プレゼント 書評こぼれ話

  またまた最後の日になってしまいました。
  すみません。
  毎月一冊ずつ
  「向田邦子全集<新版>」を読んでいるのですが
  ついつい
  新しい本や話題の本、
  いま読みたい本にかまけてしまtって
  気がつけば
  月も終わり。
  まったくもって。
  これが12月なら大晦日じゃないですか。
  慌ただしい上に
  慌ただしくならないとと反省しています。
  ということで、
  11月も今日でおしまい。
  今年もあと一ヶ月。
  早いですね。
  向田邦子さんじゃないですが
  ヒトっていう動物は面白い。
  今回はエッセイ「霊長類ヒト科動物図鑑」です。

  じゃあ、読もう。

向田邦子全集〈新版〉 第八巻向田邦子全集〈新版〉 第八巻
(2009/11/21)
向田 邦子

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sai.wingpen  向田が愛した人間(ヒト)                   

 向田がタイのチェンマイの動物園に行った話がある。(「写すひと」)。ベンガル虎が泥まみれになっているのを見て憤慨するのだが、それが「野生動物の自然の姿」とやがて気づく。
 「向田邦子全集<新版>」第8巻はエッセイ集の4として、「霊長類ヒト科動物図鑑」が収められている。
 向田にとって、自分も含めた人間(ヒト)そのものが面白かったにちがいない。
 怒り、泣き、笑い、嘆く。ぼやき、歯ぎしりし、ため息をつく。あくびをし、うたたねをし、ガバッと起きる。忘れ、思い出し、記憶違いにあ然とする。
 そういうかわいい人間(ヒト)を向田は愛してやまない。

 特に向田邦子という人間(ヒト)は作家向田にとって興味がつきない動物だった。
 その生まれ、その環境、親きょうだいのことを含め、けっして卑下することなく、じっと凝視している作家がいる。
 ドジでおっちょこちょいの婚期を過ぎた女性を愛情を込めてみている。
 このエッセイは昭和55年から翌56年にかけて、週刊誌「週刊文春」に連載されたものだが、きっと大人の読者たちに人気があったと思われる。なかなか女性の本音を聞けない時代にあって、向田の文章の小気味いいことといったらない。

 連載の途中で直木賞受賞があり、そのことに触れて、昔痴漢を捕まえた話を書いている。(「警視総監賞」)。 ある夜、刃物を持った男にいきなり暗闇に連れ込まれ、あわやというところで逃げ出した向田。その後、なんと彼女はその痴漢を捕まえてしまう。
 警察は表彰ものだというが、父親が強硬に反対する。女としてみっともないと。向田は仕方なく警視総監賞を断念するのだが、そのあとさっぱり賞に恵まれなくなったとぼやく。
 そして、直木賞。
 「警視総監の仇を直木三十五という方に討っていただいたような不思議な気持ちでいる」と最後にさりげなく書く。
 けっして自慢するわけでもなく、感謝の気持ちをこういう文章で書けるなんて、やはり並み大抵ではない。

 それもこれも、向田が人間(ヒト)という動物が好きだということだろう。
  
(2012/11/30 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  初冬。
  木枯らしが舞い、人の足も速くなる。
  そんな時、
  この本のような古道具屋さんがあったら
  暖かそうだ。
  今日は蔵出し書評
  川上弘美さんの『古道具 中野商店』を
  紹介します。
  今までこのブログで紹介してなかったのが
  不思議なくらい。
  それくらいいい作品。
  寒くなると
  暖まりたくなるのが
  人のつね。
  この本一冊あれば
  あたたかくなります。

  じゃあ、読もう。

古道具 中野商店 (新潮文庫)古道具 中野商店 (新潮文庫)
(2008/02)
川上 弘美

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sai.wingpen  懐かしい町でなつかしい人に出会ったような                   

 恋愛小説、青春小説、冒険小説、時代小説、ほかほかほか。
 人は物語をジャンルという引き出しに押し込もうとする。
 他人(よその人)にこの本はどんな本ですかって聞かれた時はこういった引き出しも便利なもので、それを使えばなんとなくその物語がどういうものかわかった気分になったりする。
 川上弘美さんの『古道具中野商店』のことを聞かれたら、ためらいもなく恋愛小説ですと答えるだろうが、『世界の中心で愛をさけぶ』みたいに思われるのも何か違うような気がする。
 もっとなつかしい恋愛小説です。と云えば、伝わるだろうか。

 物語の場は、東京の西の近郊の町にある「中野商店」という一軒の古道具屋。
 古道具屋は骨董屋ではない。昭和というほんの少し前の時代で使われていた種々雑多なものが「中野商店」の商品。
 骨董のように格式ばるのではなく、現代の流行商品のようにスマートでもなく、ここでは懐かしさが漂うような商品が売られている。
 そして、そのような場で描かれる恋愛小説も不器用でいてそれでも一途で。と云えば、伝わるだろうか。

 主人公のヒトミは「中野商店」で働くアルバイトである。
 同じ店で働くタケオには右手の小指の先がない。
 物語はこの二人の恋愛を核にして描かれているのだが、そうと云い切るような自信もない。
 商店主である中野さんも五十歳を過ぎてはいるが問題を抱えた恋愛をしているし、中野さんの姉のマサヨさんも当然五十歳なかばだがまだまだ恋愛から卒業していない。
 まるで「中野商店」が恋愛の磁場のようだ。
 それでいて、そのどれもがまわりくどい。
 いじいじしている。
 壊れてしまうのが怖いから、遠くからそっと恋愛そのものをのぞきこんでいるような。と云えば、伝わるだろうか。

 川上弘美さんはたぶんすごく恋愛小説の上手な書き手だ。それもすごく大人の恋愛小説の。
 大人の恋愛にはどこか逃げ場があって、そのあたりが若い人の恋愛と違うところだろうが、若いヒトミとタケオの恋愛でも川上弘美さんが描けば大人の恋愛になってしまう。
 彼らも恋愛の縁を廻っているだけだ。
 川上弘美さんは、約束のゆびきりができないように、タケオの小指の先を描かなかったしたのかもしれない。
 そんなことができそうなくらい川上弘美さんは恋愛小説が上手なのだ。

 結局この物語は、懐かしい町でなつかしい人に出会ったような恋愛小説である。と云えば、伝わるだろうか。
  
(2005/05/01 投稿)

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  今日紹介するのは
  松本平さんの『日活 昭和青春記』。
  副題は「日本でもっとも長い歴史をもつ映画会社の興亡史」。
  書評の中で、
  題名との印象の違いを書きましたが、
  悪いのは
  早合点した私で
  松本平さんには関係ありません。
  読むまでに
  本屋さんでパラパラ読みをしたつもりだったのですが
  うっかりでしたね。
  こういうことは
  時々あります。
  よくあるのは
  文庫本になった時にタイトルを変更するケース。
  初めて読んだつもりが
  途中で「アレ?」って気づきます。
  あれは痛い。
  本を読む時は
  題名だけで選ばないこと。
  教訓です。

  じゃあ、読もう。

日活 昭和青春記 日本でもっとも長い歴史をもつ映画会社の興亡史日活 昭和青春記 日本でもっとも長い歴史をもつ映画会社の興亡史
(2012/08/27)
松本 平

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sai.wingpen  本は題名だけで選んではいけません。                   

 この本の書名をみて、どんな内容だと思います?
 私はてっきり石原裕次郎や小林旭、吉永小百合や浅丘ルリ子といった日活の綺羅星のごときスターたちの撮影裏話だとばっかし思い込んでいて、あまりの勘違いに愕然としました。
 本は題名だけで選んではいけません。
 本書は「日本で最も古い映画会社である日活という企業の中で繰り広げた悪戦苦闘の歴史」を生々しく描いた企業史であり、労働組合の活動史なのです。
 それはそれなりに面白かったですが。

 映画会社は終戦後華々しい復活を遂げていきます。大衆が娯楽に飢えていたこともあるでしょう。そして昭和33年に入場者数11億人という絶頂期を迎えます。
 しかし、そこを境にして、凋落していきます。
 テレビの台頭が大きな原因だとよくいわれますが、好景気で次の戦略が遅れたということもあったと思います。
 当然過剰な人員を抱え、経営側の誤った判断は労働組合側と過酷な闘争を演じるようになります。
 この本の著者はその当事者として不当な解雇にもあいます。(その後裁判にてそれは無効になりますが)。
 また、資金につまった経営側は映画会社の心臓部である撮影所まで不透明な契約により売却しようとします。
 日活を戦後復活させた堀久作という経営者を片方の軸としてその対峙者であった労働組合側からの視点ですから、当然堀がとった施策に対する批判が多くあります。

 経営者は順風満帆の時はその経営資質を問われることはありません。むしろ、下降し始めた時からどう会社を立て直すかが重要になります。
 どう経営資源を有効に活用するか、時代の風をどう読みとるか。
 一歩間違えば、失政となります。
 そして、多くの従業員が露頭に迷うことになります。
 華々しいスクリーンの向こうにそういう闘いが繰り広げられていたのです。

 経営の破たんから「ロマンポルノ」という花が開花したのも、それでも映画を作りたいという映画人たちの思いだったし、その後一旦は持ち直す日活が倒産してしまうのも時代の流れでしょう。
 会社更生法により再建の道を選んだ日活が、今年創立100年を迎えたのも、歴史のひとつです。
  
(2012/11/28 投稿)

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  今日紹介するのは
  葉室麟さんの時代小説『この君なくば』。
  葉室麟さんの作品は
  直木賞受賞後、まめに読んでいますね。
  好きですよね。
  当たりはずれが少なく、
  どの作品もいい。
  この作品もまたしかり。
  書評には書きませんでしたが
  ヒロインの栞の恋敵も
  登場するのですが
  この彼女、いいところで
  主人公たちを助けるいい役どころ。
  葉室麟さんの作品は
  NHKがドラマにすると
  合いそうな気がします。
  それとも
  もうどこかで実現しているのかな。

  じゃあ、読もう。

この君なくばこの君なくば
(2012/10/05)
葉室 麟

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sai.wingpen  待つ心                   

 時は幕末。多くの藩が勤皇佐幕で揺れ動いていた時、九州・日向の伍代藩もまた時代の渦中にある。
 楠瀬譲は軽格の生まれながらその才によって今や藩を支えるまでになっている。そんな譲を恋い慕うのは、かつて彼が学んだ此君堂の娘、栞。
 本作の題名『この君なくば』は、王羲之の「何ぞ一日も此の君無かるべけんや」からとられているが、塾の名もまたしかり。
 葉室麟の得意とする、忍ぶ恋、待つ恋が、この作品でも巧みに描かれている。

 譲は一度は結婚するが妻を早くに亡くして今は小さき娘と母との暮らし。栞もまた父を亡くして母との二人で暮らしている。
 譲の再婚話に心中穏やかではない。栞は小さい頃から譲に憧れていた。一度は捨てた譲への想いであったが、栞はまた待つしかない。
 しかし、譲もまた栞への想いがあり、物語の前半は二人の行く末が中心となる。

