02/25/2012 今日もていねいに。 (PHP文庫)(松浦 弥太郎):書評「白いハンカチ」

先日紹介しました
丸谷才一さんの『人魚はア・カペラで歌ふ』に
戦後の出版界の偉業が載っていて、
その何位かに
文庫と新書のことが挙げられています。
丸谷才一さんはこのふたつが両立したのは
「おもしろい現象」と書いていて
その理由は「日本人の手が小さいから」と
推測しています。
なるほど。
いい推理かもしれません。
本屋さんに行くと
必ず文庫本の新刊のコーナーに
寄ります。
最近これはっていう文庫本を見つけていないのですが
松浦弥太郎さんの『今日もていねいに。』に
思わずひかれました。
PHP文庫です。
思わず買いそうになってしまいました。
待てよ。
この本、持っているよ。
それぐらい、
文庫本としても魅力があります。
そこで、
今日は再録として
紹介します。
じゃあ、読もう。
![]() | 今日もていねいに。 (PHP文庫) (2012/02/03) 松浦 弥太郎 商品詳細を見る |


雑誌「暮しの手帖」の最後のページに「編集者の手帖」というコーナーがあります。いわゆる編集後記と呼ばれるものでしょう。その文章の最後が、本書のタイトルにもなっている「今日もていねいに。」。
はじめてその一文を目にしたとき、はっとなって、前の号はどうだったのかと既刊号を何冊も開いてみました。そこにも、「今日もていねいに。」とあります。
わずか九文字なのに、なんて美しい言葉なんだろう、と打たれました。
「今日もていねいに」につづく文章とは何でしょう。
編集者としては、おそらく「読んでもらってありがとう」でしょうが、それだけではない、作り手の思いが、最後の「。」に込められているように感じます。
書いているのは「暮しの手帖」の編集長、松浦弥太郎さんでした。
本書には、そんな松浦弥太郎さんの「暮らしの中のひとつひとつの出来事と向き合い、じっくりと考え、頭だけでなく自分という存在すべてで取り組むためのやり方」、毎日の「暮らしのなかの工夫と発見」がたくさん紹介されています。
書かれていることは難しいことではありません。
たとえば、「とことん話すのは無理な相手でも、自分から「おはよう」と言ってみましょう。相手ばかりか自分まで気持ちが変わり、朝がすてきになるはずです」(20頁)みたいな、あたりまえのような工夫。
そのことを松浦さんはこんなふうに書かれています。
「慌しい世の中や人間関係でブレてしまった心の矛先を、そっと自分自身に向けなおす」と。
「ブレてしまった心の矛先」。この時、「ブレて」いるかどうかの判断は自分自身です。この本のなかに書かれているようなことを知らなかったら、「ブレて」いるかどうかさえ、わからないかもしれません。あるいは、自身の生き方の指針のようなものがまったく違えば、ブレようがありません。
それは間違っているかもしれませんし、ただしいかもしれません。
それを判断するのは、自分自身です。
松浦さんは、「間違ったことをしたら潔く謝り、失敗はちゃんと認め、決して嘘をつかず、いつも正直・親切を心がける。これが心の清潔を保つ方法です」(43頁)といいます。
清潔な真っ白いハンカチでなくても手は拭けるでしょう。
でも、私ならやはりそんなきれいなハンカチをもっていたい。持つように心がけたい。
「今日もていねいに。」といえる、生き方をしたい、と思います。
(2010/05/25 投稿)

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