プレゼント 書評こぼれ話

  J.D.サリンジャー氏が亡くなった。
  びっくりしたのは、その氏のニュースだけでなく、
  1月29日の新聞夕刊の一面に、
  それが大々的に報じられたことです。
  日本人の作家でも、
  なかなかこんな扱いはないですよ。
  それが、アメリカの作家で、
  しかも有名な作品としてはほとんど
  『ライ麦畑でつかまえて』一作だけで
  この扱いですから、
  おそらく新聞社の多くの記者の皆さんも
  若い時には影響されたんでしょうね。
  今日は、そんなサリンジャーさんを追悼して、
  村上春樹さんの翻訳で話題となった、
  『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の蔵出し書評です。
  さよなら、サリンジャーさん。

  じゃあ、読もう。
  
キャッチャー・イン・ザ・ライキャッチャー・イン・ザ・ライ
(2003/04/11)
J.D.サリンジャー

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sai.wingpen  ライ麦畑でつかまえられて              矢印 bk1書評ページへ

 私が初めて「ライ麦畑」(ここでは野崎孝氏の『ライ麦畑でつかまえて』と村上春樹氏の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の両訳に敬意を込めて、こう表記する)を読んだのはいくつの時だったろうか。大学の授業も学生寮の生活も面白くなく、それでいて何をするでもない日々の中で、ポール・ニザンの「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどと、だれにも言わせない」(『アデン・アラビア』)という文章に酔いしれていた、二十歳前だったように思う。生意気にも私は原書で「ライ麦畑」を読み始めたのだ。私の英語の実力からいって、読了できたはずもない。それなのに、今回村上春樹氏の訳による「ライ麦畑」を読んで、主人公のホールデンがこの本の書名となる話を妹のフィービーにする終わり近い場面をよく覚えているのはどうしてだろうか。野崎孝氏の翻訳本を読みながらのことだったのかもしれない。なにしろ、三十年も前の、昔の話だ。主人公は永遠に十六歳だが、私はもう四八歳だ。記憶も薄れていく。

 当時の私は主人公のホールデン・コールフィールドのことをどう思っていたのだろう。少なくとも四八歳の私は、嘘つきで、強がりで、それでいて臆病な主人公を最後まで好きになれなかった。もし、こんな少年がいたら、この物語に出てくる多くの大人たちのように、叱りつけたり、あきれたり、見捨てたりしそうな気がする。そして、そういう感じ方は三十年前の私自身を裏切っているような気がしないでもない。あの当時大人たちは何もわかってくれないと地団太踏んでいたのは、この私自身なのだから。だから、当時の私はこの本の書名となった主人公の話を記憶にとどめたにちがいない。

 「誰かその崖から落ちそうになる子どもがいると、かたっぱしからつかまえるんだよ。…ライ麦畑のキャッチャー、僕はただそういうものになりたいんだ」(村上春樹訳・287頁)

 当時の私は崖から落ちそうな若者だった。自分の居場所がわからずにただうろうろしていた。どこへ行っていいのかもわからなかった。そんな私をつかまえてくれたのが、この「ライ麦畑」であったはずだ。そのように二十歳前の私は「ライ麦畑」を読んだはずなのに、今の私は主人公がもっとも毛嫌いした大人になってしまっている。今の私こそが、本当の「ライ麦畑のキャッチャー」になるべきなのに、である。今回四十年ぶりに「ライ麦畑」が新しく訳し直された。訳者が村上春樹氏ということで多くの若者たちが新しい「ライ麦畑」を読むにちがいない。でも、本当に読むべきなのは、かつて「ライ麦畑」でつかまえられた多くの人たちなのかもしれない。

 あなたは「ライ麦畑のキャッチャー」になれましたか。
  
(203/05/14 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  第142回芥川賞は残念ながら、
  「該当作なし」になったのは、
  このブログでも書きました。
  9人の選考委員の選評は、
  来月発売の文藝春秋に掲載されるでしょうが、
  その前に私自身の評価はどうか、ということを
  競い合ったという3作品を読んで
  みていきたいと思います。
  選考委員の一人、池澤夏樹さんは、
  「今の日本の文学が低調というわけではない」と
  話していましたが、本当にそうなのか。
  今日は、その第一弾として、
  藤代泉さんの『ボーダー&レス』。
  「在日問題への新しい時代のとらえかたが現れている」と、
  評価された作品です。
  私の評価は、ちょいときつめ。
  選考委員のどなたが支持したのか
  気になるところです。

  じゃあ、読もう。

ボーダー&レスボーダー&レス
(2009/11/07)
藤代 泉

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sai.wingpen  ケータイを持った三四郎                矢印 bk1書評ページへ

 就職した会社で出会った僕と在日コリアンのソンウ。二人は妙に気があって会社のなかでもしばしばメールを交換しあったり、互いの部屋を行き来したりする友人となる。僕の女性関係の悩みもソンウの過ごしてきた環境も、互いに分かり合おうとするが、どこかにいつも溝(ボーダー)がある。
 そんな若者たちの姿を描いて、第142回芥川賞候補作にもなった作品だが、私はちっとも感心しなかったし、新しいものを何ひとつ感じなかった。

 物語に登場する人物は型にはまった造形であり、主人公とソンウの関係などもこの作品で初めて描かれたものではない。あるいは、主人公が既婚の女性とあわやの関係となるところなどは漱石の『三四郎』にでてくる温泉場の場面の引き写しである。
 漱石の三四郎は明治時代の青年として社会の溝の前でぐるぐると歩き回っているが、平成時代の僕はぼうぜんと溝をながめているにすぎない。
 もっとも平成時代の僕にはメールという三四郎が持ち得なかったツールだけが進歩といえるかもしれないが。

 それにしても、この作品の文章のみだれかたはいただけない。特に中盤以降は書き手の息切れを感じる。
 これが、最終選考のなかで最後の三作品に残ったのだとすれば、今回の芥川賞受賞作なしもむべなるかな、である。
  
(2010/01/30 投稿)

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鉛筆 今回の「雑誌を歩く」は、
 「散歩の達人」(交通新聞社)2月号です。
 えー、またですか、と思われた人もあるでしょうが、
 そうなんです、またなんです。
 でも、今回の特集ははずせないんです。
 まずは、表紙をごらんください。

散歩の達人 2010年 02月号 [雑誌]散歩の達人 2010年 02月号 [雑誌]
(2010/01/21)
不明

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鉛筆 大特集「大宮・浦和」。
 なんといっても、私の地元。足元。居住区。マイエリア。
 これははずすわけにはいきません。
 ついているコピーがいいですね。

   渋ーくて、ゆるーいのが魅力

 これって褒め言葉なんでしょうか。
 まあ、なんとなくわからないわけでもありませんが。

鉛筆 そもそも大阪出身の私が埼玉の浦和に住み始めたのは
 かれこれ20年近くになります。
 当時はまだ浦和市(現在はさいたま市)といっていましたが、
 兄が住んでいたので、
 大阪から出てきたときに北浦和に決めました。
 やっぱり身内がそばにいると何かと頼りになるじゃないですか。
 住んでみてどうかというと、
 「渋ーくて、ゆるーい」ということはあまりなくて、
 とても住みやすい、いい街でしたね。
 都会というにはざわざわしてなくて、
 田舎というにはきどっていて、
 そんな街です。
 やっぱり、「ゆるーい」かな。

鉛筆 今回の「散歩の達人」を読むと、
 この街のことがまったくわかっていないことを
 痛感しました。
 やっぱり編集部のカメラマンさんがうまいのか、
 見知った街ながら、すっかり表情がちがうんですもの。
 なんか、「写真撮りますよ」っていわれて、
 ついお澄ましした雰囲気があって、
 それはそれで、この街らしいのですが。

鉛筆 ところで、浦和の名物はうなぎだって知っていました?
 JRの浦和駅西口には、やなせたかしさん作による
 「うなこちゃん」なる石像もたっているくらいです。
 何故浦和でうなぎ、と思われた読者のみなさんに、
 「散歩の達人」から引用しますね。

   江戸時代、宿場町として栄えた浦和の地は沼地が多く、
   (中略)近郊の沼や川で捕れた特産の天然うなぎを料理して
   遠方から訪れた客をもてなしたのが浦和名物のうなぎの始まり


鉛筆 なるほど。なるほど。
 もちろん、浦和といえば、浦和レッズの本拠地ですから、
 サッカーの記事もちゃんとあります。
 それに、今や大宮といえば、鉄道マニアの聖地、
 「鉄道博物館」もきちんとおさえられています。

鉛筆 さあ、「散歩の達人」2月号をもって、
 大宮・浦和を歩いてみましょう。
 ひょっとして、私に会えるかもしれませんね。

 じゃあ、読もう。

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普通。 最近、本屋さんに行きました?
 私は結構行きますね。
 通勤途上では駅の構内の本屋さんが多いですが、
 休みの日にはちょっと大きめのチェーン店に行くことが
 多いかな。

普通。 今日は、そんな本屋さんのニュース。
 1.26の朝日新聞夕刊の記事から。

  汗;; 書店、半減の県も 全国では10年で6403店減少

困った。 びっくりです。
 記事の冒頭にこうあります。

   汗;; 出版市場が2兆円割れし縮小が続く中、
     各地で書店が消えている。

困った。 なにしろ、この10年間で6403店もの本屋さんが
 なくなったというのですから驚きです。
 減少率がもっとも高い和歌山県にいたっては、
 半数近くが減少しているというのですから、
 ただごとではありません。

