プレゼント 書評こぼれ話

  またまた月末になってしまいました。
  「向田邦子全集」の紹介が。
  まるで借金のとりたてに
  来月こそはきちんと月なかでお返ししますと
  謝ったのに、
  やっぱり月末返済になった感じです。
  反省しています。
  いやいや、あんたの反省は聞き飽きた。
  いったいこれからどうするつもりか
  そこのところをはっきりさせてくれないと。
  こっちは善意で金貸してるんじゃないよ。
  いやはや。
  困りました。
  こっちも遅れるつもりじゃないのですが。
  来月、来月こそはきちんと
  月中でお返ししますから。
  ということで、
  向田邦子さんのエッセイ『女の人指し指』を
  楽しみ下さい。

  じゃあ、読もう。

向田邦子全集〈10〉エッセイ6 女の人差し指向田邦子全集〈10〉エッセイ6 女の人差し指
(2010/01)
向田 邦子

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sai.wingpen  小さな嘘のうまい人はホームドラマをお書きなさい                   

 「向田邦子全集<新版>」の10巻めは、「エッセイ六」となる。
 昭和56年に「週刊文春」に連載された『女の人差し指』やテレビドラマについてのもの、妹和子に任せた小料理屋「ままや」の開店に至る日々を綴った「「ままや」繁盛期」、さらには旅好きの向田らしく日本のところどころやモロッコやアフリカの紀行文が収められている。
 この巻の表題ともなった『女の人差し指』だが、これからエッセイを書きたいと思っている人にはとても参考になる名篇ぞろいといっていい。
 本全集のページ数にして1篇あたりが5~6ページの作品で、エッセイとしては少し長めといっていい。
 その中で、向田がとった手法は、一つの題材を描くのではなく、複数のそれをつなげていくものだ。

 例えば、最初の「チャンバラ」と題された作品では、まず箸とナイフ・フォークの話を書き、そのあと少女時代に「女の子は女の子らしく」遊ぶことを強いられた思い出を綴り、風間完の絵を褒め、最後はチャンバラでまとめている。
 起承転結の見本のような構成である。
 話の展開、変換がうまいから、読んでいて少しも違和感がない。どころか、読み終わったあと、何か得した気分さえ残る。
 少し長めのエッセイを書く際には、参考になるにちがいない。

 ところで、このエッセイを向田はどうして「女の人差し指」としたのだろうか。
 これから話すことに賛成納得同意満足した人は「この指たかれ」の人差し指なのか、それともわざわざ「女の」と書いたくらいだから、人差し指をふりまわす怖い女性をイメージしたのか。
 案外、頬に人差し指をあてて憂いている女性の姿だったりして。

 向田の主戦場となったテレビドラマ、ホームドラマについては、こんな名言を書いている。
 「大きな嘘のつける人は政治家におなりなさい。小さな嘘のうまい人はホームドラマをお書きなさい」。
 向田の作品に登場する人々もけっして大きな嘘をつける人ではなかった。作者向田がそうであったように。
 もしかしたら、「女の人差し指」は、アッカンベーをする際に目元をさげる指のことだろうか。
  
(2013/01/31 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  1月もあと2日。
  私の気分としては
  長く感じた1月です。
  12月のスピードの半分くらい。
  どうしてかな。
  お休みが多かったせいでしょうか。
  まあ、時間の感覚って
  人それぞれですから
  いやあ、あっという間の1月でしたという人も
  いるでしょうね。
  待ちに待った東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズですが
  この一年、どんなに首を長くして
  待ったことか。
  これも、えー、もう出たの、と思う人もいるはずで
  時間とはなんと不思議で、
  奥深い哲学かと
  東海林さだおさんの「丸かじり」で
  いつも感じている次第です。
  おおげさかなぁ、
  やっぱり。

  じゃあ、食べよう。

レバ刺しの丸かじり (丸かじりシリーズ35)レバ刺しの丸かじり (丸かじりシリーズ35)
(2012/12/20)
東海林さだお

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sai.wingpen  魚(おっと)は妻を慕いつつ                   

 一日千秋、という言葉がありますよね。
 とっても待ち遠しいこと。千秋というのは千年という意味で、けっして先週から待っていましたということではありません。
 大阪にだんじり祭りで有名な泉州という地域がありますが、あのあたりの人はだんじりが大好きで単身赴任していても祭りには帰るといいます。そのことを一日泉州とは、もちろんいいません。
 私が一日千秋の思いで待っていたのが、東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズの最新刊。
3 5巻めとなるご長寿シリーズですが、東海林さだおさんの箸、ちがった、筆は変わらずお達者。
 今回も、東京の新名所スカイツリーあり、「柿の種誕生物語」あり、昨年話題となった「レバ刺し最後の日」ありのてんこ盛りです。

 中でも私が注目したのは、「妻という字にゃ勝てやせぬ」。
 このシリーズは食のエッセイですから、ここでいう妻とは刺身についているツマ。大根とか紫蘇とかを総称してツマといいますが、それが妻という漢字をあてるなんて知らなかったですね。
 東海林さんを疑うわけではないですが、ネットで調べちゃいました。
 けっして疑ってした行為ではなく、信じて下さいね、東海林さん。(こういう状態をしどろもどろっていいます)
 つまり、あれは主たる料理のそばに置かれているので夫婦の関係をもじってツマとした説と料理の端に置かれているので「端」が転用されたものという説があるそうです。
 その夫婦関係を東海林さんは見事に研究されているのですが、でもですよ、奥さんが強い家なんてざらにあるじゃないですか、だったら、刺身が妻で、大根の方が亭主だっていいわけですよね。
 つまり、人によっては、アレは刺身の旦那とも呼ばれるのです。呼ばれないか、やっぱり。
 そこで、東海林さんが思いつかなかった説をここで発表したいと思います。
 浪曲「壺坂霊験記」ってご存知ですか。
 知りませんって。
 ここでは知らなくてもいいので先に進みますが、その中に「妻は夫をいたわりつ、夫は妻を慕いつつ」という一節があるんですね。これです。
 この夫とは魚のことではないかというのが、私の説。
 「おっとっと」という魚の形をしたお菓子がその証拠。
 けっこういい線いってると思うのですが。いかがでしょう、東海林さん。

 こんな風に自由気ままに遊べるのが、「丸かじり」シリーズの特長であります。
  
(2013/01/30 投稿)

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 昨年の最後の記事で
 「007」のことを書きましたが
 覚えていますか。
 忘れてる?
 仕方がないなぁ。
 もう一ヶ月前になりますものね。
 では、復習。
 昨年、2012年は「007」ことジェームズ・ボンドの映画が作られて
 50周年になった年。
 一番初めが1962年の「007 ドクター・ノオ」。
 日本で公開された時の題名は「007は殺しの番号」。
 この時のボンド役はショーン・コネリー

 それから50年。

 最新作は23作めの「スカイフォール」。
 ボンド役はこれで3作めとなるダニエル・クレイグ
 ブログで全23作制覇しましたと自慢しました。

 そんな私にピッタリのムックが出ました。
 それが「007 コンプリートガイド」(マガジンハウス・1429円)です。
 今回の「雑誌を歩く」では、この雑誌を歩いてみます。

007 COMPLETE GUIDE: 007コンプリートガイド (マガジンハウスムック)007 COMPLETE GUIDE: 007コンプリートガイド (マガジンハウスムック)
(2012/11/30)
マガジンハウス

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 まずは表紙のボンド(ショーン・コネリー)のかっこよさといえばどうでしょう。
 おすぎさんとピーコさんではないですが、
 男でも惚れぼれしちゃいます。
 なんといっても、足が長い。
 とっても、長い。
 ボンドといえばショーン・コネリーさんを思い浮かべる人は
 多いと思います。
 胸毛までかっこいいですよね。

 最初の記事は映画評論家の佐藤睦雄さんが書いた
 「Mr.キスキスバンバンの魅惑」。
 このMr.キスキスバンバンというのはジェームズ・ボンドの愛称ですって。
 私は知りませんでした。
 「女にはキスを、男には銃口を」、そんなボンドのモットーらしい。
 私なら、走るボンドも印象深いので、
 Mr.キスキスバンバンランランとつけますね。
 でも、これだと ♪雨あめ降れふれ、母さんが・・・ぴちぴちちゃぷちゃぷらんらんらん、
 みたいかな。

 キスといえば、ボンドガール。
 当然、この雑誌ではボンドガールのオンパレード。
 いやぁ、なんといいますか、どの女性にしようか迷ってしまいます。
 別に誰もあげるって言ってないのですが。
 以前このブログでも書きましたが、
 私はエヴァ・グリーンがお好み。(21作めの「カジノ・ロワイヤル」のボンドガール)
 全部の作品を観たから一度はこの美女たちを
 拝見したはずなのに、
 こうして並べられると、もう一度会いたくなりますね。
 本当に、もう。

 そのほか、「映画の主題歌」(これはこれでスゴイんだから)とか、
 「Qの秘密兵器」、「楽しい悪役」とか
 楽しい記事が満載。
 何よりも「全作品徹底解剖!!」がうれしい。
 最新作の「スカイフォール」の記事も堪能できますよ。

 今度いつジェームズ・ボンドに会えるか。

    JAMES BOND WILL RETURN

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プレゼント 書評こぼれ話

  「分厚い本」が苦手です。
  何しろ通勤時にもって歩くには
  「分厚い本」は一苦労です。
  だから、長編小説そのものが苦手ともいえます。
  ある時、私は長編小説はすたれていくのかと
  考えたことがあります。
  時間におわれる現代人にとって
  時間をかけて本を読むなんてとんでもない、と
  思ったのです。
  でも、ちっとも「分厚い本」は減りません。
  どころか、どんどん「分厚い本」が
  増えているという印象があります。
  そこに、電子書籍の登場です。
  これからは「分厚い本」なんて存在しなくなります。
  500頁の本も、上中下の3巻ものも
  電子書籍ではへっちゃら。
  時代はやっぱり変化してますね。
  今日は『分厚い本と熱い本  毎日新聞「今週の本棚」20年名作選』(丸谷才一池澤夏樹・編)を
  紹介します。
  もちろん、編者の丸谷才一さんに愛をこめて。

  じゃあ、読もう。

分厚い本と熱い本 毎日新聞「今週の本棚」20年名作選(2005~2011)分厚い本と熱い本 毎日新聞「今週の本棚」20年名作選(2005~2011)
(2012/11/20)
丸谷 才一、池澤 夏樹 他

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sai.wingpen  丸谷才一さんの願ったもの                   

 丸谷才一さんが亡くなって、3冊分冊のシリーズ「毎日新聞「今週の本棚」20年名作選」の最終巻はどうなるのか心配していましたが、ちゃんと「丸谷才一/池澤夏樹・編」として刊行されて、ほっとしています。
 毎日新聞の書評欄に込めた思いは、丸谷才一さんにとっても忘れ難いものだったはずですから。
 しかし、残念ながら2012年11月に刊行されたこの本に丸谷さんの新しい文章は、掲載されていません。もし、丸谷さんが生きていたら、このシリーズ最後の巻にどんな思いを綴ったのでしょう。
 もちろん、この巻は2005年から2011年に毎日新聞に掲載された書評が収められていますから、丸谷さんの珠玉の書評はちゃんと愉しめます。

