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プレゼント 書評こぼれ話

  第142回芥川賞は残念ながら、
  「該当作なし」になったのは、
  このブログでも書きました。
  9人の選考委員の選評は、
  来月発売の文藝春秋に掲載されるでしょうが、
  その前に私自身の評価はどうか、ということを
  競い合ったという3作品を読んで
  みていきたいと思います。
  選考委員の一人、池澤夏樹さんは、
  「今の日本の文学が低調というわけではない」と
  話していましたが、本当にそうなのか。
  今日は、その第一弾として、
  藤代泉さんの『ボーダー&レス』。
  「在日問題への新しい時代のとらえかたが現れている」と、
  評価された作品です。
  私の評価は、ちょいときつめ。
  選考委員のどなたが支持したのか
  気になるところです。

  じゃあ、読もう。

ボーダー&レスボーダー&レス
(2009/11/07)
藤代 泉

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sai.wingpen  ケータイを持った三四郎                矢印 bk1書評ページへ

 就職した会社で出会った僕と在日コリアンのソンウ。二人は妙に気があって会社のなかでもしばしばメールを交換しあったり、互いの部屋を行き来したりする友人となる。僕の女性関係の悩みもソンウの過ごしてきた環境も、互いに分かり合おうとするが、どこかにいつも溝(ボーダー)がある。
 そんな若者たちの姿を描いて、第142回芥川賞候補作にもなった作品だが、私はちっとも感心しなかったし、新しいものを何ひとつ感じなかった。

 物語に登場する人物は型にはまった造形であり、主人公とソンウの関係などもこの作品で初めて描かれたものではない。あるいは、主人公が既婚の女性とあわやの関係となるところなどは漱石の『三四郎』にでてくる温泉場の場面の引き写しである。
 漱石の三四郎は明治時代の青年として社会の溝の前でぐるぐると歩き回っているが、平成時代の僕はぼうぜんと溝をながめているにすぎない。
 もっとも平成時代の僕にはメールという三四郎が持ち得なかったツールだけが進歩といえるかもしれないが。

 それにしても、この作品の文章のみだれかたはいただけない。特に中盤以降は書き手の息切れを感じる。
 これが、最終選考のなかで最後の三作品に残ったのだとすれば、今回の芥川賞受賞作なしもむべなるかな、である。
  
(2010/01/30 投稿)

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