 譲と栞はやがて結ばれるのだが、時代はそんな二人に襲いかかるように急変していく。
 大政奉還、討幕の戦いに譲も参戦し、栞のもとを離れなければならない。さらに、幕府側と通じていたという嫌疑で譲は捕えられてしまう。
 また離ればなれになる二人。さらには罪人の夫をもったことで、栞にも過酷な運命が訪れる。

 葉室の筆は幕末の動乱期であっても静かだ。
 この作品には多くの竹の風情が描かれているが、その竹のさやかに揺れる様のように、大きく乱れることはない。そのあたりが葉室の魅力といっていい。
 いうならば、大人の作風だろう。
 そのせいか、譲も栞も時代にのみ込まれているはずであるが、心が急くことはない。
 それは互いを信じているということでもある。一度は叶わないと思われた恋が実ったこともあるだろうし、待つ心を持っていたということでもある。
 こういう大人が少なくなってきた現代で、葉室の作品が好んで読まれるのもそういう理由だろう。

 「あきらめず、望みを捨てなければきっと、失ったものでも、あなたのもとに戻りましょう」。そんなせりふに続いて、「竹林は風にそよいでいる」と、葉室は書いている。
  
(2012/11/27 投稿)

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 先週末、叔母さんの四九日法要で
 大阪に帰りました。
 出発までの時間、
 東京・有楽町の国際フォーラムにある「相田みつお美術館」に
 立ち寄りました。
 いま、企画展「麗老 –晩年の相田みつお-」が開催されています。
 うまいことに招待券があったので
 赤頭巾ちゃん気分で寄り道しました。

相田
 『さらば東京タワー』という本の中で
 東海林さだおさんが相田みつおさんのことを
 「時代に先駆けたツイッター」ってうまいこと書いていましたが
 相田みつおさんのつぶやきは
 本当に心をうちますね。
 相田みつおさんというと
 お年寄りのイメージがありますが
 亡くなったのは67歳だそうですから
 むしろ早逝。
 67歳にして、「麗老」の境地なんですから、すごい。
 この「麗老」という言葉は
 相田みつおさんの造語らしいのですが
 まさに「麗しく老いる」というもの。

 相田みつお美術館は常設館にもかかわらず
 たくさんの人でにぎわっていました。
 もうすぐ団体さんがはいられます、って係の人がいうものですから
 それは大変と急ぎました。
 とにかく、数が多い。
 どんな言葉があったかというと、
 これは帰りにポストカードを買ったものですが

    雨の日には雨の中を
    風の日には風の中を

 とか

   ほんとうのことがいちばん

 だとか。
 相田みつおさんの魅力はまず言葉がいい。
 書がいい。
 日本人を魅了しますね。

 こんな言葉もありました。

   秋の渓谷を彩る
   絢爛たる紅葉のように
   夕焼空を背景に
   白銀にかがやく薄のように
   枯れてなお美しくありたい
   そして、いつでもどこでも
   感動を忘れぬ人間でありたい


 ね、いいでしょ。

 出口のショップではたくさんの人が
 買い物しています。
 今の季節はカレンダーの季節ですから
 カレンダーを求める人も多くいます。
 いったい日本のどれくらいの家に
 相田みつおさんのカレンダーがさがっているのかなぁ。
 みんな、「一生感動 一生青春」なんてうなっているのでしょうね、
 やっぱり。

 今回の帰省では
 今年の1月亡くなった父の服を何点か
 もらってきました。
 素敵なジャンパーもあって
 さっそく着てみると、
 おや?
 ポケットに何かあるぞ。
 なんと、父がつかったティッシュが丸まってありました。
 しかも、両方のポケットに。
 父もまた、
 「麗老」でありました。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する絵本は
  今年5月亡くなった
  アメリカの絵本作家モーリス・センダックさんの
  『まよなかのだいどころ』。
  あの『かいじゅうたちのいるところ』と
  人気を二分する代表作のひとつ。
  訳は神宮輝夫さん。
  海外の絵本で面白いのは
  文が翻訳されるだけでなく
  絵の中の文字の箇所、
  この絵本でいうなら
  町の看板とか商品の名前とかも
  翻訳されているところ。
  多分原作のデザインも踏襲しながら
  作られているのでしょうね。
  結構大変でしょうね。
  そういう細かいところも
  見て、
  楽しんで下さい。

  じゃあ、読もう。

まよなかのだいどころまよなかのだいどころ
(1982/09/20)
モーリス・センダック

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sai.wingpen  子どもは天使なんかじゃない                   

 早いもので今年も残りわずか。
 振り返ってみると、今年はたくさんの有名な人が亡くなっています。
 この『まよなかのだいどころ』の作者モーリス・センダックもそのうちのひとり。2012年5月8日に逝去。
 世界中の絵本ファンが悲しんだんじゃないかしらん。

 正直にいうと、私はセンダックさんの絵がどちらかというと苦手。
 この絵本でもそうですが、主人公の男の子の顔がどうもなじめない。でも、急いで書き加えると、おそらくセンダックさんの魅力はそこにあるように思います。
 子どもはけっして天使なんかじゃない。
 いたずらもすれば、大人を困らせることも平気。時には大人以上に策略家だったりします。
 もちろん、それはどこか大人の真似事かもしれない。
 センダックさんの絵はそんな微妙な子どもの姿を鋭く描いています。

 主人公の男の子ミッキーは真夜中に大きな音で目を覚まします。それで飛び出したのが、真夜中の台所。
 そこでは三人のパン屋さんが明日の朝のパンをつくっています。
 ところが、大事なミルクがありません。
 勇敢なミッキー君がお空の天の川まで行ってミルクを取りに行くことになりました。

 子どもの夢といってしまえば簡単ですが、センダックさんのお話には不思議な存在感があります。
 これって夢?
 三人のパン屋さんのリアルなことといったら。三つ子じゃあるまいし、顔がそっくりなのもヘン。でも、いそう。
 本当に真夜中の台所があったら、そっくり三人組のパン屋さんだってきっといるはず。

 センダックさんの絵本が世界中から愛されるにはきっと秘密があるはず。大人になったらそういうことも忘れてしまうのでしょうか。
 もっとも子どもの視点に近い絵本作家モーリス・センダック。
 今頃、もっと不思議な世界でいたずらをしてるかもしれませんね。
  
(2012/11/25 投稿)

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 今日も休みの人が多いかもしれませんので
 今回の「雑誌を歩く」は
 おとなのためのドラえもん講座で楽しみましょう。
 取り上げる雑誌は
 「Pen +(ペン プラス)」(阪急コミュニケーションズ・880円)です。
 何しろこの号は
 「完全保存版 大人のための藤子・F・不二雄」なんですから。
 ほら、ほら、身をのりだしてきましたね。
 あのオバQが、パーマンが、キテレツ大百科が、
 そしてもちろんぼくらのドラえもんが満載。

Pen+ (ペン・プラス)  大人のための藤子・F・不二雄 2012年 10/1号 [雑誌]Pen+ (ペン・プラス) 大人のための藤子・F・不二雄 2012年 10/1号 [雑誌]
(2012/09/01)
不明

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 ドラえもん好きな大人の皆さんなら
 とっくにわかっていると思いますが
 今年2012年は
 ドラえもん誕生まで100年の記念すべき年。
 ちなみにいうと
 ドラえもんが誕生したのが
 2112年9月3日。
 誕生を祝ってあげたいけど
 さすがにそれは無理。
 でも、ですよ。
 もしかして10歳くらいの子どもなら
 本当にドラえもん誕生に立ち会えるかもしれませんよ。
 100年といえば
 そういう年月。

 さてさてこの雑誌ですが
 まずは作者藤子・F・不二雄さんの62年の生涯から
 迫ります。
 藤子さんが亡くなったのが
 1996年9月。
 62歳なんて若すぎる人生ですよね。
 でも、これだけの作品を残してくれたのですから
 りっぱなもの。
 感謝してますよ、藤子さん。

 「永遠に残る、藤子・F・不二雄の主要作品」というコーナーでは
 あの作品、この作品といったように
 有名な漫画が勢揃い。
 私は「パーマン」が好き。
 特にパーマン3号のパー子。
 なんだ、やっぱり女の子か、なんていわないで。
 かわいいんだから。
 しずかちゃんも好きですよ。
 なんだ、やっぱり・・・。
 藤子さんの描かれる女の子はかわいい。

 大人向きには
 「ドラえもんの世界を、学問してみれば」という記事があって
 「タイムトラベル論」とか「デザイン論」、「コミュニティ論」などがあります。
 ね、大人でしょ。
 大人は「論」が好き。
 そのほかにも
 「本当に大人が欲しい、ひみつ道具」なんていう記事もあります。
 なにしろあれだけあるドラえもんのひみつ道具ですから
 選べといわれても困る。
 「あいあいパラソル」なんてどうかな。

 さらには川崎市にある「藤子・F・不二雄ミュージアム」の紹介なんて
あったりして。
 さらには、「原画で読むドラえもん」では「ぼくの生まれた日」という作品を
 完全収録。
 すごいなぁ。まったく。

 ところで、皆さん、ドラえもんの絵描けますか。
 見ないで描くのはなかなか難しいですよ。
 私、オバQなら描けるんですが。

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は勤労感謝の日
  勤労を感謝する祝日なのだから
  お休みの人も多いのでは
  ないでしょうか。
  そんな日にビジネス本を
  紹介するのもなんですが、
  今日紹介するのは
  松浦弥太郎さんの『考え方のコツ』。
  休日だから
  考えるなんて嫌だという人もいるでしょうが
  我慢しておつきあい下さい。
  もしかしたら
  本当の考える時間は
  こういう休日ぐらいしかとれないかも。
  この本の中で松浦弥太郎さんは
  感情をあらわにしないよう
  書いています。

   感情を露にして許されるのは、泣くのが仕事の赤ちゃんだけ。

  納得の一言です。

  じゃあ、読もう。

考え方のコツ考え方のコツ
(2012/09/20)
松浦弥太郎

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sai.wingpen  ロダンの「考える人」は大げさだ                   

 ロダンの「考える人」は大げさだ。
 あんなポーズで考えることなどそうはない。もし、仕事場であんなふうをして考えている人がいたら「もっと真面目に考えろ」と言いたくなるだろう。
 考える姿はまちまちだ。
 じっと空(くう)を見つめている人、目を閉じている人、手にした鉛筆をころころ転がしている人、ひたすらパソコンに打ち込んでいる人・・・。
 頭の中を透視できないから、それが本当に考えているのかはわからない。

 この本の中で「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんは、一日二回「思考の時間」を確保しなさいと薦めているが、そんな時間がとれないという人が多いと思う。しかし、それはもしかしたら時間の問題ではなく、何もせずにただ考えるということが苦手なだけかもしれない。
 パソコンが普及して会社にいる時間ひたすらパソコンを見ているということが増えた。
 それってどうだろう。パソコンがなかった時代、私たちはもっと考える時間を持っていたのではないだろうか。
 パソコンが普及したおかげで、考えることが減っていないか。松浦さんではないが、一日二回、パソコンの電源を落としてみるのもひとつの手かもしれない。
 もっとも、ロダンの「考える人」をマネするのもどうかと思うが。