 「あとがき」を担当したのは、もう一人の編者池澤夏樹さん。
 その文の中には、丸谷さんの訃報は触れられていません。執筆の時期の関係があったのかもしれませんが、私は池澤さんがあえてそのことに触れなかったような気がしています。
 「今、ぼくと丸谷才一さんはようやく全三巻の選を終えんとする段階に達した。感無量である。」という池澤さんの書き出しの、「感無量」は丸谷さんへの賛辞の思いが込められてはいないか。
 池澤さんの中では、この書評欄をつくるにあたって尽力をつくし、最後まで書評家として現役でありつづけた丸谷さんを文章の中とはいえ、死なせてはいけないという、悔しい思いがあったと思います。
 この本の中では、丸谷さんは生き続けているのです。
 あの素敵な笑顔をとともに。

 それにしてもたくさんの本が紹介されているものです。
 「自分が読んだことがある本の書評に出会うと、そうかこういう深い読みがあるかと感心し、知らない本の書評を読むとその本が読みたくなる」と池澤さんは書いていますが、それでこそ書評の本質をついています。
 丸谷さんはいなくなったけれど、本があるかぎり、書評もまたありつづけるのです。
 それが、丸谷さんが作った、この国の書評文化です。

 この3巻めには、全3巻で取り上げられた書籍と著者編者の索引がついています。
 もちろん、評者別の索引もあります。評者を大切した丸谷才一さんならではの配慮ではないかしらん。
  
(2013/01/28 投稿)

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  先日(1.14)の成人の日に
  関東地方に降った雪は
  あらかた溶けてなくなりましたが、
  今日紹介するレイモンド・ブリッグズ
  『ゆきだるま』を読むと、
  次の朝、これとそっくりのゆきだるまを
  作ったら、よかったなぁと残念です。
  きっと子供たちも
  喜んだでしょうね。
  この『ゆきだるま』はご存じの方も
  多いと思います。
  原題の「スノウマン」として
  映像化されていたようにも
  思います。
  私は娘たちが小さい頃に
  読んであげた記憶があります。
  娘たちも大好きな絵本でした。
  雪が降って
  困った人もたくさんいるでしょうが、
  この絵本で少しほっとなってみるのも
  いいですよ。

  じゃあ、読もう。

ゆきだるま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)ゆきだるま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
(1978/10)
レイモンド・ブリッグズ

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sai.wingpen  太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。                   

 成人の日の休日、東京にかなりの雪が降りました。
 記憶に残る成人式と喜んだ人もいれば、せっかくの晴れ着が台無しという人もいたと思います。
 雪国の人からするとあれぐらいの雪で何を大騒ぎしているのかと笑われそうですが、交通機関もマヒ状態になりました。転んでケガをした人もたくさんでました。次の朝、雪かきに汗を流した人も多かったのではないでしょうか。
 雪の苦労を雪国の人はうんと知っています。特に若者たちがいなくなった村では大変です。
 それでも、雪には心をときめかす何かがあります。わくわくするような思いと心を鎮めるものが同居しているように感じます。

 雪を描いた絵本はたくさんあります。
 その中でも、この『ゆきだるま』はたくさんの子どもたちに愛されつづけている名作といえます。
 自身が子どもの頃に読んで、また自分の子どもにも読んであげている人も多いかもしれません。(初版は1978年とあります)
 この絵本の魅力はなんといっても、その絵でしょう。(実際この絵本には文はありません)
 綿毛のような大雪がふわりふわりと降ってくるそのままの、柔らかいタッチがなんともいえません。

 大雪の降った朝、一人の男の子が庭に大きなゆきだるまを作ります。蜜柑の鼻、炭の目、男の子は指できゅっと大きな口を描きます。
 そして、夜。男の子はそっと寝床を抜け出して、ゆきだるまを家に招待するのです。
 幻想的で楽しい、一つひとつの場面に、子どもの頃の夢をみるような思いです。
 ゆきだるまと食事をしたり、空を飛んだりするのを、馬鹿げた子どもの夢と一蹴してしまうのは簡単です。でも、それは本当に馬鹿げた夢なのでしょうか。
 私たち大人は、そんな夢を見ることをどこかに置き忘れてきたのかもしれません。
 現実的には雪は生活を困難にさせるものかもしれませんが、この絵本のゆきだるまのように私たちの心を豊かにしてくれる、夢の結晶でもあるような気がします。

 雪といえば、思い出す詩があります。
 「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。/次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」という、「雪」と題された三好達治の、短い詩です。
 この『ゆきだるま』にも、この詩と同じ世界があります。
  
(2013/01/27 投稿)

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  益田ミリさんの人気漫画
  『すーちゃん』がついに映画化されますね。
  タイトルは「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」。
  主人公のすーちゃんを演じるのは柴咲コウさん。
  まいちゃんには真木ようこさん、
  さわ子さんは寺島しのぶさん。
  そうそう、アニメではなく実写版なんですよね。
  すーちゃんと柴咲コウさん。
  イメージあいますか。
  ちょっと出来すぎかな。
  意外も意外は、
  さわ子さん役の寺島しのぶさん。
  私はかなりイメージが違うっていう感じ。
  寺島しのぶさんは大好きですから
  寺島しのぶさんが悪いんじゃなく、
  ここは違うかなと思っただけで。
  作品も観ていないのに
  ごめんなさい。
  監督は御法川修さん。
  3月に公開だそうですよ。
  今日紹介するのは
  シリーズ4作めの『すーちゃんの恋』。
  今回もいいですよ。

  じゃあ、読もう。

すーちゃんの恋すーちゃんの恋
(2012/11/09)
益田 ミリ

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sai.wingpen  すーちゃんってこんなひと                   

 益田ミリさんの「すーちゃん」シリーズの4冊目。今回は主人公すーちゃんの切ない恋が描かれます。
 すーちゃんを知らない人にプチ知識。
 すーちゃんの本名は、森本好子。そういえば、亡くなった元アイドルグループキャンディーズのメンバーのすーちゃんは田中好子さんでしたね。
 好子さんって、全国的に「すーちゃん」と呼ばれてるんでしょうか。余談ですが。
 年令は37歳。「エーッ、すーちゃんってもうそんな年なんだ」と思った人は、長年の「すーちゃん」ファンですね、きっと。ご自身もそれだけ年令を重ねていることをうっかり忘れてることってよくありますよね。これも、余談ですが。
 出身は鹿児島。鹿児島の女性の気質は、しっかり者らしい。
 もともと男尊女卑の根強い国だったらしくて、女性は控え目で真面目。もっとも根性は座っているようです。すーちゃんを見てると、結構メゲたりしますが、最後は自分をしっかり見ています。そのあたりは鹿児島の女性らしいのですかね。

 持っている資格は、調理師免許。
 この巻では以前働いていてお店を辞めて、保育園の給食調理師としてがんばっています。
 意外なのは、そろばん4級。普通だったら、3級まで取りますよね。どうして4級でやめたのかわからないけど、すーちゃんらしいといえば、調理師より、そろばんの方かも。
 趣味は料理。保育園の給食調理師になったすーちゃんは子どもたちに楽しんで食べてもらおうと、家に帰っても勉強熱心。趣味を生かしています。
 友人はそんなに多くはない。親しいのは、さわ子さんとまい子さん。
 さわ子さんは41歳で未婚。すーちゃんが結婚で悩んでいる以上に、さわ子さんの方がもっと深刻。「子供を産まない人生なら、あたしの生理ってなんのためにあったんだろ」なんて、ため息をつく。男性読者にとっては、ドキッとするようなせりふ。
 「すーちゃん」シリーズは女性に人気だけど、男性諸君、さわ子さんのこの名言忘れてはなりませぬぞ。
 まい子さんは一児の母。だけど、これでいいのかなぁ、と悩みはつきない。

 さて、問題の一項目。
 すーちゃんは独身。好きな人? います、います。
 以前働いていたお店の近くにあった本屋さんの店員の土田君。33歳ですから、すーちゃんより年下。しかも、恋人あり。あれれ。すーちゃんつらいよね。
 というわけで、プチ知識ですまなくなりました。
 すーちゃんの切ない恋は、本書で、じっくり。
  
(2013/01/26 投稿)

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  先日(1月19日)、昭和の大横綱大鵬さんが亡くなりました
  「柏鵬時代」と呼ばれた相撲の黄金期を
  支えたヒーローです。
  大鵬さんと柏戸さんは
  柔と剛で、ライバルとしては
  これに勝る関係はなかったと思います。
  今日は大鵬さんが生前
  日本経済新聞に連載した「私の履歴書」を単行本化した
  『巨人、大鵬、卵焼き―私の履歴書』を
  紹介します。
  私が子供の頃は
  相撲は今のサッカーに匹敵する
  人気スポーツでした。
  男の子なら
  一度は相撲をとったのではないでしょうか。
  私もしましたね、いつも負けてばかりでしたが。
  大鵬さんが亡くなった次の日の新聞は
  多くの紙面を追悼記事にあてていました。
  大鵬さんが人気があったというだけでなく
  時代のヒーローだったからでしょう。

  ご冥福をお祈りします。

  じゃあ、読もう。

巨人、大鵬、卵焼き―私の履歴書巨人、大鵬、卵焼き―私の履歴書
(2001/02)
大鵬 幸喜

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sai.wingpen  追悼・横綱大鵬 - あなたは優雅な白鳥だった                   

 勝敗を決するスポーツには誤審はつきものだ。
 野球やサッカーといった人気競技だけでなく、国技といわれる相撲の世界にも誤審はある。
 中でも、「世紀の大誤審」と呼ばれたのが、昭和44年春場所二日めの大鵬と戸田との勝敗だ。この時、大鵬は45連勝中。
 立ち合いから戸田の強烈な攻めにたじたじとなった横綱大鵬は土俵を回り込む防戦一方の勝負となった。そして、ついに押し出されたのだが、戸田の足が先に俵を出ていたのが今も写真ではっきり見ることができる。
 しかし、大鵬はこの勝敗について、自ら自身の半生を綴ったこの本の中でこう語っている。
 「横綱がああいう物言いのつく相撲を取ったのが悪いのだから仕方がない」と。
 昭和の名横綱といわれた大鵬だから残せた、名言である。

 昭和30年代、この本の書名のように「巨人、大鵬、卵焼き」と囃された第48代横綱大鵬が1月19日に亡くなった。
 巻末の年譜をみると、大鵬が永遠のライバルと呼ばれた柏戸とともに横綱に昇進したのは昭和36年だ。
 当時私は6歳の少年だったが、このニュースは記憶に残っている。それほど大鵬は子供たちに人気があったし、だから、「巨人、大鵬、卵焼き」と子供が好きなものを並べた言葉が流布されたのだろう。
 ただ、当事者の大鵬はこの言葉が嫌いだったという。
 本書から引用する。「いい選手をそろえて強くなった巨人と、裸一貫、稽古、稽古で横綱になった私が何で一緒なのかと考えてしまう」と書いている。

 この本には、子供の頃からの苦労や相撲界にはいってからの稽古の厳しさが綴られているが、大鵬の魅力はそれがうかがいしれなかったことにあるといっていい。
 白系ロシア人を父にもった大鵬の端正な容姿、大きくはあっても柔らかな体躯、ゆるやかな動作など、まるでそこには稽古の苦労など少しも感じさせない。
 大鵬は、水面下では懸命に足掻きながらも私たちには優雅としか見えない白鳥のようであった。
 大鵬はたくさんの苦労話をこの本で語っているが、優雅な白鳥でいいのではないか。努力家であったのは事実だろうが、天才と呼ばれていいのではないか。
 それが、私たちの記憶の、大鵬なのだから。