困った。 書店がもっとも多いのは、
 本屋
 やっぱり東京で1739店。
 一方島根県にはわずか80店舗しかありません。
 県でたった80店舗ですよ。
 これってなんだかおかしいというしかありません。

困った。 やっぱり本屋さんは生活圏内でなじみのお店が
 1店舗ぐらいは欲しいもの。
 あの棚にはこういう本があって、
 ここにはあの雑誌があって、
 みたいに、身体がその本屋さんの配置まで覚えているような
 そんな本屋さんが必要。

普通。 もうハタキを持って現れる本屋さんって
 なくなったでしょうが、
 そういう関係も暖かい人間関係があってこそ。

 じゃあ、本屋さんに行こう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  このブログのある読者さんが
  昨年(2009年)ここでもっとも取り上げた作家(書き手)を調べてくれて、
  その栄えある1位が、
  今日紹介する、経営コンサルタントの小宮一慶さんでした。
  けっこう昨年はまりましたからね。
  小宮一慶さんからも直接コメントいただいたりして、
  そうなるとやはり読みつづけたくなりますよね。
  今年もこれでもう2冊めかな。
  しばらく私のなかの小宮熱は続きそうです。
  ところで、今回の書評タイトル「志は氣の帥」は
  本書のなかで小宮一慶さんが書かれている言葉で、
  小宮一慶さん自身、ある有名な創業経営者(誰なのかな)から
  聞いた言葉らしい。
  その人はこう言ったそうです。
  本文から引用(55ページ)しますね。

   朝起きられないとか、なんかやる気が出ないのは、
   『志』がないから。(中略)
   (自分のそもそもの存在意義)がわかったら、
   じゃあ、朝起きて、これやってみようと思うようになります。

  そうです、みなさんも志をもって。

  じゃあ、読もう。

どんな時代もサバイバルする人の「時間力」養成講座 (ディスカヴァー携書)どんな時代もサバイバルする人の「時間力」養成講座 (ディスカヴァー携書)
(2009/11/19)
小宮 一慶

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sai.wingpen  志は氣の帥                     矢印 bk1書評ページへ

 最近のビジネス本であるとか自己啓発本はたいへん上手な作り方をしている。重要なセンテンスを太字にするのは今や当たり前で、各章毎での要点とかわかりやすいイラストとか、時間にうるさいビジネスマンなどはそこだけを読めば、おおよそその本に書かれていることが把握できるようになっている。その方法でいけば、たとえばこの小宮一慶氏の本もものの30分もあれば読めてしまうだろう。
 今やビジネス本は読むのではなく、見るものなのかもしれない。
 実際そういう読書法を勧める本もあるぐらいだから、世の中の働きざかりの人たちは限られた時間のなかでどう自分の時間をやりくりしようかという奮闘努力に頭がさがる。

 だからこそ、「時間」についての本がたくさん出版されているのだが、本書に他の「時間管理術」にあるような技術的な側面を期待しない方がいい。それに、小宮氏のセミナーや出演しているTVなどで氏の話を聞いたことがある人はわかると思うが、小宮氏の話は自慢話も含めて軽妙で人をひきつける話術に長けている。それは関西人気質とでもいえばいいのだろうか、サービス精神が旺盛なのである。
 そのことは氏の文章でもいえることで、確かに本書はうまく編集されているが、要点や重要な箇所だけの拾い読みではこの本の良さは十分味わえないし、それではもったいない。

 本書のなかで小宮氏も書いているが、「メリハリをもつ」ことは重要で、読書の仕方も同じことのような気がする。すべてを要点拾い読みするのではなく、じっくり読む価値のあるものはやはりきちんと読むべきである。
 本書でいえば、特に第一章「時間力を高める考え方」は重要だろう。どういう技を使うにしろ、物事の本質のところをきちんと理解するのとそうでないのとでは、継続していくことも含めて違ってくるにちがいない。氏のいう「目的」(存在意義)と「目標」(目的にいたる通過点)でいえば、この本でまず「目的」を理解することが大事だろう。
 忙しい人にこそ、じっくり読んでもらいたい一冊である。
  
(2010/01/27 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨年(2009年)のおおみそか、
  NHKの紅白歌合戦に勝間和代さんが審査員として出ているのを見て
  正直驚きました。
  最近では国民的番組でもなくなったとはいえ、
  あの番組で初めて勝間和代さんを見た人も
  多かったかもしれませんね。
  知名度アップとしてはいうことありませんからね。
  どこかで、「紅白にでれるなんて思ってもいませんでした。
  でも、やればできるんです」みたいなことを
  書かれるのかな。
  今日紹介するのは、そんな大活躍中の勝間和代さんの
  『やればできる』という本。
  副題は「まわりの人と夢をかなえあう4つの力」。
  この「まわりの人」というのが、
  勝間和代さんらしい表現の仕方だなとつくづく思います。
  この本のエプローグのなかで、
  勝間和代さんは「新しいパートナー」とさりげなく触れていますが、
  どこかの週刊誌に出てたかな。
  まあどうでもいいですが、
  少し、なになに、と興味がわきました。

  じゃあ、読もう。


やればできる―まわりの人と夢をかなえあう4つの力やればできる―まわりの人と夢をかなえあう4つの力
(2009/12/04)
勝間 和代

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sai.wingpen  勝間和代氏に期待するもの              矢印 bk1書評ページへ

 そういうことじゃあないよ、勝間さん、と香山リカ氏が言ったかどうかわかりませんが、本書は香山氏の『しがみつかない生き方』の「<勝間和代>を目指さない」の勝間和代氏自らの反論書です。
 反論の大きな柱は「勝間和代だからできた」のではなく、「勝間和代だってできた」ということなのでしょうが、香山氏が『しがみつかない生き方』で論じていたのはそういうことではなかったはずです。
 香山氏は<勝間和代>に代表される強引な生き方に疑問を呈していたはずです。それを勝間和代氏はどうも誤解しているというか、さらに屋上置を架けて、『やればできる』としています。

 ただ今度の場合は、突貫工事が過ぎたようで、勝間氏のいう「まわりの人と夢をかなえあう」、「しなやか力」「したたか力」「へんか力」「とんがり力」という4つの力に、従前勝間氏がもっていた説得力も新鮮さはあまり感じられません。
 それはひとつには従来からの勝間説の繰り返しであることと今までになかったにわかづくりの露呈でしょう。もっとも勝間氏も活動の場を広げるなかで、その文脈も成長してきていることは認めますが、反論目的となりすぎて、あまりにも脆弱すぎる屋上にみえてしまいます。

 勝間氏がいう実践のすすめを否定しませんし、教えられることは多いと思います。しかし、だからといって誰もが勝間和代氏になれないのです。あたりまえですが。読者が勝間氏をめざすことを自由ですが、あくまでも自身の成長の結果として<勝間和代>であるべきです。だから、勝間氏は香山氏への反論として、本書のような自己啓発的な書き方でない論じ方があったのではないでしょうか。
 もっとも、勝間本をつづけて読んできた読者としては、勝間氏にそろそろ自己啓発本から卒業して、本格的な経済本を書いてもらいたいのですが。
  
(2010/01/26 投稿)

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  先日の「さいたまブッククラブ」で私が紹介したのが
  今日紹介する、開高健さんの『オーパ !』。
  この本は、朝日新聞日曜書評欄の「百年読書会」(重松清ナビゲーター)の、
  2月の課題図書でもあります。
  新聞の予告で『オーパ!』を見つけたときは、
  思わずやったー! って、地上から3センチは浮きましたね。
  大好き開高健さんの代表作ですからね。
  久しぶりに本棚から昔買った文庫本を取り出したての再読ですが、
  こんなに活字が小さかったのかと感じました。
  今、本屋さんで売っている文庫本はどうかわかりませんが
  私がもっている版はとても小さい。
  この本を買ってから、
  たくさんの水が橋の下を流れたので、
  私の視力はすっかり老眼仕様ですからね。
  久しぶりの再読いかがでしたかと、
  先日のさいたまブッククラブで聞かれたのですが、
  それが一番の感想だったかもしれません。
  今回も書評句つきで、お楽しみください。

  じゃあ、読もう。


オーパ (集英社文庫 122-A)オーパ (集英社文庫 122-A)
(1981/01)
開高 健

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sai.wingpen  本はここに完結する                

  この河の 主人はだれぞ 雨蛙

 『オーパ!』は開高健の代表作のひとつでもちろん全集にも収録されているが、できれば高橋の写真がはいった本で読みたい。さらにいえば、文庫本よりも大型本で読むのが最適だろう。
 開高の文章は本作においてもアマゾンのようにどろりとした養分をたたえ、豊穣でかつ俊敏であり、過大ながらも細部を怠らないのであるが、ピラーニャの鋭利な牙はやはり一見に如かず、ドラドの跳躍はその一瞬をとどめえない。
 高橋の写真は開高の文章にあくまでも寄り添い、でしゃばることはない。
 そんなパートナーはもっと評価されていい。だとしたら、読み手の礼儀として、やはり写真付きの本で読んで、感じて、放熱したいところである。そういう読書のありようとして、この作品は稀有な宝石のような作品であるし、開高健の作品ではあるが、すでに作者の手を離れて、これは作品として見事に完結している。
 ひたすら「オーパ!」というしかない。
  
(2010/01/22 投稿)

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本 昨日(1.23)おなじみの「さいたまブッククラブ」の
 今年最初の定例会に行ってきました。

