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 今日は昨日につづいて
 東海林さだおさんの本の紹介。

  

 食のエッセイスト、食の伝道師と声を大にしていいたい、東海林さだおさんの
 何がすごいかというと、
 かっぱえびせんを口の中に28本詰めたこと(本書「えびせん大実験」)ではなく、
 ちゃんと自分で料理するという点です。
 つまりは、男の鏡、女性がほれ込むこと間違いなし。
 そういう下心があるのかわかりませんが、東海林さんは今日も自炊。
 しかも、東海林さんの自炊は今に始まったわけではない。
 それは代表作である「丸かじり」シリーズとか読めば、わかること。

 この本、『自炊(ソロメシ)大好き』は、
 東海林さだおさんの過去の作品から「自炊」というテーマのものを
 再編集したアンソロジー。
 つまりは、おいしいところばかりの本。
 では、東海林さんはどんな料理を作ってきたか。
 「豆腐丸ごと一丁丼」「バター醤油かけごはん」「ウズラの親子丼」
 「簡単チャーシュー」「チャーハン」「タコ焼き」「カツ丼」、
 ほか多数。
 私のお気に入りは、ウズラの卵の目玉焼き。(これは絵もかわいい)

 こういう本を読むと、料理ができる人がうらやましい。
 「男子厨房に入るべからず」、なんて誰が言ったのか。
 これからの男子は厨房に大いに入るべし。
 東海林さだおさんを見習うべし。

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 「名言」を「広辞苑」でひくと、
 「名高いことば。すぐれたことば」と出ています。
 一部の人には、ここは「名言」を残してやろうという
 奢った気分を持つこともあるでしょうが、
 大抵の人はそんなことは考えないのではないかしら。
 ただ、その言葉を目にしたり、耳にした時、
 ああ、いい言葉だなと思ったら、
 それがその人にとっての「名言」になるのだと思います。

   

 「安西水丸の絵と言葉」とサブタイトルのついた
 この『一本の水平線』には、
 2014年に亡くなったイラストレーターの安西水丸さんの
 素敵なイラストと短い文が収められています。
 安西さんはそれらの言葉を
 「うまいこと話してやろう」とか「感動させてやろう」とは
 思っていなかったはずです。
 しかし、その何気ないつぶやきのような言葉に
 心がときめきます。
 まずは本のタイトルになっている「水平線」について。

   「わたしはイラストレーションを描く時にホリゾン(水平線)をよく使います。
   紙の上にホリゾンを一本引くと、絵に安定感が生まれるからです。

 以下、いくつか。

   「人間は、どのように生きるかよりも、これだけはしたくない
   というものを持って生きる方が恰好いいですね

   「こんな風に生きたいと思ったことがある。
   絶景ではなく、車窓の風景のような人間でいたいということだ。

 安西水丸さんの絵はどうしてクールに見えるのだろう。
 何度見ても、飽きるということがない。
 そして、その言葉もまた、人をひきつけるのは何故だろう。
 安西さんの言葉にも、
 まっすぐな「一本の水平線」があるからだろうか。

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 向田邦子さんは昭和4年(1929年)生まれながら、実に多くの写真が残されている。
 戦争が終わって、世の中が高度成長期にはいろうとする
 昭和30年代には私の家にはまだカメラはなかったほどだから、
 そういう感覚で見た時、
 向田さんがいた場所はかなり進んでいたのではないだろうか。
 9歳年下の妹、向田和子さんが編著となった『向田邦子の青春』の巻末についた
 年表を読むと、
 昭和27年向田さん23歳の時に雄鶏社と出版社に入社し、
 「映画ストーリー」という映画雑誌の編集部に配属になっている。
 そのあたりがやはり陽のあたる場所だったのだと思われる。

   

 それと、妹の和子さんもこの本のエッセイに書いているが、
 向田さんの洋裁の技術の高さが
 見られることの意識の高さにつながっているような気がする。
 すらりと立ってカメラに向かう向田さんに少しばかり自慢気な表情を認めるのは
 私だけだろうか。