 本書は日本経済新聞の連載コラム「私の履歴書」を加筆し、出生から「還暦の土俵入り」までの半生をおさめた自伝だが、横綱大鵬の土俵入りをもう一度見てみたいと思うのは昭和で育った人間だからだろうか。
  
(2013/01/25 投稿)

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  今回の「百年文庫」は
  59巻めの「」。
  吉田健一牧野信一、それに小島信夫の3人の
  短編が収められています。
  いずれも純文学と呼ばれる範疇の作品ですが
  どうもしっくり来なかったですね。
  こういう時は書評も書きにくい。
  この「百年文庫」シリーズは
  各巻3人ずつの書き手の作品が収められているのですが
  どちらかといえば
  純文学系の作品が多いかな。
  初めて読む作家に接するという点では
  なかなか異色のシリーズなのですが
  時々難解すぎて
  読み込めない時もあります。
  だから、今日の書評のタイトルにした
  「「客」もさまざま」は
  今回の作品の感想としては
  正直な気分。
  作品もさまざま。

  じゃあ、読もう。
  
客 (百年文庫)客 (百年文庫)
(2011/01)
吉田 健一、小島 信夫 他

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sai.wingpen  「客」もさまざま                   

 「千客万来」という言葉は、ひっきりなしが客が訪れることを指すが、飲食店などによく飾られているのは店主の願望が込められているのだろう。
 「百年文庫」59巻めの収録作家の一人吉田健一の父吉田茂の家などは、もちろん飲食業を営んではいないものの、陳情相談根回し暗躍もろもろの「千客万来」だったにちがいない。
 「客」と一口にいっても、おとなしい人ばかりではないだろうし、珍客酔客など招かれざる客も多々混ざるので、迎える側としても気苦労は絶えない。
 「客」という表題でまとめられたこの巻には、吉田健一の『海坊主』、牧野信一の『天狗洞食客記』、小島信夫の『馬』の短編3篇が収められているが、ここでも奇妙な「客」の姿が描かれている。

 もっとも奇妙だったのが、小島信夫の『馬』だろう。
 小島は『アメリカン・スクール』で第32回芥川賞(1955年)を受賞した作家だが、これはその前年に発表された作品だ。
 ある日妻が家の建て替えを申し入れる。いささか精神疾患の気配のある「私」の部屋の階下に馬を住まわせるというのだ。そのことで「私」はさらに病気が重くなっていく。これは「私」の妄想なのだろうか。馬が「客」になどなるはずはない。
 「私」に訪れる客は、精神という名の客ではないか。
 ほとんど夢のような、現実感の希薄な作品であった。私には。

 その反対にあるのが、吉田健一の『海坊主』。
 ある夜、銀座の料理屋で出くわした背の高い男。その飲みっぷりに意気投合して、主人公と男はそのあとも何軒かはしごをするはめになる。酒だけではなく食べっぷりも尋常ではない。最後には川っぷちの料理屋まで辿りつく。最後に、男はやおら立ち上がって川に飛び込むが、水に浮かびあがったのは、大亀の頭だった。
 これなどまるでありえない幻想的な話ながら、まったくとんでもない異界の話でもないように感じた。店の名前など具体的な表現がそう思わせるのだろうか。
 ありそうでないのが小島の作品ならば、なさそうであるのが吉田のそれだ。

 牧野信一は私には初めての作家だった。収録されている『天狗洞食客記』は、小島の作品のように精神を病んだ男がそれを治すために人里離れた「天狗洞」の食客となって修行に励むといった内容だが、師匠である男もその弟子である女も、すべてが異界の住人のようでとりとめない作品だった。

 嫌な客には早く退散願いたいものだ。
  
(2013/01/24 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は経済のニュースから。
  昨日日銀が2%物価目標導入を決定しました。
  何それ?って思った人、
  さっそく新聞を読んで下さいね。
  それでもわからない人は
  小宮一慶さんの『小宮一慶の経済のことが面白いほどわかる本』を
  読んでみて下さい。
  ところで、最近の安倍総理の顔を拝見すると
  自信にみなぎっていると感じるのは
  私だけかな。
  少なくとも
  先の政権の最後あたりの野田総理の表情よりは
  明るいですよね。
  さらに閣僚たちも同じ。
  勝ったものの強みともいえますが
  政権奪取後の経済の好転が
  この人たちの、今の自信なんだろうな。
  人を前向きにさせるのは
  やはり成功事例なんでしょうね。
  でも、株式にしても為替にしても
  現政権がこれからもどう舵取りしていくかで
  変わるのでしょうね。
  よくお手並み拝見といわれますが
  さあ、どうなるのでしょうね。
  私たちの給与って本当に上がるのかなぁ。
  眉につばにならないように願いますよ。
  今日は今の時期にぴったりの一冊です。
  
  じゃあ、読もう。

小宮一慶の経済のことが面白いほどわかる本小宮一慶の経済のことが面白いほどわかる本
(2012/12/07)
小宮 一慶

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sai.wingpen  日銀が2%物価目標導入を決定                   

 昨年暮れの政権交代からあれよあれよという間に、株式は上昇、歴史的な円高傾向は一気に円安へとふれた。
 先の政権は何だったのか、これならもっと早くに政権を戻すべきだったのではないかと思う人も多いのではないだろうか。
 少なくとも現政権の閣僚たちの一言ひとことに経済が動いているのは、私たちをひっぱっていく力を感じる。
 しかし、本当にそうなのだろうか。
 米国の財政事情、欧州危機の潜在性、中国経済のゆくえなどといった諸般の事情が相俟ってものだろう。今後どのような方向に経済が進むかは、政治家や経済人に任せるのではなく、私たち自身も勉強していかないといけない。

 経営コンサルタントの小宮一慶氏のこの本は、時宜にかなった経済入門書といえる。
 最近よく耳にする「インフレターゲット」という言葉であるが、この本の中で小宮氏は「1%」が妥当としている。
 現政権がしきりに「2%」といっているが、これは今に始まったことではなく2012年春にも自民党は「2%」発言をしているようで、小宮氏は「少しでも経済のことを知っている人なら、こんな発言をするなんてあり得ない」とまで書いている。
 その理由は本書を読んでもらうといいが、まるで「2%」を人質にとられた格好の日銀はどうでるだろうか。

 難しそうと感じるかもしれないが、この本が難しいのではなく、経済そのものが動くものであることや私たちがよく理解できないために混乱していることが、経済が難しいものという誤解を生んでいるかもしれない。
 この本ではイラストを多用したり、小宮氏から直接講義を聞いているような問答形式の表記にしたりと、わかりやすくまとめられている。
 また、最後には「日本経済のこれからを考えよう!」というPARTで、小宮氏の考える方法がいくつか紹介されている。
 面白かったのは、「国内産業を育成する」という提案で、それは私もその通りだと思うが、例としてボーイング787の技術をあげていることだ。最近この機種に問題が多発していることを思うと、経済というのはまさに刻々と変化し、動いていることがよくわかる。
 さすがに執筆時期が今ならこの例示はしなかったのではないだろうか。
 そういうことも含めて、経済を楽しめる一冊だ。
  
(2013/01/23 投稿)

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  父が亡くなって1年になります。
  冬が始まる前に大阪の実家に帰った際に
  形見わけというほどのことはありませんが
  父が生前着ていた何着かの服を
  もらって帰りました。
  父の体型に合うのは
  私しかなく、
  それも驚くくらいぴったりと合います。
  父の遺影で着ている服も
  今は私が着ています。
  それもなんだか妙な気分ですが。
  晩年自分で着るのも何十分もかかるようになった
  父でしたが、
  あまり好みを口に出すことはありませんでした。
  それでもお気に入りはあったようで
  何日も続けて着ている姿も
  たびたび見ました。
  今日紹介するのは
  辻原登さんの『父、断章』という短編集ですが
  私にとっては
  お気に入りの服を着て
  だまってテーブルに座って
  はにかむように笑っていた父の姿も
  断章のひとつなのです。

  じゃあ、読もう。

父、断章父、断章
(2012/06/29)
辻原 登

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sai.wingpen  作家とはそういうものです。                   

 父が亡くなって、一年になります。
 父のことを、この作品集の表題となった短編『父、断章』のように書くことはないでしょうが、それを描ける技術をもった作家という人たちをうらやましく思わないでもありません。
 あるいは、この短編集に同時に収められた『母、断章』にあるような幼い頃の家族の小旅行を描ける贅沢も作家だけに与えられた特権かもしれません。
 父があることで騙されて苦汁をなめたことや父に叱られたことなど、どんな家族にも経験があるでしょう。あるいはせっかくの家族旅行に怪我をして父母を落胆させるようなことも珍しいことではありません。
 家族によってはもっと劇的な話を秘めていることもあります。
 書くということは、感傷だけではなく、普遍化し、伝えることです。
 作家とはそういうものです。

 辻原登のこの短編集には私小説的な『父、断章』、『母、断章』だけでなく、幻想的な作品『午後四時までのアンナ』や脱獄犯の事実を巧みに重ね、最後にはドンデン返しまで用意された『チパシリ』、歴史小説『虫王』など、7つの短編が収められています。
 そのどれもが、作家としての企みに満ちた名品だといえます。
 作家であることは、どのような題材にしろ、それを読ませる技量が必要です。辻原はそれを見事に実践してみせてくれます。
 書くということは、あきさせてはいけません。先に何があるのだろうかと期待させなければなりません。
 作家とはそういうものです。

 これらの作品を読みながら、昨年亡くなった丸谷才一のことが頭をよぎりました。
 丸谷は徹底して生きている人間を描き続けました。ゴシップといわれるようなこともうまく混ぜ合わせて、登場人物の息遣いを描こうとしました。あるいは、作品の中に知的企みをいれることを愉しみのようにしていました。
 神戸にある一軒のバーを舞台に谷崎潤一郎と佐藤春夫の微妙な関係を浮き彫りにした『夏の帽子』は、丸谷才一が得意とした物語作りによく似ています。
 丸谷才一という大きな損失は、辻原登という後継者で埋められていくような気がします。
 書くということは、知的な作業を読者と共有させなければなりません。
 作家とはそういうものです。
  
(2013/01/22 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  大阪に帰るたびに
  従姉妹から「あんたは本が好きなんやから
  いっぺんは青空書房に行ったらええで」と
  勧められていました。
  何分出不精なもので、足を運ぶことはできないのですが
  今日紹介する本は
  その「青空書房」の店主坂本健一さんの
  『夫婦の青空』です。
  先日、父の一周忌に帰省した際に
  兄からもらいました。
  もちろん、出所は従姉妹たちでしょうが、
  それが彼女たちの父(私の叔父さん)にいき、
  叔父さんから兄、
  そして私に届きました。
  愛を伝えるのが難しいように
  いい本を伝えるのも難しい。
  それが、この一冊はみごとに
  伝わりました。
  このブログを通じて
  もっと広がればいいのですが。
  余談ですが
  従姉妹と書くと若くて美しい女性を
  思い浮かべますが
  私の従姉妹は・・・
  もちろん美しいと、書いておきます。
  叱られるので。

