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プレゼント 書評こぼれ話

  2019年に
  生誕110年となった太宰治だが
  没後70年以上経っても
  今だ人気が高い。
  その作品の映画化が続いたりしている。
  最近、太宰治の遺作となった
  『グッド・バイ』も映画化されました。
  主人公田島周二を演じるのは大泉洋さん。
  ヒロインのキヌ子は小池栄子さん。
  さてさて、
  その『グッド・バイ』ってどんな作品だったっけと
  今回何十年ぶりかで
  読み返してみました。
  太宰治らしからぬ
  いやいやこれこそが太宰治
  そんな不思議な未完の作品です、

  じゃあ、読もう。

  追記  昨日(3月27日)さいたま市では図書館の休館期間を4月19日まで延長されることが決まりました。
      さすがに図書館大好きの私もショックです。

  

sai.wingpen  あまりに出来過ぎのタイトル                   

 太宰治の、あまりに有名な最後の作品。
 文庫本にしてわずか30ページほどの作品だが、未完のまま絶筆となったもので、短編というのは本当はふさわしくないのだろう。
 実際これは太宰が亡くなく直前の1948年(昭和23年)6月に朝日新聞に連載を始めようとしていた作品で、残されたものは新聞連載の13回分までしかない。
 はたして太宰はどのような作品に仕上げようとしていたのか。
 残された「作者の言葉」に「さまざまの別離の様相を写し得たら」と綴っている。

 主人公は愛人を十人近く養っているという噂の絶えない、34歳の雑誌の編集長、田島周二。
 彼がこのたび心を入れ替えるにあたって女たちと上手に別れなければと画策。
 そこで浮かんだ浅知恵が、美人の奥さんをでっちあげ、その彼女を見せることで愛人たちに諦めてもらうというもの。
 しかし、なかなか美人が見つからない。そこに現れたのがキヌ子。美人だが、声がいけない、鴉声。
 そうはいっても時間がない。
 田島とキヌ子の奇妙は旅が始める。
 でも、残念ながら、「さまざまな別離の様相」を私たちは読むことができない。

 それにしても「グッド・バイ」。
 太宰ならきっとこう言う。ちえっ、気取ってやがら。
 自身の最後に「グッド・バイ」なんていかにも太宰らしいが、そういうタイトルをつけた時彼にはこれが最後の作品になるという自覚があったのだろうか。
 それとも、新しいコメディを生み出す意欲に燃えていたのだろうか。
 あまりの出来過ぎのタイトルだから、いつまでも読まれる作品になったといえる。
  
(2020/03/28 投稿)

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  今日はひな祭り

    吸物に手毬麩ふたつ雛の日      能村 研三

  目黒雅叙園にある百段階段で開催されていた
  「百段雛まつり 2020 ~出雲・因幡・萩 ひな紀行~」も
  新型コロナウイルスの影響で
  会期が短縮され
  3月1日で終了してしまいました。
  なんとか開催されている期間に見れたので
  よかったですが
  さまざまなところに影響が出ています。
  これは今回の展示にあった
  大嘗祭の衣服をまとったお雛さまです。

   20200222_115942_convert_20200301100023.jpg
  
  オリンピックもどうなるか
  不透明ですが
  今日はかつて1932年のロサンゼルスオリンピックで
  金メダルを取った
  西竹一を描いた伝記小説
  『硫黄島に死す』を紹介します。
  作者は城山三郎さん。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  バロン西を知っていますか                   

 子供の頃、ちょうど昭和39年の東京オリンピックのあたりでしょうか、オリンピックの感動秘話としてよく聞いたのが、1936年のベルリンオリンピックの棒高跳び競技で大江選手と西田選手がお互い譲らず、銀と銅メダルを獲得、その後そのメダルを合わせて「友情のメダル」とした話です。
 その次あたりによく聞いたのが、1932年のロサンゼルスオリンピックの馬術障害飛越競技で金メダルに輝いた西竹一のことかもしれません。
 バロン西と呼ばれ、太平洋戦争期に硫黄島で戦死した人物です。
 城山三郎が昭和38年の「文藝春秋」11月号に発表したこの短編小説は、この西竹一を描いた伝記小説で、翌年には文藝春秋読者賞を受賞しています。