 今回は初参加の3人を含む9人です。

本 いつも思うのですが、
 初参加の人はやはり緊張するんでしょうね。
 本について話すといってもどんなことを皆さん話すのかわからないし、
 どう話せばいいかもわからない。
 そのうちなじむでしょうし、早い人なら
 会の進行で、ははん、こんな雰囲気なんだってわかって
 発言(というほどのものではないので、これから参加しようと
 思っている人はビビらないでください)される。
 せっかくの機会ですから、どうぞ、どうぞ。

本 さて、今回は古本大好きのMさん(♀)から。
 今回もすてきな古本、
 昭和14年の英語のお勉強雑誌「1年の英語」。
 彼女はいつもなかなかユニークな古本を紹介してくれるので
 会の楽しみのひとつです。
 次月あたりは、昔の「保健体育」あたりが見たいなぁ。

本 この会の主宰者のNさん(♂)と立ち上げメンバーのOさん(♂)は
 今回手堅く、『忘却の整理学』(外山滋比古)と『ワークショップ』(中野民夫)。
 今回はOさんの静かで落ち着いた朗読が聞けなかったのが残念。
 会の中堅メンバーのSさん(♀)は
 三浦しおんさんの駅伝小説『風が強く吹いている』。
 同じく中堅メンバーY君(♂)は、『大河の一滴』(五木寛之)。
 皆さん、会の雰囲気がわかっているから、
 紹介もそれぞれの個性を出しつつ、うまいものです。

本 ここからは新人さん。
 まず、元エンジニアだというSさん(♂)は、
 『スローライフのために「しないこと」』(辻信一)、
 若いAさん(♂)は『成功者の告白』(神田昌典)。
 夢中でやってきたことにちょっとひと呼吸おいてみる生き方と
 夢中で目指すものに進もうという元気。
 こういう組み合わせが「さいたまブッククラブ」の面白いところかもしれません。
 そして、さりげなく物語の面白さをサマセット・モームの短編『蟻とキリギリス』に
 託したMさん(♀)。
 新しい人はいつも新鮮な風をくれます。

成功者の告白―5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語 (講談社プラスアルファ文庫)成功者の告白―5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語 (講談社プラスアルファ文庫)
(2006/09)
神田 昌典

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本 今回私が紹介したのは、朝日新聞の「百年読書会」の来月の課題作品、
 開高健の『オーパ!』。
 明日はその本を紹介しますね。

本 今年は国民読書年。
 こういったブッククラブでたくさんの人が、
 本について話し合える空間を持てたら
 いいですよね。
 そのときには、最初にやっぱりこういうのかな。

 じゃあ、読もう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  男の顔は履歴書
  といったのは大宅壮一さんらしいですが、
  そして、その言葉は以前から知っていて、
  毎朝洗面所の鏡を見ながら、
  こういうくたびれたところも
  履歴書に書かれていいのだろうかと
  悩まないでもありません。
  今日紹介する本田直之さんの『パーソナル・マーケティング』は
  いかに自分を高め、どのようにそれを売っていくかということで、
  まさに履歴書、あるいは職務経歴書の世界に近いと
  思われます。
  だとしたら、
  また毎朝洗面所の鏡の前で
  己が顔に戸惑いと諦めを感じるしかありません。
  ところで、男の顔が履歴書であれば
  女の顔は何というか知っていますか。
  これは藤本義一さんがいったらしいですが、
  請求書。
  女の顔は請求書
  考えさせられます。
  今日は400字書評でお楽しみください。

  じゃあ、読もう。

パーソナル・マーケティングパーソナル・マーケティング
(2009/11/19)
本田 直之

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sai.wingpen  選ばれることは恍惚なのだろうか                矢印 bk1書評ページへ

 いくつになっても思うのだが、自分とは一体何だろう。
 どんないいところを持っていて、治さないといけないのはどこなのか。二十代でも悩んでいたし、三十代、四十代になってもわからなかったし、五十も半ばになっても、そうだ。自分にはなにがあるのだろうと考えることがある。
 本田直之氏のいう「パーソナル・マーケティング」とは、「自分の見せ方だけでなく、経験やスキルをどう考えるか、から、それらを世の中にどう伝えていくか」といった一連の過程をさしているが、どれだけ多くの人がそういうことをできるのだろう。(できないから、本書のような本が出版され読まれるのだが)
 強みだけでなく、欠点や弱さまで含んだところに自分というものがあれば、それをまるごと抱えるような生き方はできないものだろうか。
 「選ばれてあることの恍惚と不安と、二つわれにあり」と書いたのは太宰治だが、「選ばれる」ことは恍惚ばかりではないことを忘れてはいけない。
  
(2010/01/23 投稿)

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  今回紹介する佐野眞一さんの『新忘れられた日本人』は、
  民俗学者宮本常一の名作『忘れられた日本人』から題名を
  とったものだが、
  もともとは週刊サンデー毎日に50回にわたって連載されていました。
  佐野眞一さん自身、
  「肩のこらない読み物」と書かれていますが、
  ひとつひとつが短文なので読みやすく、
  それでいて刺激的です。
  ノンフィクション好きな人にはぜひ。
  私はノンフィクションがどちらかといえば、
  好き。
  創作ではない緊迫感が面白いし、
  偶然というだけでは表現できないドラマがいい。
  最近そのノンフィクションに面白い作品が少ないのが
  淋しいですが、
  ぜひ上質な作品を読みたいと願っています。

  じゃあ、読もう。

新忘れられた日本人新忘れられた日本人
(2009/07/18)
佐野 眞一

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sai.wingpen  脇役だって面白い               矢印 bk1書評ページへ

 一篇のノンフィクションを書くのに、書き手はどれだけの取材をするものなのだろうか。本書でとりあげられたさまざまな人物は、佐野眞一が「これまで書いてきた作品のなかから歴史の表舞台から消えていった脇役たち」だが、脇役というにはあまりにも面白い人物たちである。

 たとえば、佐野の代表作のひとつである、戦後の流通王国を築いたダイエーの中内功を描いた『カリスマ』は、もちろん中内功という稀有な経営者が主役であるが、本書で取り上げられた脇役の上田照雄の人生もまた一篇のノンフィクション足りうるほどに刺激に富んでいる。あるいは、照雄につづく息子という系譜も同じである。
 もちろん、中内という光があたらなければ、上田は神戸の一介の枝肉商で終わったかもしれない。逆に光が強すぎて、上田の人生そのものがゆがんだかもしれない。それらはすべて仮説だ。
 あるのは、ただひとつの真実だけだ。

 毀誉褒貶あるだろうが、歴史にその名を残しうるのはわずか一握りの人間にすぎない。多くは脇役であり、脇役にもいたらない大部屋役者であり、「忘れられた日本人」だ。
 ただいえることは、中内における上田だけでなく、江副浩正における父良之、正力松太郎における横道一郎といった本書のなかの脇役たちも、自らの人生においては主役であったということだろう。
 一篇のノンフィクションを書くということは、誰を主役にし、誰を脇役にするかという、過酷な峻別作業であり、人間の光と影の交わりを描くことだといえる。
(2010/01/22 投稿)

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普通。 先日(1.18)の朝日新聞夕刊の「池上彰の新聞ななめ読み」という
 連載記事に面白い内容がでていましたので、書いておきます。
 この回のタイトルは、

  汗;; 元日の書籍広告 『1Q84』が載らないのは?

 これだけではわからないと思いますが、
 新潮社の元旦広告が読売新聞日本経済新聞に掲載されなかったことを
 池上彰さんは書いています。

普通。 私のブログでも、元旦の書籍広告について書きましたが、
 ななめ読み
 私が実家のある大阪で読んだのは読売新聞(大阪版)。
 確かに新潮社の『1Q84』の四月刊行予定の広告はありませんでした。
 で、我が家に帰ってきてから読んだのは、朝日新聞(東京版)。
 新潮社の広告にあった「物語をお届けします。」という
 フレーズのことは、このブログにも書きました。
 池上彰さんの今回の記事によれば、
 この新潮社の広告は朝日、毎日、東京、産経には掲載されたが、
 「なぜか読売新聞と日経新聞には出ていませんでした」とあります。

  困った。 「大手出版社は、1日紙面で今年の出版企画を知らせることが
  恒例になっていますが、新潮社は、読売、日経を無視したようです。
  それとも、両紙が新潮社の広告を拒否したのでしょうか」

 さらに、池上彰さんはこうまで書いています。

  困った。 「新潮社と読売新聞の間に、いったい何があったのでしょうか」

 読者としても興味深々です。

普通。 普段何気なく読んでいる新聞広告ですし、
 複数紙読んでいないとなかなかわからないことですが、
 たまたま今回、新潮社の広告が載った朝日新聞
 載らなかった読売新聞を実際読んだ私としては、
 この事実にびっくりした次第です。
 池上彰さんに感謝、です。

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本 今日は、24節気のひとつ、大寒
 関東でも先週あたりからかなり冷え込みましたが、
 その寒さがピークになるのが、
 この大寒あたり。
 歳時記を開くと、こんな句がありました。

  大寒の埃の如く人死ぬる  高浜虚子

 なんだか、寒さの極みと人の死が交差して
 しんとした空気を感じる句です。

文芸埼玉本 その俳句の話ですが、
 私の句が、
 埼玉県教育委員会とさいたま文学館が発行している
 「文芸埼玉」82号の俳句部門に入選し、掲載されました。
 左の写真がその「文芸埼玉」の表紙。
 けっこう文芸誌っぽいでしょ。
 本格的です。
 掲載されるまでに校正とかあったぐらいだし。
 内容も小説、詩、短歌、俳句、川柳、随筆と
 広く文芸のジャンルが掲載されています。