  じゃあ、読もう。

夫婦の青空 (きずな新書)夫婦の青空 (きずな新書)
(2012/10)
さかもと けんいち

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sai.wingpen  ほんじつ休ませて戴きます                   

 大阪キタの繁華街にほど近い町の商店街に、定休日になると人が集まる不思議な古本屋さんがあります。
 古本屋さんの名前は「青空書房」。
 店主は、この本の著者さかもとけんいち(坂本健一)さん。1923年生まれですから、今年90歳になります。
 何故この古本屋さんの定休日に人が集まるかというと、その日には坂本さん自筆による定休日案内のポスターが貼られるからです。
 「ほんじつ休ませて戴きます」と大きく書かれたそばに、毎回坂本さんの思いが短く綴られます。
 「夢を捨てたらあきまへん/エンドまで勉強です」「春です/心ときめく季(とき)/ちょっぴりいけない本を読もうかな」といった具合に。坂本さんのイラストもはいります。
 私のお気に入りは「誰だって頭のうしろは見えません/それを見せてくれるのは本を読むこと」。
 もしかすると、定休日にわざわざ「青空書房」の店の前に立って、坂本さんのポスターを見に行く人たちも見えない頭の後ろを見たいからかもしれません。

 この本はそんな「青空書房」の人気の定休日案内ポスターの数々を紹介しているだけではありません。
 坂本さんが奥さんに宛てた「家庭内通信」も紹介されています。何度も「いとしき妻へ」と書かれた、これはラブレターそのものです。
 ひとつ屋根の下にいながら、どうして「家庭内通信」を始めたのか、坂本さんは奥さんのやきもちがきっかけだったといいます。
 あることで奥さんが口をきいてくれなくなったそうです。そこで坂本さんはチラシの裏を利用して伝えたい思いを書き始めます。
 そもそもがそういうきっかけの「通信」だったのですが、奥さんが病気になったあと、毎日のように病室に届けられます。
 愛を伝えることは誰だって苦手です。
 大阪のオッサン坂本さんもそうだったにちがいありません。
 しかし、いつしか坂本さんは愛を伝えることの名人になっていきます。だから、何度もなんども「いとしき妻」と書けたのでしょう。

 それと同じことが「青空書房」の定休日のポスターにもいえます。
 本を愛する人に、本を読んでもらいたい人に、坂本さんは伝えたいものをたくさん持っているのです。坂本さんにとって、そんな人たちはみんな「いとしき」人なのではないでしょうか。

 ある日の「ほんじつ休ませて戴きます」に、坂本さんはこう書き添えました。
 「いのちとはなんでしょう/あなたと出逢うこと/そして 一冊の本との出会い」と。
  
(2013/01/21 投稿)

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  日本経済新聞の土曜日版には
  「しごと図鑑」という記事が掲載されています。
  色々な仕事がありますよね。
  昨日紹介されていたのが
  「パン職人」さん。
  ちょっと紹介すると、
  いつもパンばかり食べていないそうです。
  当たり前か。
  どんな勉強でなれるかというと
  この記事で紹介された人は
  専門学校で学んでパン屋さんに就職したそうです。
  粉の袋を運んだりするので
  体力が勝負だとか。
  あれ、なんでこんな話を書いたかというと
  今日紹介するのが
  長谷川義史さんの『パンやのろくちゃん だからね』だったから。
  パン屋さんになりたい人は
  せひこの絵本も参考に。
  参考になるかなぁ。
  ならなくても、おいしい絵本です。

  じゃあ、読もう。

パンやのろくちゃん だからね (おひさまのほん)パンやのろくちゃん だからね (おひさまのほん)
(2012/11/13)
長谷川 義史

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sai.wingpen  ごちそうさまのしるし                   

 パンが大好きだ。
 朝昼晩、パンでも文句はいわない。三日はもつ。
 あんパン、チョコレートパン、クリームパン、むしパン、サンドイッチ、なんでもいい。
 パンやさんも好き。
 店の前を通ると香ばしい匂いがおいでおいでをする。あれは美女の魔の手より悩ましい。
 だから、この絵本の題名でもうコロリ。『パンやのろくちゃん だからね』。
 しかも、大好きな長谷川義史さんの作。
 パンやさんに、ちがった、本やさんに走りました。

 パンやのろくちゃんは幼稚園児。おとうさんはりっぱな口髭をはやしたパン屋さん。
 ろくちゃんが幼稚園のいも堀遠足でもらってきたおいもを使って、おいもパンをつくってくれます。
 ろくちゃんにはおじいさんがいます。
 子どもの日にはしょうぶ湯にはいることを教えてくれる、やさしいおじいさんです。お風呂やさんに行くと、不思議なインド人のおじさんがいて、しりとりで遊んでくれます。
 ろくちゃんにはちょっぴり好きな女の子がいます。名前は、ゆきちゃん。
 ろくちゃんはお泊り学習でゆきちゃんにかっこいいところを見せようとしますが、みんな失敗。最後はおねしょまでしてしまいます。
 ろくちゃんの住む街には気のいいさかなやさんのおじさんもいます。
 ろくちゃんが作った雪だるまをちゃんと冷蔵庫の中にしまってくれます。

 みんな、パンやのろくちゃんが好きなんですよね。
 でも、それってもしかしたら、ろくちゃんがパンやさんの子どもだからかな。
 いいえ、ろくちゃんがかわいい子どもだからです。
 パンのようにふっくらしたほっぺをした子どもだからです。
 パンのように元気のいい匂いがしているからです。

 長谷川義史さんのだじゃれも楽しいし、溌剌とした元気のいい絵もいい。
 題名の最後についた「だからね」は、まるで口のまわりについたあんパンのあんこのようです。
 でも、どんな意味があるのかな。
 もしかして、ごちそうさまのしるしかな。
  
(2013/01/20 投稿)

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  大手家電メーカーの「追い出し部屋」の
  ニュースが巷で話題になっている。
  仕事は簡単なもの、
  リストラとは会社もいえないから
  難しい名前を付けた部署。
  実態は退職促進だという。
  会社が危機に陥ると、
  早期退職だとかこういった追い出しまがいの
  処遇が大手をふるう。
  つまるところ、
  会社が倒産しては元も子もないという
  悲しい現実。
  私もかつてはそういう危うい会社にいたから
  早期で辞めていった多くの人たちを
  見てきたし、
  自ら退職の道を選んだ若い人たちも
  知っている。
  ひとつの会社がすべてではないが
  辞めたあとの現実は厳しい。
  ましてや50歳を超えたら
  転職先などほとんどない。
  今日紹介する
  村上龍さんの『55歳からのハローライフ』は
  そんな中高年の現実を描いた
  小説だが、
  小説にしても身につまされる。
  会社だけではない。
  家庭にもリストラされないように
  気をつけないと。
  中高年必読の一冊だ。

  じゃあ、読もう。

55歳からのハローライフ55歳からのハローライフ
(2012/12/05)
村上 龍

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sai.wingpen  限りなく憂鬱に近いグレイ                   

 この本を本屋さんの店頭で見かけた時、てっきり「55歳からのハローワーク」だと勘違いしてしまった。何しろ村上龍さんには大ヒットした『13歳のハローワーク』という作品があるくらいだ。
 ハローワークっていえば、13歳よりは55歳の方が現実的である。だからといって、あまりにも短絡的な勘違いだった。
 笑えるが。
 この本、ちゃんといいますね、『55歳からのハローライフ』は中高年の男女を主人公にした連作中編集だ。
 村上龍さんが『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞を受賞したのが1976年だから、それからおよそ40年近くなる。あの作品で若者の風俗を描いた村上さんだが、こうして中高年の姿を描くようになった、そのことに感慨深いものがある。
 当時村上さんがこのような作品を描くなど、誰が想像しただろう。
 時代は変わった。
 変わったというのが妥当かどうか、少なくとも村上さんの、この国の、橋の下をたくさんの水が流れたことは確かだ。

 夫と離婚し新たな相手を探そうとする女性を描いた『結婚相談所』、ホームレスになる不安を持った男がホームレス状態のかつての同級生と出会う『空を飛ぶ夢をもう一度』、早期退職で会社を辞めたもののそれ以降の生活や転職活動に悩む男の姿を描いた『キャンピングカー』、会社をやめ家にいる夫とそりが合わず愛犬に愛情を注ぐ女性の切ない姿の『ペットロス』、中高年の淡い恋を描く『トラベルヘルパー』の、5篇。
 そのどれもが現在(いま)の中高年が迎えている危機であり、苦悩ともいえる。
 夫がいて、妻がいて、息子や娘たちは独立し始めている。年金の支給時期が延長され、再雇用制度で若い年下のものから指図される。早期退職という誘惑にはまったものの、隠居するにはまだまだ元気だ。
 それが現在(いま)の平均的な中高年の姿かもしれない。
 その姿を憐れむのでもなく、同情するのでもない。淡々と描きうる作家としての力量は、経済問題にも詳しい村上さんならではこそといえる。

 一番身につまされたのが『キャンピングカー』という作品だった。
 会社を辞めたあと夫婦でキャンピングカーに乗って日本中を旅したいと夢みていた主人公。しかし、その夢は相棒だったはずの妻から拒否される。夫は長年の暮らしの中で妻にも別箇の人格があることを見失っている。「誰にも自分の時間を持っている」という簡単な事実。
 中高年の端くれとして、この作品集は重い。
  
(2013/01/19 投稿)

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  「精選女性随筆集」全12巻の
  この本が最終巻になります。
  11巻めの向田邦子集」はまだ
  未読ですので、
  できるだけ早く紹介しますね。
  先回りしたこの最終巻は
  石井好子さんと沢村貞子さんの集となります。
  私は特に沢村貞子さんの文章に
  強くひかれましたね。
  この人の本もっと読みたいなと
  思いましたから。
  こういう選集には
  そういった次の読書へと誘う
  効果があるような気がします。
  ちなみのこの巻の解説は
  平松洋子さんと川本三郎さんという
  豪華なメンバーです。
  ほら、読みたくなったでしょ。

  じゃあ、読もう。

精選女性随筆集 第十二巻 石井好子 沢村貞子精選女性随筆集 第十二巻 石井好子 沢村貞子
(2012/12/05)
石井 好子、沢村 貞子 他

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sai.wingpen  軽やかであると同時に豊かな情感                   

 小池真理子さんと川上弘美さんという、現代を代表する女性作家二人の選による「精選女性随筆集」(全12巻)の、これが最終巻である。
 書評家の池上冬樹氏はこの随筆集を「全十二巻には明治から平成までの女性の人生と生活の歴史がつまっている」と評している。
 たしかに、この随筆集で取り上げられた18人の女性たちはさまざまだ。作家はもちろん、児童文学者、女優、歌手と幅広い。異性に対する思いも硬軟だ。
 それは選者の二人にもいえる。もしかしたら、それぞれが選考した書き手たちを入れ替えると、選ばれる作品も違ったものになったかもしれない。
 しかし、少なくとも、選者の二人も含めて、女性としての特有の感性があることは間違いない。
 女性の時代になったなんて到底まだいえないかもしれないが、女性たちが発言する場所は増えている。そのことをしっかり受け止めないといけない。
 その意味で、全12巻に及ぶ随筆集の意味は大きい。

