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プレゼント 書評こぼれ話

  久しぶりに読書の醍醐味を
  味わいました。
  スーザン。オーリアンさんが書いた
  ノンフィクション作品、
  『炎の中の図書館』。
  でも、この作品は原題の
  「THE LIBRARY BOOK」の方がいいかもしれません。
  1900年初めの頃の
  ロサンゼルス中央図書館の責任者だった
  チャールズ・ラミスが作ったビラには
  こんなことが書かれていたそうです。

    あなたは本を読みたいですか?
    学びたいですか?
    ロサンゼルス公共図書館はあなたのためにあるのです。

  この言葉は決して古びていません。
  今でも生きている
  そして、どこの図書館でも通用する
  言葉だと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  図書館が好きな人、本が好きな人、必読です                   

 この作品は、1986年4月29日に発生したロサンゼルス中央図書館の大火災を描いた、なんともスリリングなノンフィクションだ。
 図書館にあるのは当然本であるから、そこでの火災が大規模になればどれだけの被害になるか想像もつかない。
 この火災の場合、燃えた本は40万冊、消火の際の放水などで70万冊が損傷したという。
 さらにこの火災が起こったのは白昼で、火災原因がなかなか特定されない中、一人の俳優志望の青年が逮捕される。逮捕容疑は放火。決めてはこの青年が事件後関与は疑わせる発言を繰り返していたこと。
 この作品ではもちろんこの青年の関与について、彼の家族等のインタビューや彼の弁護士の発言等で追いかけていく。実際青年は起訴されずに釈放されているが、真実が不明のまま、青年は1993年エイズの合併症で亡くなっている。

 しかし、著者は犯人捜しをしようとしたわけではない。
 著者がここで描こうとしたのは、ロサンゼルス図書館という施設の伝記であるといっていい。その時間の中で、大火災があったという事実があるだけだ。
 それだけであれば、この本は薄っぺらな事件ものに過ぎなかっただろう。
 ここにはロサンゼルス図書館誕生から、代々の責任者がどのような問題に直面し、そしてどう対処したかも描かれている。
 あるいは、図書館で働く人たちの姿を描くことで、図書館の機能そのものもわかるようになっている。
 さらにはこの建物が作られた当時のエピソード、火災のあとの再建への足取りなど、図書館の魅力が満載なのである。
 こんなに刺激的な作品は、めったにあるものではない。
  
(2020/01/31 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  どうも気になる本というのがあって
  今日紹介する
  福田ますみさんの
  『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』も
  そんな一冊でした。
  何しろ
  この文庫本は2010年に出ていますから
  結構前に出たものです。
  それがある大型書店に行くと
  今でも平台に置かれていて
  いつもその書店に行くと
  目について仕方がありませんでした。
  そんな気になる本。
  こんな事件があったことは
  記憶にありませんが
  この事件が起こった時以上に
  学校関係ではいろんな事件が起こっているように
  思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  それはあなたの隣でも起こるかもしれない                   

 「でっちあげ」という言葉を辞書で調べると「事実でないことを本当らしく作りあげること。捏造(ねつぞう)すること」と出て来る。
 「捏造」がこの言葉の由来とも関係していて、「捏」という漢字が「でつ」と読むところからそれが動詞化されて「でっちあげる」となり、それが「でっちあげ」へと名詞化される。
 最近でもあおり運転に同乗していた女性だと「でっちあげ」られ、SNSで拡散され大きな問題になった事件もあったように、インターネットの普及で「でっちあげ」の被害は増加している。
 第6回新潮ドキュメント賞を受賞したこの作品は、2003年全国で初めて「教師によるいじめ」が認定された福岡での体罰事件を追ったものだ。
 単行本は2007年1月に出て、「平成19年1月、控訴審がスタートした。」で終わっているようだが、それから2年後の2009年に出た文庫本では「でっちあげ事件、その後」が収録されている。
 この事件は今でもインターネットで事件の概要を見ることができるが、読むのであれば「その後」を収めた文庫本がいいだろう。

 この事件では教師から「いじめ」を受けたという児童とその両親からの訴えにより、教師はマスコミから「殺人教師」とまで叩かれることになる。
 しかし、裁判の過程で訴えた児童側にさまざまな「でっちあげ」があることが判明していく。
 著者の福田ますみ氏は現地取材の中で「殺人教師」と呼ばれた教師がそんなひどい人物でないことを知り、事件を追っていく。

 一度拡散された「でっちあげ」をなかったことにすることがいかに難しいか、この作品が示している。
  
(2019/11/27 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  二十四節気のひとつ、霜降
  字を見ればわかるように
  そろそろ霜が初めて降りる頃という意味。