本 私が応募したのは、「埼玉の食」という共通テーマの俳句部門。
 入選したのは、次の句。
 ふたつも掲載されてます。

   秋暮るるいもようかんに時の鐘

   冬めいてここまで白き深谷ねぎ

 少し自解すると、
 時の鐘というのは、埼玉・川越にある観光スポット。
 そして、芋ようかんは川越の名物でもあります。
 深谷葱(ねぎ)は全国的に有名ですよね。

本 ところで、この「文芸埼玉」は購入できるかは
 よくわかりません。
 埼玉の図書館には置いているようですから、
 埼玉に住んでいる人は一度のぞいてみてください。

 じゃあ、読もう。

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鉛筆 今日の「雑誌を歩く」は、
 おなじみ「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)」(講談社)の2月号。
 今回も講談社さんとレビュープラスさんからの献本で紹介します。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2010年 02月号 [雑誌]COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2010年 02月号 [雑誌]
(2010/01/09)
不明

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鉛筆 まず、表紙をごらんください。
 一面白で、「次のITライフ。」とあります。
 ここに重大な秘密があるんですよね。
 雪山のなかの白うさぎ。
 闇夜のなかのカラス。
 よーくみないと見つからない。
 今号の「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)」の表紙もそう。
 答えを書いちゃいたいですが、やっぱりナイショ。
 本屋さんでよーく見てください。
 思わず感心してしまいました。
 そういう見えそうで、なかなか見えないのが、
 「次のITライフ。」かもしれませんね。

鉛筆 その特集ですが、
 冒頭にこんな言葉がおかれています。

   ”未来を予測する一番の方法は、自らその未来を創りだすことだ”

 これはアラン・ケイというアメリカの科学者の言葉。
 いい言葉ですよね。
 今、私たちはなにげなく携帯を使ったり、インターネットをみたりしています。
 でも、これってちょっと前にはなかった。
 すごい変化が起こっているのに、そのすごさを感じさせないくらい
 簡単に誰もが使えてしまう。
 だったら、次の時代にはどんな変化があるのでしょう。
 海外のメディアを「すぐそこにある未来」をどう描いているのか。
 本好きの私として興味深いのは、電子書籍。
 この特集にも「ニューヨーク・タイムズ」からの紹介記事があります、
 「本の電子化で読書量は増える」とあります。
 さあ、どうなるか。
 通勤電車で電子書籍端末を開き? ながら、
 読書するスタイルは、案外早く実現するかもしれません。
 紙の本も好きなんですが。

鉛筆 この特集以外に、ぐっと手がのびたのが、
 「ミシェルとバラク 二人が語る「結婚生活の危機」」。
 人気大統領ゆえの興味あるタイトルで、
 しかも6ページもあって、アメリカ人もやっぱり
 このご夫婦には視線がいくようです。

鉛筆 もちろん、おなじみの「世界が見たNIPPON」も好調です。
 今回は「日本の隠れた中堅企業は世界シェアを独占し続けるか」というものから
 鳩山政権下の新たな「日米同盟」の枠組みまでありますが、
 民主党政権に変わってもあまり海外の受けはよくなっているとも
 思えないのですが。
 もうそんなお金持ち国じゃないはずですが、
 相変わらず、お金を外交の手段にしているように見えてしまう。

 政治家のみなさんも
 たまには「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン) 」を読んでみては。

 じゃあ、読もう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  先日、映画評論家の双葉十三郎さんの逝去が報じられました。
  朝日新聞によれば、亡くなったのは昨年(2009年)の12月12日。
  99歳だったそうです。
  双葉十三郎さんといえば、故淀川長治さんと双璧をなす
  映画評論家の大御所。
  1952年から約半世紀にわたって、映画雑誌「スクリーン」に
  映画の評価を★の数で示した「ぼくの採点表」を連載していました。
  いまでは、★の数での評価方法はよくみかけますが、
  双葉十三郎さんがそのきっかけだったのかもしれません。
  今回の書評は、
  そんな双葉十三郎さんを追悼しての蔵出しですが、
  その書評にも書きましたが、
  若い時代に一読者としてお世話になりました。
  双葉十三郎さんがつけられた★の数に
  納得したり、首をかしげたり。
  今回の書評のタイトル「星はなんでも知っている」は
  自分ではとても気にいっています。

  双葉十三郎さんのご冥福をお祈りします。

  じゃあ、読もう。

外国映画ぼくの500本 (文春新書)外国映画ぼくの500本 (文春新書)
(2003/04)
双葉 十三郎

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sai.wingpen  星はなんでも知っている                矢印 bk1書評ページへ

 最近でこそ映画館に足を運んで映画を観るのは年に四、五回程度だが、若い頃は週に一度は映画を観ていた。もう二十年近い昔の話だ。名画座が華やかなりし頃だ。ビデオやDVDなんてなかったから、昔の名画を観るのは名画座に行くしかなかった。それにロードショーに行くお金もなかった。だから「スクリーン」や「ロードショー」といった映画雑誌を開いては、ため息をついてばかりいた。当時の私にとって、これらの雑誌は夢の入り口みたいなものだった。

 この新書のもとになった、双葉十三郎さんの「ぼくの採点表」は映画雑誌「スクリーン」に掲載されていた。毎月何本かの新作が☆印の採点付きで評価されていて、その採点を見るのも楽しみだった。この新書版では採点の高い作品五〇〇本が収められているが、雑誌掲載時は☆☆★★(篤志家だけどうぞ、という評価)の作品の方が面白かったりした。この☆の数で観る映画の基準にしていた人は多かったのではないだろうか。その後、こういった☆を使った評価方法はよく使われているが(この書評でもそうだが)、簡潔でわかりやすいこの方法は双葉さんの発明なのかもしれない。

 この本は辞書みたいに読むのもいいし、最初から順に読むのもいい。でも、双葉さんの軽快な語り口を愉しみたい人は、どこから読んでも構わないがぜひ五〇〇本全部読むことをお勧めする。映画評や書評の書き方の見本の五〇〇本でもある。例えば「ある愛の詩」(1970年のアメリカ映画で、日本でも大ヒットした悲恋映画)の短評の、「風が吹けば桶屋が儲かり、ヒロインが死ねば映画屋が儲かる」(23頁)なんていう最後の一節はなかなか書けないだろう。この文章に☆☆☆☆(ダンゼン優秀)をあげたい。

 最後にこの本には紹介されていない、「私の一本」をお勧めしよう。ロバート・マリガン監督「おもいでの夏」(1972年・アメリカ映画)である。主演のジェニファー・オニールの悲しい表情が切なく胸を打つ、青春映画の佳作である。ミッシェル・ルグランの音楽もいい。私にとっての☆☆☆☆★★の最高点の作品である。
  
(2003/06/22 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  ついに食べました。
  東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズ既刊31冊、
  「丸かじり」しちゃいました。

  平成史に残る大偉業が達成された瞬間です。
  読者のみなさんが歴史の証人です。
  みましたよね。
  みてましたよね。
  まさか、読みとばしたってことないでしょうね。
  でも、ここまでハマるとは正直私も思いませんでした。
  一冊が二冊になり、二冊が四冊になり、
  四冊が(ここは一気に)三一冊になってしまうなんて。
 
   ♪やめられない、とまらない、さだおちゃんの「丸かじり」

  終盤の方は刊行順になりましたが、
  この「丸かじり」シリーズはどこから読んでも
  おいしい。
  甘辛酸っぱにがー。(この言葉の意味は今日の書評をお読みください)
  笑える。(たくさんあります)
  泣ける。(あまりないですが)
  怒れる。(あまりないですが)
  世の中、よーく見ると、
  こんなにも食べ物がたくさんあって、
  私たちの人生に深く食い込み、
  人生を豊かにしてくれるものだったということに
  気づかされました。
  これってなかなかないですよ。
  新しい「丸かじり」に出会えるのは今年の暮れでしょうが、
  それまで生きていようと思います。

  じゃあ、食べよう。
  ちがった。
  
  じゃあ、読もう。

ホルモン焼きの丸かじり (丸かじりシリーズ)ホルモン焼きの丸かじり (丸かじりシリーズ)
(2009/12/04)
東海林 さだお

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sai.wingpen  みらいのために                     矢印 bk1書評ページへ

 食べ物にはさまざまな味があって、むしゃむしゃガリガリ食べると感じるのは味覚といいますね。
 TVの食べ物番組でレポーターが有名、珍味、豪華、あり合わせ、といった色々な食べ物を食して「いやあ、おいしかった」というのは、ミンチ(味覚音痴のことをそう呼ぶことに、今決めました)です。
 正しくは「甘い」「辛い」「酸っぱい」「苦い」くらいの味覚大原則はいわないといけない。
 この大原則はいくつものバリエーションができるから便利。
 「甘辛い」「甘酸っぱい」「甘苦い」。
 なんか玄人っぽいでしょ。
 「甘辛酸っぱにがー」
 どうです、もっと玄人っぽい。しかも、どんな味なのかよくわからないのがいい。

