04/13/2011 「成功」と「失敗」の法則(稲盛 和夫):書評「蜘蛛の糸」

昨日働くということを描いた短編集
『そういうものだろ、仕事っていうのは』という本を
紹介しましたが、
今日は京セラの創業者で
現在日本航空の会長でもある
稲盛和夫さんの『「成功」と「失敗」の法則』を
蔵出し書評で紹介します。
仕事には成功と失敗はつきもの。
うまくいくことばかりではありませんし
失敗ばかりでもありません。
肝心なのは、
失敗をどう真剣に受けとめるかでは
ないでしょうか。
そういうことって
生き方につながっていきます。
じゃあ、読もう。
![]() | 「成功」と「失敗」の法則 (2008/09/13) 稲盛 和夫 商品詳細を見る |


芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んだのはいくつのときだったろうか。小学生の頃の教科書だったかもしれない。
「或日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、獨りでぶらぶら御歩きになつていらつしやいました」で始まる、わずか数枚の物語である。有名な短編なので覚えている人も多いだろうが、御釈迦様のお慈悲で下ろされた一本の蜘蛛の糸をめぐってカンダタという悪人が自己の欲望に固守するあまり、また地獄に逆戻りをしてしまう、そんな物語である。
おぼろげながら、細い蜘蛛の糸にぶらさがるカンダタとその下から彼と同じように這い上がってくる地獄の邪鬼たちの、挿絵があったようにも思う。
私たちの人生にもこの「蜘蛛の糸」のような逸話は多くある。あるいは、多くの人が「蜘蛛の糸」を求めているといってもいいかもしれない。京セラ名誉会長である稲盛和夫氏が書かれた本書も、多くの経営者あるいはビジネスマンにとっては「蜘蛛の糸」のようなものだろう。
この類の本は本屋さんにたくさん並んでいる。時代じだいに応じて、励ましの表現がこそ違え、多くの人生へのヒントが書き著され、時にはベストセラーにさえなる。それほどまでに人は「蜘蛛の糸」を求めているのだといえる。
それでいて、どうして人は変わることができないのか。「人生を終えるときに、立派な人格者になった人もいれば、そうでない人もいます。その違いは、人生を歩む中で、自らを磨き人格を高めることができたかどうか、ということにあると私は考えています」。
なるほど、と思い納得する。「だから「この世へ何をしにきたのか」と問われたら、私は、「生まれてときより、少しでもましな人間になる、すなわち、わずかなりとも美しく崇高な魂を持って死んでいくためだ」と答えます」
そのとおりだ、と思い共鳴する。しかし、そのように取りすがったつもりの「蜘蛛の糸」を上りきることができないままでいるのはどうしてだろう。
芥川の物語に登場するカンダタという悪人は蜘蛛の糸は自分だけのものだと主張し、その途端に糸が切れるのだが、もしかすれば稲盛氏の著作を読んで救われようとする私たちにカンダタの愚かな気持ちが全くないともいえなくもない。
カンダタの振る舞いが「御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召された」ように、私たちが人生の生きるヒントを求め、そしてそれを活かしきれないのも浅ましいことかもしれない。どうすれば「蜘蛛の糸」は切れることなく、カンダタは極楽まで上りきることができたでしょう。
きっと小学生の時に習ったはずなのに、いまだに邪鬼のなかにいる。何度もなんども「蜘蛛の糸」をさがしている。それもまた人間だとすれば、御釈迦様の御顔は晴れることはないのでございませう。
(2008/10/21 投稿)

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