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プレゼント 書評こぼれ話

  奥田英朗さんの『東京物語』に
  キャンディーズの最後のコンサートが
  描かれた作品が掲載されています。
  1978年4月4日。
  その日彼女たちは
  「私たちは幸せでした」と
  マイクを置いたのでした。
  あれから、33年。
  こんなにも早く
  メンバーの一人、田中好子さんが
  亡くなるなんて思いもしませんでした。
  昨日の告別式で田中好子さんの
  生前最後のメッセージが流されました。
  その中で、田中好子さんはこう語っています。
   
   幸せな、幸せな人生でした。

  田中好子さんや伊藤蘭さんが
  女優として芸能界に復帰したときは
  なんだ「普通の女の子に戻りたかったんじゃないのか」と
  思わないでもなかったですが
  そのうちに田中好子さんは
  演技派女優として頭角をあらわしてきたのは
  さすがといっていいです。
  田中好子さんの死は
  私たちに青春のあれこれを
  振り返えさせてくれました。
  今日は、蔵出し書評
  そんなアイドルたちの時代に
  プレイバックしました。

  じゃあ、読もう。  

「明星」50年 601枚の表紙 (集英社新書)「明星」50年 601枚の表紙 (集英社新書)
(2002/11/15)
不明

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sai.wingpen  家族に笑いが戻った日                  矢印 bk1書評ページへ

 月刊誌「明星」は二〇〇二年の十月号で創刊五〇周年を迎えた。その表紙は実に六〇一枚。しかもそのすべてが当時のままのカラー版で収録されたのが、本書である(ちなみに創刊号は一九五二年の十月号で、その時の表紙は津島恵子であった)。新書判ではあるが、カラー版の特別編集のため三八一頁はずっしりと重い。それに、こうして一挙に並べられると歴史的な重さも加わっている感じすらある。まさに一級の社会的資料であり、アイドル史、風俗史といえる(解題を担当している橋本治の文章もいい)。

 そんな資料的価値もさることながら、家族のアルバムをひさしぶりに開いたような気分にこの本はさせてくれる。まず自分の生まれた年にどんなアイドルが表紙を飾ったのか気になって仕方がないはずだ。私の場合は美空ひばりがにっこり微笑んでいた。でもまだ写真ではない時代。本書の中の写真家篠山紀信の文章でいうと「メンコみたい」な表紙の時代である。妻はというと浅丘ルリ子がしっかり写真となって笑みを浮かべている。しかも手にはエアーメールを持っているではないか。時代は急速に進歩したといえる。長女の誕生年には松田聖子が初々しく笑っている。次女の時はキョンキョンこと小泉今日子の白い歯がまぶしい。

 時代のアイドルたちが表紙という歴史の一駒にとどめられているから面白いのかもしれない。現在とあまり変わらない一九六七年の由実かおるを見ていたく感心する一方で、一九八九年八月の表紙を飾ったSMAP稲垣吾郎のあどけなさにびっくりしてしまう。そんなふうに、この本は最初から最後まで私ひとりでなく、妻や娘たちと笑いながら読めた稀有な本だといえる。

 もっとも笑えたのは一九七〇年八月号だった。この時の表紙を飾った彼女は七〇年という時代の象徴でもあったが、私の感覚でいえばアイドルというには暗い影がありすぎた。それでも彼女は精一杯アイドル風の笑いを作っていた。それは当時の彼女ともっとも違いすぎるような微笑だった。しかし、そんな彼女の写真の横に添えられた文章に見て、私は大笑いをしてしまうことになる。

 曰く、「私には 夏はいつも悲しかった −藤圭子」

 今をときめく宇多田ヒカルの母親の、不思議な夏の一瞬である。
  
(2002/12/08 投稿)

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