03/11/2009 書評:久世光彦vs.向田邦子

今回書きました久世光彦さんは知らない人がいるかもしれませんが、
かつて『時間ですよ』とか『寺内貫太郎一家』とか『ムー一族』といった、
TBSの黄金期を作った演出家です。
『時間ですよ』の放映は昭和45年。覚えている人もいるでしょうが、
なんといってもドラマの舞台が「銭湯」というのが驚きでした。
毎回ちらちらと裸の女体が画面に登場するのですから、
血気盛んな少年期の私にとっては、やはり忘れられない番組ですね。
天地真理さんとか浅田美代子さんが売れ出すのもこの番組から。
吉田拓郎さんも出たような記憶があるのですが、
ちょっと曖昧です。
『寺内貫太郎一家』の暴力シーン? も見ごたえがあったというか、
それまでのドラマではない演出でしたよね。
つまり出来上がりつつあった既成概念を、
一生懸命壊そうとしていたのが久世さんだったように思います。
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ぼにょぼにょ書かずに、ばーんと書きます。
この本の書名はひどい。
いったいどのような経緯でこのような書名がついたのかわからないが、あんまりなつけかただ。
百歩譲って、副題程度ならまだ我慢できるが、この本は純粋に「テレビドラマを作りながらエッセイや小説も書いてテレビ界と文芸の世界を往復」(199頁)した、奇才久世光彦論であり、向田邦子はその過程の接点にすぎない。それを「VS.」という形にしてしまうのはどういう理由だろう。
おいしいアジフライ定食をミックスフライ定食と名付けてしまうようなもの。
「死んでも向田邦子のお世話になるのかい」と天国の久世も苦虫を噛んでいるようで、それもまた面白いのだが。
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