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07/31/2009    一本の茎の上に:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した本は、詩人の茨木のり子さんの
  『一本の茎の上に』というエッセイ集です。
  書評にも書きましたが、
  茨木のり子さんは「倚りかからず」という詩で有名になりましたから、
  ご存知の方も多いと思います。
  私たちが日頃目にするのが「散文」ですが、
  ときには詩を読むのも面白いですよね。
  茨木のり子さんは、この『一本の茎の上に』に所載の
  「散文」という文章の中で、
  詩には「もはや付け加えるものも削るものも何ひとつない」瞬間が
  あると書いています。
  そんな詩人が書いた散文はどうかというと、
  やはり日本語がきれいだと感じます。
  どこからそういうきれいさがでるのか、
  この本を読んでいる間じゅう、ずっと考えていたのですが、
  句読点の打ち方、がいいことに気がつきました。
  普通に息をつぐようにして、
  打たれた句読点の魅力に、ぜひ
  ふれてみてください。

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一本の茎の上に (ちくま文庫 い 32-3)一本の茎の上に (ちくま文庫 い 32-3)
(2009/07/08)
茨木 のり子

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sai.wingpen  まっすぐのびた骨               矢印 bk1書評ページへ

 詩人茨木のり子のことを初めて知ったのは、それがどういう文脈であったか、すっかり記憶の霧にかすれてしまっているのだが、新聞のコラム欄であったように、記憶している。茨木の詩集『倚りかからず』がたいへん売れていた頃だと思うので、1999年あたりの頃である。あるいは、そのコラムに取り上げられて、評判が増したのではなかったかと思う。
 その詩集はその時にも読んで、文庫本になってからも立ち返るようにして読むことがある。そのつど、詩集と同じタイトルの一篇の詩に、茨木のり子という詩人の、気骨のものを感じさせられる。
特に「じぶんの耳目/じぶんの二本足のみで立っていて/なに不都合のことやある」というくだりには、ほとほと勇気づけられる。
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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は絵本です。
  ジャネット・ウィンターさんという人が書いた『バスラの図書館員』という絵本。
  「イラクで本当にあった話」とあるように、ニューヨーク・タイムズの記事として
  世界に配信されたものを、
  ウィンターさんが絵本にしました。
  翻訳は長田弘さんという、本のこともたくさん書いている、
  詩人の方がおこなっています。
  この絵本のことを、
  先に読んだ田中共子さんの『図書館で出会える100冊』で知りました。
  読みたいな、と思って、
  図書館で出会えました。
  絵本の書評はなかなか難しいものですが、
  できるだけ子どもたちにも読んでもらえるように、
  やさしく書くようにしています。
  ですから、文体は「です、ます調」に、どうしてもなります。
  今回の書評を読んで、
  大人の人も読んでみたいと思ってもらえたら、
  いいのですが。

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バスラの図書館員―イラクで本当にあった話バスラの図書館員―イラクで本当にあった話
(2006/04/10)
ジャネット・ウィンター

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sai.wingpen  平和は人を優しくする               矢印 bk1書評ページへ

 2003年春イラク侵攻がバスラに達した時に図書館の蔵書を守ろうとした図書館員とその友人たちの勇気ある実話を絵本にしたこの本のなかに、印象的な絵が二枚あります。
 それは、このお話の主人公でもあるアリア・ムハンマド・バクルさんという図書館員の女性の顔を描いた絵です。
 アリアさんは、「本は、黄金の山よりもずっと」価値のあるものと考えている人です。戦争の火でそんな本が滅んでしまうことは、彼女には絶対許せないことなのです。
 だから、アリアさんは当局にも掛け合いますし、それが無理だとわかると、友人たちの協力を得て、図書館のたくさんの本を自分たちの手で避難させます。やがて、戦火は図書館にもおよびます。でも、アリアさんたちのがんばりで図書館の本のほとんどは助かりました。
 そのあとに描かれた、二枚のアリアさん。
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本 出版社各社から出ているPR誌というのは、
 本好きな人には結構役立つ小冊子ではないかと思います。
 新潮社であれば『』とか講談社であれば『』とか。
 新刊書の情報とか著者のコメントとか、なにかと楽しい記事が多い。
 最近はこのPR誌が文芸書みたいになっていて、
 多くの書き手が小説の連載をしています。
 これらは有料なんですが、ほとんどは大きな本屋さんで
 無料で手にはいります。
 タダより安いものはない。
 本屋さんで見かけたら、まずはゲットしてみて下さい。

本 多くのPR誌の中で、最近面白いのが、
 光文社から出ている『本が好き!』。
 本が好き
 特集モノや連載モノも充実していますから、
 PR誌というのももったいないくらい。
 私も最近見つけました。
 この『本が好き!』の中で、書評家の豊崎由美さんが
 「ガター&スタンプ屋ですが、なにか? わたしの書評術」という
 連載をしています。
 これがいいんです。
 私の手元には最近の2冊しかないのですが、
 ひとつが「新聞各紙の書評のメッタ斬り」(さすがトヤサキ)、
 もうひとつの最新号では村上春樹さんの『1Q84』の書評について
 するどいコメントをしています。

本 そんな豊崎由美さんが、書評に関してこんなことを書いています。
 連載13回めからの引用です。

   わたしの考える書評は作品という大八車を後ろから押してやる
   "応援"の機能を果たすべきものです。自分が心の底から素晴
   らしいと思った本を、簡にして要を得た紹介と面白い読解によっ
   て、その本の存在をいまだ知らない読者へと手渡すことに書評
   の意味と意義がある

 どうです?
 すごくわかりやすいと思いませんか。
 特に、私が勝手に下線をつけた部分は、大事です。
 この前の号(12回)では、こうも書いています。

   読む気にさせる魅力的なストーリーの要約は、書評の肝です。

本 書評というのはせいぜい1000文字前後ですから、
 そのなかでどう内容紹介をするか。
 これが結構難しいのでもありますが。
 うまい書評を読んで、内容紹介の表現の仕方を勉強するのも
 ひとつの方法だと思います。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した、重松清さんの『あの歌が聞こえる』は、
  新潮文庫のオリジナル作品です。
  単行本でも売れると思うのですが、
  文庫本で刊行されたのですから、読者としてはうれしいですね。
  物語の背景となった1975年といえば、
  私は二十歳。
  この作品の中で紹介されている何曲かの歌は懐かしい。
  私にも思い出の歌がいくつかあります。
  そのなかでも、井上陽水さんの『心もよう』は思い出深い。
  私が浪人をしている夏に、
  高校時代好きだった女の子からもらった暑中見舞いに
  その曲の一節が書かれていました。
  彼女は高校卒業と同時に東京に転居していました。
  今でも井上陽水さんの『心もよう』を聞くと、
  そのことを思い出します。
  そして、次の春、私も東京に行くのですが・・・。
  なんだか重松清さんばりの物語みたいになりそうですね。
  そんなこととか思い出させてくれる一冊です。

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あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)
(2009/06/27)
重松 清

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sai.wingpen  私だけの「あの歌」をききたくて               矢印 bk1書評ページへ

