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プレゼント 書評こぼれ話

  下野する
  という言葉。
  辞書でみると、「与党から野党になること」とあります。
  今回の衆議院選挙は結果として民主党の圧勝ということになりましたが、
  残念なのは、今回の選挙が「No」の選挙だったことだということです。
  今までの自民党政治に「No」をしたのは事実だと思います。
  それが果たして民主党の「Yes」の票だったかはわかりません。
  私たちはこれからしっかり民主党の政治を見ていかなければなりません。
  あるいは、野党になった自民党の今後も見ていかなければなりません。
  いつか、この政党をしっかりと「Yes」といえるような、
  そんな選挙をしてみたいと思います。
  今回紹介しました、湯浅誠さんの『反貧困』に、
  「過ちを正すのに、遅すぎるということはない」とあります。
  民主党には、国民の「No」を今後政策にきちんと反映してもらいたい、
  と思います。
  新しいこの国のため。
  新しい政治の風を。
  選挙だけでなく、
  これからも私たちはしっかり見ていきます。

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
(2008/04)
湯浅 誠

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sai.wingpen  私たちはどのように<変身>するのだろうか            矢印 bk1書評ページへ

 朝目覚めたら虫になっていたのは、カフカの『変身』の主人公ザムザ氏だが、2009年8月の最後の朝目覚めたら、国会議員になっていた人も、ただの人に戻ったという人も、ザムザ氏のような驚きがあっただろうか。もっとも目覚めるということでなく、まんじりともせず、この朝をむかえたかもしれないが。
 実際には、朝目覚めても虫に<変身>などするはずもない。まして、突然にこの国の様相が一変することもない。いくら民主党が政権を担える第一党になったからといって、この朝、私たちは突然に幸福になったわけではない。ただ、虫に<変身>しなかっただけだ。

 本書は、「反貧困ネットワーク事務局長」の湯浅誠氏が2008年4月に刊行した、「貧困」の問題解決のために、その実態や問題を可視化した一冊である。
 第一部の「貧困問題の現場から」では、貧困が広がった理由やどのような問題が起こっているのかが、実際の事例をレポートしながら書かれている。そのなかで副題に使われている「すべり台社会」のことを、「うっかり足を滑らせたら、どこにも引っかかることなく、最後まで滑り落ちてしまう」社会と説明がされている。
 私たちには憲法で認められた最低限の生活を営む権利があり、それを支える社会保障制度は確かに存在する。しかし、制度に綻びがあって、少なからずの人がそこからもこぼれおちていっているのが現状である。。
 湯浅氏はそこに問題があると指摘する。

 第二部「「反貧困」の現場から」は、そういう問題を抱えた社会を変えていくための、主に湯浅氏の活動を中心に、どのような取り組みがなされているかが記されている。
 湯浅氏は「貧困」を「自己責任論」に集約する意見に対して、本書でも「そうではない」ことを強調している。「貧困」とは「他の選択肢を等しく選べない」(82頁)状態のなかで生み出される、社会的な「問題」であるとしている。そこに湯浅氏たちの活動の意味がある。
 湯浅氏たちの活動がどれほど浸透していったかはわからないが、「雇用保険の全労働者へに適用」や「最低賃金の引き上げ」、「製造現場への派遣の原則禁止」といった項目が政権与党民主党のマニュフェストに掲げられていることは、大きな一歩にちがいない。
 あとは実現あるのみである。

 本書の最後に湯浅氏はこう書いている。「過ちを正すのに、遅すぎるということはない。私たちは、この社会に生きている。この社会を変えていく以外に、「すべり台社会」から脱出する方途はない」(220頁)と。
 私たちはザムザ氏のように、虫に<変身>などできない。虫に<変身>などしたくはない。
 しかし、私たちのこの国が、住みやすい、生きやすい世界に<変身>することを願わずにはいられない。
 
(2009/08/31 投稿)

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