05/30/2011 寝ても覚めても本の虫(児玉 清):書評「追悼・児玉清さん - どこまでいっても本の虫」

5月16日、俳優で書評家の児玉清さんが
亡くなられました。
77歳でした。
昨年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」でも
坂本龍馬の父親役で
存在感のある演技をされていましたから
その訃報には驚きました。
ただ私には俳優や司会としての児玉清さんではなく
書評家、というより読書家児玉清さんの印象が
強くあります。
でも、この『寝ても覚めても本の虫』を読むまでは
ごくごく一般的な読書家だとばかり
思っていました。
何のことはありません。
児玉清さんはものすごい読書家なんです。
これだけの本を
しかも原書で読んでいくなんて
並大抵のことではありません。
私もまだまだがんばって
児玉清さんのように
素敵な男性になりたいものです。
児玉清さんのご冥福をお祈りします。
じゃあ、読もう。
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「温厚、誠実な好人物にとどまらず、知的でダンディー」と5月19日の朝日新聞「天声人語」で紹介された俳優で書評家の児玉清さん。
華やかな大スターでも代表作がある書き手でもありませんでしたが、児玉さんの死は「天声人語」に記されるに値いするほど、静かな悲しみとなって日本全国に広がりました。
児玉さんはNHKの「週刊ブックレビュー」での名司会で世の読書家を虜にさせましたが、「天声人語」の中にも「長身にまとった知は自前だった。蔵書で自宅の床が傾くほどの読書家で、米英の小説は原書で読んだ」とあります。
この『寝ても覚めても本の虫』は、児玉さんが大好きだった海外小説がふんだんに紹介されている書評本です。児玉さんが読書家だったのは知っていましたが、こんなにも海外小説に精通しているとは、実は知りませんでした。まして、読みたい気持ちが高じて、原書で読んでおられたのですから、児玉さんがいなくなって初めて気づくなんて、恥ずかしいかぎりです。
児玉さんは「大好きな作家の新刊書の最初の頁を開くときの喜びにまさるものはめったにない」と、「どうして本が好きになったか」というエッセイの冒頭に書いています。
「最初の頁を開くときの喜び」はまさに読書家ならではの喜びだと思います。きっと本に興味のない人には、この「喜び」は理解されないかもしれません。電子書籍の時代になってその「喜び」がどう変わるのかわかりませんが、やはり紙の書籍ならではのものかもしれません。
そんな児玉さんがどうして本好きになったか、ましてや海外小説にはまっていったのか。その原因は高校時代に読んだ一群の海外小説にあったようです。
若い時の読書は、人間形成に影響します。児玉さんが生涯ダンディーでありつづけたのは、こうした読書体験とそれにつづく膨大な読書量の賜物のような気がします。
冒頭紹介した「天声人語」では児玉さんを色に喩えて「控えめだが親しみ深い中間色だろうか」と結んでいるが、新しいページが常にそうであるように、絵の具には絶対欠かせない「白い色」だったように私には思えます。
児玉清さん、ありがとうございました。
(2011/05/30 投稿)

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