 誰にしも懐かしい歌がある。思い出に刻まれた歌がある。メロディーや歌詞を思い出せば、それとともに浮かびあがる風景や時の記憶があって、時にそれらは鼻の奥をつんとさせる。
 そんな心情を描かせれば、重松清は当代一の作家だろう。
 本州の西端に近い港町を舞台に、昭和50年(1975年)からの六年間を描いた連作集の、それぞれの作品のタイトルとなった歌は、「いつか街で会ったなら」「戦争を知らない子供たち」「オクラホマ・ミキサー」「案山子」「さよなら」など、全部で十二曲。
 その時代であったら、あの歌も流行った、この唄も忘れがたい、人それぞれあるとしても、これは三人の少年が中学一年から高校三年までに出会った「あの歌」であるから仕方がない。
 これは彼らの青春物語なのだ。
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プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した鎌田浩毅さんの『一生モノの勉強法』ですが、
  副題は「京大理系教授の戦略とノウハウ」。
  この「京大理系教授」というのが、うまいキャッチになっています。
  鎌田浩毅さんの肩書きがそうだから、
  嘘もなにもないのですが、
  文系の私とすれば、理系といわれただけで、
  おおっ、と引き寄せられる。
  これって「数学の呪い」みたいなものでしょうか。
  鎌田浩毅さんはTVとかにも出演されている人気教授なのですが、
  そのモットーが「面白くて役に立つカッコいい教授」だとか。
  私と同じ年なんですが、表紙の写真を見るかぎり、
  先生すごくカッコいい。
  表紙に自分の写真を大きく載せるのも、目をひきます。
  これも鎌田浩毅さんの、ひとつの「戦略」でしょうね。
  オーソッドクスだけど、
  ノウハウ満載の「自己啓発本」です。

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一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ
(2009/04/03)
鎌田 浩毅

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sai.wingpen  まずはやってみること               矢印 bk1書評ページへ

 火山学者鎌田浩毅氏が以前中高生向けに書いた本のなかで、「何よりもわかりやすい(平易である)こと、意味が明快であること、おもしろいこと、の三点に最大の努力をはらった」(『地球は火山がつくった』)と書いていたが、大人向けの「勉強法」を記した本書でも、その基本姿勢は踏襲されている。
 鎌田氏は大人の「勉強」は「成功」することは目的であると言い切る。だから、「戦略とノウハウ」が必要だと。
 この「成功」という語感に抵抗があるかもしれないが、「大きな満足感と生きがいが得られる」と言い直せば、納得感がえやすい。たとえば、わかりやすい表現をめざすといってもなかなかできるわけではない。そのために、子どもたちがどのような文体を読んでいるのか、児童書を読むのも「勉強」である。そういう基本的なことからこの本は書きおこされていく。
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07/26/2009    ブタの丸かじり:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介しました、東海林さだおさんの『ブタの丸かじり』の中に、
  「生卵かけゴハン」のことが書かれています。
  なんだか貧乏くさいんだけど、おいしいですよね。
  それをきちんと取り上げるのですから、
  さすが東海林さだおさんです。
  一般的には「生卵かけゴハン」は、まず別の器に卵を割って、
  それをゴハンにかけるのですが、
  ゴハンの上にそのまま卵を落として、醤油をかけて、
  ぐるぐるかき回す、荒業もあります。
  何故こういう荒業が登場するかというと、
  あとの食器洗いがひとつ減る、という単純な理由。
  ただこの荒業を実践する場合は、
  まずゴハンのてっぺんに穴を掘るという作業が発生します。
  これを怠ると、卵土石流状態になって、
  最悪はお茶碗から、ズルズルダダーンと落ちてしまいます。
  これは悲しい。
  ですから、必ず穴を掘らないといけないし、
  その穴に卵を落とす訓練が必要になります。
  私など、三年五ヶ月もかかりました。(ここ、冗談です)
  そんなことを書いていると、
  「生卵かけゴハン」が食べたくなりました。
  日曜の昼食に、「生卵かけゴハン」がよく似合う。
  
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ブタの丸かじり (文春文庫)ブタの丸かじり (文春文庫)
(2000/09)
東海林 さだお

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sai.wingpen  すみません、楊枝下さい               矢印 bk1書評ページへ

 「書評とは、内容紹介と批評性である」と語ったのは、かの文豪にして博識多才な評論家である丸谷才一氏だが、そういう教えをものともせず、東海林さだお氏の長寿シリーズ「○○の丸かじり」において、不当にも、内容紹介ゼロ、批評性小さじ少々の「書評」を書きまくってしまいました。
 「鯛ヤキの丸かじり」の書評を書いたつもりが、「ナマズの丸かじり」であっても「ケーキの丸かじり」であってもいいともなれば、やはりこれは「書評」とはいいがたい。
 反省してます。
 猛省してます。
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プレゼント 書評こぼれ話

    きみたち若い世代は人生の出発点に立っています。きみたちの未来は
    大きな可能性に満ち、陽春の日のようにひかり輝いています。勉学に体
    力づくりに、明るくはつらつとした日々を送っていることでしょう。


  これは、岩波ジュニア新書の発足に際して書かれた文章の、
  冒頭の一節です。
  これが書かれてから、今年でちょうど30年になります。
  今でもこれは岩波ジュニア新書の最後のページに掲載されています。
  私は難しいことに出会うと、子ども向けや青年向けに書かれた本に
  立ち戻ることがよくあります。
  それらの本が若い世代向けだといって、けっして不十分ではありません。
  どころか、平易な文章で書かれているので、
  ずっとわかりやすい。
  そういう足がかりを、それらの本からもらってきました。
  創刊30年を記念してつくった、岩波ジュニア新書のキャッチフレーズは、

    「これからも、キホン

  です。
  おとなの私としても、岩波ジュニア新書のこれからを楽しみにしています。

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図書館で出会える100冊 (岩波ジュニア新書)図書館で出会える100冊 (岩波ジュニア新書)
(2009/06)
田中 共子

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sai.wingpen  本と出会える幸福                     矢印 bk1書評ページへ

 長年図書館に勤務されてきた著者が、中、高校生向けに書いたブックガイドですが、大人が読んでも十分楽しめます。
 「図書館で出会える」と書名にあるように、ここで紹介されている本は新刊ばかりではなく、すでに絶版になっているものや少し前に発行されたものもありますから、本屋さんでもなかなか出会えないものもあります。あるいは図書館でも開架式書庫には並んでいないかもしれません。興味がわけば、図書館の係りの人にお願いすれば、保管庫や他の図書館から取り出してもらえます。
 新しい本ばかりや話題の本ばかり並んでいるのが図書館ではありません。
 本の深い森で、未知の本と出会えるのも図書館の楽しみです。
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プレゼント 書評こぼれ話

  久しぶりに「書評詩」を書きました。
  今日紹介した本は、最近結構ハマっている、
  山崎ナオコーラさんの新しい本『モサ』なのですが、
  こういう本ってなかなか散文で表現がしにくいですね。
  そもそも荒井良二さんの絵が、そういう山崎ナオコーラさんの
  書きたかったところを一番表現しているように思います。
  娘たちが小さかった頃、
  やはりこんな荒井良二さんの絵のような『モサ』を
  書いていましたが、
  あれは娘たちの幼児性だったのでしょうか。
  山崎ナオコーラさんの、こんな作品を読むと、
  小さいながらに表現しようとする心の表れだったようにも
  思います。
  そして、それがうまく表現できないから、
  最後にはイライラして、ぐちゃぐちゃにしてしまうのですが。
  今回の書評詩に興味をもった人は、
  ぜひ本屋さんで実際にページを繰ってみて下さい。
  そして、この不思議な世界を体感してみて下さい。

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モサ (ダ・ヴィンチブックス)モサ (ダ・ヴィンチブックス)
(2009/06/17)
山崎ナオコーラ/荒井良二

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sai.wingpen  ともだち                     矢印 bk1書評ページへ

