FC2ブログ

プレゼント 書評こぼれ話

  今年の正月に大阪の実家に帰って、
  父と毎日のようにお酒を呑んでいました。
  父は日本酒。
  私はビール。
  (実家ではありがたいことに発泡酒ではなくちゃんとビールでした)
  たまたま「伊佐美」というおいしい焼酎が手にはいったので、
  これも頂戴しました。
  この「伊佐美」は鹿児島の焼酎なんですが、
  めっぽうおいしかったですね。
  そんな酔いがまだ残っている間に
  読みたいと思っていたのが、
  今日紹介する、『作家の酒』。
  平凡社のコロナ・ブックスというのは、
  新潮社のとんぼの本のような、写真本です。
  たくさんの酒と肴に、読んでいるだけで、
  ほろっときます。
  ちなみに表紙は井伏鱒二さん。
  じゃあ、呑もう。
  ちがった、

  じゃあ、読もう。

作家の酒 (コロナ・ブックス)作家の酒 (コロナ・ブックス)
(2009/11/25)
コロナ・ブックス編集部

商品詳細を見る

sai.wingpen  酔えば、夢。                     矢印 bk1書評ページへ

 今年八十六歳になる父がやや小さくなった背中をさらに丸めて、静かにコップ酒を呑む。
 肴に好みはないが、刺身だったりお肉だったりすると、うれしそうに呑む。
 特に何かを話すわけではない。まわりの人の話を聞きながら、面白いときには笑い、嫌なときにはむっつりする。どうということもない人生をおくってきたのだろうか。いうにいえない人生であったのだろうか。
 作家でもなく、著名人でもなく、どこにでもいるごく普通の人間として、父は今日も静かに酒を呑む。
 そんな呑みかたもまた、いいものだと思う。

 平凡社の写真本シリーズ「コロナ・ブックス」の創刊150号記念として刊行された本書には、井伏鱒二、中上健次、小津安二郎、池波正太郎といった、作家や著名人二十六人の酒人生がたくさんの写真とともに紹介されている。
 彼らはすでに鬼籍にある。主人不在の酒席ながら、テーブルにおかれた酒と肴がたった今まで楽しくのんでいた彼らの余熱を発して、いまにも彼らの笑い声やどなり声、あるいは難しい文学論が聞こえてきそうである。
 彼らはそんなふうにして、たまたま作家として、たまたま映画監督として、たまたま詩人として、生きてきたにすぎない。
 彼らが特別なのではない。彼らの人生も、私の父と同じように、案外平凡だったのではないだろうか。

 そう思わせるのが、酒の力なのかもしれない。
 酒の前では誰もが同じだ。何を誇ることもなく、何を蔑むこともない。笑い、泣き、喚き、怒る。だれもが等しく酔っていく。本書で紹介されている三島由紀夫もそうだったろうし、黒澤明もそうだったろう。
 グラス一杯のなかの人生というのもいいものだ。
 酔えば、夢。
 人生も、また、尽きない夢の連続。
 二十六人の作家たちの酒はそんな風情のある、いい呑みっぷりだったにちがいない。
  
(2010/01/08 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス