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プレゼント 書評こぼれ話

  二日つづけて、
  川上弘美さんのことを書いてきましたが、
  今日は川上弘美さんの、もっとも新しい本、
  『これでよろしくて?』の書評です。
  本屋さんの店頭で、
  川上弘美さんの本をみかけると、
  うれしくなってしまいます。
  まさか毎日出るはずもないのですが、
  なんだか川上弘美さんの新しい本がでていないか、
  いつもさがしている。
  そんな気分で本屋さんを歩いています。
  今回紹介した、『これでよろしくて?』は、
  もともとが「婦人公論」という女性向けの雑誌に掲載されていましたので、
  物語の内容もそういう読者を意識したものになっています。
  きっと男である私の読み方と、
  女性読者ではちがうだろうな、と
  思っています。
  そういう、男女の間の読み方の違い、
  感じ方の違いって、面白いですし、
  それはそれでいいのだと思います。
  女性のみなさん。
  ぜひ、お読みください。

これでよろしくて?これでよろしくて?
(2009/09)
川上 弘美

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sai.wingpen  ちちんぷいぷい                矢印 bk1書評ページへ

 川上弘美の作品はやわらかくて、あたたかい。
 少年の頃に、おとなへと変化していく男女の成長の違いを教わったことがある。いわゆる第二次性徴期といわれる十代前期において、女子は皮下脂肪が増え全体に丸みを帯びてくる、と習ったが。そういった女性ならではの、つつみこむようなものが川上弘美の文学にはある。そういう点では、現代の文学界のなかで、川上は極めて女性的な書き手であるといえる。

 この物語は、「家族小説」である。あるいは、「夫婦小説」といってもいいだろうし、「嫁姑小説」ともいってもいい。
 男二人女一人の兄妹の、長男に嫁いだ、主人公の菜月。義理の両親とは別居生活ながら、遠く離れてもいず、適度に行き来はある。結婚生活は八年めに入ろうとしているが、「何の不満もなかったけれど、とりたてて充実した感じもいだいていなかった」頃、菜月は不思議な女性の集まりに勧誘される。『これでよろしくて? 同好会』。会そのものはたわいもないおしゃべりの集まりであるが、菜月はどこか心が満たされていくのを実感している。

 夫の母、すなわち姑は弟の妻には何もいえない。いえない分、菜月に対してはっきりとモノを言う。しかし、この母にしても悪人ではない。たぶん、どこにでもいそうな、夫の母だろう。
 いや、それは男性の目からみた評価かもしれない。女性の目からすると、こういう姑、あるいは夫と義母の関係は許せないのかもしれない。それでも、この嫁姑の関係にしろ、嫁と夫と姑(あるいは小姑である妹)の関係にしろ、川上弘美が描くと、殺伐とはしない。
 それはどこかしら、昔、転んですりむいたひざこぞうの傷を母親が「痛くないのよ」と言いつつ、唾で湿らせてくれた、安堵のような、慈しみに似ている。

 菜月にとって『これでよろしくて? 同好会』がそうであったように、読む側は川上弘美のやわらかくてあたたかい文体、物語の運びにはまっていく。そして、菜月が夫や姑との関係の変化、あるいは彼女自身の変化に気づくことに心地良く満たされてゆく。
 菜月が最後に得た実感、「明日の献立は、明日考える。今日の献立は、今日考える。それでいい」、に、女性の豊かな抱擁力を感じる。
 川上弘美は、私たちの心の傷に、「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの、とんでいけ」の魔法をかける。
  
(2009/10/22 投稿)

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