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 本を手にする、そして読むきっかけに
 本の方から読んでくださいと声をかけられる、ということをよく耳にする。
 経済評論家山崎元さんとインディクス投資家水瀬ケンイチさんの共著となる
 『全面改訂第3版 ほったらかし投資術』という新書との出会いも
 そうだったかもしれない。
 本屋さんの新書の棚で、新刊にも関わらず(この本は2022年3月刊行)
 面陳(表紙を見せる陳列方法)されていた。
 なんといっても、「ほったらかし」という言葉がいい。
 花や野菜の栽培でもそうだが、
 普通うまく育てるにはいろいろと手間がかかる。
 それはお金の殖やし方でもそうで、
 だから本屋さんの雑誌のコーナーには必ずマネー雑誌が並んでいる。
 それが、「ほったらかし」で殖えるというのだから、興味をひく。

  

 それがどんな方法であるかは本書を読んでもらうとして、
 「全面改訂第3版」について説明しておく。
 この本のもともとの版が出たのは2010年だという。
 この時に手にしていたらと思わないでもない。
 そのあと、その改訂版が2015年に出ている。
 そして、これが3回めの改訂というわけだ。
 何度も改訂されているということは、ある程度の信頼をおけるという
 証左にもなるのではないか。

 この本には投資に関するいくつもの名言が載っていて、
 運用するかどうかはともかく、それらの言葉に接するだけも為になる。
 「投資は勝ち負けではない
 「持っていることが投資
 奥が深いぞ、投資は。

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 役職定年だ、早期退職だと騒がれたのは
 つい15年ほど前のこと。
 終身雇用が日本企業の強みといわれた時代から
 シニア世代を追い出しにかかっていた頃の話だ。
 それが今はどうだろう、
 雇用延長、定年延長で60歳定年などまるで夢物語のよう。
 もちろん人材不足を補う企業側の事情もあるが、
 働く側からすると将来の生活不安で働くしかないといった事情もうかがえる。
 何しろ時代は「人生100年時代」なのだ。

 2019年に「老後2000万円問題」という報道がなされたことがある。
 つまり、年金で生活する夫婦のモデル世帯で
 30年間に2000万円不足するといわれて、慌てた人も多いはず。
 しかも、人生100年時代というから30年どころか40年で見積もれば
 不足額はさらに増える。
 しかも、ほとんどセロ金利の時代。
 では、どうすればいいか。

  

 経済アナリストでもある佐藤健太氏の
 『何歳からでも間に合う初めての投資術』という本には
 このタイトルの前にこんな一文がつく。
 「銀行預金しかないあなたのための」と。
 読みやすい内容だが、この本を読んだからといって
 預金が夢のように増えるわけではない。
 むしろ、そんな時代に今自分たちはいるのだという
 心構えとして読んでおくのがいい。
 というのも、投資は増えるばかりではないからだ。
 老後にとっておいた虎の子の預金が目減りすることだったある。

 でも、そんな心配をしていてもお金は増えないのもわかっている。
 増えていくのは年の数ばかりというのも切ないが。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  川上弘美さんの『東京日記7 館内すべてお雛さま。』は、
  書名に「7」とあるように、
  シリーズ7冊めの作品です。
  最初に刊行されたのは、2005年ですから、
  もう18年も前になります。
  このブログでもちゃんと全巻紹介しています。
  このシリーズを読んで
  タメになるとか感動するとかないのですが、
  なんでしょうね、
  つい読みたくなります。
  それって、おいしい水みたいかな。
  味ってあまりないのに、
  とってもおいしく感じる時ありますよね。
  あんな感じの作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  コロナ禍であっても彼女は彼女                   

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、インフルエンザと同様の「5類」に変更されたのは、2023年5月。
 だからといって、ウイルスが消えた訳ではないのに、なんだか気分が違う。
 コロナが騒がれだしたのが、2020年はじめだから、実に3年という長い期間、私たちの生活はあっちにいったりこっちに追いやられたしたことになる。
 日記をつけている習慣の人にとっては、貴重な3年の記録として残っているのではないだろうか。

 では、この人の場合はどうだろう。
 「WEB平凡」で長期連載となっている川上弘美さんの『東京日記』の7巻目が出た。
 連載期間は2019年3月から2022年1月までで、世界中がコロナ禍で暗澹としている時期である。
 「新型コロナが日本にもしだいに広がりつつあり、外出や集会の自粛が要請される毎日」と書かれているのは、「三月某日 晴」とあるが、おそらく2020年の3月のことだろう。
 続く、「四月某日 晴」、「新型コロナ感染による緊急事態宣言が発出される。」とある。
 この時期、世の中はかなり神経質になっているが、川上さんの文章はあまりそう感じない。
 それが、この『東京日記』の良さであり、面白さといえる。
 何しろ、こんな大事な時期の日記ながら、書名は『館内すべてお雛さま。』なんですから。

