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 卒業式シーズンです。
 卒業式といえば、「仰げば尊し」。

   ♪ 仰げば尊し わが師の恩
     教えの庭にも はや幾歳

 でも今でも歌っているのかな。
 私は結構好きだけど、この歌。
 名を成した人たちの評伝なんか読むと、
 先生との出会いが運命を変えたみたいなことがよくあって、
 まさに「わが師の恩」。
 そんな先生を持った人は幸福だと思います。
 今日はそんな先生を描いた
 「陽のあたる教室」という映画の話です。

  

 映画「陽のあたる教室」は1995年公開(日本は1996年)のアメリカ映画。
 原題が「Mr. Holland's Opus」で、
 直訳すると「ホランド先生の作品」ということになりますが、
 「Opus」はホランド先生が音楽教師なので、
 クラッシック音楽などの作品番号を指す言葉にあたります。
 主人公のホランド先生を演じているのは
 リチャード・ドレイファス
 映画「グッバイガール」(1977年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞している
 名優です。
 この作品でも作曲家になりたいが
 生活のために高校の音楽教師とならざるをえない男を演じていて、
 さすがにうまい。
 そんな教師ながら、次第に生徒たちに近づいていきますが、
 初めての子が難聴だということに気付き、
 次第に荒れていく様など、
 学園ドラマというよりも家族を描いた作品ともいえる。

 最後に学校の予算が厳しくなり、
 音楽教師をやめざるをえなくなったホランド先生を待っていたのは、
 これまで先生に音楽の素晴らしさを教えてもらった
 たくさんの教え子たちというのも泣かせる。
 この教え子たち一人ひとりが
 ホランド先生の「Opus」(作品)。
 いい先生に教えたもらった子供たちは
 なんて幸せなんでしょう。

 やっぱり、「わが師の恩」ですよ。

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 昨日大野裕之さんの
 『ビジネスと人生に効く 教養としてのチャップリン』という本の紹介の中で
 1970年代にチャップリンの映画がリバイバル上映されてことを書きました。
 「ビバ!チャップリン」です。
 その第1回めが「モダン・タイムズ」で
 1936年のチャップリン映画でした。
 そして、「ビバ!チャップリン」の第2回めが「街の灯」。
 大野裕之さんはその著書の中で
 「笑いに涙、そして冷徹な社会批評を、残酷なまでに美しい愛の物語に盛り込んだ、
 まさにチャップリン映画の全ての要素が詰まった傑作」と
 書いています。
 今日はこの映画「街の灯」の話です。
 この映画、手元に昔録画したDVDがあったので
 今回久しぶりのチャップリンとの再会でした。

  

 映画「街の灯」は1931年に作られたチャップリンの無声映画です。
 ただ無声映画といっても音楽がはいった「サウンド版」です。
 物語は盲目の少女に恋した放浪者チャーリーが
 献身的に彼女をたすけ、自身は誤って刑務所にいれられてしまいます。
 出所して彼女と再会したチャーリー。
 彼女はチャーリーのおかげで目が見えるようになっていて
 触れあった手の感触で
 彼女は自分を援けてくれたのが放浪者のチャーリーだと気づくという
 愛の物語。
 ですが、これは純粋に喜劇として
 数分に一度は笑わせてくれるギャグが満載の映画です。

 なかでも有名なのはボクシングの試合の場面。
 少女のためにお金が必要なチャーリーは
 弱いのにボクシングの試合にかりだされます。
 相手はとても強そうな男。
 控え室から相手にこびるチャーリー。
 そして、試合が始まれば逃げまくるチャーリー。
 もう笑いの連続です。
 この時のチャップリンの動きは必見です。

 この映画は、ラストの花を片手にはにかむチャップリンの表情が
 あまりに印象的なので
 愛の部分が大きく取り上げられていますが
 喜劇としてこんなによく出来ている作品も
 あまりないのでは。
 チャップリンはまさに喜劇王でした。

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 先週、早川千絵監督の「PLAN75」という映画を紹介しました。
 あの映画では75歳以上になれば自分の生死を選択できるという
 近未来型の制度を映画化したものでしたが、
 実は日本には「棄老伝説」という民間伝承が昔からあって
 その頃では70歳になると棄てられていたという言い伝えがありました。
 その伝承を小説にしたのが
 深沢七郎の『楢山節考』です。
 この小説が発表されたのが1956年(昭和31年)。
 大きな話題となり、
 二度映画化されています。
 最初の映画化は1958年(昭和33年)、木下恵介監督作品です。
 この作品はオール・セットという斬新なもので
 この年のキネマ旬報ベストテン1位になっています。
 今日紹介するのはこれではなく、
 二度目の映画となった今村昌平監督作品の「楢山節考」です。

  

 今村昌平監督の映画「楢山節考」は1983年(昭和58年)公開。
 その年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドール賞を受賞した
 日本映画の名作。
 主人公であるおりんを演じるのは坂本スミ子さん。
 おりんは69歳という役どころでだが、
 坂本さんはこの映画の時まだ50前。
 それでも見事に老け役を演じています。
 69歳になってもまだ歯がりっぱにあることにひけ目を感じて
 自ら石臼で歯を抜く場面など凄みを感じました。
 おりんが住む村では70歳になった年寄りは山に棄てる習俗があって
 おりんも自ら入山を望みます。
 貧しい農家にとって食い扶持がひとつなくなることは
 それだけ余裕が生まれることで
 おりんはそれゆえに入山を望みます。