 この本では「知ることよりもはるかに難しい、考えるということを自分自身の新しい学びとして捉えていく」ことが提唱されている。
 「思考術」に始まり、「想像術」「コミュニケーション術」「時間管理術」「グローバル術」と章立てが組まれていて、若いビジネスマンには考えさせられる内容だ。
 松浦さんのビジネス本は、大人の態度が基本だ。
 どのような人にも「同じような態度で接することが、ビジネスの成功につながっていく」と松浦さんは書いているが、簡単なようでなかなかできることではない。
 よく考えれば、私たちのビジネスの姿は子供っぽいところがありすぎかもしれない。泰然とした態度でなかなか望めない。だから、考えるよりもまず行動に向かってしまう。

 時に「考える人」になってみるのも得策かもしれない。
  
(2012/11/23 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  皆さんはNSPというグループを
  知っていますか。
  若い人は知らないかな。
  私たちの年代だと
  知っていますか、より
  覚えていますか、でしょうか。
  「夕暮れ時はさびしそう」とか
  「赤い糸の伝説」といった
  フォークを得意としたグループです。
  今日紹介した
  白石一文さんの『』の
  書評タイトルに「赤い糸の伝説」とつけましたが
  NSPの歌を思い出していました。
  この歌、出だしはこんなセリフで
  始まります。

   人は生まれながら 赤い糸で結ばれている
   そしていつかは その糸をたどってめぐり会う
   しかし その糸は細くて弱い

  いいでしょ。
  この歌が発表されたのは
  1976年。
  私が二十歳の頃。
  なんか今でもジーンときます。

  じゃあ、読もう。

翼 (テーマ競作小説「死様」)翼 (テーマ競作小説「死様」)
(2011/06/18)
白石一文

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sai.wingpen  赤い糸の伝説                   

 「赤い糸の伝説」を初めて知ったのは、太宰治の初期の名作『思い出』だったろうか。「私たちの右足の小指に見えぬ赤い糸がむすばれていて」「私たちはその女の子を嫁にもらうことにきまっている」らしい。
 若い時代に、この「伝説」はとても魅力的に思えた。
 はたして本当にそんな「赤い糸」が存在するのかどうかしらないが、きっと若い時代は「赤い糸」なんてやはりないだとか、やっぱりつながっているといったように思うものだ。
 恋とは、そんな夢のような感覚を秘めている。

 「死様」というテーマで作家たちが競作をしたシリーズの、これは直木賞作家白石一文が書いた物語だ。
 34歳になる田宮里江子がかつて結婚を迫られたことのある長谷川岳志と何年かぶりに偶然再会する場面から、物語は始まる。
 岳志は里江子の友人聖子が交際している彼氏だった。
 学生時代に聖子の紹介で里江子と出会った岳志は、里江子に運命の出会いを感じ、結婚を迫る。突然の申し入れに困惑する里江子。友人の彼をとるわけにはいかない。
 岳志は聖子と結婚し、音信が途絶えたまま数年が流れて再会する二人。
 岳志は、里江子との再会を運命のように感じ、ふたたび結婚を迫ってくる。

 「赤い糸の伝説」を信じた男は不幸であるのだろうか。
 妻子を捨て、もう一度里江子と一緒になろうとする岳志は純粋な愛の軌跡をまっとうしようとしているのだろうか。
 「死様」というテーマに沿うようにして、白石はさまざまな愛の形、死の光景をつづっていく。
 死というのがその人に関わった人が記憶しているかぎり完成されないということを、里江子と岳志の関係を核にして描いていく。
 「私たち自身が愛の物語であり、永遠の記憶なのだ」という岳志の言葉は、あまりにもセンチメンタル過ぎる。そんな言葉は太宰なら言いそうだが、現代の若者には似合わない。

 「赤い糸の伝説」はどうして生まれたのかはしらない。けれど、「伝説」はどこまでいっても「伝説」だ。
 それでも、それを信じたいという人には、この物語は胸をうつかもしれない。あるいは、信じないものにとって、この物語もまた「伝説」にしか見えないのではないだろうか。
  
(2012/11/22 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  人がコートを着るようになるのは
  気温が10度を下回ってからと
  聞いたことがある。
  そろそろコートの季節だ。
  寒い朝だとつい着込んでしまうが
  一旦着てしまうと
  脱げなくなるのも心情で、
  この頃合いが難しい。
  今日紹介する「百年文庫」のタイトルは
  「」。
  俳句の世界では
  一般的な冬の風を「北風」という。

   北風の身を切るといふ言葉かな  中村苑子

  もうすぐそんな季節になる。

  じゃあ、読もう。

風 (百年文庫)風 (百年文庫)
(2011/08)
徳冨 蘆花、若山 牧水 他

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sai.wingpen  さまざまな風                   

 暑い暑いと残暑を嘆いていたのがつい先だってのことに思えるが、気がつけば立冬も過ぎ、木枯らしに木の葉舞う季節になっている。
 風が季節を連れてくる。
 芥川龍之介に「木がらしや東京の日のありどころ」という俳句があるが、東京の風も風情があっていい。街には街の風があるものだ。
 「百年文庫」の87巻は「風」。徳富蘆花の『漁師の娘』、宮本常一の『土佐源氏』、それに若山牧水の『みなかみ紀行』が収録されている。
 さまざまな風を感じる一冊だ。

 宮本常一は『忘れられた日本人』で今なお人気の高い民俗学者だ。
 本書に収録されている『土佐源氏』はその中に収められている作品だが、世評は特に高い。
 土佐の檮原村の乞食小屋に住む盲目の老人による回想記。老人自身が自分の話など何の役にも立たないと言っているように、何かためになることが話されているわけではない。ひたすら老人の女性遍歴が土佐弁で語られるだけの、口述筆記されたものだ。
 それでいて、ここに吹く風の清々しさはどういうわけだろう。
 ここには間違いなく、人間がいる。気取りも見栄もない、素っ裸の人間だ。

 おそらく、この老人と対極にあるのが若山牧水かもしれない。歌人としてすでに名をなしている牧水が長野や群馬の地をめぐる紀行文が『みなかみ紀行』である。
 行く先々で牧水を師事する人たちが迎える。なんという贅沢。宮本常一が活写した盲目の老人とは雲泥の差だ。それでいて、牧水はすべてに満たされているわけではない。彼の中を風が吹いている。
 「もみぢ葉のいま照り匂ふ秋山の澄みぬるすがた寂しとぞ見ゆ」。ときおりの牧水自身の短歌が効果をあげている作品だ。

 徳富蘆花の『漁師の娘』は筑波のふもと霞ヶ浦の小さな浮島に住む漁師の物語だ。
 子供のいない漁師夫婦はある日捨て子を授かる。美しい娘に成長するが、自身が捨て子であることを知ってから学校に行かず、ただ歌うばかりであった。淡い初恋も叶わず、娘は器量よしゆえに村の豪家の妾に所望される。娘は嘆くばかり。そして、ある豪雨の日、娘は行方しらずとなる。
 「竹取物語」は美しい悲劇だが、この作品は切ない悲劇だ。

 風にあおられて、人は歩くしかない。
  
(2012/11/21 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  人は必ず死ぬ。
  それはどうあっても人間の運命です。
  女優森光子さんが11月10日に92歳で亡くなったのも
  定命でしょう。
  でも、と人は思います。
  あんなに美しく、明るかった森光子さんが亡くなるなんて。
  それほどに森光子さんは
  美しかった。
  たくさんの賞をもらって
  森光子さんの年令がわかるたびに
  すごいなぁと思いました。
  この明るさで70歳?!
  この元気さで80歳?!
  森光子さんを見ていると、
  こんなふうに老いたいものだと
  思いました。
  なんと美しい人生でしょう。
  今日は森光子さんを偲んで
  『あきらめなかった いつだって』という
  本を紹介します。

  ご冥福をお祈りします。

  じゃあ、読もう。

あきらめなかった いつだって (100年インタビュー)あきらめなかった いつだって (100年インタビュー)
(2011/05/21)
森 光子

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sai.wingpen  追悼・森光子さん - 緞帳がおりていきます                   

 11月10日亡くなった女優の森光子さんの訃報がニュースで流れた日、野田首相が衆議院を解散すると明言した日でもありました。そのせいで、翌日の新聞各紙のコラムは「衆議院解散」関連で占められました。
 森さんの女優としての功績が語られることがないのかと残念でしたが、その次の日、新聞各紙のコラムは森さんの記事で埋まりました。
 たくさんの人々から愛された森さんに捧げられた、言葉の花束だといえます。

 「あいつより 上手いはずだが なぜ売れぬ」。
 有名な森さんの川柳です。
 2008年にNHKで放映されたインタビュー番組を単行本化したこの本でも、第一章のタイトルにこの川柳が使われています。この川柳だけでなく、森さんが多くの含蓄のある言葉を残していることを新聞各紙のコラムや記事で知ることができます。
 印象に残ったのは「平成はなじめない」とよく語っていたという日本経済新聞の記事でした。
 森さんは大正9年に京都に生まれましたから、大正、昭和、そして平成の時代を生きたことになります。中でも陰影の濃い昭和を愛したといいます。それが先の言葉になるわけです。
 森光子という女優は、昭和がもっとも似合っていたかもしれません。

 森光子の名を不動のものにした舞台『放浪記』の初演は昭和36年でした。森さんが41歳の時です。この舞台は平成になっても続きます。2000回という偉業を達成したのは平成21年でした。
 また森さんが「日本のお母さん」と称されるきっかけとなったTV番組「時間ですよ」は、昭和元禄と呼ばれた昭和45年のことです。
 まさに昭和とともに歩いた人生でした。

 先の川柳にもあったように、森さんは長い間売れない女優でした。
 そんな人生が転変するのが、奇跡ともいえる菊田一夫との出会いです。
 でも、もしこの時、彼女が売れないことに腐っていたら、チャンスは訪れなかったでしょう。
 この本のタイトルのように、「あきらめなかった」から、森さんは見事に成功したといえます。
 この本の最後で森さんはこんな言葉を残しています。
 「かんたんにあきらめず、投げず、焦らず、そして人への感謝を忘れなければ、きっとバラ色の未来が開けるはずです」。

 緞帳がたくさんの拍手に送られながら、今おりていきます。
  
(2012/11/20 投稿)

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 最近、写真づいているわけではないですが
 「篠山紀信展」に続いて
 先日、東京・六本木にあるFUJIFILM SQUAREで開催されている
 「星野道夫 悠久の時を旅する」展に行ってきました。
 ちょうどこの日は
 星野道夫夫人の直子さんのトークショーがあったのですが
 定員150人という会場ですが
 すでに予約でいっぱいで
 直子さんの話は聞けませんでした。

