02/22/2012 双六で東海道(丸谷 才一):書評「「名刺の話」」

本屋さんで
丸谷才一さんの新刊
『人魚はア・カペラで歌ふ』を発見。
もう奪うようにして
もちろん奪っていませんが、
手にしましたが、
今日は以前の本の蔵出し書評。
『双六で東海道』。
どうも新刊のことを引き延ばしているようですが
予告編みたいな、
ちょっとちがうな、
まあそんな感じで今日は紹介します。
では、新刊はいつ紹介するのだと
問われる人も
まったくいないとも限らないので
書いておくと、
明日、明日紹介します。
和田誠さんも書いているでしょ。
お楽しみはこれからだ、って。
じゃあ、読もう。
![]() | 双六で東海道 (2006/11) 丸谷 才一 商品詳細を見る |


ご存知といふか、お馴染みといふか、言葉の用法としてはどちらが正しいのかしら。
ご存知といふくらいだからお馴染みだろうし、お馴染みといふことはよくご存知だろうし、日本語って難しい。兎に角、相変わらず楽しい丸谷才一さんのエッセイ集です。
博覧強記、自由自在、と正当な四字熟語を並べると(何が正当かはこの本の「周恩来も金日成も田中角栄も」の章をお読み下さい)、この本の面白さがわかってもらえるかもしれない。
もっとも無用の長物といふ、四字熟語まがいの軽さも、これはこれで愉快である。
気がついた人がいるかもしれませんが、今回の書評は丸谷先生に倣って、旧かなづかいでいきますよ。
もっとも学校で習はなかったから、使い方の保証はありません。
でも、こんな感じで書かれていますっていふ、雰囲気だけでもわかってもらえたら、うれしいですね。
書評を書く時に、その本のいいところをどう表現するかはすごく大切なことだと思ふのだけれど、著者の文体につい似てしまふっていうのも、それだけその本が気に入った証明かもしれない。
ものまね書評。
これは世の中にもっと広まってもおかしくない。
ここで話を変えますよ。
「名刺の話」をしないとおさまらない。
この本の中で、パートナーに嫌われる仕草の話が紹介されている(「男女の仲」の章です)のですが、その中で、書評子が驚いたといふか、誰もがしていると思っていたものがある。
そのまま書きますよ。「名刺を爪楊枝がはりに使ふといふのがあって、これは斬新にしてかつ厭らしいと衝撃を受けた」とある。
あの丸谷先生ともあろうお方が衝撃を受けるのだから、これは大変厭らしいことに決まっている。
でも、したことがある。
もらった人には悪いからもらった名刺ではないですよ、あくまでも自分の名刺。
薄さといい、角のとがりといい、軟らかさといい、あれは爪楊枝にいいと思ふのですが。女性用の丸い角はだめですよ。あの丸みは爪楊枝にしないでねということかもしれない。
まあ、どうでもいいですよね。
そうなんだけど、このどうでもいいところが読書の愉しみでもある。
楽しみでなく、愉しみですよ。
丸谷先生もこうおっしゃっている。「本を読んで、今までわからないでいたことがわかるのはいい気分だなあと今回もまた痛切に思ひました。誰かが、本を読むことはなぜこんなに楽しいのか。それは自分の知らないことが途方もなく多いからである、と言ったけれど、その通り、と思ふ」。
まったくいい本は自分で書評も書いている。
(2006/12/12 投稿)

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