 それらの味を感じるのが、「味蕾(みらい)」と呼ばれている舌にある味を認知する細胞。時々、東海林さだおさんの「丸かじり」にも登場する、味のアンテナです。
 トンカツを食べたとしましょう。(焼き鳥が食べたいという人もいるでしょうが、ここはトンカツでお願いします)
 まず、ころもが「味蕾」を通過します。
 ころもさんは「味蕾」がよくわかりませんから、こそっと通過しようとしますね。
 おっとどっこい。
 ここで、サンダーバード3号が出動します。(イメージです)
 ゴォー。
 「本部、本部、聞こえますか。今、ころもさんがこそっと通過しようとしました。もちろん、そんなことはさせません。味、捕獲しました。ころもさんの味は・・・」
 みたいなやりとりが「味蕾」と脳の間で起こるわけです。
 つづいて、豚の肉がとんとんとやってきます。
 ここで、サンダーバード2号が出動します。(イメージです)
 ゴォー。
 こうして、食されたトンカツの味が「おいしかった」ではつまらないではないですか。
 せっかくサンダーバード2号、3号も出動したのに。(ここもイメージでお願いします)

 その点、東海林さだおさんの「丸かじり」はこの味にいたるまでの人間葛藤がさまざま描かれているわけです。そして、食べ物が食されるたびにまごころを餡このようにこめて四方八方から表現していきます。
 何のために?
 もちろん、みらい(味蕾)のために。
  
(2010/01/17 投稿)

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えんぴつ 1995年(平成7年)1月17日(火曜日)午前5時46分に起きた
 阪神大地震から今日で15年になります。
 私は当時、大阪の豊中に住んで、
 西宮北口に仕事場がありました。
 一緒に働いていた人が西宮北口あたりにたくさん暮らしていました。
 私自身は大きな被害は受けませんでしたが、
 あの時のことは、やはり今でも忘れられません。

えんぴつ あれから15年。
 もう15年が過ぎたのか。
 だったら、これから15年先も生きていける。
 私のなかでは、あの大地震を基点にして
 考えることがたくさんあります。

君をのせて君をのせて
(2004/10/27)
井上あずみ杉並児童合唱団

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えんぴつ 当時、どうしようもない気持ちをなぐさめてくれたのが、
 宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』の主題歌『君をのせて』でした。
 震災のあと、毎朝出勤の前に必ず聴いていた歌です。
 この歌に、あの時のどうしようもない哀しみを
 救ってもらったと、今でも思っています。

  ♪地球はまわる 君をのせて いつか出逢う僕らをのせて

えんぴつ また出逢うことを願って、
 あの日去っていった、多くのものに哀悼を。

 そして、今回大きな被害となっているハイチの人々に
 希望の光が早く戻ることを願っています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  本を読むきっかけには色々あって、
  新聞広告などで興味をひかれたり、
  書評を読んで面白しろそうだなと思ったり、
  本屋さんでこれはと手にとったり、と
  その時々、さまざまです。
  今回紹介する中島岳志さんの『インドのことはインド人に聞け!』は
  どうかというと、
  カレーを食べてたら突然読みたくなって、
  というのは冗談で、
  この本がいつもおなじみの「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)」という雑誌から
  生まれたということで、
  レビューコンテストが、
  これもいつもおなじみの「レビュープラス」さんで行われるということで
  読んだ一冊です。
  手にした時は、私の読書傾向とはちがうかなとも
  思ったのですが、
  予想に反して面白かったですね。
  インドに興味のある人も、
  そうでもない人も、
  ふーんと考えさせられる一冊です。

  じゃあ、読もう。

インドのことはインド人に聞け! (COURRiER BOOKS)インドのことはインド人に聞け! (COURRiER BOOKS)
(2009/12/05)
中島 岳志

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sai.wingpen  ニッポン人もビックリ!            矢印 bk1書評ページへ

 インド、といえばカレーなんていうのは大昔の話で、今やIT大国であり、経済成長著しいアジアの大国であるのは周知の事実である。かつて固形カレーのCMに「インド人もビックリ!」というフレーズがあったが、現在(いま)のインドの成長に「ニッポン人もビックリ!」である。
 本書はそんなインドの現在(いま)を、インドで刊行されている雑誌の記事から、消費事情、結婚感、家族、宗教、教育といったテーマごとにセレクトし、インドに詳しい中島岳志氏による解説で構成された、まさに現在(いま)のインド社会を読むにはうってつけの一冊である。

 1991年の経済の自由化から急速に経済成長をとげたインド。その一方で同時期に経済停滞に陥ったニッポン。
 現代インドが抱える社会の歪みは、たとえば行き過ぎた受験戦争や家族の崩壊などすでに高度成長期のニッポンが経験したことだが、さらにいえばインドが得意とするITの普及によりそのスピードは増している。
 本書で紹介されたインドからのメッセージはかつてニッポンの経験した痛みが見え隠れする。しかし、痛みを隠すのではなく、痛みを痛みとして表現しうることもまた成長のひとつだといえる。少なくとも、現実を正しく捉えないことには修正はできない。現在のインドはそうあろうと悩み、もがいている。
 単に後発の経済大国ということではなく、その理解からインドを見ないと本当のインドのことはわからないかもしれない。

 遅れてきたランナーは先頭を走っていたランナーが青息吐息で脱落しかかっている姿をどう見ているのだろうか。そのことををインドから聞きたくもある。やっぱり、「インド人もビックリ!」というのだろうか。
  
(2010/01/16 投稿)

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レビュープラス

ニコッ♪ 昨夜(1.14)第142回の芥川賞直木賞の選考会が開かれて
 その結果についてTVとかで見た人も多いかと思います。
 ニュースで報じられる文学賞として、
 やはりこの二つの価値(それは商業的なものも含めて)は
 大きいのでしょうね。
 で、結果はというと、

 普通。 第142回芥川賞は該当作なし、直木賞は佐々木譲氏と白石一文氏が受賞

汗;; 芥川賞は99年上半期以来の「該当作なし」ですから、
 久方ぶりに残念な結果になりました。
 芥川賞は有名な賞ですがそうはいっても新人賞ですから、
 できれば激励とか期待もあわせて受賞作を出したいところだし、
 不況にあえぐ出版界としても<売れる>受賞作が出て欲しかったでしょうね。
 来月号の「文藝春秋」の選評が楽しみです。

笑い。 一方の直木賞ですが、
 佐々木譲さんの『廃墟に乞う』と白石一文さんの『ほかならぬ人へ』。
 なにはともあれ、おめでとうございます。
 一方が警察小説で、一方が恋愛小説。
 今回は特に白石一文さんがお父さんもまた直木賞作家の白石一郎さんということで
 二代続けての受賞は初めてだそうです。
 これって、結構巷の話題になりそうですよね。

ほかならぬ人へほかならぬ人へ
(2009/10/27)
白石一文

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困った。 芥川賞の候補作で少し思ったことがあって書いておくと、
 従来であったら芥川賞の受賞作って、
 まず「文藝春秋」に全文が掲載されて、
 単行本はまだ出ないとやきもきさせながら、
 ようやく本屋さんの店頭に並んだものですが、
 最近は先に単行本として出版されていることも
 目につくようになりました。
 これもやっぱり出版社としていかに早く、いかに多く売りたいという
 目算なんでしょうかね。

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鉛筆 お相撲が始まりましたね、初場所。
 こたつで暖まりながら、みかんなんか食べながら、
 座布団をまくらにしながら、
 お相撲観戦っていいですね。
 日本の正月。
 日本の冬。
 これでなくちゃあ。
 昨日は元大関の千代大海さんが引退を発表しました。
 あの愛くるしい顔と押し相撲が魅力のお相撲さんだっただけに
 寂しいですね。
 そんなこんなで、今回の「雑誌を歩く」は、お相撲の専門雑誌、
 ずばり、「相撲」(ベースボール・マガジン社)の1月号。

相撲 2010年 01月号 [雑誌]相撲 2010年 01月号 [雑誌]
(2009/12/25)
不明

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鉛筆 表紙は昨年86勝もしちゃった横綱白鵬
 ね、ね、かっこいいでしょ。
 ほれぼれしちゃいますよね。
 表紙にありますが、まさに威風堂々
 おなかのあたりをペチペチしてみたい。
 でも、「相撲」という雑誌見た人、少ないんじゃないかな。
 さっそく中身拝見。

鉛筆 まずは「幕内全力士化粧回し名鑑」。
 これがまたいい。
 化粧回しって、幕内の取り組み前に、力士紹介みたいに
 お相撲さんが土俵の上に並びますよね。
 そのときにしている、ステージ衣装みたいなもの。
 大関琴欧洲さんの明治ブルガリアヨーグルト模様の化粧回しは有名。
 把瑠都さんはサソリ。うーん、似合っているのもなんですが。
 山口出身の力士は河豚(ふぐ)のデザインとか
 郷土ならではのものがあったりして楽しめます。
 案外出身学校の徽章なんかがあったりするもので、
 彼らは郷土や母校の希望なんでしょうね。

鉛筆 つづいて、「全行司名鑑」。
 行司さんって、「はっけよい、のこった、のこった」っていう人。
 木村庄之助さんの本名って、内田順一さん。
 それがわかったからといって、どうってことないんですが、
 これからは「内田さんも頑張っているんだ」と応援したくなります。
 序ノ口の行司をしている木村一馬くんっているんですが、
 なんと15歳。
 一馬くんも「はっけよい」、頑張れ。

鉛筆 さらには「全呼出し美声名鑑」もついてます。
 呼出しさんって土俵では名前だけなんだそうです。
 秀男さんとか、拓郎さんとか。
 勉強になりますね。
 でも、けっして「ひでちゃ~ん」とか「たっく~ん」なんて
 呼ばないでくださいね。