 星野直子さんとは一度
 知人を介してお会いしたことがあります。
 こちらが一方的に星野道夫の魅力を語っただけでしたが
 直子さんの静かな笑顔が印象的でした。
 星野道夫が取材中の不慮の事故でなくなってから
 すでに16年。
 星野道夫
 それでも、いまだに多くの人が
 星野道夫を愛し、
 星野道夫の写真に魅了されています。
 直子さんのトークショーが聞けなかったのは残念でしたが
 そのことが実感できて
 それはまたうれしい限りです。

 今回の展覧会は
 FUJIFILM SQUAREの一階のスペースで開催されていて
 規模的には小さいのですが
 初めて目にする写真があったりして
 星野道夫の時間を共有できる
 いい写真展です。
 色あざやかに紅葉した秋のツンドラに置き去りにされたカリブーの骨。
 鮭をもとめて河の中で立ち上がるグリズリー。
 雪原をゆったりと歩む北極グマ。
 そして、アラスカの人たち。

 星野道夫は20歳の時
 偶然目にしたアラスカの写真から
 アラスカに魅かれていきます。
 当時、彼が初めてアラスカの村に逗留することになった
 シシュマレフ村の村長からの手紙も
 展示されています。
 この時から、
 星野道夫は生涯アラスカを愛し、
 アラスカの人々と語り、
 アラスカを撮り続けたのです。

 星野道夫は時の旅人でした。
 けっしていそがず、ゆったりと生きた、旅人でした。
 「夢は完成することがない」。
 これは、星野道夫の言葉です。
 星野道夫が今でも愛されつづけるのは
 その生き方の魅力でもあります。

 こんな素敵な写真展が無料で見られます。
 12月5日までの開催。
 ぜひ、この機会に
 星野道夫と再会してみてください。

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プレゼント 書評こぼれ話

  秋も深まると思い出す短編が
  あります。
  O.ヘンリーの『最後の一葉』です。
  病気の少女は
  窓からみえる木々の、最後の一葉が落ちれば
  自分も死んでしまうと
  信じています。
  ところが、その一枚の葉は
  散ることはありませんでした。
  何故なら、それは
  同じアパートに住む老画家の絵だったのです。
  命の尊さを描いた名作です。
  絵描きというのは
  そういう尊厳さを絵に込めています。
  今日紹介する
  いせひでこさんの『絵描き』という絵本も
  そんな画家の心のありようを
  描いた絵本です。
  秋にぴったりの一冊。

  じゃあ、読もう。
  
絵描き絵描き
(2004/11)
いせ ひでこ

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sai.wingpen  ふっと、風を感じる                   

 いせひでこさんの絵本を、ときに、たまらなく読みたくなる時があります。
 絵本はさまざまな個性をもった作家たちによって作られています。絵は特に個性が強くでます。子どもたちの個性を絵筆で揺り動かします。
 絵の基準、それはうまいとかへたとか、構図がいいとか悪いとか。でいっても千差万別ですが、いせさんの絵はとっても心を静かにさせてくれます。
 たとえるなら、春の花びら、夏の風鈴、秋のひとひら、冬の音。
 小枝のざわめき、風の声、枯葉の涙、沈黙。
 宮沢賢治とゴッホと、風が大好きな画家。「風の又三郎」と「ひまわり」と、木々を愛する絵本作家。
 そんないせひでこさんの作品を存分に楽しめる絵本です。

 一人の若い絵描きが主人公。月を盗み、山焼けの赤をもらって、彼が描こうとしているのは、人生。
 白いキャンパスに描くのは、何?
 描きすぎてわからくなったり、音をきくように色がかけたらと祈ったりする。
 それは誰?
 若い絵描きは、いせひでこでもあり、読者(私も)でもあるでしょう。
 このページの向こうにあるのは、きのうかもしれないし、明日かもしれない。
 いせひでこかもしれないし、あなたかもしれない。

 いい作品はとどまらない。たくさんの「?」をもっています。
 断定ではなく、いうならば、「希望」。
 白いキャンパスのようなものです。
 きっと時々いせひでこさんの絵本が無性に読みたくなるのは、そんなものに出会いたいからかもしれません。
 もっと広くいうなら、絵本を読みたくなるのも、そんなものに出会いたいからかもしれません。

 ふっと、風を感じる、絵本です。
  
(2012/11/18 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  松浦弥太郎さんの『100の基本』。
  生きていく基本のヒントが
  満載の一冊です。
  私が気をつけていることが
  ひとつあります。
  それは「腕を組まない」こと。
  昔、ある先輩から教えられました。
  えらそうに腕なんか組むな。
  そんな姿はみっともない。
  確かにそうです。
  だから、常に気をつけています。
  それでも、つい、やってしまいます。
  それでも、ハッと気づくとほどくように
  しています。
  何をエラそうにしているんだ、って
  反省します。
  本当は手をもっていく場所がなくて
  つい組んでしまうのでしょうが、
  人はそんなふうに見ません。
  これが私の「100の基本」のひとつです。

  じゃあ、読もう。

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート
(2012/09/25)
松浦 弥太郎

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sai.wingpen  姿勢よく歩こう                   

 松浦弥太郎さんには、雑誌「暮しの手帖」編集長、書店「COW BOOKS」の代表者、文筆家といったさまざまな顔があります。どの顔をとっても、底辺には松浦さんの個性であるていねいさがあります。
 そんな松浦さんだからこその、これは基本の言葉集といっていいでしょう。
 「自分を知るために、自分について考えるために」書きとめられたものだし、「自分の成長のため」のルールでもあります。
 そして、「自分らしくいるため」の基本でもあります。
 松浦さんはこれらの言葉を「旅のお守り」とも書いていますが。人生という長い旅にこんな言葉があったらどんなにいいでしょう。

 この本には松浦さん自身の「100の基本」だけでなく、松浦さんが経営する書店「COW BOOKS」の行動指針ともなる「100の基本」も収められています。
 仕事で悩んでいる方や働くことに迷っている方にとっての心の支えにもなるのではないかと思います。

 きっと読み手の心に響く言葉が見つかります。
 偶数のページに短い言葉が、奇数のページにはその言葉についてのささやかなコメントがついています。
 私にとっては、たとえば、これ。
 「姿勢よく歩く。手を振って歩く。上を向いて歩く」です。
 美しい所作の人は凛としています。何かに悩んだり憂鬱に落ち込んだりした時にはどうしても姿勢が悪くなります。ついうつむいている自分に気がついたりします。
 松浦さんは「歩き方、立ち姿は、自分の生活や仕事のすべてを表すもの」だと書いています。私もこの言葉を自分の「基本」にしたいと思います。
 こんなふうに、読み手(あなたも)が出合い、そして大事にしたいと思う言葉にあふれた一冊といっていいでしょう。
 なにしろ、100もあるのですから。「COW BOOKS」の基本もいれれば、200もあるのですから。

 もうひとつ紹介します。
 「愛するとは相手を生かすこと。愛し合うとは生かす合うこと。」
 今、愛に悩んでいる人にぴったりの「基本」です。松浦さんは「愛の名のもとに相手を支配するのは、一番恐ろしい、まやかしの愛」と記しています。
 とても考えさせられる「基本」です。
  
(2012/11/17 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日は就活の話を書きましたが
  今日は「婚活」。
  若い人はたいへんですね。
  会社をさがすのも大変だし
  伴侶をさがすのも一苦労。
  年令順にいえば、
  まず就活。
  それが終われば婚活。
  それが終われば
  家のローンだ、子どもの教育費だと
  金活? となります。
  途中でリストラにあったり
  離婚だったりする。
  人生ゲーム以上に人生ゲーム。
  今日はそんななかを
  一生懸命がんばっている女子、
  すーちゃんの『結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日』。
  益田ミリさんの漫画です。
  息抜きのつもりで
  どうぞ。

  じゃあ、読もう。

結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日
(2008/01)
益田 ミリ

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sai.wingpen  たまねぎの皮むきながら                   

 「男はつらいよ」ならぬ、「女もつらいよ」第二弾、奮闘編、かな。
 主人公のすーちゃんこと森本好子、35歳。あのキャンディーズの田中好子さんの愛称がスーちゃんだったことを思い出します。
 今はカフェの店長となって毎日若い娘たちと奮闘しています。独身です。
 ふらっとはいった本屋さんで「遺言の書き方」なんていう本を買ってしまったりする。
 「将来何になりたいか子供の頃はよく聞かれたけど、大人になってしまえばもう、聞かれない」なんて、このあたりがすーちゃんの人気の秘密。
 女子たちの心の声。本音の声。

 今回のわき役はすーちゃんが以前働いていた会社で先輩だったさわ子さん。今はヨガ教室での友達。彼氏いない歴13年。もうすぐ40歳。
 このさわ子さん、寝たきりのおばあさんと母親の三人暮らし。いろんなことを忘れ始めたおばあさんの世話をしながら、「どの時点が、大人の完成形なんだろう?」と思ったりする。
 恋がしたい、と思っている。正直にいえば、男が欲しい。

 そんな二人がそこはかとなく、「女もつらいよ」の世界をがんばって生きていく。
 さわ子さんに結婚前提の彼氏ができて、念願のセックスもしたのだが、やはり男の身勝手に耐えきれない。
 「男はつらいよ」ってエラそうにいうなって言うの。女だってつらいんだ。しかも、そろそろ先が、ちらちらと見え始めると。

 益田ミリさんの人気漫画第二弾は、今回も絶好調。きっとすーちゃんやさわ子さんに感銘する女子って多いのだろうな。
 昔、「男はつらいよ」がたくさんの人たちに歓声で迎えられたように、いまは『すーちゃん』に拍手喝采する女子たち。
 読み終えたあと、涙なんかこぼすのだろうか。
 そんなことはしないように思う。「ハーイ、読んじゃった」みたいな感じで夕ご飯の支度ではないだろうか。たまねぎの皮むきながら。
 泪かくすのにこれが一番。
  
(2012/11/16 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日の野田首相の「解散」宣言。
  驚きましたね。
  でも、野田さんという政治家の信念が
  よく出ていたのではないでしょうか。
  ぜひ、次の選挙では
  「景気回復」「雇用の拡大」も争点に
  してもらいたいと思います。
  来月1日から
  いよいよ就職解禁。
  2014年入社の学生たちの。
  大変ですね。
  今の学生たちも。
  経済は好況期と衰退期を繰り返します。
  当然採用もそれに比例します。
  就職氷河期にあたった学生はかわいそう。
  彼らに罪はないのに
  そのことにひきずられます。
  今日紹介するのは
  『突撃取材! こちら就活探偵団』。
  さすが日本経済新聞社の取材班。
  ていねいにできています。
  就活中の皆さん。
  一度読んでみてはどうですか。
  真剣なのですが
  ユルい感じもあって
  緊張感をほどくのにも
  いいですよ。

  じゃあ、読もう。

突撃取材! こちら就活探偵団突撃取材! こちら就活探偵団
(2012/09/22)
日本経済新聞社

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sai.wingpen  過去は変えれないが、未来は変えられる。                   

