02/17/2012 坂の上の坂(藤原和博):書評「坂の上のそのまた上の」

先日紹介しました
山崎武也さんの『55歳からの後悔しない人生』で
bk1書店の「今週のオススメ書評」に
選ばれました。
また選ばれることを願っているわけでは
ありませんが、
今日紹介する本も
55歳と関係します。
藤原和博さんの『坂の上の坂』。
このタイトルにむむむと反応した人は
かなりの本読み。
そう、このタイトルは
司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』の
もじり。
副題が「55歳までにやっておきたい55のこと」。
どうも最近、
55歳というのが人生のキーみたい。
すでにその年齢を超えた私としては
焦るばかりですが、
いやいやまだまだという
気持ちもあります。
じゃあ、読もう。
![]() | 坂の上の坂 (2011/11/22) 藤原和博 商品詳細を見る |


『坂の上の雲』は司馬遼太郎の代表作である。明治の日露戦争を核にしてその時代に生きた人々を描いて、今なお人気が高い。
司馬はそのあとがきの中で「このながい物語は、その日本史上類のない幸福な楽天家たちの物語」と書いている。そして、「楽天家たちは、そのような時代人としての体質で、前をのみ見つめながらあるく」と続けた。
本書はもちろんそんな司馬の『坂の上の雲』をもじっている。著者の藤原和博氏は現代は司馬が描いた時代とは状況が違うといい、坂の上にあるのは雲ではなく、次の新たな坂だととらえている。
寿命がのびたことで現代の人には過酷ともいえる老後の長い時間が待っている。定年延長の論議や年金問題など、働くことをやめた後も二十年以上生きなければならない現代人にとって、ぼんやり雲をみている場合ではないと藤原氏は警告している。その準備を老後にはいる55歳までにしておくべきだと。
もしかすると、現代人はこの日本史上類のない不幸な悲観家たちになったのかもしれない。
不安な資金、乏しい人間関係、経済破綻の恐怖、不意に襲う天災。まさに坂の上にあるのは坂、いやあるいは崖だということもある。
本書はそういう時代だからこそ学んでおくべき55のヒントがまとめられている。
社会、幸福、会社、消費、コミュニティ、パートナー、死、お金。不幸な悲観家だから準備は怠らない。それゆえに、司馬が描いた時代に強く惹かれもする。
幸福な楽天家たちの時代。
明治の人にとって、あの後日本を覆い尽くす経済の破たんや戦争の拡大が見えていなかったのだろうか。彼らにも予感があったはずだ。それでも彼らは楽天家であったのは何故だろう。
おそらく彼らと現代人とは幸福の基準が大きく違う。現代の成熟社会では幸福こそ成熟しきっているといえる。もっと単純な、それこそ一日三膳の食事ができる喜びのようなことが幸福であると思わないかぎり、常に不幸な悲観家でありつづけるだろう。
老後は長い。
できれば、幸福な楽天家として生きていきたい。
(2012/02/17 投稿)

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