      霜降や鳥の塒(ねぐら)を身に近く     手塚 美佐

  今日は本田靖春さんの
  『誘拐』というノンフィクション作品を
  紹介します。
  書評にも書きましたが
  これは昭和38年に起こった吉展ちゃん事件
  描いた作品です。
  この翌年は東京オリンピックのありましたが
  実際には
  まだまだ戦争のしっぽを
  引きづっていた時代であったともいえます。
  犯人逮捕までの攻防だけでなく
  犯人が背負っていたものの重さに
  あの時代を感じます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  作品に緊張があるから面白い                   

 文学賞はたくさんあるが、1979年創設され、すでに40回を迎える講談社主催の「講談社ノンフィクション賞」が2019年度(第41回)より「本田靖春ノフィクション賞」と名前を変えたということだ。
 本田靖春は、1933年生まれ、2004年に71歳で逝去した「戦後を代表するノンフィクションの書き手」である。
 本田自身、1984年に『不当逮捕』でこの賞を受賞している。

 本田靖春は早稲田大学卒業後、読売新聞社会部記者として活躍。その後、ノンフィクション作家として第一線を駆け抜けた。
 その名前が文学賞として残ることになったぐらいであるから、本田が日本のノンフィクションの世界に記した功績はそれぐらい大きいといえる。
 そんな彼の代表作ともいえるのが、この作品だ。

 これは昭和38年(1963年)3月に東京入谷で起こった男児誘拐事件を描いたノンフィクション作品である。
 誘拐されたのは当時4歳の男の子。名前は吉展(よしのぶ)。「吉展ちゃん事件」として、戦後の犯罪史の残る事件である。
 犯人は当時30歳だった男。
 警察はその初動で犯人を取り逃がすというミスを犯し、身代金までとられてしまう。
 現在のように防犯カメラが至るところにある時代ではない。
 電話の逆探知さえいきわたっていない。そんな中、犯人の声が録音されていた。

 事件のあらましだけでなく、犯人となった男の来歴、警察の捜査、あと少しで逃がしたかもしれない犯人との最後の攻防。
 これぞノンフィクションの傑作といえる。
 本田は文庫本に載せた「あとがき」にこう記している。
 「事実とのあいだの緊張関係を保ち続けるのは息苦しい。しかし、それなくしてノンフィクションは成立し得ないからである」。
  
(2019/10/24 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  今年没後30年になる
  開高健の『オーパ!』。
  もう何度読み返したことか。
  そして、
  この本を何度かめの再読をしていた
  9月21日付の朝日新聞の書評欄の広告に
  集英社開高健の広告が出ていた。
  それが、これ。

  20190922_083259_convert_20190922133526.jpg

  今年は没後30年で
  来年は生誕90年。
  つまり、

     開高健 The Yearが始まります。

  しかもこの広告には
  今読める開高健の作品が
  集英社以外も含めて掲載されていて
  永久保存版まちがいなし。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  いつ読んでも、何度読んでも、オーパ!                   

 最近のワールドニュースで心配されるのが、アマゾンでの尽きることのない森林火災の問題だ。
 アマゾンでの火災は以前から行われていて、1977年にアマゾンを訪れた作家開高健はその様子をこの本の中でこう記している。
 「燃えつきたところでは黒焦げになってたったり、たおれたりしている無数の木の散乱が巨獣の集団墓地のように見えた。(中略)災厄の前兆宇としての業火なのか、豊産と健康のための浄火なのか、それとも業火にして浄火であるのか、私にはわからない」
 それはまるで開高の予言でもあるかのようだ。

 この作品はなかなか長編小説が書けないで倦んでいた開高がブラジルの友人からの誘いに歓喜し、自ら当時の「PLAYBOY」という雑誌の編集長の企画を持ち込み採用された、ブラジル・フィッシングの旅行記だ。
 だから、トクナレやピラルクー、ドラドといった珍魚怪魚の釣果を目指し奮戦する姿は当然描かれるが、先の森林火災の記述のように文明批評の目はさすがに確かで、そのあたりはノンフィクション作家としての開高を見ることになる。

 ブラジルの友人からの誘いの言葉に、開高の文体には「いい年をした大人衆をそそのかす要素があるらしい」という一文があったというが、まさに開高の文学を的確にとらえた評価といっていい。
 この本にはどこを切ってもそんな魅力のある要素が盛り込まれている。
 どこを読んでも、「オーパ!」(ブラジルで驚いたり感嘆したりする時口に出る言葉)なのである。
  
(2019/09/24 投稿)

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