 自分がいま、就活(就職活動)をしていたら、内定どころか面接さえもおぼつかないのではないかと思う。
 昭和53年(1978年)の秋が私の就活時期だったが、留年し、就職に後ろ向きだった学生には憂鬱な季節だった。ちょうどこの頃、大手の小売業が積極的に新卒採用をしていなければ就職などできなかったのではないか。
 何しろ面接で「小売って何だと思います?」みたいな質問に「愛だと思います」なんていう馬鹿な答えをするくらいですから、今なら完全にアウトでしょうね。
 それなのに内定がでた。
 当時、同じ読み方の映画会社があって、下宿先の大家さんに話したところ、そこだと勘違いされたくらいだから、知名度からいってもまだまだ新興だったのだと思う。
 それでも、なんとか働き口があって、内心とてもホッとしたことを覚えてる。

 就職は人生で大事な関門もいえる。
 現代の若者に、そこの会社で一生勤めあげるという心構えがあるかどうかはともかく、正社員雇用さえままならぬ時代にあって、就職できるということは大事なことだ。
 ましては氷河期なんて呼ばれる時代、学生たちが血眼になるのも無理はない。
 そこで、就活関連の本も数多く本屋さんに並ぶ。「面接に勝つ・・・」「ES(エントリーシート)必勝法・・・」といった具合に。
 本書もそんな一冊といっていい。
 ただ、この本の場合、就活中の学生が不安に思っている悩みを日本経済新聞社の取材網を駆使して解決する、もしくは解決とまではいかなくともありのままの姿を覗き見ることで、現代の就活事情をえぐり出している。

 たとえば、面接時のスーツの色はどうすればよいのか。たとえば、お酒が苦手でもアルコール飲料メーカーにはいれるのか。たとえば、TOEICは何点あればいいのか。といった具合に、具体的に解き明かされていく。
 その中でも現在注目を集めている「就活塾」の実態など、厳しい就職戦線とはいえ、ここまでやるのかと驚くことも多い。
 やっぱり、私は面接さえいけそうにない。

 もし、社会人の先輩として就活している学生たちにいえるとしたら、どんな会社にはいっても厳しいことは変わらない。今は有名だったり高給であっても、時代は移ろうものだ。
 就活で一番大事なことは、まず自分自身と向き合うこと。そして、自分自身を信じること、だ。
 過去は変えれないが、未来は変えられる。
  
(2012/11/15 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日『いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ』という
  本を紹介しましたが、
  いじめられている君にも
  いじめている君にも
  いじめを見ている君にも
  読んでもらいたい一冊が
  今日紹介する、
  重松清さんの『空より高く』です。
  新聞小説として
  2005年に読売新聞夕刊に連載されていたようですが
  ずいぶん刊行まで時間がかかりましたね。
  でも、このタイミングでよかったのかな。
  「いじめ」の問題は根深いけれど
  そういうことに大切な時間を
  使っているのって
  もったいないですよ。
  もっと大切なことが
  生きる時間にはあります。
  もし、いま、いじめている人がいるなら
  そんな姿を未来のあなたに誇れるかどうかを
  考えてみて下さい。

  じゃあ、読もう。

空より高く空より高く
(2012/09/24)
重松 清

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sai.wingpen  レッツ・ビギン!                   

 前略。17歳の私さん。
 あれから40年以上の時が経って、こうして17歳の君に手紙を書いています。
 それなのに、あの頃自分が何を思っていたのか全然思い出せません。
 17歳の私は40年後の未来の自分自身なんて想像もつかなかったのではないでしょうか。
 そういえば、好きだった女の子が高校の卒業を待たずに引っ越してしまったことにしょげていましたね。青春ドラマの主人公みたいにその子を追いかけられなかったことを悔やんでいましたね。その子にあてた詩が学習雑誌に掲載されなかったことに肩をおとしていましたね。
 でも、教えてあげると、今の君から数か月したら、それ、掲載されましたよ。残念ながら、彼女は見ることはなかったですが。

 17歳の君に手紙を書いてみようと思ったのは、重松清さん(君は知らないでしょうが、こちらの未来ではとっても人気のある作家です)の『空より高く』という小説を読んだからです。
 ここには、君と同じ高校三年の男の子三人と女の子一人が登場します。彼らが通う高校は彼らの学年を最後に廃校になってしまいます。
 卒業まで残り少なくなってきた二学期のはじまり、一人の先生が赴任してきます。ジン先生。
 この先生はこの高校の一期生でもあります。先生の口癖が「レッツ・ビギン!」。この言葉なら17歳の君でもわかるでしょ。当時人気のあったTV番組で使われていた言葉です。
 高校三年といえば、漠然とした将来の不安に直面する時期。四人の高校生たちもそう。そういえば、17歳の君だってそうだった。
 もちろん、時代は違う。けれど、17歳の若者たちの心ってそんなに変わっていないのではないかな。

 始めることで変われることがある。
 この物語の高校生たちも、ディアボロという芸を通じて変わっていく。
 17歳の君は知らないね。ディアボロというのは空中ゴマでお椀をふたつ重ねたようなもの。それを空に放り投げてさまざまな芸をする。
 変わっていく高校生が最後に未来の自分にあてて手紙を出す。「前略、未来さま」って。「未来のオレは、ワカゾーだった頃の自分を、どんなふうに思いだすんだろうな」。
 だから、未来のオレから17歳の私に手紙を出してみた。
 「ちっとも覚えていないゾー」って。
 でも、17歳の私がいたから、今の、未来のオレがいるんだ。
 ありがとう。
 だから、いい物語も読めたんだ。
  
(2012/11/14 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  朝、時計代わりにテレビを
  つけている人は多い。
  私もその一人。
  少し前までは
  「めざましテレビ」(フジ系)派だったのですが
  最近は「ZIP!」(日テレ系)。
  先日その番組の中で
  お笑い芸人の鉄拳さんの新作パラパラアニメが
  紹介されていました。
  気になったので
  ネットで追いかけました。
  それが馬場俊英さんの「弱い虫」という
  楽曲のミュージックビデオ。
  これがいい。
  今日紹介した『いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ』の
  書評にも書いています。
  ご覧になっていない方はぜひ。
  ネットでご覧ください。
  「いじめ」の問題は
  子どもの世界だけでなく
  大人の世界にもあります。
  大人の場合には
  いじめている側の自覚がないところに
  問題があります。
  みなさん一人ひとりが
  「いじめ」って何だろうと
  考えてみて下さい。

  じゃあ、読もう。

完全版 いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ完全版 いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ
(2012/09/20)
朝日新聞社

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sai.wingpen  誰かになるために 心を捨てるなよ                   

 お笑い芸人で、パラパラアニメで人気急上昇の鉄拳さんの最新作は、シンガーソングライターの馬場俊英さんの「弱い虫」という楽曲のミュージックビデオです。
 楽曲の切なく悲痛な世界を巧みにアニメに仕上げていて、心に残る作品と今話題になっています。
 「弱い虫」はいじめにあっている人を励ます応援歌です。
 冒頭の歌詞は宮沢賢治の有名な詩、「雨ニモマケズ」を引用し、「雨にも負けず 風にも負けないで・・・(中略)・・・いつでも静かに笑っている」で始まり、こう続きます。「そういう人にならなくていい」と。さらに、「誰かになるために 心を捨てるなよ/死にたくなるほど 自分を責めるなよ」と胸をえぐってきます。
 そして、「誰かを困らせてまで/強くなる必要などあるものか」と、馬場さんは歌います。

 鉄拳さんのパラパラアニメは、痴漢と間違えられた気の弱い父親が主人公です。
 そのことで娘は学校でいじめにあい、奥さんも近所から白い眼で見られます。それでも、支え合う家族。しかし、裁判の結果は「有罪」。警官に連れていかれる父親の叫ぶ姿に、「涙があふれたら 僕に向かって叫んでくれ」という歌詞が重なります。

 大津で起きたいじめ事件が多くの人に衝撃を与えました。
 大人たちはいまだにいじめがなくならないことに、子供たちは同じような助けの声をあげました。
 マスコミも多くの論説を掲載しました。その中で朝日新聞はさまざまな有名人からのメッセージを、子供たちにもわかりやすい形で連載していきました。2012年の夏でした。
 それと2006年に同じような形で連載されたものを一冊にまとめたのがこの本です。

 いじめはささいなことから始まります。
 もしかしたら、加害者たちもほんの「遊び」のつもりだったかもしれません。でも、「いじめられた」側からすれば、それは大きな痛手になります。
 助けるを求めることもできず、叫ぶこともできない子供たちがたくさんいます。
 私たち大人はそんな彼らにどんな声をかけてあげればいいのでしょう。あるいは、鉄拳さんが描いたように、大人の世界にも「いじめ」は存在します。
 人が人を傷つける、そんなことがあっていいのでしょうか。

 たくさんの人々のメッセージは答えではありません。
 それらは読み手にこう問いかけているのです。「あなただったらなんて声をかけますか」って。
 私たちは「弱い虫」。けれど、「弱い虫」だからこそ、それぞれのメッセージがあっていいのではないでしょうか。
  
(2012/11/013 投稿)

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 秋の深まりは冬のはじまり。
 ようやく秋の色づきをみせはじめた先週の土曜、
 東京・初台にある「東京オペラシティ アートギャラリー」で開催中の
 「篠山紀信展 写真力」を観てきました。

篠山紀信
 この展覧会は、
 半世紀にわたって日本の写真界を激走してきた
 篠山紀信さんの初の大規模な個展です。
 私たちがどれだけ篠山紀信さんが撮り続けた人物写真と身近にあったかを
 実感できる写真展です。
 それは時代そのものといっていい。
 はいるとたちまちにその世界に魅了されます。
 巨大な三島由紀夫のモノクロームの写真が二枚。
 見上げるようにしてあの時代がせまってくる感じです。
 つづく部屋は「STAR」と題されています。
 その中でもひときわ目をひくのが
 水面に浮かぶ水着姿の山口百恵さん。
 篠山紀信さんは当時たくさんの百恵さんの写真を撮ったはず。
 百恵神話の根底には篠山紀信さんが撮ったイメージが
 あったような気がします。
 そのほかにも、この部屋にはさまざまなSTARたちの写真が並びます。
 今や大人気のAKB48の巨大な写真も。

 次の部屋は歌舞伎の世界。
 それと東京ディズニーランドが共存しているのですから
 おもしろい。
 その次は、これぞ篠山紀信
 「BODY」の部屋。
 宮沢りえさんのヌードに代表されるように
 篠山紀信さんが世に送り出してきた肉体の美の数々。
 あ、これがお目当てだね、と勘繰っている人いません?
 なかなかいい線ついていますね。(認めてどうする)
 でも、これは芸術。へんな目では見てません。(たぶん)
 高岡早紀さんや樋口可南子さんの、
 それはそれは神々しいお姿にただただ平服するばかり。

 最後は東日本大震災で被災された人々の
 ポートレイト。
 誰もが撮るような写真ですが
 絶対に私たちには撮れない写真ってすごい。
 そこに写っているのは
 悲しみであり、無念であり、後悔。
 それでいて、明日をじっとみつめている人たち。
 こんな写真を撮る、
 篠山紀信さんて、やっぱりすごい。

 ミュージアムショップには
 篠山紀信さんが今まで出版されたたくさんの写真集も
 販売しています。
 懐かしかったのは
 宮沢りえさんのヌード集『Santa Fe』(1991年)。

Santa Fe 宮沢りえSanta Fe 宮沢りえ
(1991/11)
篠山 紀信

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 確か新聞に全面広告がでました。
 会社で回し読みしたのを覚えています。
 なんだ、やっぱりか、と
 思われた人がいるかと思いますが、
 時代がそうだったのです。(うーむ、言い訳がましいな)

 芸術の秋。
 いい写真は刺激的です。
 ちなみにこの展覧会の入場料は1000円。
 12月24日まで開催されています。

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プレゼント 書評こぼれ話

  東日本大震災から
  今日で1年8ヶ月
  あの日、84人という大きな犠牲者を出した
  石巻市の大川小学校の悲劇は
  依然原因究明がなされていません。
  11月3日、やっと文科省が主導となって
  原因究明を行うことを表明するということが
  発表されました。
  その遅さにあきれます。
  さらに最終報告は来年12月だということです。
  今年ではありません。
  来年。
  真実の究明とは
  なんと時間のかかるものでしょう。
  悲しくなります。
  あの時、
  今日の絵本『津波 TSUNAMI!』にでてくるような
  じじさまがいれば
  多くの命が救われたかもしれません。
  大声で
  「高台へ走れ!」と叫んでいたら。

  じゃあ、読もう。

津波 TSUNAMI!津波 TSUNAMI!
(2011/12)
小泉 八雲、キミコ カジカワ 他

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sai.wingpen  高台へ走れ!                   