 丸い心に 四角い紙をあてがって
 自由に描いてみようじゃ ないか
 あなたのともだち を

 太いクレヨン 細い色鉛筆
 よじれた絵の具 まっすぐな絵筆
 自由に描いてみようじゃ ないか
 あなたのともだち を

 ともだちは すこし ひねくれ
 ともだちは すこし さびしい
 ともだちは すこし くやしい
 ともだちは すこし かなしい

 赤い心に 白い紙をあてがって
 自由に描いてみようじゃ ないか
 あなたのともだちのともだち を

 だって
 ともだちはひとりじゃ かわいそう

 山崎ナオコーラの、不思議な物語。荒井良二のさし絵とともに楽しめる、童話のようでもあります。
 主人公のモサは東京近郊のニカイという町に住む、14歳のニートですが、人間ではなく、カルガリ族の男の子。 粗筋はありますが、実はそんなものをおいかけても意味はありません。自由に読むといい。
 モサの正体とかモサの悩みとか、山崎ナオコーラが何を書きたかったなんて考えることはありません。読み終わったあと、ふっともう一度表紙のモサにもどって、やさしくなでてあがれたら、それでいい。あなたの心のなかにモサがいるか、たずねてみれば、それでいい。
 ちょっと天文台に行きたくなるような、一冊です。
  
(2009/07/24 投稿)

07/23/2009    熊になった少年:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介しました、池澤夏樹さんの
  『熊になった少年』を、本屋さんの店頭で見つけた時には
  本当に心があわ立つような思いになりました。
  それは、今回の書評にも書きましたが、
  池澤夏樹さんが星野道夫さんのことを書かれたとばかりに
  思えたからです。
  この本のどこにも星野道夫さんの名前は出てきませんから、
  それは私の思い過ごしなのでしょうが、
  44歳の若さであんなにも愛した熊に襲われ亡くなった星野道夫さんのことを
  思わずにはいられませんでした。
  私が星野道夫さんに出会ったのは、彼が亡くなってからのことですが、
  たまたま星野道夫さんの『クマよ』を朗読する機会が、
  より彼を身近に感じるきっかけになったのは事実そうです。
  この『熊になった少年』も、池澤夏樹さんは朗読をすすめています。
  できれば、星野道夫さんの物語とともに、
  この本がたくさんの人に読まれることを
  願わずにはいられません。
  最後になりましたが、坂川栄治さんの絵も
  素晴らしい、ということを書き添えておきます。

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熊になった少年 (SWITCH LIBRARY)熊になった少年 (SWITCH LIBRARY)
(2009/06/22)
池澤夏樹 絵:坂川栄治

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sai.wingpen  耳をすませて おまえの声をきく                 矢印 bk1書評ページへ

 「いつか おまえに 会いたかった」。写真家で文筆家でもあった星野道夫はこどものための絵本『クマよ』の冒頭のそう綴った。「おまえ」とは熊のことである。そして、こう続ける。「気がついたんだ おれたちに 同じ時間が 流れていることに」と。
 星野道夫の静謐で敬虔な文章の魅力は、いうなれば、この一連の文章に集約されているように思う。星野にとって、熊とは異なる獣ではなく、家族や友人と同じ自分と地続きの生命体だった。
 またある時、ムースのスープを飲みながら、星野道夫をこう感じる。「極北の森に生きたムースの体は、ゆっくりと僕の中にしみ込んでゆく。その時、僕はムースになる。そして、ムースは人になる」(「アラスカ風のような物語」)
 まさにそこに、星野道夫の豊穣な心のありようを感じる。
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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は日本で皆既日食が見られるということで、
  みなさん楽しみにしていると思います。
  残念ながら、どこでも見れるかというとそうではありません。
  ほとんどのところは部分日食です。
  日食というのは、月によって太陽の一部(あるいは全部)が隠される現象です。
  太陽といえば、
  今回紹介した手塚治虫さんの代表作である『鉄腕アトム』の
  アニメ版の最終回は確かアトムが人類を救うため、
  自ら犠牲となって太陽につっこんでいく話でした。
  結構お宝映像とかで取り上げられていることが多いですから、
  見た人もたくさんいるかと思います。
  そんなアトムに助けてもらった地球から、
  皆既日食も見ると考えると、
  興味も増すのではないでしょうか。
  次回、日本で見れる皆既日食は2035年とか。
  生きているか、どうか。

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手塚治虫 知られざる天才の苦悩 (アスキー新書 111)手塚治虫 知られざる天才の苦悩 (アスキー新書 111)
(2009/06/09)
手塚 眞

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sai.wingpen  努力する漫画家                  矢印 bk1書評ページへ

 「漫画の神様」手塚治虫についてはすでに多くのことが語られてきました。本書の著者である、手塚治虫の長男、手塚眞氏もすでに何冊かの手塚治虫についての本を書いています。
 それでも、やはり手塚治虫がなしとげてきたこと、あるいは手塚の考えていたことについて、尽きることはありません。手塚治虫の創造の秘密を垣間見たいと思います。
 眞氏は手塚の生涯を「多くの挑戦に満ちた物語」と表現しています。そんな視点で、手塚治虫をみることもまた、重要だと思います。
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07/21/2009    旅をする木:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  残り時間10時間を切りかかって、
  ようやく文春文庫創刊35周年記念の、
  「いい男感想文」を書き終えました。
  今回私が書いたのは、
  星野道夫さんの『旅をする木』です。
  「いい男」とはどういう男のことをいうのか、
  そのイメージは人さまざまでしょうが、
  星野道夫さんの精悍な生き様も「いい男」といっていいと思います。
  この文庫本の、池澤夏樹さんの解説の中で、
  池澤夏樹さんは「書物というものの最高の機能は、幸福感を伝えること」と
  書いています。
  星野道夫さんの文章は、そんな幸福感に満ちています。
  たぶん、私はこれからも何度も、
  星野道夫さんの文章に戻ってくるでしょう。
  そんな思いが、今回の書評のなかに表れていればいいのですが。

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旅をする木 (文春文庫)旅をする木 (文春文庫)
(1999/03)
星野 道夫

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sai.wingpen  火を運ぶ者               

 人生は旅に似ている。
 あるいは、旅は人生に似ているだったかもしれない。
 十代の時にめぐりあった一枚のアラスカの写真に魅せられたあと、その突然の死にいたるまでの時間の多くを北極の大地で過ごした星野道夫の人生もまた旅に近いものであったかと思う。
 アラスカに行って十五年の時を経た星野の新しい決意を綴った「新しい旅」から始まり、吹雪の北極圏で初めての子どもの誕生を知る「ワスレナグサ」までの三十三篇の、美しく、背筋ののびた文章の数々には、厳しい自然とのかかわりやアラスカの人々との温かな交友が描かれている。それらもまた、星野道夫の人生であり、旅の姿である。
 そんななかで、「人々が動物を求めてさまよっていた昔、寒い冬の旅では足の速い者が火を運んだ」というインディアンの古老の物語を、星野は書きとめている(「ビーバーの民」)。「一度手にいれた火」を大切に運びつづけた人たちの物語である。火を運ぶ者は、常に仲間たちよりも先を行き、火を確保しつづける。私たちは遠い昔からそのように旅をしてきたのだ。
 星野道夫が残した文章や写真は、彼につづく私たちに、旅をする勇気や生きる喜びを与えつづける。それを思うとき、星野道夫もまた、「火を運ぶ者」として、私たちの先を走る者だったにちがいない。
 「何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時間を、大切にしたい」。
 星野道夫の、このように柔らかい言葉の数々は、私たちにぬくもりを与えつづけてくれる。
 人生という旅に「火を運ぶもの」としてありつづけた星野道夫が残した、ともし火。
 その暖かさと明るさに、私たちの旅はどれほど勇気づけられることだろう。
  
