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本私の好きな作家たち」の第七回は、「雨ニモマケズ」の、
 「宮沢賢治」さんです。

本 宮沢賢治との出会いは、わりと記憶にあって、
 小学六年の時です。
 宮沢賢治
 国語の教科書に出ていた『虔十公園林』が最初に出会った作品です。
 その時、授業の中で、有名な『雨ニモマケズ』の詩を暗誦させられました。
 全部覚えないと、いつまでも立たされて、
 そのことは少年の私にはとてもつらかった。嫌な先生だと思いました。
 でも、大人になってみると、今でも全部とはいえないけれど、
 あの詩は諳んじていえるんですよね。
 考えてみれば、あの時、そういう経験がなければ、
 きっとそういうことはなかったにちがいありません。
 少年の心ではつらいけれど、いつかそれが自分の宝物になる。
 『雨ニモマケズ』は、そんなことを考えさせてくれる詩でもあります。

本 それで、「宮沢賢治集」みたいな単行本を買ってもらって、
 『風の又三郎』とかいくつかの作品を読むことになります。
 たしかに賢治の作品はたくさん有名な作品が多いのですが、
 最初に出会ったのが『虔十公園林』でよかったと思います。
 あの作品の中の「虔十(けんじゅう)」という少年は、どこか
 「雨ニモマケズ」に通じるところがあるんですよね。
 賢(さか)しらではないが、純朴であること。
 賢治の文学の魅力はそこにあると思います。

 『よだかの星』も好きな作品です。
 みんなに嫌われて(現代風にいえば、イジメみたいなものでしょうか)
 生きているのも嫌になって、ぐんぐん空へと昇っていく、よだか。
 そんなよだかの口に小さな羽虫がはいっていく。
 みんなに嫌われている自分だけど、こうして何の罪もない虫たちを
 殺してしまうんだ。
 生きとし生けるものにはすべて意味がある。
 嫌われるよだかもそうだし、よだかに食べられる虫たちもそうだ。

本 大人になってから、賢治の作品のほとんどを読みました。
 文庫本でも、ほとんど読むことができます。
 やはり最も好きなのは『銀河鉄道の夜』です。
 もう何度読んだでしょうか。
 ある時、子供の頃なら夏休みとなる季節に、毎年この本を
 読もうと決めたことがあります。
 それは、子供の頃に「雨ニモマケズ」を暗誦させられたことに
 つながっているんですね。
 小学生や中学生の頃に、夏休みというと決まって「読書感想文」を
 書かされますよね。
 ああいう風に押し付けられると、その時はすごく嫌だけど、
 いつかその時に読んだ本がきっと役に立つことがある。
 それと同じことを、私は賢治の『銀河鉄道の夜』で試したわけです。
 あの作品は何度読んでも、深い感銘を覚えます。

本 そうそう、賢治といえば、童話だけでなく、詩人としても有名です。
 詩といえば『永訣の朝』。
 「けふのうちに とほくにいってしまうわたしのいもうとよ
 という一節で始まる、慟哭の詩です。
 その詩のなかに、「あめゆじゅとてきてけんじゃ」という言葉が
 何度も何度も出てきます。
 最初、これがわからなかった。
 「あめゆじゅとてきてけんじゃ
 熱で乾いた咽喉をうるおしたい妹とし子の言葉なんですよね。
 「おもての霙(みぞれ)を取ってきて」

本 賢治は本当にたくさんの作品を残しました。
 そして、本当にいい作品がたくさんあります。
 私はそんな賢治を生んだ、盛岡も大好きです。
 そして、「風ニモマケズ」を暗誦させてくれた先生に
 感謝します。