 最後の巻となった本書には、シャンソン歌手として有名な石井好子さんと名脇役として昭和の時代を駆け抜けた沢村貞子さんの随筆が収められている。選者は川上弘美さん。
 天は二物を与えずとよく言われるが、石井さん沢村さんともにそれぞれの職業で名を成しつつも、名エッセイストとしての誉れも高い。
 二人の文章の良さはともに歯切れがいいことだろう。特に沢村貞子さんはちゃきちゃきの下町娘の歯切れの良さが文面を生き生きとさせている。
 そして、二人とも複数回の離婚経験を持ちながら、泣き言をいわず、男と対等でありつづけたということだ。
 沢村さんの「献立日記」はご主人のために作られたものだからそれを対等といえるのかと思われる読者もいるだろうが、その意思において、沢村さんはご主人に決して隷属していない。むしろ、別箇の人格として向き合っている。
 それは本書にも収められている『老いの道づれ』の中から選ばれた数篇を読めばわかる。

 川上弘美さんは二人の文章を「軽やかであると同時に豊かな情感」と書いている。それは、母性そのものではないだろうか。
  
(2013/01/18 投稿)

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 第148回芥川賞と直木賞が決定しました。
 そこで、今日は「ほんのニュース」はもちろんこの話題で。
 毎日新聞のネット記事から。

    芥川賞 最年長75歳黒田さん 直木賞は朝井・安部2氏
  
 昨夜の選考会では
 まず芥川賞が決まりました。
 受賞作家としては、第70回(1974年)に61歳で受賞した森敦さんの記録を
 大幅更新したと、決定後まもなく大きな話題となりました。
 森敦さんのことを少し書くと、
 森敦さんが芥川賞を受賞したのは『月山』という作品。
 この作品は芥川賞受賞作でも10本の指にはいる名作。
 受賞時にはあの太宰治などと親交のあった新人作家みたいなことを
 言われていたように思います。
 森敦さんのその最年長記録をあっさり破ったのが
 黒田夏子さん。
 受賞作は『abさんご』。
 どんな作品なのか、
 今から読むのが楽しみです。

何者何者
(2012/11/30)
朝井 リョウ

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 そうこうしているうちに
 直木賞が決定。
 こちらは男性作家最年少で、初の平成生まれという
 朝井リョウさんの『何者』と
 安部龍太郎さんの『等伯』。
 どうも話題が黒田夏子さんと朝井リョウさんに偏りそうなので書いておきますが
 安部龍太郎さんの『等伯』は日本経済新聞に連載されて好評を博した作品です。
 でも、やっぱり話題に中心にふれたくなるのが人情。
 朝井リョウさんは23歳。
 芥川賞の黒田夏子さんとは52歳の差。
 おばあちゃんと孫。
 なんて、書けば失礼ですね。
 ごめんなさい、黒田夏子さん。
 でもですね、
 このお二人の間に57歳の安部龍太郎さんが立てば
 まるで家族総出の絵柄。
 でも、やっぱり黒田夏子さんには失礼ですね。
 ごめんなさい。

 いずれこのブログでも
 ご家族の、ちがった、3人の作品を紹介しますので
 気長にお待ち下さい。

 なにはともあれ、おめでとうございます。

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プレゼント 書評こぼれ話

  『はだしのゲン』の第2巻めです。
  原爆が投下されたあとの数日間が
  描かれています。
  死体から蛆(ウジ)がわき、
  それがハエとなって
  ゲンにまとわりつく場面など
  漫画とはいえ
  酷な描写です。
  もちろん、それが真実なのですから
  中沢啓治さんは
  ひるむことはありません。
  当然子どもたちにも理解できるでしょうが
  できればお父さんやお母さんと
  一緒に読むのがいいのでは
  ないかと思います。
  ゲン 表紙
  一緒に読んで意見をいいあう。
  そんな読み方がこの『はだしのゲン』には
  合います。

  じゃあ、読もう。

はだしのゲン (第2巻)はだしのゲン (第2巻)
(1988/04)
中沢 啓治

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sai.wingpen  涙という雨にうたれて                   

 梶原一騎原作川崎のぼる漫画で一世を風靡した『巨人の星』は私も夢中になった漫画ですが、連載開始の頃の絵柄は従来の少年漫画そのものでした。連載が進むにつれて、川崎のタッチは劇画的になっていきます。
 滂沱の涙や目の中の炎はともかく、コマのひとつひとつが繊細になっていったのがよくわかります。
 それは同じ時期に人気となった『あしたのジョー』でも同じです。
 ちばてつやの漫画は本質的に少年漫画ですが、後半その線は劇画と呼んでもいいものに変わっていきます。
 『巨人の星』の連載時期は1966年から1971年、『あしたのジョー』は1967年から1973年ですから、1970年頃を境にして少年漫画も劇画の潮流に呑み込まれていったといえます。
 中沢啓治さんの『はだしのゲン』も、原爆という重いテーマの漫画ですが、1973年に少年漫画誌に発表されたことから、その漫画タッチは劇画的といえます。
 原爆で一面焼け野原となった広島の街でたたずむゲンの姿や夕日に向かって歩くゲンの後ろ姿など、川崎のぼるの『巨人の星』を彷彿とさせます。
 テーマはともかく、中沢もまた当時の流れを組んだ漫画を描いたのです。

 第2巻めとなる「麦はふまれるの巻」は、第1巻の終わりで描かれた昭和20年8月6日の原爆投下からあとの話が描かれています。
 家の下敷きとなった父、姉そして弟の進次。ゲンは母とともに生きる決意をしますが、父たちの死を認めたくありません。
 街中に死体や負傷者のあふれる中で、母は女の赤ちゃんを出産します。
 母の食事を求めて、焼けただれた街を歩くゲン。さまざまな死を目撃します。いつしか、ゲンの毛髪も抜けています。原爆症の発症です。
 それでも、ゲンはくじけることをしません。
 『はだしのゲン』の魅力は、そんな主人公ゲンの明るさといえます。

 焼けあとから父たちの遺骨を見つけ出して、死を受け入れざるをえないゲン。避難先の母の友人の家でひどい蔑みにあうゲンと母と生まれたばかりの妹。
 2巻めの最後のコマに中沢はこう記しました。
 「生きのこった多くの人が 悲しみのつらい涙を 各地で ながしつづけていた」と。
 ゲンは、また歩きだします。
  
(2013/01/16 投稿)

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  今日紹介するのは
  百田尚樹さんの『「黄金のバンタム」を破った男』という
  ノンフィクション作品です。
  百田尚樹さんは
  今とっても人気のある作家ですから
  その作品を読んだ人も
  多いのではないでしょうか。
  私はこれが初めての作品です。
  この作品を読んだあと、
  YouTube
  ファイティング原田さんの当時の試合の様子を
  見ましたが、
  その小気味いい動きにあらためて
  驚きました。
  多分私もTVでそんな試合を
  見ていたはずですが
  今見てもすごい迫力です。
  ノンフィクション作品としても
  抜群に面白い出来栄えです。

  じゃあ、読もう。

「黄金のバンタム」を破った男 (PHP文芸文庫)「黄金のバンタム」を破った男 (PHP文芸文庫)
(2012/11/17)
百田 尚樹

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sai.wingpen  世界チャンピオンが8人だった時代                   

 時代は、いつもヒーローを求めている。
 特に、昭和という時代はそれが強かったような気がする。
 本書の主人公、ボクシングのファイティング原田もまさに時代が求めたヒーローの一人だ。
 作者百田尚樹は今最も人気のある作家だが、学生時代にはボクシング部に籍を置いていたというから、私たちが感じる以上にボクシングというスポーツの核心を身体で理解していると思われる。だから、ファイティング原田の試合の経過描写も簡潔ながら映像を観るように分かりやすい。
 この作品のひとつの魅力といっていい。

 それよりもボクシングというスポーツの時代背景をきちんと押さえている点が小気味いい。
 本書の主人公ファイティング原田は間違いなく1960年代の国民的ヒーローだったが、現代の人たちから見た場合、彼がどれだけの力を持った世界チャンピオンであったか理解しにくい面をもっている。
 今私たちが知っているボクシングの世界チャンピオンは17の階級とそれを認定する4つの団体それぞれにある。世界チャンピンといっても実に50人以上が存在する。
 しかし、ファイティング原田がヒーローだった時代はわずか8つの階級があるだけだった。
 世界で、たった8人の世界チャンピオン。
 百田はこの作品の中で何度もそのことに触れている。
 ファイティング原田はそんな時代にあって2階級制覇を成し遂げた、いや疑惑の判定がなければ3階級制覇という偉業を達成した世界チャンピオンだったのだ。

 強いだけではなかった。ファイティング原田が活躍した1960年代はようやく家にテレビが普及し、誰もが日本経済の復興を夢み、願った時代でもあった。貧しさから這い上がって世界チャンピオンに挑むボクサーたちの姿に、多くの日本人が自分と重ね合わせていた。
 昭和という時代が今でも強い磁力を持っているのは、そういった成長の姿が著しいからだともいえる。
 本書は、単にファイティング原田というボクサーの姿を描いたノンフィクションではなく、彼を中心にした時代そのものを描いているから面白いのだ。

 表題の「黄金のバンタム」というのは、ファイティング原田が挑戦し世界チャンピオンを勝ち取った対戦相手エデル・ジョフレの代名詞のこと。
 ちなみに、百田はファイティング原田のことを「鋼鉄の意志を持った男」と称賛している。
  
(2013/01/15 投稿)

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  今日は成人の日

   祝ふかに成人の日の鶴舞へり  清水基吉

  新成人の皆さんに
  ぴったりの本を見つけたので
  今日はそれを紹介します。
  絵本です。
  えーっ、絵本!?って
  がっくりしないで下さい。
  とても素晴らしい絵本です。
  あべ弘士さんの『新世界へ』。
  この絵本を今日紹介できること、
  それが私にはとてもうれしい。
  この絵本ほど
  今日の日にぴったりの本は
  ないのではないかしらん。
  新成人の皆さんは
  この絵本の最初のページに出てくる
  若い鳥たちです。
  これからたくさんの苦難が
  待ち受けているでしょう。
  でも、その長い旅こそが
  皆さんの人生です。
  ぜひ、この絵本とともに
  新世界をめざして下さい。

  じゃあ、読もう。

新世界へ新世界へ
(2012/11/13)
あべ 弘士

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sai.wingpen  高く飛べ 低く進め 前へ行け                   

 『あらしのよるに』で一躍人気絵本作家になったあべ弘士さんがあの旭川動物園で25年間働いていたのは有名な逸話です。
 動物園では白鳥やガン、カモといった鳥類の飼育係をしていたといいます。
 それだけの経歴があれば、その道の専門家を歩むのが一般的でしょう。
 でも、あべさんは絵本作家の道を進もうと決意しました。もちろん、動物たちと接してきた経験が絵本を描く上でも活かされました。
 あべさんの描く動物たちはみんな優しいのは、あべさんの視点が愛情に満ちているからでしょう。

 この絵本はあべさんが2011年に北極を旅した時の経験から生まれました。
 主人公は「カオジロガン」の家族です。巻末のあべさんの解説によれば、この鳥は南の越冬地をめざして、3000キロも遠い「約束の地」へ、一ヶ月近く飛び続けるそうです。
 その姿を描いた雄大な作品です。

