでもあるが、やはりひかりという女性があまりにも切ない。幼さはあまりに残酷だ。
  
(2018/06/07 投稿)

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  今日は月に一度の読書会の日。
  先月はゴールデンウイークでお休みだったので
  一ヶ月ぶり。
  前々月の読書会で
  朝井まかてさんのことが話に出て
  そこから
  何作か朝井まかてさんの作品を
  読んできました。
  そして、今日も
  『銀の猫』という
  作品の紹介です。
  この作品でもそうですが
  うまいですよね。
  でも朝井まかてさんには
  江戸ではなく
  大坂を書いてもらいたい。
  と、あくまでも
  関西びいきの感想。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  介護小説もさまざまあるが、これは読んでおきたい                   

 江戸は天保年間、「長寿の町」だったようで、「七十、八十の年寄りはざら、百歳を過ぎた者も」いた。そうなれば、現代と同様介護も必要になり、もっともお金もかかるからそれなりの身分や資産があるものしか他人の介抱を受けることもままならないのも今と似ている。
 朝井まかてさんのこの連作短編は、そんな時代に「身内に代わって、年寄りの介抱を助ける」介抱人を生業にしているお咲という女性を主人公にして、介護の難しさを時代小説に溶け込ませた意欲作だ。

 お咲は実の母親の佐和がお咲の婚家から借金をしたおかげで離縁され、その返済まで負わされている。そのために「鳩屋」という口入屋から介抱を求める家を紹介してもらって奉公にはいるという段取りで生活をしている。
 佐和とは喧嘩が絶えず、貧しい長屋暮らしから抜け出すこともままならない。
 いつの時代も介護の苦労は変わらずで、それでもお咲が得意先から評判がいいのは、つらい婚家での生活ではあったが舅の仁左衛門の介護で心を通わせる充実した日々を経験したせいだ。
 そんな舅からもらったのが小さな、銀の猫の根付。
 これがこの連作短編集のタイトルにもなっている、第1作目の題名の由来。

 朝井まかてさんが『恋歌』で直木賞を受賞した2013年から2016年にかけて「オール讀物」に三か月おきに連載した8つの作品は、季節の風物、植物、食べ物をふんだんに織り込み、江戸の人たちの生活ぶりを通して、年老いたものたちとの理想とする生き方を描いて、考えさせる。
 正面きって「介護」の問題を論じるのではなく、こういう小説で考えてみる方がいいような気もする。
  
(2018/06/02 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  朝井まかてさんの
  この『雲上雲下(うんじょううんげ)』は
  先月の読書会で
  紹介された一冊で
  この本をきっかけにして
  朝井まかてさんの作品で
  どれが一番か喧々諤々となった
  期待の一冊。
  期待にもれず
  面白かったし
  とても深いお話になっていました。
  これが
  「日本農業新聞」という新聞に連載だったなんて
  いいですよね。
  でも、
  どんな新聞なのでしょう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  物語だからこそ伝わる世界                   

 直木賞作家の朝井まかてさんが「日本農業新聞」に2016年4月から1年をかけて連載した意欲作。
 原題が「福耳草」。単行本化にあたりこの題名に改題されたが、とてもうまいタイトルをつけたものだ。
 「雲上」すなわち神々の住む尊いところ、「雲下」すなわち人々が暮らすこの場所、この二つの世界を結ぶものこそ、「物語」であったとするなら、この作品は朝井まかてさんの「物語論」とも呼べる作品、だから意欲作。

 名もない草にある時「草どん」と呼びかける声がする。それは尾っぽのとれた子狐。
 子狐にせがまれるまま「草どん」は昔話を語るが、自身どうしてそんな話を覚えているのかわからない。
 それでも声になって紡がれる、竜宮や龍の子の物語。
 語ることで「草どん」は自分というものを取り戻していく。
 そんな「草どん」の自分探しと幾編かの昔話が交差して、物語を深みへと誘う。
 まさに誘うという言葉の通り、読者は朝井まかてさんの話術によって、物語の面白さ残酷さ悲哀と感情の奥を暴かれていく。

 そして、次第に「物語論」の核心にはいっていく。
 怖い物語や残酷な物語をそれが残酷ゆえに隅に追いやって隠すことで「痛みを想像できなくなる」、そして手にしたのがゲームにあるような「いびつな残酷さ」ではないかと、朝井まかてさんは物語に語らせる。
 かつて「物語」ゆえに有効であったものを私たちはいつの間にか失いかけているのではないか、朝井まかてさんこそ「草どん」の本当の姿、お伽衆かもしれない。
  
(2018/05/22 投稿)

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  今日は
  第158回直木賞候補作になった
  伊吹有喜さんの
  『彼方の友へ』を紹介しますが
  私はこの物語を読み終わって
  とっても気持ちいい感じを受けたのですが
  そのあと
  直木賞の「選評」を読んで
  結構辛辣な評が多かったのが
  意外な感じがしました。
  読むことと
  賞をとることとは
  やはり違うのでしょうね。
  でも、やっぱり私は好きだな、
  この物語。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ぜひ朝ドラにしませんか                   

 第158回直木賞候補作。
 老人施設に暮らすハツのもとに届いた昭和13年の「乙女の友」の新年号の付録。花の絵と思わせぶりな言葉が綴られたカードの束。
 それをきっかけにして主人公佐藤ハツの昭和12年、同じく15年、18年、20年の姿が描かれる長編小説である。
 ハツは見習いのようにして就職した雑誌「乙女の友」でこれらの年代をたくましく生きていく。戦前戦中の「お仕事小説」ではあるが、ハツがほのかに心を寄せる雑誌の主筆である有賀や乙女チックな絵で多くの少女を虜にする長谷川画伯などハツをめぐる人間関係も巧みに仕組まれている。
 私はとても面白く読んだ。

 ところが、直木賞の選評ではほとんど評が集まらなかった。
 直木賞の候補になるということは、厳しい批評も受けることがあるということだろうが、それでもこうして選評が聞けるというのは著者にとってはきっとありがたいことだろう。
 選評で面白かったのが、東野圭吾委員のもので「完全に朝の連続テレビ小説の世界」とある。同じような評価が宮部みゆき委員で「このまま即NHKの朝ドラになりそうな仕上がり」とある。
 それを「お行儀が良すぎた」と宮部みゆきは優しく書いているが、つまりは東野圭吾がいう「既視感」だろう。

 しかし、直木賞には至らなかったにしても、朝ドラ仕立てになっていようが、この物語は面白かった。
 できれば本気で朝ドラになればいいのに。
  
(2018/05/19 投稿)

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