 小泉八雲、ラフカディオ・ハーンは日本の近代史の中でももっとも有名な外国人かもしれません。
 「耳なし芳一」などを収めた『怪談』は読んだ人も多いでしょう。
 この絵本は、そんな八雲が書いた「生神様」という作品を米国在住のキミコ・カジカワさんが再話化した作品で、初版が2011年10月ですから、当然東日本大震災のあと、企画されたのではないでしょうか。
 再話の時期はともかく、八雲が書いてのは明治の時代ですから、この時代には津波の恐ろしさは人々の知るところだったのでしょう。
 今回の東日本大震災と比べられることの多い明治三陸地震が起こったのは1896年(明治29年)6月ですから、八雲はその地震のあと、この作品を書いたのかもしれません。
 明治の人々にも「高台に走れ」と叫んだ、村一番の古老の知恵に感銘するところが大きかったのだと思います。

 それから、百年という時間が経って、老人の知恵も八雲の話も遠く追いやられていたことが悔やまれます。あの日、迫りくる津波にもかかわらず、歩みを早めなかった人たち、車という文明の利器を信じきった人たちがいます。
 「高台へ走れ」と、この絵本の中のじじさまは収穫のなった稲むらに火をつけ、村人に逃げることを知らしめます。それは自身の生活を犠牲にする行為でもありました。それでも、じじさまは村人全員を救けます。
 文明は私たちに多くのものをもたらしました。文明のおかげで私たちの生活は楽になりました。しかし、反面じじさまがとった行動を私たちは忘れてしまったともいえます。
 歩く人や車がゆえに立ち往生した人たちを高台へと走らす知恵を失くしてしまったのです。

 それは原発についてもいえます。
 原発のおかげで私たちの生活のあかりは維持されてきたともいえます。深夜でも煌々とつくあかりでどれだけ安心したことでしょう。その一方で、原発の危険性はすべて封印されてきました。
 東日本大震災は、不幸にも東北沿岸の街をなぎ倒し、海へと連れ去っていきました。同時に私たちにもう一度、津波の怖ろしさ、原発の危険性をあらわにしてくれたともいえます。
 そのことをこれからもつなげていかなければなりません。
 絵本にもその力があります。この絵本のように。
  
(2012/11/11 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  川上未映子さんの詩集『水瓶』。
  正直にいうと
  大変書評は書き難かったです。
  多分、今日の書評を読んでも
  意味わからなかったかもしれません。
  抽象すぎて。
  で、ふと浮かんだ
  アングルの「」という絵画を出して
  具象化をはかったつもりなんですが
  どうだったでしょうか。
  川上未映子さんは
  芥川賞作家でもありますが、
  同時に『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で
  第14回中原中也賞を受賞した詩人でも
  あります。
  現代日本文学において
  際立った存在ともいえる作家です。
  まいりました。

  じゃあ、読もう。

水瓶水瓶
(2012/09/25)
川上未映子

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sai.wingpen  すべての夕暮れ                   

 これは、詩集です。
 ただ宮沢賢治とか中原中也の詩集とはおおいに趣きが違います。
 散文詩。
 言葉があふれています。
 そう、確かあれは、19世紀のフランスの画家アングルだったでしょうか。「泉」という代表作がありました。
 正面を向いた裸の少女が肩に掲げて水甕から水を流している作品。裸婦の均整のとれた美しさと水の透明感が印象に残る作品です。
 その作品にこれは近いかもしれません。
 裸の少女は川上未映子。水瓶からこぼれだしているのは、言葉。ことば。コトバ。

 ここには9つの詩が収められています。
 物語があるわけではなく、イメージがイメージに重なり、上塗りし、しかも透明。
 書名にもなっている「水瓶」という詩には、「すべての・・・」という言葉の羅列がなんと7頁近くつづきます。
 「・・・すべての結婚すべてのガラスすべての有意義すべての放送・・・」みたいな具合に。
 それはアングルの「泉」の少女の水瓶から流れ出す水と同じで、永遠にとどまることはありません。

 私たちが言葉を話しはじめるのはいつ頃でしょうか。
 意味のない音声がやがて意味を持つ言葉となる。同時に衣服をまとい、羞恥を知る。裸の少女は裸であることで羞恥から解放され、惜しげもなく水=言葉を流し続ける。
 川上未映子の詩も、また同じような気がします。

 これらの詩に意味など求めてはいけないのかもしれません。
 ただ、じっと見つめる。言葉の透明度をはかるようにして。

 収録されている詩の中では「治療、家の名はコスモス」と「水瓶」がいい。
  
(2012/11/10 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  一時期、
  地方の百貨店で働いていたことが
  あります。
  そこにも商店街があって
  町全体が地盤沈下を憂いていました。
  私は百貨店だけが頑張るのではなく
  商店街もともに頑張らないと
  いけないと思っていました。
  今日紹介する、
  新雅史さんの『商店街はなぜ滅びるのか』の中で
  商店街が誕生した時代、
  百貨店に対抗して
  「横のデパート」と呼ばれたことがあるのを
  知りました。
  いまは対抗の時代ではなく
  協働の時代でしょう。
  大手の資本である百貨店と
  地元の利の商店街が
  うまく合されば
  地方の衰退がとまるかもしれない。
  当然魅力作りが第一ですし、
  雇用の創出も図らないといけません。
  皆さんもこの本で
  商店街について考えてみませんか。

  じゃあ、読もう。  
  

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)
(2012/05/17)
新 雅史

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sai.wingpen  若き社会学者による刺激的な、商店街興亡記                   

 いわゆる「シャッター通り」と揶揄されるほど商店街の凋落は激しい。
 それは地方都市の衰退を象徴する言葉として使われていたが、今や「シャッター通り」は大都市近郊の商店街にもひたひたと忍び寄っている。
 本書は若き社会学者による刺激的な、商店街興亡記だ。
 東日本大震災で被災した石巻の商店街の光景を書き始めた「序章」から、自営業を営む郷里の親の姿を描く「あとがき」まで、読み手を退屈させない一冊といっていい。
 もちろん、あまりに個人的な話になりすぎた「あとがき」を非難する人がいるだろうが、私は等身大の商店、商店街の姿を見せることで、商店街の歴史と今後のありようを問うた内容がより身近に感じられ、好感が持てた。
 商店街の衰退の問題は学術的になりすぎるのではなく、人の温みの問題でもあることを忘れてはいけない。
 著者は「商店街は、商業地区であるだけでなく、人々の生活への意志があふれている場所」と書いているが、単に経済や都市の在り方ではないことを示す、いい言葉だと思う。

 整理しておくと、著者は「「商店街」という理念は評価できるが、それを担う主体に問題があった」という立場である。
 「理念」というのは、商店街がいかにして誕生してきたか、著者はその誕生の姿をきちんと描くことでさも歴史的な伝統をもつ都市の仕掛けではないことから説き起こしていく。
 その後、百貨店やスーパーといった進取の経営体に商店街がどのように対抗していったかということを明らかにし、その「主体」の問題が現代の衰退を招いたとしている。
 また、コンビニという新しい仕掛けが実は商店街の衰退を内部から推し進めた事実も明らかにしていく。

 そこには「家族」や「政治」、「経済」の変遷が多分に影響している。
 誰もがシャッターのおりた商店街の姿を嘆いているが、それだけでは前に進みようがない。これまでの経緯をきちんと検証し、課題を整理することで次善の策がうてる。
 本書はだから刺激的だ。
 できれば、日本の土地の問題、交通網の問題、地方における雇用の問題も論じて欲しかったというのはないものねだりかもしれない。
  
(2012/11/09 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する桜木紫乃さんは
  初めて読む作家です。
  知人から面白いですよと
  紹介されました。
  で、読んだのが
  『ワン・モア』。
  カタカナでのタイトルで少し損を
  しているかもしれません。
  うまくできすぎた物語ともいえます。
  でも、桜木紫乃さんは
  いま人気が高いですね。
  たくさんの人が
  少しでも幸せになれる
  そんな物語を求めているのかもしれません。
  読み終わったら、
  きっと幸せになれたら
  いいですね。
  だから、読書はいいのです。
  きっと。

  じゃあ、読もう。

ワン・モアワン・モア
(2011/11/28)
桜木 紫乃

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sai.wingpen  これは再生の物語                   

 あえて不幸な物語を読む必要はない。
 できれば、最高にハッピーな物語を読みたい。
 もちろん、物語はさまざまな要素を持っているから、幸福だけがすべてではない。生きることの過酷さや平凡さ、それだって読むに値する。人生そのものが多色の糸と編みあがっているのだから、幸福だけで満足することもない。
 けれど、できれば「いい物語だったな」で終わりたいではないか。そんな夢みたいな物語があってもいい。

 桜木紫乃の『ワン・モア』はできすぎたお話かもしれない。
 生死にかかわる重い病を克服して笑顔を浮かべる主人公たちの姿。ハッピーエンド。
 でも、本当に最後に描写された物語は、いくつかの章にわかれた物語の本当の続きなのであろうか。彼ら彼女たち、登場人物たちの夢ではないのか。そんな気さえしている。

 同じ高校でともに将来は医療の道をめざそうと誓った男女三人、鈴音と美和、それと八木。
 ともに優等生だった鈴音と美和だが、性格はまったく違う。だからこそ、何でも相談できる二人。
 鈴音は実家の病院を継ぎ、美和は医療事件で冷たい視線にさらされる。彼女たちに追いつけなかった八木は放射線技師になっている。
 そんな三人の関係に変化が起こったのは、鈴音の発病。しかも余命というレベルの重い病。
 離婚したかつての夫と残された日々を生きたいと願う鈴音。鈴音の後継者として彼女の病院にはいった美和は鈴音の命を救おうとする。若い頃から鈴音に想いを寄せる八木もまた。
 三人の周辺の人たちの愛する心をもまた描きながら、愛することの奇跡を桜木は願ったのだろうか。