 成長した「カオジロロガン」の子どもたちがお父さんやお母さんを一緒に生まれた地を飛び立ちます。
 時には「高く高く かぎ」のような隊列になり、時には「低く低く さお」のようになって、彼らは飛びます。 白い雪におおわれた大地、冷気に研ぎ澄まされた山々、彼らは星星の川を渡り、大きな波のしぶきをかぶります。
 なぜ、彼らは長い旅をしつづけるのでしょう。なぜ、彼らは苦難な日々を選ぶのでしょう。
 それは、彼らの宿命だといえます。
 彼らの目は一途に前を向いています。「新世界」を見つめています。
 その姿に、あべさんは深い感動を受けます。そして、そのことを絵本に込めたのです。

 「カオジロガン」の旅の途中で、「たくさん」の群れが彼らを追い越していきます。
 ページいっぱいに描かれた、ペンギンによく似た鳥は、「ウミガラス」たちです。
 この「たくさん」たちは彼らの世界を持っています。しかし、そこは「カオジロガン」の世界ではありません。
 自分たちが目指すのは、もっと違う世界です。

 絵本は小さな子どもたちだけのものではありません。成長し大人になっても、深い感動を与えてくれます。
 その証拠に、あべさんのこの絵本は、大人たちにも勇気と希望をくれるはずです。まるで長編小説を読むような感動が、ここにはあります。
 私たちはいつだって「新世界へ」と飛ぶ鳥たちと同じです。そこには困難もあるし、歓喜もあります。
 しかし、いつも前へと歩むのは、生きるものすべての運命なのです。
 この絵本の鳥たちのように。
  
(2013/01/14 投稿)

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  今日紹介する絵本
  『手ぶくろを買いに』は
  童話作家新美南吉さんの代表作です。
  小学生の頃
  教科書にでていたような気がします。
  久しぶりに読みかえしてみると
  教材として使われやすい内容だと
  思います。
  例えば、
  どうしておじさんは狐だとわかっていて手ぶくろを売ってくれたんでしょう、とか
  お母さんきつねは人間がいいものだと信じたでしょうかとか
  先生が質問しやすい内容ではないでしょうか。
  娘たちも大きくなって
  今の子どもたちがどんな教科書を
  使っているのかは知らないのですが
  久しぶりに
  娘たちと一緒に本を読みたくなりました。
  やっぱり、いい作品は
  いつまでたってもいいものです。

  じゃあ、読もう。

手ぶくろを買いに (いつか出会った名作絵本 (1))手ぶくろを買いに (いつか出会った名作絵本 (1))
(2003/09)
新美 南吉

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sai.wingpen  ほんとうに人間はいいものかしら                   

 庄司薫の芥川賞受賞作『赤頭巾ちゃん気をつけて』の終盤、主人公の薫くんが痛めていた足を思いきり踏んづけられてしまう場面がある。
 踏んづけたのは5歳くらいの小さな女の子だったが、彼女は絵本を買うために本屋へと急いでいる途中だった。
 薫くんはその小さな女の子のために「ぼくが一番いいのを選んであげるからね」と、本屋の棚の前でさまざまな「赤頭巾ちゃん」の本を吟味する。
 「赤頭巾ちゃんなんて誰でも知っている話だけれど、ものによってはずい分ちがっているのだ」。
 薫くんはその女の子に一番合いそうな、一冊を選んであげる。

 新美南吉の代表作ともいえる『手ぶくろを買いに』もさまざまな絵本が出ている。
 その中で、私が選んだのは「いつか出会った名作絵本」シリーズの一冊。
 絵は牧野鈴子が担当している。
 たくさんの『手ぶくろを買いに』から、この一冊を選んだ理由は、牧野が描く狐の親子の表情が優しかったことと、表紙の題字が筆文字だったせいかもしれない。
 新美の作品のもつ気質をよくとらえている。

 新美のこの作品を教科書とかで読んだ人も多いだろう。
 寒さでしもやけができた子ぎつねをかわいそうに思った母ぎつねが、手ぶくろを買いに町にでる。ところが、町の手前で母ぎつねは昔人間にひどいめにあった記憶を思い出して、怯んでしまう。
 しかたなく、母ぎつねは子ぎつねに魔法をかけて片方だけ人間の手にしてしまう。手ぶくろを売っているお店に入ったら、人間の手の方を出すんだよと、いいきかせて。
 ところが、子ぎつねは誤って狐の手の方を出してしまう。
 手ぶくろを売っていたのは、いい人だったので、狐が買い物に来たとわかっていながら、子ぎつねに手ぶくろを売ってあげるのだった。
 やさしくしてもらった子ぎつねにとって、母ぎつねがどうして人間を悪くいうのかわからない。
 母ぎつねだって、「ほんとうに人間はいいものかしら」と、わからなくなってしまう。

 新美は狐の親子のようすから人間の本質を描こうとしたともいえる。
 人間がいいものなのか悪いものなのか一概には決めつけられない。いい時もあれば悪い時もある。
 作者の新美にも答えはなかったのではないだろうか。
 ひとついえるとしたら、人間は温かい手ぶくろをこしらえたということだろう。
 小さな子どものために、一番素敵な絵本を選ぼうと思ったりすることだろう。
 それでも考えてしまう。「ほんとうに人間はいいものかしら」。
  
(2013/01/13 投稿)

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  昨日が鏡開きでしたが、
  もう正月気分はとれましたか。
  果たして
  今日紹介する本が正月気分かどうかはともかく
  なんとなく
  自分の中ではそんな気分の一冊です。
  だから、私のお正月はこれで
  おしまい。
  樋口毅宏さんの『日本のセックス』という
  小説です。
  どこが正月気分なのと言われたら
  返す言葉もないのですが、
  そんな感じしません?
  しないかな、やっぱり。
  それにしても、
  すごいタイトルですよね。
  内容もすごいですが。
  タイトルだけだったら
  R-18かな。
  内容もそうかな。
  まあ、正月気分のおまけということで
  お楽しみ下さい。
  きっと好き嫌いあるでしょうが。

  じゃあ、読もう。

日本のセックス日本のセックス
(2010/04/20)
樋口 毅宏

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sai.wingpen  この国はなんでもありなんじゃないか                   

 「姫始め」という言葉は、最近では新年にはじめて男女がナニをすることを指す言葉として解釈されているが、もともとは1月2日に行ったさまざまな行いをいったらしい。
 年の初めに官能小説を読むのもまた、「姫始め」読書といったいいのだろうか。

 それにしても、『日本のセックス』とは大きくでたものだ。
 しかも、表紙絵には鶴に梅、紅白幕にクリスマスツリーと、目出度いのか浮世床なのか不明ながら、まずは日本の新年らしい雰囲気もないではない。
 この国には神など存在するのか、あるいは逆に神様で溢れかえっているのか。その現象は正月に顕著である。
 お寺の鐘をゴーンと撞いて、明ければ鳥居の下をくぐって柏手をうつ。十字をきったのはつい一週間前だ。つまり、なんでもありなのだ、この国は。
 だったら、色恋沙汰もありかといえば、それはそれで結構身持が固い。
 きっとこういう題名さえも、憎悪の視線強く、毛嫌いされ、電車の中ではそっとカバーをつけて読むしかない。 在る処では節操なく、在る処ではギュウと股を閉じる。

 面白いのだ、それでも。
 カンダウリズム、つまりは自分の妻の裸体を他人の目に晒すことで快感を得る性癖のことだが、の夫佐藤とその妻容子が主人公。
 これだけで白目をむいた人もいるだろうが、性癖とはなかなか他人には理解されないがゆえに性癖であるのだし、変態と呼ばれる種族がそれでも脈々と生存し続けるのはやはりそれ相応の快楽が存在することに違いない。
 さてさて、この夫婦、かなり過激なスワッピングに参加して、そこで目を見張んばかりのソゾムの市を体験する。
 しかし、現代のこの国の政治状況だって、裏切り、蔑視、憎悪なんでもありの阿鼻叫喚だということは誰もが知っている。
 政治は良くて、官能はよくないという道理はない。

 佐藤と容子に訪れる試練はその後も続く。かつて容子をストーカーした男性をはね死亡させることで、夫婦はさらなる危機へと堕ちていく。
 まるで地獄絵図。かつて太宰治が見たという絵図もまたそんな世界であったか。
 それでも、面白いのだから、文句はあるめぇ。
 と、太宰は云っただろうか。

 所詮、この国はなんでもありなんじゃないか。
 突き抜けたそこは、まことにもっってピーカン(晴天)の目出度き国。
  
(2013/01/12 投稿)

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  東日本大震災から
  今日で1年10ケ月になります。
  被災地である東北地方は
  厳しい冬を迎えています。
  先日の日曜から
  福島の会津を舞台にした大河ドラマ「八重の桜」が
  始まりましたね。
  主人公の八重には綾瀬はるかさん。
  初回の視聴率は21.4%と好調だったようですね。
  地元の福島では30.7%といいますから
  福島の人たちが寄せる思いは強いですね。
  放映された次の日の
  地元新聞福島民報のコラム「あぶくま抄」で
  この番組のことが取り上げられていました。
  脚本を担当している山本むつみさんが
  「震災を経た今の日本につながる物語として書いている」と
  語ったことを伝えています。
  これからが楽しみのドラマです。
  今日紹介するのは
  詩人長田弘さんの『詩の樹の下で』という
  詩集です。
  長田弘さんは福島出身の詩人です。
  この本は先月行った渋谷・青山のクレヨンハウス
  見つけました。
  長田弘さんだけでなく
  福島と縁のあるたくさんの人が
  被災地の故郷のことを思いやっています。

  じゃあ、読もう。

詩の樹の下で詩の樹の下で
(2011/12/03)
長田 弘

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sai.wingpen  2011年という日付の詩集                   

 詩人は昭和14年福島に生まれた。
 大学を東京を過ごし、それ以降福島を離れ、それきりだ。
 それでも。
 2011年3月11日に起こった東日本大震災で被害を受けた「福島の土地の名の一つ一つは、わたしの幼少期の記憶に強く深く結びついている」という。
 「記憶の森の木がことごとくばさっと薙ぎ倒されていったかのようだ」と。
 誰にも、故郷はある。それが今も住み続けるところでなくとも、詩人のいうようにそこは「記憶の森」だ。
 もし、あの日がなかったら、被災地の人々の森はいまも豊かであったろうし、遠く離れた人々にとっても懐かし い風景だったにちがいない。
 けれど。
 あの日は消せない。消せないから、せめて詩人は言葉にして残すしかない。
 「祈りにくわわれることばを伝えられるもの」となることを、願って。

 この詩集の帯に「FUKUSHIMA REQUIEM」とある。
 詩人はあるインタビューで 「ボランティアにも行けない自分は、レクイエム(鎮魂歌)を書くことしかできない。(中略)自分は死者の霊を慰めることで、生きている人を慰めたい」と語る。
 詩人から遠く離れていた故郷福島は、こうして詩人のもとに戻ってきた。

 この詩集はもともと樹にまつわる詩篇がまとまって編まれようとしたものだ。
 その樹もまた、詩人のいう「記憶の森」の一本いっぽんだといえる。どこかで大震災の悲しみと共鳴する。
 「死の知らせは、ふしぎな働きをする。それは悲しみをではなく、むしろ、その人についての、忘れていた、わずかな些細な印象をあざやかに生きかえらせる。」(「懐かしい死者の木」)
 もっとはっきりと震災を詠んだ詩もある。「人はじぶんの名を」(これはNHKの番組で朗読されたという)、「夜と空と雲と蛙」といったように。
 特に「夜と空と雲と蛙」は、福島と縁のあった幸田露伴、高村光太郎、山村暮鳥、草野心平などに呼びかける形で、詩人の故郷を哀惜する長詩だ。

