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プレゼント 書評こぼれ話

  先日
  工藤美代子さんの『サザエさんと長谷川町子』という本を
  紹介しましたが
  その中で『サザエさん』誕生のヒントになったのではと
  書かれていたのが
  志賀直哉の短編『赤西蠣太』。
  ちょっと気になったので
  図書館で志賀直哉の短編集を借りました。
  さいたま市の図書館は
  6月1日から書架から本を借り出すことも
  できるようになりました。
  閲覧席はまだ利用ができませんが
  少しずつ以前の状態に戻していけばいいかと
  思います。
  閲覧席の利用は来週15日からです。
  ちなみに今日紹介した
  『赤西蠣太』は、
  岩波文庫の『小僧の神様 他十篇』に
  はいっています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  『サザエさん』誕生はここから!?                   

 文庫本にしてわずか30ページ足らずのこの短編は、志賀直哉が大正6年(1917年)に発表したもの。
 志賀直哉といえば教科書に必ず出て来る作家というイメージが強く、実際半世紀以上も前に習った時にも確か志賀の作品、同じ短編集に掲載されている『清兵衛と瓢箪』であったと思うが、が載っていた。
 つまり、志賀直哉という作家は教育向きのきちんとした文章を書く、お行儀のいい作家という印象がずっとあって、それが「伊達騒動の講談を読んでゐて想ひついた」というぐらいだから、エンターテイメントに満ちた、こんな作品もあることに驚いた。

 この短編は長谷川町子さんの『サザエさん』誕生のヒントになったという説もある。
 というのも、ここに登場する人物の名前が魚の名前だからだ。
 主人公が蠣(かき)太、その友人が銀鮫鱒次郎、按摩が安甲(あんこう)で、中でも主人公がほのかに心を寄せる美しい腰元の名が「小江(さざえ)」。
 こう魚の名前が続くと、やはりこの短編が、と思いたくなるのも仕方がない。

 それよりもこの作品は物語として、とても面白い。
 有名な「伊達騒動」の一挿話として読めるし、ちらりと出て来る原田甲斐が不気味であったりする。
 主人公の蠣太は藩の間者で、屋敷を抜け出す手段としてあたかも美しい腰元に懸想して振られて逃げ出すという方法を実行するが、案に相違して、腰元の小江がほのかに蠣太に心を寄せていたから、切ない話となっていく。

 志賀直哉、なかなかいいぞ。
  
(2020/06/09 投稿)

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  今日紹介するのは
  松本清張の短編集『黒い画集』から
  「坂道の家」。
  この短編はこれまでにも
  たびたびドラマ化されていて
  私も子供の頃に見たのを
  何故か鮮明に覚えている。
  ネットで調べると
  どうやら1965年制作されたドラマのようだ。
  私が10歳である。
  主演を三國連太郎が演じている。
  きっと子供ごころに
  どきどきするような
  大人の世界が映像化されていたのだろう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  くわばら、くわばら                   

 文庫本にしてほとんど200ページ近くあるから、短編というより中編小説という方があっている。
 「黒い画集」シリーズの一作として、昭和34年(1959年)1月から4月にかけて「週刊朝日」に連載されたものである。
 真面目で吝嗇さえあった中年の小間物屋の経営者寺島吉太郎がたまたま店を訪れた若い女杉田りえ子に夢中になって身を滅ぼしていく姿が描かれる。
 ミステリー小説であるから、犯罪の場面も描かれているが、それは作品の最後の数十ページでしかない。
 つまり、その犯罪に至るまでの男の堕落を、松本清張はこれでもかと書き連ねる。

 キャバレーのホステスをしていたりえ子に夢中になり、店通いだけでなく、彼女にいわれるままに弟だという男の支援まですることになる。
 やがて、りえ子の話のほとんどが嘘であり、弟というのも実はりえ子の男だということも、吉太郎は知ってしまう。
 普通なら、これで男女の仲も終わりだろうが、吉太郎はりえ子と別れることができない。
 どころか、さらに彼女のために坂の上の新しい家まで用意してしまう。
 そんな生活が続くわけはない。吉太郎の生活は逼迫して、貯金も底をつく。
 さらには、りえ子の嘘もエスカレートしていく。
 ついには彼女を殺そうかとまで考えるようになるだが、死んでしまうのは吉太郎の方だった。