(2009/07/20 投稿)

07/20/2009    今朝の朝日俳壇
sai.wingpen 今朝(7.20)の朝日新聞の「朝日俳壇」に、
 私の句が採用されました。

  ではまたと夕立去りて帰る友

 今回選んで頂いたのは、前回同様、長谷川櫂先生。
 ありがたい。
 前回の採用からボツの連続生活でしたから、
 やっぱり、うれしい。
 また、頑張ります。

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07/20/2009    猫のつもりが虎:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  文庫本が好きです。
  あの大きさがいい。
  手のひらサイズというんでしょうか、何より持ち運びに便利なのがうれしい。
  二、三冊ぐらいならどうということはない。
  価格もいい。
  最近はそれでも高くはなっているが、単行本と比べるとまだ安い。
  そして、何よりも新刊本で読んで、
  もう一度文庫本で出版されると、
  懐かしい人に出会ったようで、ほろりとさせられる。
  お前、元気にしてたのか、と抱きしめたくなる。
  この頃は単行本から文庫本になるスピードも早くなっているが、
  今回紹介した丸谷才一さんの『猫のつもりが虎』のように、
  単行本の刊行が2004年だから、5年ぶりに文庫化されるものもある。
  文春文庫の今月の新刊として、この本を見つけた時は
  本当にうれしかったです。
  もともと文庫本をもたないマガジンハウスという出版社からの刊行でしたから、
  こうして文庫本で出版してくれた文春文庫さんに
  お礼をいいたくなる。
  ということで、今日は文庫本刊行記念として
  2004年の刊行の時に書いた書評の蔵出しです。
  私としては、結構お気に入りの書評です。

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猫のつもりが虎 (文春文庫)猫のつもりが虎 (文春文庫)
(2009/07/10)
丸谷 才一

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sai.wingpen  おとなの絵本                 矢印 bk1書評ページへ

 大人だって絵本を読む。その中でもっともたくさん絵本を読むのは多分幼い子供を育てている大人ということになるだろうが、そういう基本的な接し方を経て、絵本というものを見直したという人はかなりいるにちがいない。
 絵本をあらためて読んでみると、その豊かな時間の流れに気がつく。息の詰まるような時間から、しばし解放されるのがわかる。細かい文字や数字で頁を埋められた本が月曜日から金曜日だとすれば、絵本は休日みたいなものだ。
 そこに流れている時間がゆったりとしている。豊饒である。
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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は日曜なのに、
  土用の丑の日
  うなぎの食べる日なのに、
  『鯛ヤキの丸かじり』(東海林さだお)。
  このちょっとしたズレがなんともいえません。
  土用の丑にうなぎを食べるようになった謂れは、
  巷間よく言われるように、平賀源内さんが発案したとか。
  丑の日に「う」のつくものを食べると夏バテしないという伝承から、
  源内さんは考えたらしい。
  でも、そうしたら「うどん」でもよかった。
  「うり」でもよかった。
  あと、「うま煮丼」でもよかった。「うぐいす餅」でもいい。
  でも、源内さんに相談をもちかけたのが、鰻屋さんだった。
  「うどん」も「うり」も「うま煮丼」も「うぐいす餅」も、
  遅れをとってしまった。
  「うどん」なんか、かなり惜しい。
  夏場に冷たいうどんは、おいしいですからね。
  でも、栄養少なそう。
  と、いうことで、やっぱり鰻がいい。
  こうこってり油ののった分厚いうな重はいいですね。
  食べたい。
  ここはぐっとこらえて、
  今日は『鯛ヤキの丸かじり』で辛抱して下さい。
  
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鯛ヤキの丸かじり (文春文庫)鯛ヤキの丸かじり (文春文庫)
(1997/11)
東海林 さだお

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sai.wingpen  「丸かじり」TPO                   矢印 bk1書評ページへ

 今回は東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズのTPOについて考察してみたいと思います。
 ところで、このTPOですが、けっして、ところてん、パパイア、オクラの頭文字ではございません。
 TはTime(時)、PはPlace(場所)、OはOccasion(場合)の、正統TPOでございます。
 えへん。
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07/18/2009    坊っちゃん:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  朝日新聞日曜書評欄の「百年読書会」(重松清ナビゲーター)の、
  7月の課題図書は、夏目漱石の『坊っちゃん』。
  まさに国民文学の代表作です。
  これを機会に久しぶりに読みましたが、本当に面白い。
  どうしてこういう小説を漱石は書きえたのだろうかと
  不思議でなりません。
  先日の茂木健一郎さんの「講演会」でも、
  この『坊っちゃん』について話されていて、
  舞台となった四国の田舎町こそ、日本の縮図みたいなものと、
  言われていました。
  そして、茂木健一郎さんは「赤シャツこそ漱石自身の投影ではないか」と
  推理されています。
  どうでしょうか。
  では、坊っちゃんは誰なのか。山嵐は誰なのか。
  四国の松山が舞台ですから、
  もしかしたら山嵐は正岡子規かもしれない。
  これは私の推理ですが、
  誰かもう言っているかもしれないなぁ。

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坊っちゃん (岩波文庫)坊っちゃん (岩波文庫)
(1989/05)
夏目 漱石

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sai.wingpen  拳骨の時代 

 ぞな、もしと 蛍またたく 城下町

 何年かぶりに再読したが、痛快な面白さは変わらない。登場人物たちの個性の創造はいうまでもなく、一気呵成に読ませる力といったらない。
 今回特に気にいったのが、赤シャツらの謀略により僻地へと追いやられる、うらなり君の送別会の場面である。
 五十畳の大広場に集まった教師たちの乱痴気ぶりを揶揄したこの箇所の、テンポのいい文章はどうだろう。それでいて、なんともつまらない教師たちの個性とそんな彼らの日頃のうっぷんがよく出ている。この時代の教師たちは、現代と比べれば、まだ人間的であったかもしれない。
 そう見てみると、生意気ざかりの学生たちもいかにも解放的だ。「坊っちゃん」に対する数々のいたずらも、現代ではありえない。社会がそんなことを認めない。それでいて、「坊っちゃん」の時代の人々の明るさはどうだろう。
 拳骨がまだ有効だった時代の話である。
  
(2009/07/16 投稿)
プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した『大不況には本を読む』の著者、橋本治さんといえば
  今や大家ですが、
  私の年代でいえば、橋本治さんは『桃尻娘』の作者というイメージ。
  思えば、この「桃尻」というのはすごく刺激的でありながら、
  かわいいも併せ持った、美しい日本語? でした。
  もう少し年をくだれば、
  橋本治さんが東京大学時代につくったコピー、

    とめてくれるなおっかさん、背中の銀杏が泣いている
   男東大どこへ行く

  が有名かも。
  今から考えれば、そうやって橋本治さんが「東大どこへ行く」と
  心配していた頃(1968年)から、
  この日本という国はおかしくなっていたのかもしれませんね。
  この『大不況には本を読む』では1985年がターニングポイントとして
  書かれていますが。
  村上春樹さんの『1Q84』ではありませんが、
  どうもあのあたりはあやしいですね。
  書評にも書きましたが、
  こういう本こそ中高生に読んでもらいたい。

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大不況には本を読む (中公新書ラクレ)大不況には本を読む (中公新書ラクレ)
(2009/06)
橋本 治

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sai.wingpen  とめてくれるなおっかさん 私たち日本どこへ行く           矢印 bk1書評ページへ

