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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日書いたように
  今日は村上春樹さんと河合隼雄さんの対談集
  『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』を
  紹介します。
  書評にも書きましたが、
  この対談が行われたのが1995年で
  ちょうど阪神大震災のあとでした。
  その本を
  今回の東日本大震災のあと
  ふたたび読むというのも
  なんだか不思議な気がします。
  本というのは
  そういう点でつながりのあるものかもしれません。
  そして、この本で話されたことは
  昨日の小川洋子さんと河合隼雄さんの対談集
  『生きるとは、自分の物語をつくること』にも
  つながっているのだと思います。

  じゃあ、読もう。

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)
(1998/12)
河合 隼雄、村上 春樹 他

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sai.wingpen  二つの震災をつなぐもの                矢印 bk1書評ページへ

 作家村上春樹さんと臨床心理学者河合隼雄さんの対談集です。
 対談の時期(1995年秋)は村上さんが大作『ねじまき鳥クロニクル』に書き終えた頃で、その長編に関する話題も大いに語られています。同時に、阪神大震災とオウム事件という当時の日本において大きな危機の余熱がまだ冷めやらない時でもありましたから、それらがもたらした心の傷についても話されています。
 小川洋子さんと河合隼雄さんの対談集『生きるとは、自分の物語をつくること』に誘われるようにして、そういえば河合さんは村上春樹さんとも対談していたことを思い出したのですが、この本が阪神大震災あとの対談であったことを忘れていました。
 それが阪神大震災を超える東日本大震災のあとに再読するというのも、なんだか本の神様のはからいではないかと思えたりします。

 河合さんは阪神大震災の時にすぐに心のケアについて考えられたそうです。実際電話相談の形で相談活動も始めます。
 その活動を通して、河合さんはあることに気がつきます。「日本人の場合は衝撃を個人で受け止めなくて、全体で受け止めている」こと、もう一つが日本人が心の問題を「言語化することを嫌に思う人」が多いということです。
 今回の東日本大震災にしても発生から一か月経ってようやく国や企業に対する怒りの声が出始めましたが、それでも「全体」としてすごくならされているように感じます。特に今回の震災では被災地域が広範囲にひろがっている点でも「個人」ではなく「全体」の意識が強いのではないでしょうか。
 河合さんは心のケアについて「自分で乗り越える」ことが大事だと話しています。
 強く生きるとは、「全体」ではなく「個人」の問題なのです。

 今回の大震災はまだまだ復興というところまで至っていないのが現状です。まず町をどうするか、雇用をどうするか、という点に焦点があたっています。
 しかし、個々の心のケアの問題は必ずでてきます。そのこともきちんと対処していかないといけない。阪神大震災を教訓として考えなければならない問題です。

 この対談のあと、本書の「後書き」に河合さんはこんなメッセージを残しています。
 「各人はそれぞれの責任において、自分の物語を創り出していかなければならない」と。
 私たちの物語はつづくのです。
  
(2011/04/22 投稿)

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