 まさにここからが清張ミステリの読みどころ。
 随所に実は伏線も張られていて、面白い。
 それにしても、男ってかわいそうなものだ。
 きっと当時の読者は「くわばら、くわばら」なんていいつつ、読んでいたのだろう。
  
(2020/05/08 投稿)

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  今日は
  織田作之助の有名な短編小説
  『夫婦善哉』を紹介します。
  この作品は
  インターネットの電子図書館の
  「青空文庫」で読みました。
  ちょっと前に
  1955年に封切られた
  豊田四郎監督の映画をDVDで観たところでした。

  

  主人公のダメな男を森繫久彌さんが演じ、
  この作品で一躍演技派と称賛されます。
  ヒロイン蝶子は淡路千景さん。
  こちらも熱演です。
  この映画、その年のキネマ旬報のベストテン2位ですから
  映画の完成度も高い。
  でも、織田作之助の原作もいい。
  たくさん本を読んできたつもりですが
  実はこの作品を読むのは
  初めて。
  お恥ずかしい。
  でも、出会えてよかった。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  オダサクの名短篇                   

 今でも「オダサク」と愛称で呼ばれることの多い作家織田作之助。
 オダサクは昭和22年(1947年)33歳の若さで亡くなっているが、文学史において太宰治や坂口安吾らとともに「無頼派」「新戯作派」などに属されることが多い。
 そして、彼の代表作といえば、何といってもこの『夫婦善哉』だろう。
 昭和15年(1940年)に発表された短編小説で、映画化やドラマ化など今でもたくさんの新しい読者を獲得している。

 主人公は化粧品問屋の跡取り息子ながら優柔不断で妻子がありながらついに女をつくって家を出てしまう男柳吉。そして、その相手であるしっかり者の元芸者が蝶子。
 この二人が初めて東京に駆け落ちしたのが柳吉31歳で蝶子が20歳。
 熱海で遊ぶ二人に襲ってきたのが大正12年の関東大震災。
 その時「えらい駈落ちをしてしまったという悔が一瞬あった」と、オダサクは書いているが、しっかりと揺れるはずのない自分たちの足元が、大きく波うつのだということ、そしてこれ以降の二人の生活をこの大きな地震が予告しているようで、この作品の良さが出た一文だろう。

 このあとも蝶子は何度も柳吉に騙され、それでも彼を捨てることはない。
 面白いのは小さな天婦羅屋を営む蝶子の父母で、柳吉に苦労する蝶子を見ながらも謗ることなくわずかではあるが助けの手を差し伸べる姿だ。
 一方の柳吉の実家の冷酷さと比べれば、大阪の人情はこういう貧しい場所から生まれたのだと思いたくなる。

 短篇小説ながら、オダサクの巧さ才気が迸る名品である。
  
(2020/04/16 投稿)

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  2019年に
  生誕110年となった太宰治だが
  没後70年以上経っても
  今だ人気が高い。
  その作品の映画化が続いたりしている。
  最近、太宰治の遺作となった
  『グッド・バイ』も映画化されました。
  主人公田島周二を演じるのは大泉洋さん。
  ヒロインのキヌ子は小池栄子さん。
  さてさて、
  その『グッド・バイ』ってどんな作品だったっけと
  今回何十年ぶりかで
  読み返してみました。
  太宰治らしからぬ
  いやいやこれこそが太宰治
  そんな不思議な未完の作品です、

  じゃあ、読もう。

  追記  昨日(3月27日)さいたま市では図書館の休館期間を4月19日まで延長されることが決まりました。
      さすがに図書館大好きの私もショックです。

  

sai.wingpen  あまりに出来過ぎのタイトル                   

 太宰治の、あまりに有名な最後の作品。
 文庫本にしてわずか30ページほどの作品だが、未完のまま絶筆となったもので、短編というのは本当はふさわしくないのだろう。
 実際これは太宰が亡くなく直前の1948年(昭和23年)6月に朝日新聞に連載を始めようとしていた作品で、残されたものは新聞連載の13回分までしかない。
 はたして太宰はどのような作品に仕上げようとしていたのか。
 残された「作者の言葉」に「さまざまの別離の様相を写し得たら」と綴っている。

