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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  小川洋子さんと河合隼雄さんの対談集
  『生きるとは、自分の物語をつくること』を
  本屋さんで見つけた時に
  はっとしました。
  小川洋子さんの新作『人質の朗読会』は
  もしかしらこの対談がきっかけだったのでは
  ないかしらん。
  あるいは、今回の大震災で犠牲にあわれた人の鎮魂は
  その物語をひらくところから
  始まるのではないかしらん。
  そんなことを思いました。
  そういえば、
  河合隼雄さんは村上春樹さんとも対談したことがあります。
  明日はその本、
  『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』を
  紹介します。

  じゃあ、読もう。

生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)生きるとは、自分の物語をつくること (新潮文庫)
(2011/02)
小川 洋子、河合 隼雄 他

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sai.wingpen  物語はつづく                  矢印 bk1書評ページへ

 小川洋子さんの『人質の朗読会』は海外でテロ事件に巻き込まれた人たちがそれぞれの人生の風景を語り合うという構成になっています。そのテーマなり場面はまったく違うのですが、人にはそれぞれ語るべき物語があるのだと深く心に沁みこんでいく一冊でした。
 特に東日本大震災で犠牲となったたくさんの人々のことを思うと、高齢者も若い人もあるいは子供たちでさえ、それぞれ彼らの物語があっただろうと思います。
 それは多分年齢に関係なく、物語はあったはずです。犠牲になられたたくさんの命と同じ数だけの物語。
 それを私たちは想像するしかないのが悔しく、そして悲しい。

 本書は、小川洋子さんと臨床心理学者の河合隼雄さんとの対談集ですが、そのテーマが書名にあるように「生きるとは、自分の物語をつくること」です。
 ちょうど小川さんのベストセラー『博士の愛した数式』が映画化された後の対談ということで、小川さんの作品をベースに話が進められていきます。
 その対談のなかで小川さんはこんなことを話しています。「あなたも死ぬ、私も死ぬ、ということを日々共有していられれば、お互いが尊重しあえる」と。
 死ぬということは物語の終わりでもあります。それがどれほど短いものであっても、あるいは未完であっても、絶対に物語があります。
 小川さんの発言は、人にはそれぞれに物語があるということを共有していられたら、互いに尊重しあえると読み替えてもいいのではないでしょうか。

 対談の相手でもあった河合隼雄さんが亡くなられたので、この文庫版には小川さんの「少し長すぎるあとがき」が書き下ろしで収録されています。
 その中で小川さんは「生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げてゆくことに他ならない」と書いています。
 自分の物語を作り上げてゆくことは、亡くなった人たちの物語を読むということにもつながってゆく。
 物語は物語へと続くのです。
  
(2011/04/21 投稿)

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