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プレゼント 書評こぼれ話

  先週の日曜に『百年の家』という絵本を紹介しましたが
  それとよく似たシュチエーションの絵本が
  今日紹介する、
  バージニア・リー・バートンの(石井桃子さんが訳されています)
  『ちいさいおうち』です。
  こちらの本がずっと先輩です。
  なにしろこの絵本は
  1942年に出版されたのですから
  もうすぐ70年になります。
  そんなりっぱな絵本に
  ようやく出会えるなんて、
  そのことがまるで夢のようだし、
  その絵本が今でもけっして古びていないことにも
  胸うたれます。
  本当に私はいままで何を見てきたのでしょう。
  どんな人であっても
  遅くありません。
  ぜひこの絵本を読んでみてください。
  きっと何かに気付くはずです。

  じゃあ、読もう。  

ちいさいおうち (大型絵本 (3))ちいさいおうち (大型絵本 (3))
(1965/12/16)
ばーじにあ・りー・ばーとん

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sai.wingpen  私たちが求めたもの                  矢印 bk1書評ページへ

 この絵本は1942年にアメリカの最優秀絵本として賞を受けていたことに驚いてしまいます。
 昔の人なら、だから戦争に負けるのだというかもしれません。私は「戦争を知らない子供たち」の世代ですから、そんな無粋なことはいわないですが、それでも大きな文化の違いを感じます。
 当時のアメリカにはこの絵本が描こうとしていたように、拡大一途の文明の発展を良しとはしない、そんな主張もまちがいなくあったのでしょう。
 しかし、残念ながら、それがすべてではなかった。ちいさなおうちの住む場所がいつの間にか田舎から町、そして大都会へと変わっていくことを人間の進化のように考える多くの人がいたということが、この絵本の出版から70年近くなって、歴史が証明しています。

 日本でもそうです。戦争が終わって、多くの人たちがめざしたのは、ちいさなおうちが大きなビルのはざまで息もできなくなって苦しむそんな生活でした。それが当時の人たちの希望だったのです。それはちょうど、ちいさなおうちがずっと昔に町の遠いあかりをみながら「まちって、どんなところだろう」と思ったこととよく似ています。
 春のにおいを胸いっぱい吸い込み、夏のひかりに目を細め、秋の風に髪をなびかせ、冬の寒さに身をかがめる。そんな自然と折り合っていく生活を、「便利」という誘惑と「不便」という理由で捨てていった、私たち。
 ちいさなおうちの頭の上に広がる雲がいつの間にか真っ黒に変わっていくのを見過ごしてしまいます。ちいさなおうちのまわりに「ひなぎくのはなも さかない」ことに不思議を感じなくなっていきます。

 私たちは残念ながら、この絵本の最後の部分を読み損なってきたのかもしれません。あるいは、読んでいながらそれでも都会の誘惑に負けてしまったのかもしれません。
 だったら、何度でも読むしかありません。子供へ孫へ、新しい世代へと読む継いでいくしかありません。
 きっといつか、この絵本が、ちいさなおうちが求めたものを、誰もがわかる日がきます。
 それがいつなのか、いえないことが悔しいとしても。
  
(2011/05/15 投稿)

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