 主人公は愛人を十人近く養っているという噂の絶えない、34歳の雑誌の編集長、田島周二。
 彼がこのたび心を入れ替えるにあたって女たちと上手に別れなければと画策。
 そこで浮かんだ浅知恵が、美人の奥さんをでっちあげ、その彼女を見せることで愛人たちに諦めてもらうというもの。
 しかし、なかなか美人が見つからない。そこに現れたのがキヌ子。美人だが、声がいけない、鴉声。
 そうはいっても時間がない。
 田島とキヌ子の奇妙は旅が始める。
 でも、残念ながら、「さまざまな別離の様相」を私たちは読むことができない。

 それにしても「グッド・バイ」。
 太宰ならきっとこう言う。ちえっ、気取ってやがら。
 自身の最後に「グッド・バイ」なんていかにも太宰らしいが、そういうタイトルをつけた時彼にはこれが最後の作品になるという自覚があったのだろうか。
 それとも、新しいコメディを生み出す意欲に燃えていたのだろうか。
 あまりの出来過ぎのタイトルだから、いつまでも読まれる作品になったといえる。
  
(2020/03/28 投稿)

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  今日はひな祭り

    吸物に手毬麩ふたつ雛の日      能村 研三

  目黒雅叙園にある百段階段で開催されていた
  「百段雛まつり 2020 ~出雲・因幡・萩 ひな紀行~」も
  新型コロナウイルスの影響で
  会期が短縮され
  3月1日で終了してしまいました。
  なんとか開催されている期間に見れたので
  よかったですが
  さまざまなところに影響が出ています。
  これは今回の展示にあった
  大嘗祭の衣服をまとったお雛さまです。

   20200222_115942_convert_20200301100023.jpg
  
  オリンピックもどうなるか
  不透明ですが
  今日はかつて1932年のロサンゼルスオリンピックで
  金メダルを取った
  西竹一を描いた伝記小説
  『硫黄島に死す』を紹介します。
  作者は城山三郎さん。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  バロン西を知っていますか                   

 子供の頃、ちょうど昭和39年の東京オリンピックのあたりでしょうか、オリンピックの感動秘話としてよく聞いたのが、1936年のベルリンオリンピックの棒高跳び競技で大江選手と西田選手がお互い譲らず、銀と銅メダルを獲得、その後そのメダルを合わせて「友情のメダル」とした話です。
 その次あたりによく聞いたのが、1932年のロサンゼルスオリンピックの馬術障害飛越競技で金メダルに輝いた西竹一のことかもしれません。
 バロン西と呼ばれ、太平洋戦争期に硫黄島で戦死した人物です。
 城山三郎が昭和38年の「文藝春秋」11月号に発表したこの短編小説は、この西竹一を描いた伝記小説で、翌年には文藝春秋読者賞を受賞しています。

 文庫本にしてわずか60ページ弱の短編ながら、実によくできた作品です。
 城山三郎はこの後『男子の本懐』や『落日燃ゆ』といった長編の伝記小説を数多く発表していますが、この作品は短編ながら実に的確に戦争期に軍人といて生きた西中佐の心構え、あるいはともにオリンピックを戦った愛馬ウラヌスへの想い、そして残していく家族への切ない愛情が淡々と描かれています。
 若い見習士官を介して、西の思いが語られていく手法も見事です。

 オリンピックの際に「勝たなくては」とあせる日本チームに対して、城山はどこか達観したフランスの老少佐を置くことで、冷静な目で当時の日本人を見つめています。
 それは決して自虐ではありません。
 何故なら、アメリカ軍の「ニシさん、出て来い!」という呼びかけにも応えず自死の道を選んだ西竹一を、当時の一人の日本人として敬慕の念で描いているからです。

 城山文学に欠かせない一篇です。
  
(2020/03/03 投稿)

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