 文庫本にしてわずか60ページ弱の短編ながら、実によくできた作品です。
 城山三郎はこの後『男子の本懐』や『落日燃ゆ』といった長編の伝記小説を数多く発表していますが、この作品は短編ながら実に的確に戦争期に軍人といて生きた西中佐の心構え、あるいはともにオリンピックを戦った愛馬ウラヌスへの想い、そして残していく家族への切ない愛情が淡々と描かれています。
 若い見習士官を介して、西の思いが語られていく手法も見事です。

 オリンピックの際に「勝たなくては」とあせる日本チームに対して、城山はどこか達観したフランスの老少佐を置くことで、冷静な目で当時の日本人を見つめています。
 それは決して自虐ではありません。
 何故なら、アメリカ軍の「ニシさん、出て来い!」という呼びかけにも応えず自死の道を選んだ西竹一を、当時の一人の日本人として敬慕の念で描いているからです。

 城山文学に欠かせない一篇です。
  
(2020/03/03 投稿)

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  以前
  湯川豊さんの
  『一度は読んでおきたい現代の名短篇』という本を
  紹介しましたが
  今日紹介する
  宮部みゆきさんの「片葉の芦」は
  そこに取り上げられていた名短篇です。
  その短篇を収めたのが
  『本所深川ふしぎ草紙』。
  もともとこの短篇集は
  平成3年に刊行されたものです。
  湯川豊さんはこの短編について
  登場人物たちが
  「江戸時代の表情を身につけている」と
  書いています。
  江戸時代の気分を
  存分に味わって下さい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  この短篇集の中で「片葉の芦」は評価が高い                   

 宮部みゆきさんといえば、日本のミステリーを牽引する第一人者だ。
 宮部さんの魅力はミステリーだけにとどまらない。SFも書けるし、時代小説も書ける。まさに「宮部ワールド」と称されるだけのことはある。
 さらに宮部さんの作品は長編、それも「大」がつくほど長い。
 宮部さんの作品を苦手としている人は、私もその一人なのだが、その長さに圧倒されるのかもしれない。
 しかし、そんな宮部さんにも短編小説の名篇がある。
 それがこの本所深川の七不思議を題材とした7篇の短編を収めた作品である。

 7篇の作品は登場人物がそれぞれ異なるが、同じなのが舞台が本所深川ということと「回向院の親分」岡っ引きの茂七が必ず登場することだ。
 本所深川というのは、現在の両国を含む北側を本所、両国よりも南側を深川といったそうだが、その名を耳にするだけで江戸の風情が浮かんできそうだ。
 そこにある七不思議とは「片葉の芦」「送り提灯」「置いてけ掘」「落葉なしの椎」「馬鹿囃子」「足洗い屋敷」「消えずの行灯」で、それぞれが作品のタイトルになっている。

 中でも名短篇の評価が高いのが、「片葉の芦」。
 貧しい少年に食べ物を施す大店の娘。そんことをしても少年のためにはならないとたしなめる父親。鬼とまで呼ばれた父親があるある日殺されてしまう。誰が何のために。
 今はりっぱな若者に成人したその少年がこの事件をきっかけに鬼と呼ばれた男の本当の姿を知ることになる。

 「宮部ワールド」には山本周五郎までもがいるようだ。
  
(2019/10/30 投稿)

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  太宰治の『女生徒』を
  読むのは
  何十年ぶりだろうか。
  太宰治のたくさんの作品の中でも
  この作品は
  最初に読んだ印象と
  再読した印象が違わない部類に
  入るのではないだろうか。
  今読んでも
  いい。
  暗い作品ではないけれど
  太宰治らしい甘さがほどなく効いている。
  この作品の巧さからいえば
  太宰治はずるいくらい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  切なくて、涙が出そうになる                   