 それで、一冊の本としてまとめあげられた「2023年初春」、川上さんは「あとがき」にこう書いている。
 「それほどに「日常」は強いものであるという驚きがありますが、反対にいえば、「日常」がまだ続いていることのありがたさも、身にしみます。」
 なんだかんだあっても、やはり川上弘美さんも緊張していたのかもしれない。
  
(2023/05/30 投稿)

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レビュープラス
 夫馬(ふま)信一氏の本書『百貨店の戦後史』は、
 タイトルはそっけないが、実に刺激的で、労作といっていい。
 内容は副題の「全国老舗デパートの黄金時代」とあるように、
 かつて地方都市の繫栄の一翼を担った地方百貨店12店舗の栄枯盛衰が描かれている。
 ただ一店、プロローグで東京・渋谷の東急百貨店東横店が入っているが、
 残りの11店舗は地方都市の百貨店だ。
 ちなみにその店舗の一部を書いておくと、
 棒二森屋(函館)、中合福島店(福島)、大沼山形本店(山形)、前三百貨店(前橋)、
 伊万里玉屋(伊万里)、丸正(和歌山)、松菱本店(浜松市)、などである。

  

 著者の夫馬氏のことに触れておくと、巻末の著者略歴を見ても、
 氏が小売業に従事したことも流通の専門家でもないことがわかる。
 航空貨物や物流関係の経歴をもつ氏が何故地方百貨店の著作を書くに至ったか、
 それは百貨店の屋上にあった遊園地の取材がきっかけだったという。
 昭和世代の人が持っている百貨店の思い出といえば、
 屋上にあった遊園地であり、大衆食堂だろう。
 この本の中でも、今では貴重となった当時の屋上遊園地の写真が
 たくさん収められている。

 そして、これらの店舗は成長の過程で店舗がどんどん大きくなる一方で、
 経済の波に晒され、浮き沈むしていく姿は
 地方都市のそれと同じくしている。
 そして、時にこれら百貨店を水害であったり火災が追い打ちをかけていく。
 百貨店は大きな商業施設であるが、
 そんな姿はまるで私たち人間の一生にも見えてくる。
 今はなくなったこれらの百貨店が再生することはないだろうが、
 そこにあった思い出はいつまでも残るだろう。

 以下、余談です。
 本書に登場する中合福島店と棒二森屋は
 私が仕事でかかわった百貨店でした。
 50代初めの頃で、すでに10年以上も以前のことになります。
 今は2つの店舗もすでに閉店していますが、
 その当時も街のこれらの百貨店に寄せる思いが強かったことを
 あらためて思い出します。

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 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって
 5か月が過ぎました。
 早期に停戦になる期待もありましたが、
 今は停戦の気配すら感じなくなりました。
 今でも毎日報道される戦闘の様子に心を痛めるとともに
 私たちがいかにウクライナのことを
 知らなかったということを思い知りました。
 そんな時、6月10日に急遽発刊されたのが
 この『中学生から知りたい ウクライナのこと』でした。

  

 正直にいうと
 「中学生から知りたい」を
 中学生にもわかるように書かれた内容と勝手に思い込んでいました。
 そのことについて、こう説明されています。
 「「中学生から知りたい」というのは、私たちの学んだ知識を
 カジュアルダウンしてわかりやすく伝える、とは少し異なった方向にあります。
 むしろ、私たち大人の認識を鍛え直す、という意味も込められている
 ウクライナの問題を知ることで
 もっと俯瞰的なことも考える、
 そんな一冊になっています。

 著者の小山哲氏は1961年生まれの京都大学教授。専門はポーランド史。
 もう一人の藤原辰史氏は1976年生まれの京都大学准教授。専門は現代史。
 本書では、まずこの二人が中心となって侵攻2日後に出した
 「ロシアによるウクライナ侵略を非難し、ウクライナの人びとに連帯する声明」が載っています。
 そのあとに、ウクライナの歴史が講義風にまとめられていますが、
 それを読むと、「今」が「過去」から続いているのがよくわかります。
 つまり、「今」だけ見ても理解できないし、
 「過去」から続くことはウクライナの人たちが連綿と繋いできたものかもしれません。

 この本の中で藤原辰史氏が書かれた一文が心にとまりました。
 「心が乱れた今こそ、わかりやすい図式に飛びつくのではなく、
 複雑な現象の複雑さに目を凝らし、心を落ちつかせて、「学ぶ」ことが重要ではないでしょうか
 ウクライナの問題だけでなく、コロナウイルスの再拡大のことも、
 あるいは元首相の襲撃事件についても
 藤原氏のこの一文は有効だと思います。

 この本は、ウクライナだけでなく
 いろんなことを反対に私たちに問いかけてくる一冊です。

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