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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から、「読書週間」です。
  今年のテーマは、「思わず夢中になりました」。
  あります、あります。
  読み始めたらとまらない。
  本の世界にのめりこむ。
  今日紹介する『図書館ねこ デューイ 』は、
  昨年の「読書週間」の際に書いた蔵出しです。
  ところが、先日(10.20)こんな新聞記事をみつけました。
  
   30代「忙しくて」本読めない? 4人に1人が「月0冊」

  これは、財団法人・出版文化産業振興財団が行った
  読書の実態と意識調査の結果なのですが、
  30代の人の、実に27.4%の人が月に一冊も本を読まないという
  結果だったんですね。
  でも、どの年代も、読まない人が20%を超えているというのも
  悲しいですね。
  「3冊以上読む」のは60代が最も多いのですが、
  やはり本を読むのは、時間が必要なのかもしれません。
  この調査では、子どもの頃に親から本を読んでもらったりした
  読書体験を持つ人の方が、
  たくさん本を読んでいる傾向にあるとしています。
  「読書週間」にかぎらず、
  本の素晴らしさを、もっとたくさんの人と
  わかちあえたら、
  どんなにいいでしょう。

図書館ねこ デューイ  ―町を幸せにしたトラねこの物語図書館ねこ デューイ ―町を幸せにしたトラねこの物語
(2008/10/10)
ヴィッキー・マイロン

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sai.wingpen  おもわぬ出会いがありました         矢印 bk1書評ページへ

 2008年の読書週間(10.27~11.9)のテーマは「おもわぬ出会いがありました」。まさにそんなコピーと同じ思いをこの本で味わうことができたのを、奇跡のように感じている。
 私は猫が好きではない。ただ「図書館ねこ」という言葉に興味をもっただけだった。書店に並んだ猫のデューイを描いた装丁が魅力的だったにしろ。むしろ今は「図書館ねこ」のデューイが優しい鳴き声で私を呼んでくれたのかとさえ思っている。このような「おもわぬ出会い」があるから、本を読むのは楽しいのである。

 「おもわぬ出会い」といえば、著者のマイロンさんと猫のデューイの出会いも物語のように劇的である。
 先に言っておくと、この本に書かれていることは事実である。
 事実は小説より奇なり、という使い古された言葉があるが、もしかするとある事実をごくつまらないちっぽけなことにしてしまうのも、夢のような物語にしてしまうのも、その人次第ではあると思う。そして、マイロンさんはデューイとの出会いを奇跡の物語にしてしまったのだ。

 アイオワ州の北東部にあるスペンサーは、トウモロコシ畑に囲まれた、小さな町である。マイロンさんはその町の公共図書館の女性館長だった(今はすでに退職されている)。
 1988年の寒い朝、彼女は図書館の返却ボックスの中で寒さに震えていた一匹の子猫に出会う。それがのちに「図書館ねこ」となるデューイとの出会いだった。
 彼(子猫は雄猫だった)は捨てられたのかもしれないし、寒い夜をしのげるように図書館の返却ボックスにいれられたのかもしれないが、いずれにしても小さな町ながらも公共図書館のありかたを真剣に考えていたマイロンさんと出会ったのは彼(もちろんデューイのこと)にとっても奇蹟だったに違いない。

 ここに書かれているのは、そうして命びろいをしたトラねこの話ではない。
 本書の副題にあるように、図書館に住むようになったデューイ(彼の正式な名前はデューイ・リードモア(もっと本を読もう)・ブックス。なんて素敵な名前だろう)が、小さな町を幸せにする話なのだ。
 映画の話をしているのではない。彼は何も魔法を使わないし、人の言葉を話したわけでもない。ただ毎朝図書館に来る人を優しく迎えただけであり、誰へだてなく擦り寄り、膝にのぼっただけなのだ。
 ではどうして町を幸せにできたのか。そのことをマイロンさんをこう書いている。「デューイは改めて、スペンサーが他とちがう町だと思い出させてくれた。わたしたちはお互いに気づかいをした。ささいなことを大切にした。人生は量ではなく質だということを理解していた」(170頁)
 繰り返すが、これはハリウッドの夢物語ではない。トウモロコシ畑に囲まれた小さな町に起こった真実なのだ。
 今の日本で都市と地方の格差の問題は深刻だ。
 でも、この本を読めば、私たちが何をしないといけないのかがわかる。自分たちの町に誇りをもつことだ。そして、同じようなことが著者のマイロンさんの生き方にもいえる。
 この本の魅力はもちろんデューイの可愛いさにおうことが多いが、アルコール依存症の夫との離婚やシングルマザーとしての子育ての困難さや乳がんの苦しみといった難題を幾重にも抱えながら、それでも図書館館長としての仕事をやりぬく彼女の、生き方の素晴らしさに誰もが胸打たれるにちがいない。

 マイロンさんは書いている。「いちばん大切なのは、あなたを抱きあげ、きつく抱きしめ、大丈夫だといってくれる人がいることなのだ」(318頁)。
 マイロンさんにとってデューイはそんな猫だったのだ。デューイにとってマイロンさんはそんな女性だったのだ。そして、スペンサーの町の人にとっても、デューイは、そんな奇跡のような「図書館ねこ」だったのだ。
 鼻の奥がツンとして涙を少し滲ませながら、表紙の絵のデューイにそっとつぶやいて本を閉じた。
 「おもわぬ出会いは、とっても素敵でした。ありがとう」
  
(2008/10/27 投稿)

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