 先日行われたラクイラ・サミットでの、この国の総理大臣の笑顔に違和感を覚えた。言葉にすれば、へらへらした笑顔。ああいうのを「追従笑い」というのだろう。どうせ「阿諛追従(あゆついしょう)」と書いてもわからないかもしれない。念のために書いておくと、「相手に気に入られようと、媚(こび)へつらうこと」の意である。
 だって、この国の総理大臣がどんなに近寄っても、オバマ大統領も議長国であったイタリアのベルルスコーニ首相も知らん顔していた。そういう集まりに出るのはつらいでしょう。
 「私は仲間だ」ということを、観衆にみてもらわないといけないのだから、ああいうへらへらした笑顔になる。しかし、観衆(国民)だって馬鹿じゃあないのだから、そういう笑顔をみれば、この国の立ち位置ぐらいはわかる。
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本 第141回芥川賞、直木賞が決まりました。
 なかでも、今回直木賞を受賞された、北村薫さんには
 びっくりしました。
 だって、北村薫さんといえば、もうすっかり大家。
 6度の候補という荒波を越えての受賞ですから。
 いまさら直木賞ってどうなんでしょうね。
 それでも、にこやかに話される北村薫さんの、それもまたお人柄です。
 実はそんな北村薫さんの「創作の秘密」を語った講演会に、
 この春(2月)行ってるんですね。
 だから、私にとっては二重の喜び。
 その時、新直木賞作家北村薫さんが何を話されたか、
 こちらをクリックしてみて下さい。
     みぎ「作家 北村薫さん」の講演会に行ってきました。  
 なにはともあれ、北村薫さん、おめでとうございます

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07/16/2009    本の知識:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  今日は「本に関心のあるすべての人へ!」という副題のついた、
  『本の知識』という本を紹介します。
  ね、
  「本のブログ」らしいでしょ。
  おまけに、今日の書評タイトルは「本が好き!」と、
  感嘆符までつけちゃっいました。
  その前に、先日行われた「東京国際ブックフェア」について、
  気になったことを書いておきます。
  今出版業界は大変厳しい状況があります。
  また、それにあわせて色々な動きがあります。
  その中で開催された「ブックフェア」ですが、
  単に本が安く買えるということでなく、
  本当にそれぞれの出版社がどういう方向に向かおうとしているのか
  きちんと一般読者に示さないとダメだと思います。
  例えば、この下半期にはこういう企画を考えていて、
  こういう著者と交渉しているといったことであったり、
  次の時代を示していかないといけません。
  私は本という文化が絶滅するとは思いませんが、
  業界の人たちは自分たちが背負っている重みを
  しっかり考えないと、やはり絶滅危惧種になってしまいます。
  新たな読者の創造も含めて、「ブックフェア」のあり方を
  考えてもらいたいと思います。

  にっこり 先日脳科学者茂木健一郎さんの講演会をレポートしましたが、
  茂木健一郎さんのブログ「クオリア日記」の中で、
  私のブログを読んだことが書かれていました。
  すごいですね。
  いっそのこと、「茂木健一郎さんも読んでる、本のブログ ほん☆たす」に
  名前変えようかな。
  あは。


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本の知識―本に関心のあるすべての人へ!本の知識―本に関心のあるすべての人へ!
(2009/05)
日本エディタースクール

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sai.wingpen  本が好き!                矢印 bk1書評ページへ

 人を好きになると、その人の出自とか性格とか知りたくなるのと同じように、本のことについてもっと知りたくなって手にしたのが、日本エディタースクールという編集や校正などを教えている学校が編集した、この本です。
 「本の大きさ」や「本の各部分の名称」といった基本的なことから、「本ができるまでの」の製作工程、出版界の概況とその流通と販売まで、わずか六〇ページばかりの書籍ながら、ほぼ本のことが理解できるようになっています。
 これだけわかれば、うまく付き合っていけるでしょう。
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本 今日は経営コンサルタント小宮一慶さんの
 講演会の模様をレポートします。
 なんだか毎日講演会レポートで、
 「本のブログ」でなく「講演会ブログ」になってしまいましたが、
 生(なま)の著者にお会いすると、本だけでは味わえない、
 著者全体の雰囲気を感じることができます。
 ぜひ、みなさんもそういう機会をとらえて、
 生(なま)の著者にお会いしてみて下さい。
 生(なま)はいいですよ。生ビールみたいに飲み心地最高。

本 今回の講演は、月曜(7.13)の夜、東京丸の内の丸善さんで
 行われたものです。
 丸善さんは以前にも書いたかもしれませんが、東京駅に隣接していて立地的にもよく、
 見てまわるにも快適で、こういう講演会も積極的にしていて、
 私の好きな書店のひとつです。

本 今回の小宮一慶さんの講演は、
 ベストセラーになった『「社長力」養成講座』(ディスカバー21)と
 『一流になる力』(講談社)の、二冊の本のコラボで、
小宮 演題は「ビジネスパーソン・サバイバル講座」。
 すごいでしょ。
 小宮一慶さんの著作は何冊か読んでいて、
 その書評も書いていて
 (「検索」機能で探してみて下さい。いい書評書いてまっせ)
 小宮一慶さんからコメント頂いたり、
 小宮さんのブログを拝見したりしていて、
 小宮さんから「講演会では声をかけて下さい」なんて
 親切なコメントももらったりしていたのですが、
 「声をかける」と言われての、「よぉー」とも言えず、
 まして「タマやー」なんて言ったら、まるで花火だし。
 講演会を聞きに行くのも大変です。
 ところが、赤い糸で結ばれていたのか(多分、いないです)
 開演前に丸善さんの店内でばったり邂逅しちゃいました。
 私は小宮一慶さんのお顔はわかっていますからいいのですが、
 小宮さんからすると「こいつ何者だ」でしたでしょうね。
 そこは、紳士ですので、「いつもありがとうございます」なんて
 言われちゃいました。
 「声をかける」というのは、難しいようで、実は簡単なんだ。
 ふー。

本 こういうふうに前ふりが長くて、「講演記録」はいつも長くなる。
 さっそく講演会にはいります。
 今回は約150名ぐらいの聴衆がいたでしょうか。
 若いビジネスマンがほとんどかな、と思っていましたが、
 そうでもない。
 やはりちょうど経営幹部をめざそうというポジションの人あたりが
 小宮一慶ファンかもしれません。
 小宮さんの講演はおよそ40分。
 その内容は『「社長力」養成講座』と『一流になる力』にそったものでした。
 じゃあ話は面白くなかったかというと、とんでもない、
 めちゃくちゃ面白い。
 小宮一慶さんは大阪堺市の出身ですから、
 バリバリの関西弁。しかも、話のかわしかたもよしもと風。
 つっこみもそう。
 商売上手な関西人風といえばいいでしょうか。
 それで思ったのですが、財政困難な橋下大阪府政をぜひ
 バックアップしてもらいたいもの。
 日本の文化がアニメなら、大阪の文化はよしもと
 きっといいブレーンになるだろうに。
 いかがです? 小宮一慶さん。

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本 今日は、昨日の「東京国際ブックフェア」のつづきで、
 脳科学者茂木健一郎さんの「講演会」の模様をレポートします。