鉛筆 もちろん、初場所展望もありますが、
 さてさて白鵬朝青龍の二大横綱に勝つ若手が登場するのか、
 興味がつきません。
 ところで、朝青龍さんですが、
 ヒール(悪役)のイメージが強いのですが、最近結構かわいく見えるのは
 私だけかな。

鉛筆 ちなみに「最新部屋別 全相撲人一覧」もついていて
 もしかしたら、同級生がいないか調べましたが、
 やっぱりいませんでした。
 いたら、きっと応援しちゃうのに。

 じゃあ、読もう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する400字書評は、
  茂木健一郎さんの『脳が変わる生き方』ですが、
  そんな生き方をめざしてこの一年を始めた人も
  多いのではないでしょうか。
  どういう境遇にしろ、
  人は常に変わりたいという変身願望みたいな
  ものがあるような気がします。
  あるいは、言い方を変えれば、
  常に成長をしたいと願っているのかもしれません。
  でも、あまりそのことにとらわれすぎると
  身動きできなくなる。
  柔軟な心のありようが大事ではないでしょうか。
  この『脳が変わる生き方』のなかで、
  茂木健一郎さんは、
  学問をするのは人の心がわかるようになるため、みたいなことを
  しばしば書いています。
  本を読むことも、
  そうではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

脳が変わる生き方脳が変わる生き方
(2009/11/05)
茂木 健一郎

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sai.wingpen  嘆くな、楽しめ。                     矢印 bk1書評ページへ

 どうして人生うまくいかないのだろう、と暗澹たる気持ちになることがある。時間が欲しいと願っても、お金がもっとあればと願っても、叶わないものはどうしようもない。それは、今よりも少しばかり夢に近づいたとしても、やはり、同じかもしれない。
 では、逆に、うまくいかないことが人生だと思えばどうだろう。「どこに行ったら幸せになれるかなんて、わかるはずがありません。何の仕事が自分に向いているかなんて、わかるはずがない」(161頁)。著者が一番伝えたいこととしてしたためた一文に、人生をうまく生きるコツがあるかもしれない。
 本書は脳科学者茂木健一郎さんが、「数年にわたってさまざまなところで話してきた」講演を編集したもので、著者曰く「自分で言うのも何だが、お買い得」な一冊である。
 これから茂木さんの本を読もうと思っている人にはおすすめだし、既読者にも著者のこれまでの発言の整理という意味で一読の価値のある本といえる。
  
(2010/01/13 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  この三連休で、
  届いた年賀状の整理や元旦の新聞を
  ゆっくりと読んでいたりしたのですが、
  やはり新聞がちがえば、元旦の出版社の広告もちがうのだな、と
  やっぱり、というか、そうなんだ、という感じです。
  大阪の実家では読売新聞、埼玉の我が家は朝日新聞。
  大阪では目にできなかったのが新潮社の広告。
  あらためて、書いておくと、

    物語をお届けします。

  これ、いいな。
  なんだか最近は物語の魅力を忘れているような気がしています。
  答えや意見ばかりを欲しがっていませんか。
  答えは読者自身が見つけだせればいいのです。
  そのようなことを、どこかに置き忘れていませんか。
  私もそうです。
  だから、今年はもっと物語を読みたいと思っています。
  今回紹介する吉田 篤弘さんの『つむじ風食堂の夜』ですが、
  これはいい物語です。
  心がほほほと温かくなる。
  ずっと気になって、ずっと読みたかった一冊ですが、
  素晴らしいお年玉を今更もらったみたいに、
  うれしくなりました。

  じゃあ、読もう。
  
つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)
(2005/11)
吉田 篤弘

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sai.wingpen  つむじ風にひきよせられて              矢印 bk1書評ページへ

 ああ、懐かしいな。それは実際に目にした町でもないのに、出会った人たちでもないのに、記憶というような脳のありようではなく、心の奥隅で、この物語に描かれる町も人たちも懐かしくあった。
 ここにあるのは、過ぎてきた時代が冷たく切り捨ててきたものたちかもしれない。

 「月舟町」の十字路の角にぽつんとある<つむじ風食堂>。正式名称ではない。ただ十字路には「東西南北あちらこちらから風が吹きつの」り、それがつむじ風となっていたから、みんながそう呼んだ。
 東西南北から吹く寄せられるのは風だけではない。主人公の人工降雨の研究をしている「雨降り先生」も、古本屋の「デ・ニーロの親方」も、風変わりな帽子屋さんも、主役になれない舞台俳優の奈々津さんも、みんな風のように吹き寄せられて、この物語の町に住んでいる。
 そればかりではない。主人公の思い出もまた、つむじ風のようにしてくるくる回りながら、主人公の心にひきよせられている。

 きっとこんな町はどこにもないだろう。「雨降り先生」たちも存在はしない。
 しかし、どうしてそんなことが言い切れるだろうか。さいわいなことに、読者はもうわかってしまったのだ。何もないものが、きちんとできあがって、しっかりと記憶となり、いつかまた、懐かしくて戻ってくるということがありうることに。
 そして、捨ててしまったものの大事さに。
 やがて、風がまたひとつ思い出を遠くに吹き飛ばしたとしても、それはきっと、つむじ風とともにまたやってくるにちがいない。
  
(2010/01/12 投稿)

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01/11/2010    私は若い人が好きだ
えんぴつ 今日は、成人の日
 新成人のみなさん、おめでとうございます。

えんぴつ 以前は成人の日といえば、1月15日、
 1月15日といえば成人の日と、
 日にちと行事が仲睦まじかったものですが、
 どうも最近はそうとばかりいえない風潮で、
 うっかり見落としてしまうこともあります。
 ちょっと残念。

えんぴつ 成人の日といえば、
山口瞳 その日の朝に届く新聞の広告が楽しみでした。
 サントリーの新聞広告。
 作家山口瞳が新成人にむけて書いた名コピーの数々。
 あれはよかった。
 山口瞳は1995年8月に亡くなりましたが、
 その年の成人の日にこんなことを書いています。
 一部抜粋しますね。横の写真はその時の新聞広告です。
 題は、「私は若い人が好きだ」。

   今日から新成人になった諸君、おめでとう。
  これで一人前だ。酒も飲める。大いにやろうじゃないか。
  私は若い人が好きだ。
   (中略)
   何をやってもいいよ。大いに騒ぎ給え。私は六年後を楽しみに
   している。二十一世紀に期待する。
   (中略)
   それまでの辛抱だ。マナーの要諦は他人に迷惑を掛けないという
   ことである。
   大いに騒げ。私は若い人が好きだ。
   ただし、ひとつだけお願いがある。酒場では静かに飲んでくれ。
   一気飲みなんかで騒いだり暴れたりしないでもらいたい。一日の
   疲れを癒すために一杯のハイボールを飲みにきている大人の
   サラリーマンもいるんだから・・・。
   それがわかったら、まあいいや。乾盃しよう。
  今日は一日大いに飲んでくれ給え。


えんぴつ 残念ながら、山口瞳は二十一世紀を見ることはできませんでしたが、
 この時、成人を迎えた人も今や三十五歳。
 山口瞳が書いた「一日の疲れを癒すために」お酒を飲んでいる
 「大人のサラリーマン」になっているのでしょうか。
 山口瞳のようなことを云ってくれる大人も
 少なくなりましたよね。
 最近の大人はすごく理解がある。
 でも、その理解って優しさとも少しちがうような気がするナァ。
 本当の理解って、時には叱ることもはいっているのではないかナァ。

君等の人生に乾盃だ!君等の人生に乾盃だ!
(1998/12)
山口 瞳

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えんぴつ そんあ山口瞳の成人の日や4月1日の新入社員向けの
 文章に興味のある人は、
 『君等の人生に乾盃だ!』(講談社)を
 読んでみてください。
 いいこと、書いてありますよ。

 じゃあ、読もう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  麻雀の世界では、
  最後のゲーム(というのかな)を「オーラス」と
  いいます。
  そして、そのひとつ前が「ラスマエ」。
  ラストのひとつ前。
  その言い方でいえば、
  今回の「丸かじり」が「ラスマエ」の一冊です。
  本当なら、この本で最後の予定だったのですが、
  昨年(2009年)の暮れに最新刊がでたので、
  これが「ラスマエ」になってしまいました。
  これって本人にはかなりこたえますよね。
  紅白歌合戦でいえば、トリですよ。
  歌う準備でできたところで、
  新人歌手に一番いいところをとられたようなもの。
  田舎に帰りたくなりますよね。
  そんなときの顔って、
  メロンみたいに縦横に神経線が走るのかな。
  それに、顔色悪そうだし。

  じゃあ、読もう。

メロンの丸かじり 丸かじりシリーズ29メロンの丸かじり 丸かじりシリーズ29
(2008/12/05)
東海林 さだお

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sai.wingpen  食の冒険王                     矢印 bk1書評ページへ

 ザァッ、ザァッ、ザッ。
 道なき道を(といえば、道があるのかないのかはっきり決めろ、とつっこみたくなるが)探検隊が進む。
 ザァッ、ザァッ、ザッ。
 と、草むらのジャングルが(といえば、草むらなのかジャングルなのかどっちなんだ、とさらにつっこみたくなるが)突然開け、隊員Aが後ろの隊長に叫ぶ。
 「た、隊長! あ、あれは!?」
 ここで、CM。つづきは、トイレ休憩のあと。
 といっても、ここではCMなんて入りませんから、ご安心を。
 すぐさま、続けます。