 その一方で、長女としての向田さんの責任の強さは
 和子さんのエッセイから読み解くことができる。
 中でも、「親以上にあなたを思うことはできないから」と姉邦子にいわれた言葉を
 和子さんは忘れることはないという。
 その逆もまた真実で、向田さんが亡くなった時、
 和子さんは言葉を失うほどつらかったが、それ以上に
 「母の悲しみを越えるものではない」と気づく。
 そういう大事なことを教えたのも
 姉向田邦子という人だった、と妹和子さんは綴っている。

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 三島由紀夫は『仮面の告白』で産湯の時の盥(たらい)の記憶があると書いているが、
 凡人にはとうていそんなことはない。
 では、いつの頃の記憶からあるかといえば、
 幼稚園に行ったあたりだとうっすらと覚えている。
 小学生ともなれば、もう少しはっきりしてくる。
 それは誰しもそうかもしれず、この本の著者益田ミリさんもそうみたいだ。
 「全部は覚えていなくても、胸が熱くなるようなあの楽しかった感覚がずっと残り続けている」という益田さんが、
 「短いこども時代の思い出をもとにした物語」を綴ったのが、
 2022年6月に刊行されたばかりの『小さいわたし』だ。

  

 微笑ましいのが、
 本当の「小さな」益田さんは両親のことを
 「お父さん、お母さん」と呼んでいたそうで、
 「パパ、ママ」と呼ぶのが憧れで
 この物語ではそう変えているということ。
 子供の頃というのは、そういう呼び方ひとつ憧れがあって
 ピアノなんかもそうだろう。
 この本の中でも
 「小さいわたし」がピアノに憧れ、ピアノ教室に通うエピソードが出てくる。
 ところが、憧れで始めたピアノが続かない。
 誰にもそんな経験はないだろうか。

 小学入学からたった1年間の「小さいわたし」を描いた物語は
 大好きだった担任の先生のよその学校への異動で終わる。
 そんな「小さいわたし」に
 益田さんはこんなメッセージをおくっている。
 「いっしょうけんめい遊んでくれてありがとう。キミのおかげで、おとなになってもときどき幸せな気持ちになれるんだよ。」

 ふと、思い出したことがある。
 「ドラえもん」でのび太くんが優しかったおばあちゃんに会いにいくエピソード。
 のび太くん、あの時「小さい」のび太くんに会っているんだ。

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プレゼント 書評こぼれ話

  田尻久子さんの文章に
  すっかりはまってしまいました。
  今年も半年を過ぎたばかりですが
  今年のベストワンはきっと
  田尻久子さんの本を選びそうで
  こんなに早々に決めていいのかしら。
  今日は田尻久子さんの
  『みぎわに立って』という随筆集。
  こういう人が本屋さんを営んでいるというのは
  なんて素敵なんでしょう。
  ほとんど面識のない人から
  開店周年のお祝いケーキが届くのも
  わかるような気がします。
  いい本でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  いい本は人と人との出会いから生まれる                   

 熊本で「橙書店」という本屋さんを営む田尻久子さんには、多くはないが、素敵な随筆集が数冊ある。
 そのうちの一冊『橙書店にて』という本を読んだあと、「いい文章は、水に似ている。」というのが最初の印象でしたが、田尻さんの文章に同じような感想が抱く人がいるようで、彼女の最初の随筆集となったこの本のなかに新聞連載の文章を読んで昔会社の同僚であった人から「水のような文章だとほめてくれた」という挿話が綴られている。
 そのあとで、田尻さんはこう結ぶ。
 「流れる水のような文章を書きたいのかもしれない。」と。

 本書は2017年2月から4月まで西日本新聞に連載されていたもので、田尻さんの文才を見出した西日本新聞の編集者の眼力に感心する。
 さらに新聞連載中に本にしないかと声をかけたのは里山社という出版社でしたが、熊本の出版社と思いきや発行所の住所は神奈川県川崎市となっている。
 いい本というのは、こうして出来上がるのだという見本のような、人と人との出会いで生まれているのがよくわかる。

 ひとつの話は2ページに収まる分量で、それでいてなんとも豊かな時間を共有できたと思える。
 どの話から読んでもいい。田尻さんの文章は、何も強制しない。
 どんなふうに思っていい。何故なら、田尻さんの文章は、水なのだから。さまざまに形をかえる。
 幸福な時間を過ごせる一冊である。
  
(2022/07/06 投稿)

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