本 その前に、会場内の「PHP研究所」のブースで、
 茂木健一郎さんの「トークショー」があったのですが、
 茂木
 これは茂木健一郎さんの新刊『脳は0.1秒で恋をする』を
 購入した人が優先で聞けるのですが、
 なんとタダ見、タダ聞きOKという、
 「PHP研究所」さんの太っ腹なご配慮で、
 私はなんと茂木健一郎さんの左横、
 1メートル35センチくらいのところで
 タダ見、タダ聞きさせて頂きました。
 このあと、ちゃんと「PHP研究所」の本も買わせて頂きましたので、
 お許しを。
 この時の茂木健一郎さんはすごくラフなTシャツ姿で登場。
 約45分間を「婚活」とか「お化粧」とか、
 自由自在に話されていました。
 たまたま、私が立っていたのは、茂木健一郎さんの本が
 並べられていたコーナーだったのですが、
 トーク最中に茂木健一郎さんが自著に手を伸ばされてので、
 私はすかさず手渡し差し上げました。
 「にわか茂木健一郎さんの助手」です。
 何度かそういうことがあって、茂木健一郎さんにお礼の言葉まで
 頂いちゃった。
 あは。
 茂木健一郎さん、覚えておられますか?
 あの時の、優秀の助手こそ、なのです。

本 それでは、今回の「東京国際ブックフェア」のもうひとつの楽しみ、
 「読書推進セミナー」の茂木健一郎さんの講演会の模様を
 レポートします。

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足 昨日(7.12)、東京ビッグサイトで開催されていた、
 「第16回東京国際ブックフェア」に行ってきました。

 ブック1
 「東京国際ブックフェア」とは何かというと、
 世界30カ国から過去最大の800社が出展するという、
 日本最大の「本」の祭典、です。
 出版社、書店、印刷会社、編集製作会社、IT企業・・・
 広い会場にたくさんのブースが並んでいます。

 最近は出版不況ということで、
 先日も出版社の数が4000社を切ったとか
 ニュースが出ていましたが、
 どっこい、まだまだ元気です、という感じで、
 関係者の皆さん、頑張っていました。

足 昨日はその最終日ということで、
 私は開場間もない10時過ぎには東京ビッグサイトに到着したのですが、
 すでに大勢のお客さまでごった返していました。
 まず受付で入場の手続き。
 本当は入場料がかかるのですが、
 私は「筑摩書房」さんのご好意で招待券を入手していましたので、無料。
 大丈夫。
 あらかじめ頼めば、いろんなところで招待券が手にはいります。
 まあ、そうはいっても、
 「筑摩書房」さん、ありがとうございます。
 あとで、ブースおじゃましますよ、なんて、
 心で呟きながら、かっこよくネームプレートなんかぶらさげて、
 いざ、会場へ。

足 入り口は全部で4箇所。
 私が入った入り口は、さっそく「PHP研究所」さんのりっぱなブース。
 ブック2
 そばで、「マンガショップ」さんがパンフレットを配っています。
 この会社、私は知らなかったのですが、
 古いマンガの復刻版を提供している会社さんのようで、
 もらったパンフレットにはあの『月光仮面』の漫画がでています。
 これでいっきにヒートアップしました。
 「アルク」さんがあり、「平凡社」さんあり、「文藝春秋」さんあり、
 勝間和代さんで名を馳せた「ディスカバー21」さんあり、
 「河出書房新社」さんあり、と怒涛のように続きます。
 ありました、真向かいに「筑摩書房」さん。
 さらに「中央公論新社」さん、「新潮社」さん、と老舗が続きます。
 もうこの時すでに私の手には各社から入手したチラシとか目録で
 あふれんばかり。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は日曜日。
  日曜日といえば、お待ちかね「丸かじり」シリーズです。
  その前に。
  「ブログランキング」のこと、書いておきます。
  私は毎日毎日、みなさんに「ひよこちゃんバナー」をクリックして下さいと
  お願いしています。
  心優しいみなさんは(もちろん少しぐらいは心優しくない人もいるでしょうが、
  あ、あなたではないですよ、あなたはもちろん、心優しい)
  「めんどくさいな」と思いながらも、クリックしてくれる。
  ありがたい。
  クリックしてもらっても、みなさんに何かいいことがあるかというと、
  これは、ない
  なーんにも、ない
  私はそれがつらい。
  指一本とはいえ、みなさんにそういう無為な行為を強いるのが、
  私にはつらい。
  一方、私にいいことがあるかといえば、
  みなさんのクリックがたくさん集まれば、ハワイに行ける、ということは
  絶対ない。
  ミスタードーナツのポイントも増えない。
  もしかしたら、
  絶世の美女がたまたまこのブログを訪問するかもしれない。
  でも、確率はひくい。
  それでも、みなさんの指ひとつ分のクリックはうれしい。
  いい本を読もうと思う。
  いい書評を書こうと思う。
  それで、みなさんの心が少しでも慰安されるとすれば、
  みなさんにもいいことがあることになる。
  「ひよこちゃんバナー」は幸福の青い鳥なんだ。
   
    ♪クッククック わたしの青い鳥
  
  だから、今日も「ひよこちゃんバナー」をクリックして下さい。

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昼メシの丸かじり (文春文庫)昼メシの丸かじり (文春文庫)
(2005/06/10)
東海林 さだお

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sai.wingpen  「丸かじり」観察日記                 矢印 bk1書評ページへ

 ×月×日 きょう、なつ休みのしゅくだいがでました。「かんさつ日き」をつけるのだそうです。しょうじ先生は「かんさつとは、じっくり見ることだ」といいました。じっくり、ってよくわかりませんというと、先生は「ていねいに見ることだ」といいました。なにをかんさつしてもいい、と先生はいいましたが、きっとあさがおとかアリさんとかのかんさつをたのしみにしているのだと、おもいました。ふん、とおもったので、いつもあそんでばかりいるとなりのおじさんにきいてみました。おじさんは一さつの本をかしてくれました。「昼メシの丸かじり」という本です。この本でなにをかんさつしていいのかわかりませんが、「ありがとうございます」とおれいをいいました。
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07/11/2009    かあちゃん:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  以前書いた『ヨンイのビニールがさ』の書評に、
  「桃井さん」という未知の読者から、
  小学5年生の息子さんと一緒に、
  私の書いた書評を読ませて頂いた、というコメントを頂きました。
  これはうれしかったですね。
  お母さんと小学5年生の息子さんが、ほっぺたくっつけながら(多分です)、
  パソコンの前に座って、私の書評を読んで下さるなんて。
  あの本を読んでよかった。
  あの書評を書いてよかった。
  つくづく思います。
  「桃井さん」母子の、ほほえましい風景に、心がほっと安らぎました。
  ありがとうございました。

  今回紹介する本は、ちょっとそんな風景にも近い、
  重松清さんの『かあちゃん』。
  この本の中で、お母さんのことを、重松清さんはこんな風に書いています。

     どんな子どもも、ひとりぼっちでこの世に生まれてくることはありえない。
     世界中のすべてのひと。あらゆる時代の、あらゆるひと。例外などない。
     生まれてきた瞬間にいちばんそばにいてくれるひとは、
     どんな人間の場合も、母親なのだ。 
    (415頁)

  私は残念ながら? 父親です。
  父親としての言い分もあるのですが、やはり母親には負けてしまう。
  「母ちゃん」「おふくろ」「ママ」「お母さん」・・・
  その呼び方は色々あるでしょうが、その温かみは同じです。
  今回の書評タイトルは、さだまさしさんの『償い』の歌詞から引用しました。

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かあちゃんかあちゃん
(2009/05/29)
重松 清

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sai.wingpen  人間って哀しいね だってみんなやさしい           矢印 bk1書評ページへ