 そういう未踏の土地の出かけていって、「人類が初めて踏み入れる」(といっても撮影する人が一番先じゃないのか、ともっとつっこみたくなるが)冒険家のTV番組が一時流行ったが、東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの魅力のひとつは、断然この冒険心にあるのだと思う。
 貧乏な人にはいけないセレブな料理店、お金持ちにはいけないワイルドな居酒屋、お年寄りが腰を抜かしてしまうヤングなケーキ屋、若者が遠巻きしそうなオールドな定食屋。
 北ニ新シイ料理ガアレバ 行ッテ オイシイトイイ
 南ニ珍シイラーメン屋ガアレバ 行ッテ ダシハ何カトタヅネ
 空腹ノトキハ 涙ヲ流シ
 心配シナクテモ チャントオ金ヲ払ウトイイ
 ソウイウ くいしんぼう ニ 東海林ハナリタイ

 例えば、この『メロンの丸かじり』(2008年刊)でも、巷の話題となった「クリスピー・クリーム・ドーナツ」店の行列に並び、朝の九時からやっている居酒屋に出かけ、お燗ビールを出すという飲み屋を徘徊し、東海林隊長の食に対する冒険心は衰えるところ知らない。
 それって、単に食い意地がはっているだけではないんべか。
 という、猜疑的な意見はごもっともではあるが、なかなかいけないですよ。
 その行動力。
 その貪欲さ。
 その食い意地。(しまった、やっぱり言ってしまった)
 ここに「食の冒険王」という、勝手にこしらえた称号をさしあげたいと思うものであります。

 東海林さんが行かなくても行列はできるでしょうが、東海林さんが「丸かじり」シリーズで書いてくれたからこそ、ドーナツ店の行列に並んだ気分になり、朝の九時から酔った勢いになり、お燗ビールに度肝を抜かれた気分になるのであります。
 ああ、「食の冒険王」に栄光あれ。
  
(2010/01/10 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨年(2009年)読み残した本です。
  新聞の書評欄でみつけて、
  実は今回の400字書評にも書きましたが、
  「<勝間和代>を目指さない」という章が
  とても気になっていました。
  この章のタイトルをつけたのは著者の香山リカさんご自身なのか、
  編集の方なのかどうかわかりませんが、
  実にうまいタイトルをつけたと思います。
  ところで、副題にある
  「「ふつうの幸せ」を手にいれる10のルール」ですが、
  あ、なるほどなと思ったタイトルをいくつか書いておくと、
  「自慢・自己PRはしない」「老・病・死で落ち込まない
  「仕事に夢をもとめない」「お金にしがみつかない
  など、です。
  少し、かなりかな、読んでみたいと思ったでしょ。
  このあたりが、よく売れた一因でもあるのではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)
(2009/07)
香山 リカ

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sai.wingpen  ふつうとは何だろう                     矢印 bk1書評ページへ

 本書は2009年にもっとも売れた新書である。
 「<勝間和代>を目指さない」という章のタイトルが話題となったが、まさかそれが売れた原因ではないだろう。もし、売れた原因を探るとすれば、やはり題名のなかの「生き方」ではないだろうか。しかも、それが「ふつうの幸せ」をめざす「生き方」だというのだから、興味がわく。
 現代人はこの「生き方」という言葉にとても魅かれる。かつて「死にざま」や「生きざま」といった言葉が流行ったことがあるが、今は「生き方」そのものがわからなくなっている時代なのだろう。
 しかし、人として生まれて、成長し、やがて死んでいく、そんなごく当たり前のことさえも誰かに教えてもらわないといけないとしたら、なんとこの時代は生き難いのだろう。あるいは、「ふつう」ということさえ、何を基準にして「ふつう」なのかもわからなくなっているのではないか。
 本書が提示する問題よりも、そのことの方がおそろしい。
  
(2010/01/09投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今年の正月に大阪の実家に帰って、
  父と毎日のようにお酒を呑んでいました。
  父は日本酒。
  私はビール。
  (実家ではありがたいことに発泡酒ではなくちゃんとビールでした)
  たまたま「伊佐美」というおいしい焼酎が手にはいったので、
  これも頂戴しました。
  この「伊佐美」は鹿児島の焼酎なんですが、
  めっぽうおいしかったですね。
  そんな酔いがまだ残っている間に
  読みたいと思っていたのが、
  今日紹介する、『作家の酒』。
  平凡社のコロナ・ブックスというのは、
  新潮社のとんぼの本のような、写真本です。
  たくさんの酒と肴に、読んでいるだけで、
  ほろっときます。
  ちなみに表紙は井伏鱒二さん。
  じゃあ、呑もう。
  ちがった、

  じゃあ、読もう。

作家の酒 (コロナ・ブックス)作家の酒 (コロナ・ブックス)
(2009/11/25)
コロナ・ブックス編集部

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sai.wingpen  酔えば、夢。                     矢印 bk1書評ページへ

 今年八十六歳になる父がやや小さくなった背中をさらに丸めて、静かにコップ酒を呑む。
 肴に好みはないが、刺身だったりお肉だったりすると、うれしそうに呑む。
 特に何かを話すわけではない。まわりの人の話を聞きながら、面白いときには笑い、嫌なときにはむっつりする。どうということもない人生をおくってきたのだろうか。いうにいえない人生であったのだろうか。
 作家でもなく、著名人でもなく、どこにでもいるごく普通の人間として、父は今日も静かに酒を呑む。
 そんな呑みかたもまた、いいものだと思う。

 平凡社の写真本シリーズ「コロナ・ブックス」の創刊150号記念として刊行された本書には、井伏鱒二、中上健次、小津安二郎、池波正太郎といった、作家や著名人二十六人の酒人生がたくさんの写真とともに紹介されている。
 彼らはすでに鬼籍にある。主人不在の酒席ながら、テーブルにおかれた酒と肴がたった今まで楽しくのんでいた彼らの余熱を発して、いまにも彼らの笑い声やどなり声、あるいは難しい文学論が聞こえてきそうである。
 彼らはそんなふうにして、たまたま作家として、たまたま映画監督として、たまたま詩人として、生きてきたにすぎない。
 彼らが特別なのではない。彼らの人生も、私の父と同じように、案外平凡だったのではないだろうか。

 そう思わせるのが、酒の力なのかもしれない。
 酒の前では誰もが同じだ。何を誇ることもなく、何を蔑むこともない。笑い、泣き、喚き、怒る。だれもが等しく酔っていく。本書で紹介されている三島由紀夫もそうだったろうし、黒澤明もそうだったろう。
 グラス一杯のなかの人生というのもいいものだ。
 酔えば、夢。
 人生も、また、尽きない夢の連続。
 二十六人の作家たちの酒はそんな風情のある、いい呑みっぷりだったにちがいない。
  
(2010/01/08 投稿)

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鉛筆 年末年始をこたつ守りとして過ごし、
 食べては呑み、呑んでは寝てばかりの生活がつづくと、
 無性にあそこに行きたくなる。
 トイレではないですよ。
 あそこ。
 どこ?
 うーん、じれったいなぁ。
 じれったいのは読者の皆さんですよね、すみません。
 本屋さん。
 本屋さんに1週間も行かないと、なんか心がムズムズしてきます。
 そんな私にぴったりの雑誌を見つけたので、
 今回の「雑誌を歩く」はその雑誌を紹介します。

散歩の達人 2010年 01月号 [雑誌]散歩の達人 2010年 01月号 [雑誌]
(2009/12/21)
不明

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鉛筆 雑誌は「散歩の達人」(交通新聞社)の1月号。
 なんといっても、今号の大特集は「本屋さんが面白い!」。
 ね、年末年始で「本屋さん暫く行ってない症候群」の私にはぴったりでしょ。
 特集についたキャッチコピーが、

   刺激いろいろ、「本」欲が止まらない

 さらに、特集のリード文の書き出しを紹介すると、

   本屋さんが変わった。もはや「本があるだけ」ではない。

鉛筆 いやあ、まったくこんなおいしいものはありません。
 とにかく本屋さんの写真がすべていい表情をしているんですよね。
 本たちもいいですが、棚もいいし、平台もいい。
 写真から本屋さんの匂いがたちのぼってきそう。
 本屋さんの紹介だけでなく、
 「本よりも前に目指すべき この書店員」の記事では
 いまや注目の書店員さんがにっこり。
 都営新宿線篠崎駅の、「読書のすすめ」という素敵な店名の、
 今では有名になってしまった、本のソムリエ清水克衛さんとかが登場。
 ところで、この「読書のすすめ」という本屋さんですが、
 清水克衛さんが目利き、いえ読利きされて、売り場を作ってしまうそうです。

鉛筆 さらに、
 「本屋さん発のメディアを見逃すな」では、
 店の片隅でよく見かける本屋さん独自のフリーペーパーを大公開。
 もちろん、大型店もフォローしちゃいます。
 「ますます使えるスポットへ進化中 大型書店ならでは街」。
 と、どんどん読み進んでしまいます。
 特集の最後は、
 「本屋さんのホントのところは・・・「立ち読み」にいいたい!」は
 わずか1ページの記事ですが、面白い。
 笑っちゃいます。
 ひとつだけ紹介すると、
  
   最後まで読みきってしまうのはどうかと。

 ここまでくると、「散歩の達人」ならぬ、「立ち読みの達人」ですよね。

鉛筆 今号の第二特集は「ご利益グルメ散歩」。
 正月らしい企画です。
 でも、この雑誌って、基本的には東京周辺の情報雑誌なのかな。
 地方の人は、ごめんなさい。
 もし、東京に出てくることがあったら、真っ先に本屋さんで
 「散歩の達人」を探してみてください。