 人を愛することはなんと力のいることだろうか。もしかすると、生きることに匹敵するともいえる。
 だから、生きることが奇跡のような行為だとすれば、愛することもまた奇跡であってもおかしくはない。
 「ワン・モア」。
 もう一度、命を生き直すように彼女たちの日々は輝きだすが、それが夢ではないと誰がいえよう。
 それでも、人は、不幸な物語よりもハッピーエンドを願う。そのことを誰が非難できようか。
  
(2012/11/08 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  10月30日、作家の藤本義一さんが亡くなった。
  そこで、今日は
  藤本義一さんが第71回直木賞を受賞した
  『鬼の詩』を紹介します。
  藤本義一
  もうずいぶん以前に読んだ記憶があるが
  今回改めて読むと
  そのうまさに驚きます。
  おそらく受賞時には
  すでに作家としてできあがっていたのだろう。
  藤本義一さんが亡くなったあと、
  毎日新聞の11月1日のコラム「余禄」で
  「直木賞作家として、
  西鶴や織田作之助らの大阪の町人文化の
  流れをくむ文芸の伝統を掘り起こした
」と
  して紹介された藤本義一さん。

  座右の銘は自身の名前義一にかけた
  「蟻一匹炎天下」だったという。
 
  ご冥福をお祈りいたします。

  じゃあ、読もう。

鬼の詩 (講談社文庫)鬼の詩 (講談社文庫)
(1976/12)
藤本 義一

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sai.wingpen  追悼・藤本義一さん - 道頓堀のあかりが涙でぬれている                   

 第71回直木賞受賞作(1974年)。
 この作品は、10月30日に79歳で亡くなった藤本義一さんの直木賞受賞作である。
 大阪の人といえば声が大きく、荒っぽいイメージだが、藤本さんの大阪弁は静かで柔らかく、船場の大店の主人のような落着きがある。大阪にもああいう人はいる。
 藤本さんといえば、やはり昭和40年代の深夜放送「11PM」の司会者として有名だ。
 東京では大橋巨泉さん、大阪では藤本さんが担当した。子どもにはめったに見れない番組だったが、親が寝てからこっそりとテレビのスイッチをいれるのが楽しみだった。もちろん、お目当ては藤本さんではなく、お色気場面だったが、藤本さんにはちっともいやらしさがなかった。スマートだった。
 そんな藤本さんが直木賞を受賞した作品で描いたのは、芸のためなら馬糞まで食べたといわれる、明治末期の大阪芸人桂馬喬(ばきょう)の壮絶な半生だ。
 藤本さんと馬喬とは遠い地平にある。
 しかし、おそらく藤本さんにも馬喬のような風狂があったからこそ描けたのだろうし、藤本さんはそんな芸人魂をこよなく愛した。
 藤本さんの死に大阪の芸人たちが泣き笑いで見送ったのは、藤本さんの愛情があったからこそだ。

 受賞回の選評ではほとんどの委員が藤本さんを推薦している。
 同じ関西の作家として先輩にあたる司馬遼太郎委員は「ぬきんでた作品」と絶賛し、主人公の奇行を「人間の問題のきわどさが、この作品によってよくわかる」と評した。これは司馬氏がいうように、芸人としてのおかしみではなく、人間全体に通じるものといえる。
 また柴田錬三郎委員は「ようやく器用貧乏を脱して、自分独自の鉱脈を発掘した」と、拍手を送っている。
 藤本さんはテレビの司会者という立場からじっと芸人の姿を見つめていたに違いない。そして、芸人のすさまじい生きざまと自身の作家としての生きざまを重ね合わせたのが、この作品に結実したといえる。

 最後は流行り病で崩れた顔に煙管の雁首をぶらさげてまで笑いをとろうとした馬喬。そんな姿を藤本さんはなんと暖かな目で見つめていたことか。
 藤本義一さんの死に、道頓堀のあかりが涙でぬれている。
  
(2012/11/07 投稿)

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 今日の「ほんのニュース」は
 いくつかの新聞で紹介されてたから
 ご覧になった人も多いかも。
 ここでは、11月1日の日本経済新聞の朝刊から。

    図書館の貸出数最多 5.4冊

 これは、2010年度の社会教育調査(中間報告)でわかった数字。
 なんだ、2010年度か、ってがっかりしたあなた、(私もですが)
 この調査は3年に一度らしいので仕方がありません。
 対象は公共図書館3274施設で、その利用状況が
 まとめられています。
 この調査によると、全国の公共図書館が貸し出した本が
 国民一人あたり5,4冊で過去最高になったそうです。
 貸出冊数は延べ約6億6千万冊(すごいなぁ)、
 本を借りた人の数は延べ約1億8千万人(すごいなぁ)。
 いずれも過去最高だとか。

 その要因として、
 「団塊の世代の大量退職で、空いた時間に本を読む人が増えたせい」だとか。
 確かに今、平日に図書館に行っても
 たくさんのおじさんおばさんがいます。
 今まで一生懸命働いてきて
 やっとゆっくり本が読める時間ができたとしたら
 いいことですよね。
 でも、家にいたら奥さんにじゃまもの扱いされて
 特に行くところもなく、
 図書館で時間をつぶしている人も多いのでは
 ないかしらん。

 ほかにも
 一回あたりの貸出冊数の上限緩和とか
 閉館時間が遅くなったことも
 要因にあげられています。
 私がよく利用する
 浦和にある「さいたま中央図書館」では
 一度に30冊まで借りることができますし、
 平日は夜9時まで開いています。
 それになんといっても
 清潔な感じが好き。
 図書館には毎週行きますが
 いつもうっとりしますね。
 それぐらい心地いい空間です。

 最近ではあのTSUTAYA(ツタヤ)が公共の図書館を
 運営することになったり、
 図書館自体にも変化の波がありますが、
 たくさんの人が利用できる
 そんな図書館になればいいのではないでしょうか。
 ところで、いずれ電子書籍も図書館で貸出なんて
 あるのでしょうか。

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日いわむらかずおさんの
  『14ひきのおつきみ』という絵本を紹介しましたが
  今日は「」というタイトルのついた
  「百年文庫」の一冊を紹介します。
  秋はやっぱりお月さま。
  きれいですよね、秋の月。
  「百年文庫」は日本の作家だけでなく
  外国の作家の作品も紹介していますが、
  三作とも外国作家というのは
  珍しい。
  この中で、
  プラトーノフの『帰還』というのは
  ロシア文学ですが、
  どうしてロシアの人の名前って
  長いのでしょうね。
  あれが太郎さんとか花子さんだったら
  雰囲気はかなり違うでしょうね。
  当然だけど。

  じゃあ、読もう。
  

(033)月 (百年文庫)(033)月 (百年文庫)
(2010/10/13)
ルナアル、リルケ 他

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sai.wingpen  月のひかりに人生の深みを感じる                   

 四季それぞれに月の魅力はあるが、俳句の世界では「月」は秋の季語だ。 春は「春の月」と詠まないといけないし、冬は「冬の月」としなければならない。単独で「月」と詠んで秋をあらわすのは、秋の月の清浄さが月本来の情緒を醸しだしているからだろう。
 「百年文庫」の33巻めのタイトルは「月」。この季節に読んでおきたい一冊である。
 収録されているのは、ルナアルの『フィリップ一家の家風』、リルケの『老人』、プラトーノフの『帰還』の三篇。
 すべて外国文学だが、「月」という日本の花鳥風月の風土との違和感はない。

 ルナアルはフランスの作家。代表作は『にんじん』。にんじんと呼ばれる少年を描いた、これが代表作。
 ここに収められている『フィリップ一家の家風』は、『にんじん』と同様に田舎の田園に生きる素朴の人たちを描く作品である。
 そっと射しこむ月の光のように、彼らは強く主張はしないが、どっこい、生きている感じが美しい。
 次に、プラトーノフの『帰還』であるが、戦争から帰還した男イワノフに待っていたのは、平和な妻と子どものはずが、妻の不貞の疑惑とやたらと大人ぶった息子の姿という、シニカルな作品。
 イワノフは妻を疑い、ようやく戻った家を出ていこうとする。そんな父のあとを追う、息子とまだ幼い娘。戦争がもたらした家族の不幸。
 最後に家族のもとに戻ろうとするイワノフが月の光なのか。それとも、この家族の姿こそが月のかすかな光なのか。

 この巻でもっとも短い作品ながら、もっとも印象深かったのが、リルケの『老人』だった。訳は、森鷗外。
 リルケといえば青春文学の代表作ともいえる『マルテの手記』を書いた作家であり、詩人でもある。
 この物語の主人公は75歳の一人の老人。彼は「昔の悲しかった事や嬉しかった事」などいろんなことを忘れている。ただ、日というものだけはわかっているようだ。だから、毎朝市の公園の、菩提樹の下のベンチに腰掛けるのを日課にしている。
 そのベンチには、彼よりも年上の老人が二人いつも座っている。彼ら三人の老人のふるまいは普通の人からみると滑稽だ。しかし、誰が彼らのことを笑えるだろう。いつか私たちも彼らのように、老いていく。
 ほんの短い作品ながら、生きることの悲哀と尊厳がにじんでくるような佳作だ。
 
 月のひかりに人生の深みを感じる。
  
(2012/11/05 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  秋は月が美しい季節。
  先日も満月の白い月が天空にあって
  夜なのに煌々と明るい。
  おもわず、帰宅途中の足をとめて
  見入ってしまいました。
  今日はそんな季節にぴったりの、
  いわむらかずおさんの『14ひきのおつきみ』を
  紹介します。
  おなじみの14ひきのねずみたちのシリーズです。
  このシリーズのいいところは
  季節季節に作品があるところ。
  私にとっては
  歳時記のような絵本です。
  今回も秋の夜長にぴったり。
  きっと、
  あなたも「おつきみ」がしたくなるに
  ちがいありません。

  じゃあ、読もう。
  
14ひきのおつきみ (14ひきのシリーズ)14ひきのおつきみ (14ひきのシリーズ)
(1988/06/25)
いわむら かずお

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sai.wingpen  月がそおっと「おやすみなさい」とつぶやくのを聞いたのは誰                   

 月にウサギがすんでいるって聞いたのは、いくつの時だったろうか。
 それも、お餅をついているという。
 確かに、月を見ると、ウサギがお餅をついているようにも見える。
 そんなおかしな月の模様が実は巨大隕石の衝突跡という発表が、先日はされた。
 なんだ、つまらないという人もあるだろうが、私たちはすでに人類が月面に降り立った姿を見ている。ウサギなんかいないということは知っている。
 むしろ、巨大隕石が衝突して、どんな衝撃があったのか、まるでハリウッド映画を観るような、そんな衝撃に今はロマンを感じる。