 昭和14年(1939年)に「文學界」に発表された太宰治の短編。文庫本で45ページほどの作品だが、太宰の晩年期の作品と違って、明るさがあり、太宰の多くの作品の中でも人気の高いものではないだろうか。
 太宰がこの作品を書いたのは30歳あたりの頃で、太宰の読者であった一人の女性から送られてきた日記をもとに書かれたことは有名な逸話。

 この作品の魅力はなんといっても、その流れるような文章力だろう。
 「あさ、眼をさますときの気持ちは、面白い。」という書き出しから、実にテンポよく流れる。この作品を読んだことのある人は、こっそり声に出して読んでみたりしなかったか。
 どこまで送られてきた日記が生かされているのか知らないが、主人公の14歳の女生徒が飼っている二匹の犬、そのうちの一匹が醜く、「可哀想で可哀想でたまらないから、わざと意地悪くしてやるのだ」といった心の状態など、いかにも太宰っぽい。
 こういう天邪鬼的なところが太宰の魅力ともいえる。

 その醜い犬が物語の最後、寝床についた彼女の、この短編は朝起きて夜眠るまでのわずか一日の話なのだ、耳に庭を歩く足音として登場する。
 「カアは、可哀想。けさは、意地悪してやったけれど、あすは、かわいがってあげます。」と女生徒は思う。
 この時、太宰も読者も醜く可哀想な犬なのかもしれないかわいがってくれる人があらわれるのを、ただ待っている、可哀想な犬なのだ。
  
(2019/09/19 投稿)

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  松本清張は生まれたのが1909年で
  今年生誕110年になります。
  もう一人、
  生誕110年になった文豪といえば
  太宰治
  松本清張がデビューした時には
  もう太宰治は亡くなっていたので
  二人には直接的な関係はありません。
  しかも
  作品の傾向はまったく違いますが
  二人とも短編小説の巧い書き手でした。
  今日は
  松本清張の短編の中から
  「鬼畜」を紹介します。
  そういえば、この短編、
  太宰治の「桜桃」の中の一節、

    子供より親が大事、と思いたい。

  みたいな短編です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  今でも「鬼畜」はあとをたたない                   

 昭和32年(1957年)に「別冊文藝春秋」に発表された、文庫本のページで50ページほどの短編である。
 発表から20年ばかり経った1978年に野村芳太郎監督(脚本は井出雅人)で映画化され、主人公の小心な男を緒形拳が演じてその年の男優賞を総なめした。
 この映画で作品を知っている人は多いだろうが、原作もいい。
 短篇だが、濃厚。
 読み物としての深みが凝縮されている。
 短くても物語の面白さや怖さは十分に伝わるのだということがよくわかる。

 主人公の宗吉は30過ぎまで各地の印刷屋を転々とする渡りの印刷工だったが、腕がいいことや真面目な性分でこつこつと金を貯め、自分の印刷所を持つようになる。
 27歳の時に結婚したが、その妻お梅は気性の勝った女だった。
 二人には子供がいなかった。その分、お梅も共に働いて、自営の印刷所は繁盛していく。
 そうなればなったで、本来小心な宗吉もついはめが外れて、料理屋の女中と関係を持ってしまう。
 その女菊代との間に子供まで出来たが、商売がうまくいっていることで、妻にばれないまま八年の年月が過ぎる。
 最初に出来た子が男の子で、次に女の子、さらには生まれたばかりの男の子と、三人の子供が出来たところで、宗吉の商売がうまくいかなくなる。
 生活に困った菊代は三人の子供を宗吉に押し付け、失踪。
 もちろんお梅はそんな子供をやっかいばらいしようとする。
 末っ子が栄養失調で亡くなったのを皮切りに、幼い女の子を捨て、さらには上の男の子までも殺そうとする宗吉。

 「鬼畜」というのは子供を殺そうとしたり捨てたりする親のことだが、この物語が発表されて半世紀以上経っても「鬼畜」はあとをたたない。
 そういう点では松本清張が描いたのは未来小説であったのかもしれない。
  
(2019/09/04 投稿)

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