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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  葉室麟さんの時代小説『この君なくば』。
  葉室麟さんの作品は
  直木賞受賞後、まめに読んでいますね。
  好きですよね。
  当たりはずれが少なく、
  どの作品もいい。
  この作品もまたしかり。
  書評には書きませんでしたが
  ヒロインの栞の恋敵も
  登場するのですが
  この彼女、いいところで
  主人公たちを助けるいい役どころ。
  葉室麟さんの作品は
  NHKがドラマにすると
  合いそうな気がします。
  それとも
  もうどこかで実現しているのかな。

  じゃあ、読もう。

この君なくばこの君なくば
(2012/10/05)
葉室 麟

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sai.wingpen  待つ心                   

 時は幕末。多くの藩が勤皇佐幕で揺れ動いていた時、九州・日向の伍代藩もまた時代の渦中にある。
 楠瀬譲は軽格の生まれながらその才によって今や藩を支えるまでになっている。そんな譲を恋い慕うのは、かつて彼が学んだ此君堂の娘、栞。
 本作の題名『この君なくば』は、王羲之の「何ぞ一日も此の君無かるべけんや」からとられているが、塾の名もまたしかり。
 葉室麟の得意とする、忍ぶ恋、待つ恋が、この作品でも巧みに描かれている。

 譲は一度は結婚するが妻を早くに亡くして今は小さき娘と母との暮らし。栞もまた父を亡くして母との二人で暮らしている。
 譲の再婚話に心中穏やかではない。栞は小さい頃から譲に憧れていた。一度は捨てた譲への想いであったが、栞はまた待つしかない。
 しかし、譲もまた栞への想いがあり、物語の前半は二人の行く末が中心となる。

 譲と栞はやがて結ばれるのだが、時代はそんな二人に襲いかかるように急変していく。
 大政奉還、討幕の戦いに譲も参戦し、栞のもとを離れなければならない。さらに、幕府側と通じていたという嫌疑で譲は捕えられてしまう。
 また離ればなれになる二人。さらには罪人の夫をもったことで、栞にも過酷な運命が訪れる。

 葉室の筆は幕末の動乱期であっても静かだ。
 この作品には多くの竹の風情が描かれているが、その竹のさやかに揺れる様のように、大きく乱れることはない。そのあたりが葉室の魅力といっていい。
 いうならば、大人の作風だろう。
 そのせいか、譲も栞も時代にのみ込まれているはずであるが、心が急くことはない。
 それは互いを信じているということでもある。一度は叶わないと思われた恋が実ったこともあるだろうし、待つ心を持っていたということでもある。
 こういう大人が少なくなってきた現代で、葉室の作品が好んで読まれるのもそういう理由だろう。

 「あきらめず、望みを捨てなければきっと、失ったものでも、あなたのもとに戻りましょう」。そんなせりふに続いて、「竹林は風にそよいでいる」と、葉室は書いている。
  
(2012/11/27 投稿)

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