 この詩集には「2011年」という日付の焼印が押された。
 忘れられない、忘れてはいけない日付がくっきりと。
 詩人の名は、長田弘という。
  
(2013/01/11 投稿)

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  お正月は長い休みがとれたので
  たまっていた録画映画をたくさん観ました。
  まだ観ていない作品に
  若松孝二監督の『天使の恍惚』(1972年)があって
  どうも寝覚めがよくありません。
  観るのは
  たいてい休日の朝。
  4時ぐらいから起きて、一人見ています。
  今日紹介するのは、
  小山薫堂さん(この人はあの『おくりびと』の脚本家)と
  イラストレーターの安西水丸さんによる映画対談集、
  『夢の名画座で逢いましょう』。
  この本の中で
  小山薫堂さんがうまいことを云っています。

    男の恋愛はフォルダ保存、女の恋愛は上書き保存

  どうですか。
  男性は女性ごとにフォルダを分けるけれど、
  女性はいつも最新の男を上書きしていくという説。
  私は名言だと思いますが。
  今度どこかで使おうかな。

  じゃあ、読もう。

夢の名画座で逢いましょう (幻冬舎文庫)夢の名画座で逢いましょう (幻冬舎文庫)
(2012/11/09)
小山 薫堂、安西 水丸 他

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sai.wingpen  映画の愉しみ、ここに極まれり                   

 円グラフって知ってるでしょ。
 円の中を扇形に切って構成比をわかりやすく図式する時に使いますよね。海外ではパイを切った形に似ているところから、パイチャートと呼ばれているそうです、余談ですが。
 私の一ヶ月の生活を円グラフで表すと、もちろん本を読むことが一番大きなパイになります。続いて、書評めいた文章を書くこと、実はその次に来るのが映画を観ること。
 映画館には年に3、4回しか行きませんが、休日の朝は衛星放送とかで放映した映画を観ています。だから、年間60本近く映画を観ていることになります。
 円グラフの話の続きですが、仕事とか家事手伝いはそのあと。まあ、気分的なものですから。これが拘束時間だとまた違ってきます。決して仕事をおろそかにしていることではなく。これもまた、余談でしたね。

 この本は衛星放送「WOWOW」の「W座からの招待状」という番組で、この番組は地味だけれど心に残る名画を放映していて、その解説を脚本家の小山薫堂さんと安西水丸さんが対談形式で行っていたのを書籍化したもの。
 放送でもそうですが、映画のイメージが安西さんのいつものタッチで絵になり、小山さんの詩が添えられています。
 私はこの番組で、昨年不慮の事故で亡くなった若松孝二監督の『キャタピラー』を観ました。
 寺島しのぶさんがベルリン国際映画賞で最優秀女優賞を受賞した作品です。戦争という重いテーマですが、それに性の表現がうまく合わさって、若松孝二監督ならではの作品に仕上がった名作に、小山さんは「感情の地層」という題の詩をつけています。
 その最後のくだり。「キャタピラーがつけた悲しみの轍は、どんなに新しい今が降り積もろうとも、決して消えることはない」と、綴っています。
 作品に合った重い詩です。

 その一方で、小山さんと安西さん(この二人は日大藝術学部の先輩後輩。安西さんが先輩)の対談では、主演の寺島しのぶさんの顔が「あの時代が似合いますよね? モンペとか」と安西さんがいえば、小山さんが「不幸が染み付いている感じが似合うんですよ」と切り返すように、25作品をこの調子で楽しんでいます。

 私は映画は一人で観る派ですが、映画を観終った後は気の合った仲間と楽しく話したいですよね。
 この本の小山さんと安西さんはまさにそれ。
 映画の愉しみ、ここに極まれりです。
  
(2013/01/10 投稿)

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  『はだしのゲン』は名前こそ
  聞き知っていたが、
  怠慢からまだ読んでいなかった。
  先月、その作者である中沢啓治さんが亡くなって
  ようやく手にしました。
  これは漫画です。
  単行本で全10巻の長編漫画です。
  これから、このブログに
  不定期となりますが、
  書評を書いていこうと思います。
  今日はその1巻め「青麦ゲン登場の巻」。
  それにしても
  この『はだしのゲン』が
  「少年ジャップ」に掲載されていたなんて
  知りませんでした。
  なんだか、
  そのことに感動してしまいました。
  これから、
  ゲンたち一家がどのような運命を
  たどるのか、
  楽しみと書くと不謹慎ですが、
  じっくり読んで、
  伝えていきたいと思います。

  ご冥福をお祈りします。

  じゃあ、読もう。

はだしのゲン 第1巻 青麦ゲン登場の巻はだしのゲン 第1巻 青麦ゲン登場の巻
(1984/01)
中沢 啓治

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sai.wingpen  追悼・中沢啓治さん - 伝えるものとして                   

 漫画は、人間のさまざまな感情とそれによって起こる多様なものを表現してきた。もちろん、戦争だって例外ではない。
 「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫にも『紙の砦』という空襲体験を描いた名作があるし、ちばてつやもまた『紫電改のタカ』という少年漫画の秀作を発表している。
 2012年12月19日、73歳で亡くなった漫画家中沢啓治の代表作である『はだしのゲン』は戦争や原爆という重いテーマを描いて、世界各国で読まれている名作である。
 今や漫画は世界に誇る日本文化だが、中沢さんと『はだしのゲン』が果たした役割は大きい。

 『はだしのゲン』は、あの「少年ジャンプ」に1973年から一年間連載された。
 「少年ジャンプ」といえば、「ハレンチ学園」(永井豪)などの作品で親たちの顰蹙をかう一方、読者である子どもたちには大歓迎された漫画雑誌だ。
 その誌面に、原爆という重いテーマを扱った漫画が、そしてのちに学校図書館にも並ぶことになる中沢のこの作品が載っていたのだから、当時の編集部の英断に頭が下がる。
 漫画という文化は『はだしのゲン』がそうであったように、アニメーション文化が牽引していくが、当初はまちがいなく漫画家と編集部と漫画雑誌が生み出したものであることは、この事実だけでもわかる。

 『はだしのゲン』の第一巻である「青麦ゲン登場の巻」では、敗戦色濃い日本で非国民扱いを受けるゲン一家の苦悩が描かれている。
 長男浩二はそんな一家の汚名を晴らそうと自ら予科練に志願する。次男の昭は集団疎開先で教師たちの理不尽さに抜け出そうと企てる。姉の栄子は学校で窃盗の疑いをかけられ裸までならされる。小学2年の主人公ゲンもその弟進次もまた友人や近隣から数多くのいじめにあう。
 そして、運命の昭和20年8月6日、ゲンたちの住む広島に原爆が投下される。
 中沢はその場面をこれでもかとばかりに描写する。
 身体いちめんに突き刺さったガラス片。餓鬼のように歩く燃えただれた人たち。死体を踏んで走るゲン。
 中沢は後年、「戦争で、原爆で、人間がどういうふうになるかというところを徹底的に描こうと思った」と語っている。

 中沢はいなくなったが、私たちには『はだしのゲン』という漫画文化が残された。
 戦争の、原爆の風化を中沢はもっとも恐れたという。
 読み、そして伝えつづけることが、中沢啓治がそうであったように、私たち漫画を愛するものたちの責務といっていい。
  
(2013/01/09 投稿)

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  今年の初もうでは毎年恒例の
  埼玉県大宮の氷川神社に参った。
  ひいたおみくじは「」。
  平凡だが、こんなことが書いてあった。
  「人の為に何かを為せば、大吉へと転じる」。
  正月明けに読んだこの本、
  松浦弥太郎さんの『40歳のためのこれから術』にも
  社会のために尽くしなさい、と
  書かれていた。
  そういう年まわりでしょね。
  よく無私といいますが
  やはり私くらいの年令になれば
  自分のことばかりでなく
  人のため社会のために何ができるかを
  考え、実践していかないとね。
  そんなことを強く考えた
  今年のはじめでした。

  じゃあ、読もう。

40歳のためのこれから術 幸せな人生をていねいに歩むために40歳のためのこれから術 幸せな人生をていねいに歩むために
(2012/11/15)
松浦 弥太郎

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sai.wingpen  自分が変わる契機はいつもいま                   

 40歳だった時のことはよく覚えている。
 阪神大震災のあった年だ。ちょうど大阪が仕事場だった。
 1995年1月17あの朝大きな揺れに飛び起き、何もわからずに会社に向かった。電車は止まっていたので、歩いた。会社で初めて街が燃えている映像を見た。
 その日から一ヶ月もしないで、40歳の誕生日を迎えた。
 あの時が転機だったのかもしれない。
 春にはオウムの忌まわしい事件が起こった。
 なんだか社会がヒステリーを起こしているような年だった。
 その年が私の40歳の年だ。

 あれから、自分は変わっただろうか。
 何ひとつ変われなかった。いや、変えようとさえしなかった、のだ。
 あれほど大きな災害や事件を目の当たりにしても、人間は早々変われるものではない。
 あの頃、40歳で「幸せな人生をていねいに歩むために」これから何をなすべきかという人はほとんどいなかった。

 「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんは、人生のピークを70歳と考え、そのためにも40歳は新しいスタートを切るための「セカンドバースデイ」だという。
 社会人となってのそれまでの20年の経験を生かし、改めて目的地を見定める。
 もしかしたら、私にとっての阪神大震災は大きな転機だったのだろう。
 あの時、立ち止まっていたら、もう一度目的地を見定めていたら、私はまた違った人生を生きたかもしれない。
 もちろん、40歳を過ぎたからといって、松浦さんがいおうとしていることが無駄であるはずはない。
 半周遅れであれ、一周遅れであれ、走りださないとできないことはたくさんある。
 自分が変わる契機は、いつだって存在する。いま、存在する。

 松浦さんはこの本の中で「今の自分は社会によって育てられ、助けられてつくられた社会の一員です」と書いて、「次は自分がお返ししたい」と思えた方が幸せだとしている。
 社会にお返しするのは40歳だけではない。
 50歳であろうと60歳だろうと、そのことに気がついた時点から社会に貢献することはできるし、「幸せな人生をていねいに歩む」ことはできるはずだ。
 だから、この本は40歳だけでなく、50歳のための、60歳のための、今のあなたのための「これから術」なのだ。
  
(2013/01/08 投稿)

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  今日が仕事初めという人も
  多いのではないでしょうか。
  私は先週土曜日が仕事初めでした。
  ゆっくり休暇のとれた人、
  正月もしっかり仕事だった人、
  さまざまですが、
  やはり仕事初めは
  気が引き締まります。
  そこで、今日はビジネス本を
  紹介しましょう。
  おなじみ小宮一慶さんの
  『朝90分早く起きる人のプロの仕事術』です。
  今年こそ早起きするぞ、って
  決意した人もいるかと思いますが
  この本を読めば
  それがどんなに充実した時間を
  くれるかがわかります。
  しまった、
  休みボケで寝坊したという人も
  この本を読んで
  早く休みボケを解消しましょう。

