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プレゼント 書評こぼれ話

  第144回直木賞も芥川賞と同じように
  木内昇さんの『漂砂のうたう』と道尾秀介さんの『月と蟹』の
  ダブル受賞で話題になっています。
  そんななか、
  今日紹介するのは先の第143回直木賞を受賞した
  中島京子さんの『小さいおうち』。
  まあのんびり読書しています。
  だいたいベストセラーを追いかけるタイプでもないので
  時にはこういったように
  ブームが去ってからのんびり読むのも
  嫌いではありません。
  この『小さいおうち』ですが
  評判通り、面白かったですね。
  まだ読んでいない人も
  手にする価値はありますよ。

  じゃあ、読もう。

小さいおうち小さいおうち
(2010/05)
中島 京子

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sai.wingpen  作家のたくらみ                  矢印 bk1書評ページへ

 第143回直木賞受賞作。戦前の東京郊外にある中流家庭を舞台にしてとありますが、赤い三角屋根の洋館に住んでいるくらいですから、上流といってもいいのではないでしょうか。そんな家庭の住み込み女中として青春期をおくったタキの回想ノート「心覚えの記」を読む形で物語は進められていきます。
 その構成といい、時代描写といい、最後の仕掛けといい、読ませる作品としては抜群の出来ではないでしょうか。
 それはもちろん作者の中島京子のうまさですが、読者からすれば「心覚えの記」を書いたタキのたくらみのようにも感じます。

 タキは自身の青春の女中時代を「心覚えの記」に書きとめながら、タキの主人であった平井家の奥様時子の人生をもたどることになります。
 不思議なのは、タキは少しずつこ回想記を書きすすめながら、時にそのノートを盗み読む甥の息子である健史の言動を書きとめていることです。タキはあきらかに読者の視点を意識しています。読まれることを意識しながらタキはその文章をつづっていきます。
 タキの「心覚えの記」は個人的な日記ではありません。いずれどこかで発表されることも期待されつつ、彼女はそれを書いているのです。
 しかも、その途中途中で健史という青年の読者がいる。この健史の存在は物語ではとても重要です。実際未完となったタキの回想記の後日談として健史は読者にあっといわせるたくらみを開示してみせます。

 タキが健史という読者を意識しながら書きすすめたように、中島京子はけっしてひとりよがりすることなく、また読者におもねることなく、あきさせません。
 タキが回想記で書いた小さなうそは、読者を意識した作為的なたくらみでしょう。中島京子はタキの回想記にそれをいれることで、作家のささやかな満足を満喫したのではないでしょうか。
 作家のたくらみが実に鮮やかな作品です。
  
(2011/02/17 投稿)

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