 おなじみいわむらかずおさんの「14ひき」シリーズであるが、今回は「おつきみ」。
 だけど、最初からどこかおかしい。大きな木のまわりで、14ひきのねずみの一家が何やらしている。
 高い幹にぶらさげたゴンドラですいすい。そこから先ははしごをとんとん。「どんどん のぼっていく、たかく たかくのぼっていく」。
 何してるのかな、大好きなねずみたちは。
 一面明るい陽光が降り注いで、大きな木の葉っぱはいきいきしてる。
 ねずみたちは、まだまだどんどん登っていく。

 今度は木の枝で何やら作りだした。家族総出で、えっちらえっちら。
 いわむらさんのこのシリーズの魅力はねずみたちの表情が豊かなこと。これはいっくん、あれはとっくん。それぞれ指さして、知っていることが自慢でたまらない。
 ようやく完成したのは、「おつきみだい」。
 この台の上で、14ひきはお月見をするのだ。

 やがて、陽が沈み、山は真っ赤に燃え始める。そして、夜がひろがって・・・。
 わぁー、満月だ。
 大きな月を背景に14ひきのねずみたちの後ろ姿がとってもきれい。
 それまでの賑やかな音が、一瞬静まる。
 そして、月に祈る彼らの表情を俯瞰する絵の、厳かなことといったらない。

 巨大隕石が衝突したって、月は月。いつも美しく、気高い。
 今宵、14ひきのねずみたちは「おつきみだい」の上で静かに眠る。
 おやすみなさい。月がそおっとそうつぶやくのを、誰かが聞いた。
  
(2012/11/04 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は文化の日
  お休みの人も多いかな。
  こんな日は友達誘って
  おでかけという人もいるでしょうが、
  どこで待ち合わせします?
  今日紹介するのは三浦しをんさんの
  『本屋さんで待ち合わせ』。
  そのものズバリ。
  三浦しをん、本屋さん、ときたら
  本好きの人となら飛びつくんじゃないかな。
  しかも、装丁画がいい。
  担当したのは、スカイエマさん。
  いいですね。
  それで、この本が書評集で、
  本好きの人にとっては
  パーフェクトですね。
  おでかけしない人は
  家でこの本でも読んでみるのも
  いいですよ。
  仕合せの、文化の日です。

  じゃあ、読もう。


本屋さんで待ち合わせ本屋さんで待ち合わせ
(2012/10/06)
三浦 しをん

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sai.wingpen  少し遅れてもかまいませんよ                   

 あなたはどこで待ち合わせします?
 駅の改札とかカフェでしょうか。ホテルのラウンジなんかでかっこよく決めたいという気持ちもありますが、やはり本屋さんが、私は好きですね。
 相手の人が遅くなっても、目の前にはたくさんの本が。待っててもいらいらしない。でも、あまり変な本の前なんかで来ちゃったら、困る。できたら、三浦しをんさんの本の前なんかだったら、いいのですが。

 『舟を編む』で2012年度の本屋大賞を受賞して今や人気絶大の三浦しをんさんの、これは書評集。
 本や漫画を読んでたら一歩も外にはでたくないというほどの本好きの三浦さんだけあって、しかも三浦さんは「ピンとこなかったものについては最初から黙して語らない」方針をもっていて、ということはここに収められた本の数々は三浦さんにピンときたもの限定といえます。
 読み手の気分がのっているから、書評が面白いのは当然です。

 印象に残ったのは、太宰治のいくつかの作品について語っているもの。
 今や太宰のことをこんなにりっぱに熱く語る人はいないのではないでしょうか。大好きだけど、人にはそっけなくというのが太宰ファンの標準的な規格だと思いますが、三浦さんの好きなものは好きという態度は素晴らしい。なんと純な。
 それは中島敦についての文章にもいえる。「穏やかに澄み渡った、永遠に動きやむことのない波のように。」なんて、かなりきどって書かれた最後の文章は、三浦さんがのりまくって、高揚したままに書いた文章そのもので、普通はこんなに生なものは書かない、あるいは少なくとも推敲の時には削ってしまうものだと思う。
 三浦さんは素直なんだぁ。
 書き手というより、純粋に読むことを楽しんでいます。

 「ひとによっていろんな読みかたができるから、本や漫画はおもしろい」と三浦さんは書いています。だから、書評を全面的に信じるのではなく、読み手(あなたも私も)が楽しめばいいのです、本や漫画というのは。
 できれば、手塚治虫文化賞の審査員までされた三浦さんですから、もっと漫画本の書評もいれてほしかったなぁ。
  
(2012/11/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は昨日紹介した
  金益見さんの『性愛空間の文化史』に先立つ著作、
  『ラブホテル進化論』を
  蔵出し書評で紹介します。
  2008年8月に書いた書評です。
  この時、金益見さんはまだ「女子大学院生」。
  だから、この時はけっこう話題になりました。
  しかも、美人。
  そんな彼女が、ラブホテル!?
  このギャップがいいのでしょうね。
  風俗レポーターの中年おじさんが書いても
  話題ににもならなかったかも。
  それにしても、
  この書評、過激なタイトルをつけたものです。
  もっとも私は気にいっていますが。

  じゃあ、読もう。

ラブホテル進化論 (文春新書)ラブホテル進化論 (文春新書)
(2008/02)
金 益見

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sai.wingpen  キミはラブホテルに行ったことがあるか                   

 「現役女子大学院生による(ラブホテルの)本格研究」いう帯の惹区が目立つ、話題の一冊である。
 帯には若くて綺麗な著者の写真もついている。
 これを言い換えれば「現役(まだ若いということ)女子(ラブホテルというかなりHなものを能動態の男子ではなく受動態の女子がということ)大学院生(しかもインテリといわれる種族がということ)による(ラブホテルと、多分多くの人がHでいかがわしいと思われている空間及び産業のことを)本格研究(まじめに勉強しましたということ)」ということになるのだと思う。
 それに証明として著者の写真までつける念の入れようである。
 男性週刊誌によくある<現役○大生のヌード>にさりげなく添えられた学生証みたいなものかもしれない。

 でも、それって著者にとって幸せなことなのだろうか。
 売上げ的にはそうやって販促企画を練った方がいいだろうし、期待通り話題にもなって売れたことだろうけど、書き手としてはいささか悩むところだろう。
 あるいは、本書はあくまでもきっかけであり売れることがまず大事と思うものかしら。
 しかし、著者のために少し書いておくと、決してまったく薄っぺらな論理が展開されているというわけではなく、やはり現役の(そう若い人の)視点が散見されるし、女の子なりの感性もあることはある。
 でも、いくつかの章でやっぱり腰のすわりがよくない。本書で紹介されている「スケベ椅子」(本書95頁には写真口絵がある)に座っているような感触だ。

 著者は「はじめに」で、ラブホテルをこう定義している。
 「ラブホテルとは、宿泊もできる貸間産業の一つであり、おもにカップルが利用するための密室空間を提供している施設」である、と。
 しかし、その進化が「堂々たる日本の文化」と呼ぶに至る考察が弱い。
 もし、そう呼ぶとすれば、日本のモータリゼションの進化と土地の価値変遷をもっと追求すべきではないか。
 そのあたりが当事者からの聞き書きだけでは不十分すぎる。
 その一方で情報誌が果たした役割という観点では及第点がつくだろう。あの切り口はなかなか新しい。
 97年に創刊された情報誌『TOKYO・一週間』のラブホ特集には、当時驚いた記憶がある。そういうことから考えれば、ラブホテルと雑誌の歴史というのはさらに考察されていい、テーマのような気がする。

 さらにいえば、何故ラブホテルが日陰的な扱いをうけてしまうかという点を見逃してはいけない。
 それこそ、日本文化に関することかもしれないが、日本における性の有り様、つまり性そのものがタブー視されているということ、がもっと議論されるべきだ。
 そうした場合、他人と接することが最小限ですむラブホテルという施設がなぜ多くのカップルに使われていたかが見えてくるような気がする。
 性は他人から隠すものであるという日本の文化が。

 今日もだれかが人けのないホテルのロビーで、明かりのついたタッチパネルから部屋を選んでいるに違いない。
  
(2008/08/01 投稿)

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  今日から11月

   菊の香よ露のひかりよ文化の日  久保田万太郎

  文化の日も近いとあって、
  ちょっと教養高く、
  文化史なるものを今日は紹介します。
  といっても、大人向け、かな。
  金益見(きむ・いっきょん)さんの
  『性愛空間の文化史』。
  副題が「「連れ込み宿」から「ラブホ」まで」。
  つまり、ラブホテルと現在では呼ばれている
  宿泊施設を、
  休憩施設でもありますが、
  徹底研究したもの。
  文化の香り高い!?
  興味深く、読むことができました。
  こういう研究を女性がするというところに
  金益見さんのエラさがあります。
  面白くて
  タメになる一冊です。

  じゃあ、読もう。

性愛空間の文化史性愛空間の文化史
(2012/09/30)
金 益見

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sai.wingpen  商談にも最適                   

 この本、副題にあるように「連れ込み宿」と呼ばれていた時代から「ラブホ」と明るく呼ばれる現在までのいわゆる何をするところの文化史、を読んで、昭和30年代や40年代の少しさびれた旅館の看板に「ご商談にも最適」とあったのは、男と女の性愛は駆け引きという点ではまさに「ご商談」だったことに気付かされた。それに金銭のやりとりが本当に発生する「ご商談」もあったにちがいない。

 前作『ラブホテル進化論』は「現役女子大学院生」による大胆な本と話題になったが、あれから四年経って、著者も今ではりっぱな「性愛空間」研究者だ。
 「性愛空間」と書くとなんだか淫靡な響きがあるが、これもりっぱな文化だし、それも私たちの暮らしに案外近い文化だといえる。
 戦後間もない頃、「連れ込み宿」が大いに利用された背景には狭い家の中での性行為が困難だったという住文化の深刻な事情もある。
 著者の住居の関係で、どうしても資料・図版(昭和30年当時の新聞広告)が関西圏寄りになっているのが残念といえば残念だ。

 若者向けの情報誌に「ラブホ特集」まで掲載されるようになった現在の若い人には笑われそうだが、ひと昔前はこの種の宿泊施設には必ず温泉マークがついていたものだ。
 くらげを逆さにしたように見えるところから「さかさくらげ」と呼ばれた
 。地図記号としてこのマークを使用していたが、これではよくないと地図記号そのものが変更になった。地図記号まで変えてしまうほど、庶民の力は強いといえる。

 「ラブホ」と呼ばれる「ラブホテル」だが、これはいつごろからそう呼ばれたのか。
 著者は、1969年に東大阪に開業した「ホテル・ラブ」の屋上に設置されていた回転広告塔があって、ホテル名が回っているところから、後ろから前に呼ばれるようになった定説(!)を紹介しているが、これなどは関西人特有のノリのような気がする。むしろ、この語感は関東の感じがするのだが。

 巻末にある、幕末から始まる「ラブホテル年表」は著者渾身の労作である。
 年表をみながら、常に進化し続ける空間のありようにただただ感心する。
  
(2012/11/01 投稿)

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