鉛筆 最後に、今年1年の雑誌諸誌の健闘をお祈りして。
 ぱん、ぱん。

 じゃあ、読もう。

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プレゼント 書評こぼれ話

  年末年始を実家のある大阪で過ごしました。
  移動は新幹線を利用しました。
  行きは余裕のある曜日で行きましたから、
  席も楽にとることができて、
  うっかりと惰眠をむさぼってしまいました。
  新大阪駅に着いてから、
  「しまった、小宮一慶さんの『新幹線から経済が見える』を
  読んだばかりじゃないか」と、
  深く反省しました。
  帰りはしっかりと経済を見てやると決意しました。
  ところが、帰りは帰省ラッシュで、
  経済を見るどころか、
  自分の席を見つけるのに血眼になってしまい、
  小宮一慶さんには申し訳なく思っています。
  そこで、ひとつだけ書いておくと、
  キャリーバックがすごく増えたことが気になりました。
  あれって結構あぶない。
  何回ゴツンとぶつかったか。
  痛い思いで経済が見える?
  今日は小宮一慶さんの本です。

  じゃあ、読もう。

「超具体化」コミュニケーション実践講座「超具体化」コミュニケーション実践講座
(2009/02/17)
小宮一慶

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sai.wingpen  あなたが話している相手は…。             矢印 bk1書評ページへ

 こちら側が伝えたいと思っても、相手に伝わらないということはよくある。
 ビジネスの現場だけでなく、親子の間でもそうだし、知人、友人の間でもそうだ。真意が伝わらず、誤解が生じ、人間関係がぎくしゃくしてしまうのは、そういう時だ。
 多くの人がコミュニケーションの難しさを経験している。

 経営コンサルタントの小宮一慶氏による本書は、そういったコミュニケーションの難しさをどのように解決すべきかを、いつものようにやさしく説いたものである。
 ビジネス向けではあるが、それだけにとどまらず、人間関係全般に生かすことができる。
 小宮氏は「コミュニケーションは、言葉だけでなく「意識」を共有しないと始まらない」(5頁)という。そして、その「意識」と「意味」を混同してはいけないとしている。
 ビジネスでよくあるのは、この「意識」と「意味」の混同だろう。経営の上層部にいる人はこの点を間違ってはいけない。もし「意識」が共有できていれば、部下の行動の自律性は高まると考えていい。そのことでどれだけ自身が楽になるかということを考えれば、本書は一読に値するのではないだろうか。

 もちろん、そのことはけっしてたやすいことではない。
 だから、「意識」が共有できない場合の、コミュニケーションを円滑に行う方法として、小宮氏は、相手がすぐに行動に移せる内容に落とし込むことができる「超具体化」の方法論を紹介する。それが例えば、東京駅への行き方の説明である。
 本書にあるような説明にまさか子供でもあるまいし、そこまで言わなくてもと思われる人もいるだろうが、それほどにコミュケーションとは伝わりにくいと考えるべきなのだろう。
 もしかしたら、あなたが伝えようとしている相手は火星人かもしれないではないか。
  
(2010/01/06 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨年の12月の、「さいたまブッククラブ」で私が紹介したのが
  今回紹介する、新潮社とんぼの本の一冊、
  『太宰治と旅する津軽』です。
  この本のなかでも、太宰の生家の写真が掲載されていますが、
  かれこれ20年以上前に、まだ宿泊施設だった頃の
  斜陽館に行ったことがあります。
  そこで一泊したことが、
  今思えば夢のようです。
  ところが、1枚の写真も残していないのですから、
  迂闊でした。
  覚えているのは、広い土間がお土産売り場だったことと、
  泊まった部屋に鍵がついていなかったこと。
  どうもぼんやりしていました。
  今回も400字書評です。
  
  じゃあ、読もう。
  
とんぼの本 太宰治と旅する津軽とんぼの本 太宰治と旅する津軽
(2009/09/26)
太宰 治小松 健一

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sai.wingpen  101年めの太宰治                     矢印 bk1書評ページへ

 2009年は生誕100年ということで、原作の映画化や関連本が数多く出版された太宰治であるが、本書もそのひとつ。中期の名作『津軽』にそって、太宰の旅した風景が写真家小松健一の撮影した写真で臨場感をもって伝える。
 太宰が『津軽』の執筆のために故郷の町々を歩いたのは昭和十九年。もちろん本書に収められた風景は当時のままではない。だから、写真から立ちのぼる空気のようなものを味わうことになる。
 風景は変化する。しかし、風土は変わらない。
 風土とは、その土地特有の気質であったり、土地に生きる人々の息づかいである。
 同じことが太宰の文学にもいえる。読者は時代とともに変遷するが、太宰が描こうとしたものは変わらない。
 その時々に新たな読者を生み出し、読む者を魅了していく。100年めの太宰だけでなく、101年めの新しい太宰があり、さらにいえばその先へと太宰文学は続いていくだろう。
  
(2010/01/05 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  朝日新聞日曜書評欄の「百年読書会」(重松清ナビゲーター)の、
  新年1月の課題図書は、
  ノーベル賞作家川端康成の『雪国』です。
  冒頭の書き出しはあまり本を読まない人でも知っているほど有名。

   国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

  この文章のようにあまり有名になると、
  その一行だけで読んだ気分になってしまいます。
  そういう作品は本当は作品として少し可哀想ですよね。
  やはり全文を読んでこそ、
  作品としての価値がでるというもの。
  ぜひ、みなさんもこの機会に
  一度読んでみてはいかが。
  今回も書評句とともにお楽しみください。

  じゃあ、読もう。

雪国 (岩波文庫)雪国 (岩波文庫)
(2003/03)
川端 康成

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sai.wingpen  日本語の見本帖                

  雪国に 居わす男や 天の河
 
 冒頭の有名な書き出しは知っていたが、全文を読むのは初めてだった。駒子、葉子、島村という登場人物の名前は知っていたが、三人の関係を読むのも初めてであった。にもかかわらず、この物語をどのように説明すればいいのだろうか。この三人の関係をどう伝えればよいのか。雪国へと至る国境の長いトンネルが、いつまでも続いている。出口のない、長いトンネルである。
 それでも本作が日本文学屈指の名作と評価されるとすれば、それは美しい情景の描写を措いて他にない。雪国の細やかな風景、かそけき光の内にある闇、夜の帷に燃えさかる火事、そして降りそそぐばかりの天の河。それらが幾重にも縒れ鮮やかな織り糸となり、人の情痴の激しさをも織り込んでいく。それはもはや夢幻の世界である。
 日本語の美しさの見本帖のような作品といっていい。
  
(2010/01/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  大阪でのお正月も今日で三日め。
  食べては本を読み、本を読んではお酒を飲み、
  お酒を飲んではごろんと寝転び、
  優雅なお正月を過ごしています。
  雑煮
  大阪のお雑煮は白味噌仕立ということは、
  以前書いたかと思いますが、
  左の写真がその証拠写真。
  白味噌のなかに丸餅が沈んでいます。
  若い頃には、お餅を毎食10個ほども食べたものですが、
  さすがに今年は1、2個が限度でした。
  ぜひ、東海林さだおさんには、
  全国お雑煮味くらべを書いて欲しいものです。

  じゃあ、読もう。
  
おにぎりの丸かじり 「丸かじり」シリーズ28 (丸かじりシリーズ)おにぎりの丸かじり 「丸かじり」シリーズ28 (丸かじりシリーズ)
(2008/03/07)
東海林 さだお

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sai.wingpen  めでたや、日本の食生活            矢印 bk1書評ページへ

 年の初めの、めでたさの、とお重のふたをあければ、あります、あります、おせち料理。
 数の子、田作り、黒豆、栗きんとん、れんこん、くわい、昆布巻き、そのほか、あれもこれも。
 元旦でも食べて、初夢でも食べて、二日目も食べて、三日めもまだまだ、おせち料理。
 三日もつづくと、もうおせち料理は来年に会いたくなります。
 しばらくお会いしたくない。
 そこで、思い出すのは、辛くてスパイスの効いたカレーちゃん。
 カレー特有のエスニックな熱い愛情が恋しくなる。
 トンコツ仕立ての細麺のラーメンの、情の深さが懐かしい。
 それとも、さっぱり日本風、さらっさらのぽりっぽりの、お茶漬けさんもいとおしい。
 おせち料理には、これら三大古代文明の由緒正しい食べ物に恋情を抱かせるものがあって、ハレから日常へのスムーズな移行はこれらによってなしうるものと相場が決まっている。
 あとは、東海林さだおさんの「丸かじり」に書かれている、ご飯類、麺類、肉系、野菜系、高価、赤貧、なんでもござれの食生活にはいっていくのであります。
 冬は鍋、春は曙、夏はソーメン、秋は夕暮れ。
 なんと豊かな日本の食生活。
 そして、新年はおせち。
 三日も経てば、カレーかラーメンかお茶漬けかの、三大一拍明日からまた仕事だ頑張ろう食べ物を経て、汁系、パン系、果物系、アジア系、おフランス系、お手軽、じっくり、なんでもござれの食生活にはいっていく。
 冬は雪見だいふく、春は桜肉、夏は赤城のキャンデー、秋は月見うどん。
 なんと豊かな日本の食生活。
 そして、新年はおせち。
 三日も過ぎれば、・・・。
 こうして、共に白髪のはえるまで、「丸かじり」を愛読しながら、老いてゆくのであります。
 めでたや、めでたや。
  
(2010/01/03 投稿)

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