03/30/2009 奇縁まんだら:書評

書評では書けませんでしたが、
瀬戸内寂聴さんの、この本『奇縁まんだら』の
「はじめに」という文章がいいんですよね。
冒頭の文章を少し書きますね。
生きるということは、日々新しい縁を結ぶことだと思う。数々ある
縁の中でも人と人の縁ほど、奇なるものはないのではないか。
思いもかけない人と人が出逢い、心惹かれたり、うとましく思ったり
する。一つの縁から次の縁に結びつき、縁の輪が広がっていく。
この「はじめに」の文章はわずか3頁ですから、
本屋さんでも立ち読みして下さい。
また、挿絵の横尾忠則さんの画は本当にいいですよ。
単に作家たちの肖像画を描いたというより、
横尾さんの絵画による作家論というところです。
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ゴシップというのは興味本位の噂話のことをいうが、そのことを話す人聞く人はその話から影響を受けない安全地帯にいるようで好きではない。
かつて文壇と呼ばれた世界で活躍した作家や芸術家との交遊録を収めた瀬戸内寂聴の『奇縁まんだら』は、松本清張の女関係や谷崎潤一郎の豪華な吉兆の弁当といったゴシップまがいの話を描きながら、単に興味本位でない、あるがままの作家たちの姿が垣間見え、楽しく読めた。
それは作者の飾らない文体と開け放たれた性格によるものかと思える。
数多くの作品を書き継いできて、「書評のような感想を書いた」であるとか「シュールの絵を見たり、音楽を聴いて「わからないけど、何かしら気持ちがよくなった」という感動」などといった文章はなかなかに書けるものではない。
飾らない文体というのは実に読みやすい。
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