 さだまさしさんの『償い』という歌を知ったのは、ある裁判のなかでの裁判長の言葉からでした。その時裁判長は、交通事故を起こした加害者の長年の償いを歌詞にしたこの歌を例に、「せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君たちの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と説諭しました。
 重松清さんがこの『かあちゃん』という連作小説を執筆するに際して、この裁判の話やさだまさしの歌のことを知っていたのかどうかはわかりませんが、やはりこの作品に書かれているのも「償い」という重いテーマです。
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07/10/2009    一流になる力:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  小宮一慶さんは経営コンサルタントです。
  私より2歳お若い。
  大阪の堺市の出身だというから、
  私とどこかですれちがっていたかもしれない。
  大学を出たあと、東京銀行に入行され、
  今の職につくまでいくつか転職をされています。
  でも、小宮一慶さんのエラいところは、
  あまりご自身の軸がぶれていないということですね。
  それがあったから、どこにいても全力でやってこられたのでしょう。
  今回紹介した『一流になる力』の中にこんな言葉があります。

    潮の流れに任せて居心地の良い場所に流れ着こうなどと虫の良い考えは捨て、
    目標を立て、自分の決めたその場所をめざして、力を振り絞って泳いでゆかな
    ければなりません。 
 (171頁)

  すごく見習わなければいけない言葉だと思います。
  来週の月曜(7.13)、東京丸の内にある「丸善」で、
  そんな小宮一慶さんの講演があります。
  なんとか参加チケットは入手できました。
  さて、生(なま)小宮一慶さんはどんな勇気をくれるのか、
  今から楽しみです。

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一流になる力 ビジネスで勝ち残るための教科書 (講談社BIZ)一流になる力 ビジネスで勝ち残るための教科書 (講談社BIZ)
(2009/06/11)
小宮 一慶

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sai.wingpen  泳ぐ準備のできた人が海にとびだしていける。         矢印 bk1書評ページへ

 本を読むときにはいつも付箋を用意している。読んでいる途中で、自分の心のどこかに何かしらひっかかった言葉や文章に、付箋をつけていく。たくさん付箋がつく本もあれば、そうでもない本もある。付箋のついた言葉や文章は、読了後パソコンに「ノート」として書きとめていく。それが私の、読書スタイルである。
 経営コンサルタント小宮一慶氏の書かれた本書を読み終わったとき、「チャンス」という言葉や文章にたくさんの付箋がついていることに我ながら驚いた。
 もちろん、この本のなかで「チャンス」という言葉や文章がたくさん使われていたということもあるだろう。しかし、この本は「変化の激しい時代」にどうサバイブしていくか、どう「勝ち残る」かが書かれたものであり、「チャンス」だけに特化したものではない。
 それなのに、私はこの本のなかの「チャンス」という言葉や文章に付箋をつけていった。それは、今の私が「チャンス」というものに深い関心をもっているということなのかもしれない。
 本はときにそういう自身の奥底の思いを見せつける。
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07/09/2009    1Q84 BOOK2:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  村上春樹さんの『1Q84』書評のつづきです。
  二つ連続していると思っていただいて構いません。
  そのような構成で書いたつもりです。
  もちろん一つひとつ単独でも大丈夫なようにもしています。
  今回の村上春樹さんの『1Q84』を読んで思ったのですが、
  チェーホフという作家がとても重要な役割で登場してきます。
  太宰治なんかもチェーホフにかなり影響されていますが、
  村上春樹さんもそうなのでしょうか。
  『1Q84』に出てくるチェーホフの『サハリン島』という作品は、
  本屋さんにも問い合わせが殺到しているようです。
  また、こんな表現も『1Q84』には出てきます。

    疑問が多すぎる。「小説家とは問題を解決する人間ではない。
    問題を提起する人間である」と言ったのはたしかチェーホフだ。
    なかなかの名言だ。
    (「BOOK1」472頁)

  後半にも出てきます。結構重要なところで何箇所も。
  ところで、今回の村上春樹さんの『1Q84』にはやはり厳しい反対意見も
  あるようですが、
  ざっとみたところでは八割方「よかった」票が多いような気がします。
  満足のいく作品でした。

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1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
村上 春樹

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sai.wingpen  「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」その2      矢印 bk1書評ページへ

 「三億円事件」から1年後の1969年12月12日。某新聞が「容疑者浮上」の記事を掲載する。翌日には「犯人逮捕」と表現が変えられ、街は騒然とした。結果的にはこれは新聞史上に残る大誤報だったのだが、「三億円事件」は1年経っても話題性の高い事件であった。
 誰もが「謎」は解けると考えていたし、「犯人」は見つかると思っていた。
 村上春樹の『1Q84』の謎はとけるのか。作中の「リトル・ピープル」とは何か。「空気さなぎ」とは何を暗示しているのか。
 そもそも、題名の「Q」とは何を意味しているのか。
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07/08/2009    1Q84 BOOK1:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  さあ、お待たせしました。
  村上春樹さんの、7年ぶりの長編小説『1Q84』を紹介します。
  先日に6日には1、2巻合わせて200万部を突破したようです。
  読了感を先にいえば、物語としてとても面白い。
  1、2巻合わせて1000頁以上ある大作ですが、
  飽きさせない面白さがあります。
  読書としては、それで十分なのでしょうが、
  世の中の仕組みとして、どうしても深読みをしようとします。
  すでに多くの識者がその書評を、あらゆる方面から書いていますが、
  今月号の文芸誌もまさに村上春樹『1Q84』のオンパレードです。
  しかも、それが新潮社の「新潮」ではなく、
  講談社の「群像」であったり文藝春秋社の「文学界」であるのが、
  面白い。
  もちろんWebのオンライン書店でも多くの「書評家」たちが書いています。
  それなのに、今から書くのですからどうなることやら。
  書評タイトルの「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」は
  「BOOK2」の中にでてくる文章を引用しています。
  明日は、今日の続きを掲載します。
  合わせてお読み頂けると、ありがたい。

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1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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sai.wingpen  「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」その1   矢印 bk1書評ページへ

 1968年12月10日。東京都府中市はひどい雨だった。この日支給予定のボーナスのための現金を積んだ現金輸送車が追ってきた白バイ警官に停車を求められる。爆発物が仕掛けられているという警官の指示のもと、行員たちは現金輸送車から遠ざけられた。そして、偽の白バイ警官は現金輸送車ごと現金強奪に成功する。盗まれた現金、2億9434万1500円。いわゆる「三億円事件」である。
 現場には「ニセ白バイ」などの153点もの遺留品が残された。それにもかかわらず、犯人は捕まることなく1975年時効が成立する。
 村上春樹の『1Q84』は、たくさんのヒントがありながら真相にたどりつけない、そんな「三億円事件」によく似ている。
 誰にも「犯人」は見つけられない。
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07/07/2009    夏休みの友?
本 今日は「七夕」。
 笹に短冊とかスイカの絵とか折り紙細工とか下げて、

   ♪笹の葉 さーらさら 軒端(のきば) にゆれる

 って、よく歌いましたね。(そうでもないか)
 娘たちが小さい頃はよくそんなこともしましたね。

本 そして、もうすぐ世間(といっても子どもたちの世間ですが)では、
 「夏休み」。
 夏休みこの時期になると、本屋さんに出版社の夏休み企画が
 ずらーーつと並びます。
 夏休みはなんといっても子どもたちがたくさん本を読む(だろう)、
 一年でもそうそうない期間ですからね。
 出版社も力がはいります。
 今年もすでに本屋さんの店頭にはそんなコーナーができました。
 今日は今年の夏休みの文庫企画をちょっとのぞいてみたいと思います。