 そのおりんを山に連れていく息子役を
 緒形拳さんが演じています。
 この当時の緒形さんは出る作品すべて重厚で
 とても安定感のある演技を見せています。
 なので、おりんを連れて山に入っていく姿は
 胸うたれます。
 その息子の後妻役に昨年(2022年)12月に亡くなった
 あき竹城さんが扮しています。
 今村昌平監督はあきさんにしろ坂本さんにしろ
 肉感的な女性が好みだったのでしょう。

 この映画でたびたび生き物たちの生死や交合の様子が描かれます。
 命そのものを問うという姿勢が
 そこにもよく出ていました。
 この映画の公開時のキャッチ・コピーは

   親を捨てるか、子を捨てられるか。

 どちらにしても切ないものです。
 この映画、40年前の作品ですが、
 ちっとも古さを感じないのはいい映画だからでしょう。

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 昨日稲垣えみ子さんの『老後とピアノ』という本を紹介しましたが、
 実際「高齢者」とは何歳からいうのでしょう。
 世界保健機関(WHO)では65歳以上を「高齢者」と定義しているそうで、
 日本の場合は
 65歳から74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と
 区分されています。
 もっとも60歳以上の人を対象にしたアンケートでは
 70歳以上が「高齢者」と考える人が一番多いようで、
 年齢で判断できないという人も多かったようです。
 もし、「75歳以上の高齢者に対して自らの生死の権利を保障し、支援する」、
 そんな制度ができたら、
 あなたならどうしますか。
 そんな制度を映画化し、昨年話題となった作品があります。
 今日は、その映画「PLAN75」の話です。  

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 映画「PLAN75」は2022年公開された
 早川千絵監督の日本映画。
 第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門
 特別表彰を受賞
 キネマ旬報旬報ベストテンでも8位
 高い評価を得た作品です。
 23日に発表された第65回ブルーリボン賞でも
 早川監督は監督賞、主演の倍賞千恵子さんは主演女優賞を見事受賞しました。
 おめでとうございます。

 冒頭に書いたように、
 「75歳以上になれば自ら死を選び、国がそれを支援する」という
 「PLAN75」という架空の制度を
 実にリアルに切々と描いています。
 78歳になる主人公ミチを倍賞千恵子さんが
 老いの姿を見事に演じていて、
 その演技を見ているだけで圧倒されます。
 「PLAN75」の制度を選んだ彼女に
 しばしの時間寄り添う「PLAN75」のスタッフ成宮を
 河合優美さんが演じています。
 寄り添ううちに互いに通うあう心。
 老いと若さがつながりあえば、
 こういう制度も必要なくなるのかもしれない。
 そんなことを思います。
 もう一人、叔父さんを「PLAN75」に送り出すスタッフとして
 磯村勇斗さんが演じています。
 去ろうとする叔父をひきとめることのできない
 そんなつらい心情を
 静かな演技で表現しています。

 倍賞千恵子さん演じる主人公が
 年齢ゆえに職場を追われ、住む家もままならない状況は
 すでにこの国にあるリアルのように思います。
 だったら、「PLAN75」まであと少しかも。
 そう考えれば、実にこわい映画といえます。

 アマゾンプライムでも視聴が始まりました。
 必見の一作です。

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 映画雑誌「キネマ旬報」が毎年行っている「ベストテン」は
 長い歴史を持っています。
 始まったのが1924年で、大正13年。
 先日発表された2022年度のベストテンは実に第96回となります。
 そこで選ばれた外国映画部門の第1位
 ポール・トーマス・アンダーソン監督の「リコリス・ピザ」。
 この映画のこと、まったく知らなかったので
 さっそくTSUTAYAでDVDレンタルして
 観ちゃいました。
 今日は、映画「リコリス・ピザ」の話です。

  

 映画「リコリス・ピザ」は2021年公開(日本では2022年)の
 アメリカ映画。
 「キネマ旬報」のベストテンだけでなく、
 アメリカアカデミー賞の作品賞などにもノミネートされていて
 評価が高い作品。
 でも、ですよ。
 日本での公開時のこのタイトルはどうでしょう。
 原題と同じだから、いいというものでもないように思います。
 そもそも「リコリス・ピザ」は
 1970年代から80年代にかけてのアメリカのレコードチェーンの名前だとか。
 映画の舞台が1970年代のカルフォルニアだとしても、
 日本での公開の時ぐらいは
 もう少し考えて欲しいな。
 私なら、「走れ!70‘S」にするかな。
 何しろ、主人公たちがよく走っているので。

 物語は高校生の男の子が年上の女性と出会って
 くっついたり、離れたりするお話。
 (かなりザクッと書きましたが)
 この二人、そのたびに街中を走っています。
 主人公の男の子を演じているのはクーパー・ホフマン
 彼、どこから見ても高校生に見えません。
 ヒロインを演じているアラナ・ハイム
 映画の舞台となった街で実際育ったロック・バンドのメンバーだとか。

 時代背景とか当時の風俗、社会現象など
 多分よく再現されているのだと思いますが、
 どうも私はもうひとつリズムにのれませんでした。
 なので、もし私ならこの映画は
 外国映画の1位には推さなかったな、多分。
 もっとも、この時代のこと、音楽のこと、がわかる人には
 涙がでるくらいビンビンきたのでしょうね。
 アカデミー賞を獲ったら、観るといいかも。

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