03/08/2009 私の好きな作家たち 第七回 宮澤賢治

「宮沢賢治」さんです。

小学六年の時です。

国語の教科書に出ていた『虔十公園林』が最初に出会った作品です。
その時、授業の中で、有名な『雨ニモマケズ』の詩を暗誦させられました。
全部覚えないと、いつまでも立たされて、
そのことは少年の私にはとてもつらかった。嫌な先生だと思いました。
でも、大人になってみると、今でも全部とはいえないけれど、
あの詩は諳んじていえるんですよね。
考えてみれば、あの時、そういう経験がなければ、
きっとそういうことはなかったにちがいありません。
少年の心ではつらいけれど、いつかそれが自分の宝物になる。
『雨ニモマケズ』は、そんなことを考えさせてくれる詩でもあります。

『風の又三郎』とかいくつかの作品を読むことになります。
たしかに賢治の作品はたくさん有名な作品が多いのですが、
最初に出会ったのが『虔十公園林』でよかったと思います。
あの作品の中の「虔十(けんじゅう)」という少年は、どこか
「雨ニモマケズ」に通じるところがあるんですよね。
賢(さか)しらではないが、純朴であること。
賢治の文学の魅力はそこにあると思います。
『よだかの星』も好きな作品です。
みんなに嫌われて(現代風にいえば、イジメみたいなものでしょうか)
生きているのも嫌になって、ぐんぐん空へと昇っていく、よだか。
そんなよだかの口に小さな羽虫がはいっていく。
みんなに嫌われている自分だけど、こうして何の罪もない虫たちを
殺してしまうんだ。
生きとし生けるものにはすべて意味がある。
嫌われるよだかもそうだし、よだかに食べられる虫たちもそうだ。

文庫本でも、ほとんど読むことができます。
やはり最も好きなのは『銀河鉄道の夜』です。
もう何度読んだでしょうか。
ある時、子供の頃なら夏休みとなる季節に、毎年この本を
読もうと決めたことがあります。
それは、子供の頃に「雨ニモマケズ」を暗誦させられたことに
つながっているんですね。
小学生や中学生の頃に、夏休みというと決まって「読書感想文」を
書かされますよね。
ああいう風に押し付けられると、その時はすごく嫌だけど、
いつかその時に読んだ本がきっと役に立つことがある。
それと同じことを、私は賢治の『銀河鉄道の夜』で試したわけです。
あの作品は何度読んでも、深い感銘を覚えます。

詩といえば『永訣の朝』。
「けふのうちに とほくにいってしまうわたしのいもうとよ」
という一節で始まる、慟哭の詩です。
その詩のなかに、「あめゆじゅとてきてけんじゃ」という言葉が
何度も何度も出てきます。
最初、これがわからなかった。
「あめゆじゅとてきてけんじゃ」
熱で乾いた咽喉をうるおしたい妹とし子の言葉なんですよね。
「おもての霙(みぞれ)を取ってきて」

そして、本当にいい作品がたくさんあります。
私はそんな賢治を生んだ、盛岡も大好きです。
そして、「風ニモマケズ」を暗誦させてくれた先生に
感謝します。
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