本 まずは、やはり老舗。「新潮文庫」。
 今年もズバリ「新潮文庫の100冊」。
 今年は、2冊読んだら(といっても、正確には購入するとですが)
 「Yonda?マスコット人形」が必ずもらえます。
 それもいいけれど、本屋さんで目をひくのは、
 原色単色でできた「限定SPECIALカバー」。
 夏目漱石の『坊っちゃん』とか太宰治の『人間失格』とか10冊のみについています。
 欲しい。
 買いたくなる。
 こういうシンプルなカバーが最近少ないですから、
 余計欲しくなります。

本 これに対抗しているわけではないでしょうが、
 「集英社文庫」は数点人気漫画家の特別カバー文庫を出しています。
 確か、去年あたりからしているんじゃあなかったかな。
 売上げが伸びたとか聞いたことがあります。
 集英社文庫の、今年の夏のコピーは、
 「はじまり。ナツイチ
 岡田将生さんと山下リオさんがイメージキャラクター。
 すみません。
 オジサンは二人とも知らなかった。
 これから応援します。
 プレゼントは、一冊買うと「ナツイチオリジナルストラップ」が
 もらえます。
 しかも、ペアになるらしいですから、
 ぜひ彼(あるいは彼女)と一冊ずつ買ってよ、という作戦。
 うまいなぁ。

本 さて、「角川文庫」のイメージキャラクターは松山ケンイチさん。
 松山ケンイチさんはオジサンも知っていました。
 キャッチコピーは、「発見。角川文庫 夏の100冊」。
 角川文庫のプレゼントは、
 2冊買うと必ずもらえる「ブックカバー」。
 「フェルメール」とか「赤富士」とか渋め系もあります。
 これも欲しい。

本 これら三つの出版社は当然この「夏休み」文庫企画用の、
 パンフレットも用意しています。
 これをみているだけでも楽しい。
 大人も楽しい。
 それぞれの作品ラインアップを比べるのも楽しいし、
 コピーを読むのもいい。

本 さあ、学生諸君。
 今年の夏は何冊読みますか。


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07/06/2009    愛を読むひと
プレゼント 書評こぼれ話

  今日は映画のお話です。
  先日、今話題の映画『愛を読むひと』を観てきました。
  愛を読むひとスティーブン・ダルドリー監督の恋愛映画。
  あの『タイタニック』で一躍有名になった女優、ケイト・ウィンスレットさんが
  この作品で第81回アカデミー賞主演女優賞を受賞したくらい、
  彼女の体をはっての熱演が魅力的な作品です。
  映画『タイタニック』の時はどちらかというとタイプでない女優さんでしたが、
  この作品を観て、すっかり気に入りました。
  ケイト・ウィンスレットさんはこれからもスカーを
  手にするような気がします。  
  がんばってください、ケイトさん。
  そして、この映画の原作は、かつて日本でもたくさん読まれた、
  ベルンハルト・シュリンクさんの『朗読者』です。
  私も話題になった頃(2001年)に読んでいます。
  今回映画を観て思ったのですが、やはり映像の力というか、
  音楽も含めたところの総合力ですが、
  こういう恋愛モノを表現するするには小説よりも強い気がします。
  感情移入がしやすい。
  でも、原作はもっと重たい内容だったように記憶しています。
  そういうものが映画ではそり落とされている、というか、
  どうしても主人公二人の感情にひっぱられます。
  ケイト・ウィンスレットさん演じる主人公が初めて文字を書く場面などは
  やはりついほろっとさせられます。
  
  今回の書評はその2001年の「読書ノート」からの蔵出しです。

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朗読者 (新潮文庫)朗読者 (新潮文庫)
(2003/05)
ベルンハルト シュリンク

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sai.wingpen  裏切りもまた愛                  

 久しぶりの海外文学である。ドイツでの刊行後五年間で、二十以上の言語に翻訳され、昨年(2000年)日本でもベストセラーになった。
 でも、評判になったわりにはすごく地味な作品だったが、この本を手にした多くの人に戸惑いはなかったのだろうか。
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プレゼント 書評こぼれ話

  日曜日はあっという間にやってきて、
  あっという間に行ってしまう。
  まるで、「風と共に去りぬ」。
  このブログでは、そのことを「丸かじりと共に去りぬ」と、(勝手に)呼んでいる。
  今回紹介したのは『ケーキの丸かじり』、
  書いたのは、もちろん東海林さだおさん。
  この題名の謂れ(大層であるが)だが、
  今回の本の中でショージ君は「クリスマスケーキ丸かじり」に
  果敢にも贅沢にも、挑戦しているのであります。
  あーあ、私もしてみたい。
  夏であろうが、「クリスマスケーキ」がいい。
  サンタさんのロウソクとか、柊(ひいらぎ)の飾りとかついたもの。
  でも、ないだろうな。
  夏だもんなぁ。
  そうだ、オーストラリアに行けばあるかもしれない。
  でも、クリスマスじゃないか。
  グヤジー。

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ケーキの丸かじり (文春文庫)ケーキの丸かじり (文春文庫)
(2003/05)
東海林 さだお

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sai.wingpen  「丸かじり講座」の時間           矢印 bk1書評ページへ

 ♪♪チャリラリラー、チャリライラー (適当にハミングしてください)
 みなさん、こんばんわ。(あ、朝読んでいる人とか昼読んでいる人は適当に挨拶してください)
 「丸かじり講座」の時間がやってきました。
 私、「丸かじり歴」三千年、「丸かじり」の世紀の謎にせまる、○△■男でございます。
 今回は「丸かじり」における「述語」について、日夜世のため人のため、研究してまいりました、その 成果を、ここに開陳したいと思います。
 うむ、カイチン、と今、申し上げた。
 どうも、いけません。
 この言葉、真面目なクセに、いやらしいときてる。
 こういう言葉のことを言語学的に申さば、「むっつりスケベ詞」といいます。
 かくほどに、私、「丸かじり」に精通しております。
 うーむ。このセイツウも、同じく「むっつりスケベ詞」でござった。
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07/04/2009    男と点と線:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  山崎ナオコーラさんは芥川賞に前回落選しちゃいましたが、
  その対象となった『』という作品を、私としては結構気にいっていて
  書評(ここをクリックしたら読めますよ)でもかなりほめたと思います。
  でも、本当のところどうなのかなって思って読んだのが、
  今回紹介した山崎ナオコーラさんの『男と点と線』という短編集です。
  ここでは海外の都市が舞台になっているのですが、
  山崎ナオコーラさんはすべて行ったことがあるそうです。
  それで、こんなことを話しています。

     よその国に行くと、文章がいっぱい降ってくるんですよ。

  山崎ナオコーラのそういう感覚というのはやはり面白いですね。
  これは新潮社のPR雑誌「波」5月号に書かれています。
  その中で、こんなことも話しています。

     出来ることなら私は、全体が詩のような文章で綴られている小説を
     書けたらいいなと思っているんです。
     (中略)
     何が言いたいんだみたいにもなると思うんだけど、
     それでも社会の役立つ本を作りたいと考えている。


  なんだか、しばらく山崎ナオコーラを読む予感がします。
  
男と点と線男と点と線
(2009/04/28)
山崎ナオコーラ

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sai.wingpen  世界の中心で愛を叫ばない             矢印 bk1書評ページへ

 六十八歳の老夫婦とクアラルンプール、二十二歳の女子大生とパリ、三十二歳の会社員と上海、十七歳の高校生のカップルと東京、四十二歳の独身男性とニューヨーク、そして、二十八歳の小説家と世界最南端の町ウシュアイア。
 一見なんのつながりもなさそうな六つの短編なのだが、そこに「意識的にそろえた」という山崎ナオコーラのたくらみを感じる。
 ひとつは「関係性」ということ。ひとつは「世界の果て」ということ。
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