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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から4月

   人の上に思ひおよべば四月来る  榎本好宏

  今年社会に出る人にとっては
  初出勤の、緊張の1日かもしれません。
  そんなわけで、今日は蔵出し書評
  山口瞳さんの『諸君! この人生、大変なんだ』を
  紹介します。
  書いたのも、もう6年も前になりますので
  少し内容が古くなっていますが、
  本質はあまり変わっていないんじゃないでしょうか。
  書評のなかにもありますが、
  毎年新入社員の型が日本生産性本部から公表されていて
  今年2010年の新入社員のタイプは「ETC型」だそうです。
  「性急に関係を築こうとすると直前まで心の「バー」が開かないので、
  スピードの出し過ぎにご用心
」だとか。
  当たっているでしょうか。

  じゃあ、読もう。

新装版 諸君!この人生、大変なんだ (講談社文庫)新装版 諸君!この人生、大変なんだ (講談社文庫)
(2003/09)
山口 瞳

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sai.wingpen  新入社員諸君!一度は山口瞳を読んでおけ!             矢印 bk1書評ページへ

 社会経済生産性本部が毎年その年の新入社員のイメージを短い言葉で命名しているが、今年(二〇〇四年度)の新入社員は「ネットオークション型」だそうだ。昨年は「中高年に使いこなしきれない」という意味で「カメラ付きケータイ型」だったらしいが、今年はネットオークションという言葉そのものがわからない中高年も多いのではないだろうか。社会経済生産性本部によると「ネット上で取引が始まり、よいものには人気が殺到しさっさと売れる一方で、PR不足による売れ残りも多数。一方でブランド名やアピールに釣られて高値で落札(採用)したものの、入手後にアテが外れることもある」という意味だそうだ。

 ネット上での取引ってどういうことかと首をひねられる人もいるだろうが、最近の就職活動はインターネットを使って行なわれる。一次試験なども会社に出向くことなくネットで行い、合否が戻ってくるような仕組みの会社もある。だから、就職活動にはパソコンは必携のものになっている。私が就職した七〇年代終りの頃は就職解禁日といわれた十月一日に人気企業のビルのまわりを大勢の学生が取り囲んだものだから、就職活動も大きく変わったといえる。

 若い人たちのことをとやかく言う中高年は多いが、新入社員の意識は結構シビアである。冒頭の社会経済生産性本部が新入社員を対象に行なっている調査によれば、「就労意識」調査で「これからは終身雇用ではないので会社に甘える生活はできない」と答えた新入社員が九二%もいたという。また「いずれリストラされるのではと不安だ」と答えた新入社員が四〇%もいる。そんな時代だといってしまえばそれまでだが、やはり若い彼らに明るい未来を指し示めしてあげれない今の社会はどこか間違っているようで、先輩社員として気が重い。

 こんな時代に山口瞳がいれば、どんな言葉を新入社員たちに発しただろうかと考える。かつて山口瞳は毎年四月一日の新聞広告で「新入社員諸君!」で始まる文章を書き続けた。この文庫版にも載っている。「あわてず、おそれず」「細心かつ大胆」「初心忘るべからず」といった表題がついているが、そのどれもが山口瞳らしいユーモアとウエットにとんだ短文で、洋酒会社の広告とはいえ、多くの若者たちが励まされたことだろう。山口瞳がそんな文章で若者たちを勇気づけていた時代とは違った様相の社会になってしまったが、山口瞳が言おうとした意味合いは変わらないはずだ。

 新入社員諸君! でも、残念なことに山口瞳は九五年に逝去した。会社の中にも山口瞳的な先輩社員は少ないだろう。だから、せめて一度は山口瞳の本を読むのも必要だ。山口瞳が言い続けたことはある意味では永遠の教えでもあるのだから。この人生、大変なんだ。
  
(2004/04/04 投稿)

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