  じゃあ、読もう。

朝90分早く起きる人のプロの仕事術朝90分早く起きる人のプロの仕事術
(2012/11/28)
小宮 一慶

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sai.wingpen  時間は誰にも平等にあります                   

 書名を分解すると、その本の性格が見えてくることがあります。
 経営コンサルタントの小宮一慶さんのこの本の場合、後段に「プロ仕事術」とありますが、ではどんなことがこの本に書かれているかというと、前段の「朝90分早く起きる人」というのがヒントになります。
 つまり、これは時間をいかにコントロールするかという、「スピード仕事術」の本なのです。
 ただし、間違ってはいけないのは小宮さんも書いているように、「スピード作業術」ではないということです。
 小宮さんは「仕事」と「作業」を明確に区分しています。
 「作業」が主体となる仕事ではなかなか能力差がでにくいというのです。「能力差が生じる仕事において能力を発揮しないと高い給与を取れない時代」だからこそ、いかに「仕事」の生産性を高めていけばいいのか。
 そのためには「時間」をうまく使う必要があります。

 この本には時間をどうコントロールしていくかといった、具体的なヒントがたくさん収められています。
 一番初めに「毎日することの時間を把握しよう」とあります。
 例えば、パソコンで400文字を入力するのにどれくらいの時間がかかるか把握していれば、与えられた業務にかかる時間のある程度の目安がつきます。仮にそれが10分だとすれば、それを次からは8分にしていく。そうすることで、別の仕事がはいっていきます。
 つまり、生産性をあげることになります。
このことが、この本の最初に書かれていたことで、私はこの本を信用できると思いました。
 
 この本の中では「スキマ時間」をどう活用するかということも書かれています。
 私はスマートフォンにしたことで、「スキマ時間」をうまく活用できるようになりました。
 今まではちょっとした読書ということになるのでしょうが、スマートフォンが普及したことで、情報の確認などは「スキマ時間」で充分間に合います。
 そういう最新の機器をうまく使いこなすのも大切ですし、小宮さんもこの本の中で言及しています。

 時間は誰にも平等にあります。
 同じだけの限られた時間をどう有効に使うか。
 朝90分早く起きるのは、そのひとつのきっかけに過ぎません。
  
(2013/01/07 投稿)

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  今年も毎週日曜は
  絵本や児童文学を紹介して
  いきたいと思います。
  子どもの本を読むのは
  大人にとって必要です。
  もしかしたら、
  大人こそ必要といってもいいでしょう。
  私のように
  子どもたちも大きくなると
  なかなか実際の生活の場面では
  絵本などに触れる機会が
  ありません。
  こうして、ブログで
  毎週一冊は読もうと決めているので
  楽しい世界に触れることが
  できます。
  皆さんもぜひそういう機会を
  つくってみてはいかがですか。
  今日紹介するのは、
  マイケル・ガーランドさんという
  アメリカの絵本作家さんが描いた
  『スミス先生とふしぎな本』という絵本。
  楽しい絵本ですよ。

  じゃあ、読もう。

スミス先生とふしぎな本スミス先生とふしぎな本
(2011/06)
マイケル ガーランド

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sai.wingpen  こんな本があったらいいのになぁ。                   

 こんな本があったらいいのになぁ。
 たとえば、本を開くと登場人物が立ちあがって大活躍する本。ちょうど3D映画みたいな感じ。
 たとえば、本を開くと登場人物の声や小鳥のさえずりや川の流れる音が聞こえてくる本。ちょうど音楽CDみたいな感じ。
 たとえば、本を開くと登場人物の匂いやお菓子の甘い香りが漂ってくる本。ちょうどオーブントースターみたいな感じ。
 そんな本があればどんなに楽しいでしょう。
 でも、よくよく考えてみれば、そんな時代ももうすぐやってくるかもしれませんね。
 だって、かさばる本を手のひらに収めたいって昔は願っていたでしょ、それが今は電子書籍で実現したのですから。

 小学2年生のザックの教室にやってきた、赤毛のヘンテコリンなスミス先生。容貌がヘンテコリンなだけでなく、スミス先生がもってきた本はもっと不思議なんです。
 先生が読み始めると、カリブの海賊の黒ひげの船長が大きな刀をもって現れたんです。海賊だけではありません。赤ずきんちゃんだって。
 でも、先生の不思議な本はきちんと最後まで読まないと、登場人物たちは本の世界にもどらないのです。
 それを知らないばっかりに、ある日スミス先生が交通渋滞で学校に来れなくなった時、校長先生がそのふしぎな本を読んだせいで、たくさんの物語の仲間たちがこの世界にあふれだしてしまいます。
 さあ、大変です。

 子どもたちはスミス先生の不思議な本のおかげで本を読む楽しさを知ります。
 どんな本だって、わくわくどきどきするものですもの。
 こういう絵本をきっかけにして、子どもたちが本好きになれたらいいですね。
 作者のマイケル・ガーランドの絵はコンピュータ技術を使っているので、どちらかといえばゲームの世界のような感じがします。そういう点では、大人よりも子どもたちにより親しみやすいかもしれません。

 さあ、スミス先生と不思議な本の世界に飛び出しましょう。
  
(2013/01/06 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  昨日(1.4)、埼京線武蔵浦和駅近くに
  さいたま市で24番めとなる
  「武蔵浦和図書館」がオープンしました。
  20130104_100349_convert_20130104183323.jpg
  一つの市で24つの図書館ですよ。
  なんと贅沢な。
  私はその恩恵にあずかっているのですが
  だからこそ大事にしないと
  いけないと思います。
  では、その新しい図書館がどうなっているかというと
  埼京線武蔵浦和駅を出て、すぐ。


  20130104_091527_convert_20130104183416.jpg
  入口は3階にあって、吹き抜けで
  2階部分が見渡せます。
  左の写真は3階から2階を見渡したもの。
  開放的ですよね。
  蔵書数ではまだまだ小さい方だと
  思いますが、
  駅の近くという利便性もありますから
  ぜひ近隣の人は
  利用して下さい。
  図書館関係の者ではないですが
  それぐらいのこと言わないと。
  見た感じでは児童書や絵本は
  充実しています。
  できれば、
  新しい図書館ですから
  CDとかビデオとかもう少しあってもいいのかな。
  そこで、今日は
  武蔵浦和図書館開館記念として
  小川洋子さんの『みんなの図書室 2』を
  紹介します。
  図書館や図書室は
  みんなのもの。
  たくさんの人に愛されて育っていきます。
  そのことを大事にしたいと
  思います。

  じゃあ、読もう。

みんなの図書室 2 (PHP文芸文庫)みんなの図書室 2 (PHP文芸文庫)
(2012/11/17)
小川 洋子

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sai.wingpen  本にそえらえた指の優しさまでも感じる文学案内                   

 図書館と図書室の違いって何でしょう。
 通常は読書の場の提供を独立した建物で行っているのが図書館で、建物の一室をそれにあてているのが図書室といわれています。
 芥川賞作家の小川洋子さんが文学作品を自身のラジオ番組で紹介、それを書籍として刊行したこの本には「図書室」とつけられていますが、図書館ではなく、もっと個人的な本の温もりを感じさせる響きがあります。
 こういう図書室でゆっくりと読書をするのはなんと心地良いでしょう。
 ふっと目をあげると、カウンターに座っている女性がいて、彼女も夢中になって本を読んでいる。彼女は満足げに本を閉じ、私のおすすめという棚に静かに並べる。
 そこには、こう書かれています。
 「本を読む最も素朴な喜びにあふれた本」と。

 シリーズ2冊めとなった本書でも、小川洋子さんの語りは滑らかです。自身が一番「素朴な喜び」にひたっています。
 紹介されているのは古今東西の名作47冊。
 川端康成の『雪国』や三島由紀夫の『金閣寺』といった名作の誉れ高い作品だけでなく、村上春樹の『1Q84』や宮本輝の『骸骨ビルの庭』といった新しい作品まで、つまりは小川さんが気にいった作品だけが紹介されているといっていいでしょう。
 目次をみて、気になる本のページを開くのは、本棚に並ぶ本たちの背表紙をみて取り出すのに似ています。
 端から順番に読んでもいいし、まずは気になった作品から読んでも構いません。
 本を読むのは、私たちの自由。
 もしかしたら、本たちが私たちを誘っているのかもしれません。

 その中でも私のお気に入りは、壺井栄の『二十四の瞳』、マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』、そしてヒュー・ロフティングの(というより井伏鱒二訳の)『ドリトル先生アフリカゆき』。
 いずれも小川さんのやさしい感性がこれらの作品を慈しむかのように語っています。
 こんなにやさしく本を語れる人はそうざらにはいいでしょう。
 本にそえらえた指の優しさまでも感じる文学案内といえます。
  
(2013/01/05 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  正月というのは不思議なもので
  よくよく考えてみれば
  去年なんてことさらにいうが、
  所詮は一週間前であったり
  数日前であったりするわけだ。
  それが、
  正月というだけで
  一週間前だって遠い昔みたいな気分に
  なるのだから。
  急いで
  去年のおさらいをしないと、と
  今日は去年のベストセラー、
  阿川佐和子さんの『聞く力』を
  紹介します。
  待ってました?
  私は結構天邪鬼で、
  売れているときけば「あ、そうなの」と
  横目で気にしながら
  読まないことがよくあるのですが、
  たまたま上の娘が
  「お父さん、読んだ?」と
  貸してくれたのが、この『聞く力』。
  いい本貸してくれました。
  さすが、わが娘と思いたいのですが、
  これはもしかして
  「娘の話もよく聞きなさい」という
  戒めなのかもしれません。

  じゃあ、読もう。
  
聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)
(2012/01)
阿川 佐和子

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sai.wingpen  2012年もっとも売れた本は、一家に一冊の常備本                   

 昨年の暮れ110万部突破で、2012年もっとも読まれた本となったのがこの本。
 読まれた要因としては、コミュニケーション力を問われている社会的背景もあるだろうし、TVなどで拝見する著者の阿川佐和子さんの明るい個性も人をひきつける。
 副題が「心をひらく35のヒント」とあるように、まるでハウツウものかビジネス本のようだが、読んでみるとわかるが、「読み物」として抜群の面白いのだ。
 この類の本ではいくつかのヒントがばらばらに独立しているものが多いが、この本では流れるように一冊読了できる。
 どれかひとつのヒントが為になるのではなく、一冊まるごと堪能できる。
 この本が売れたのは、まさに読書の王道をゆく本だったからだと思う。

 この本のテーマは書名通り、「聞く」ということ。
 長年雑誌の対談やTVの司会などで実績がある阿川さんらしいテーマだが、実際には新書での執筆の話には躊躇いがあったそうだ。
 その理由が、新書は「学術的側面において(略)知識や技術や意欲を持っている人が記すもの」というのだからクスッとなる。阿川さん、そんな純粋培養みたいな新書の時代はとっくに終わっていますよ。本屋さんの新書の棚にはそういう本は稀少価値ですよ。
 だから、ダメなのよ、と阿川さんなら云いそうですが。
 それが東日本大震災をきっかけに「聞く」ことがいかに大事かと目覚め、それが執筆のきっかけになったという。

 この本では「聞く」という漢字で統一されているが、実際には「聴く」であったり「訊く」であったりする。質問の仕方などは「訊く」と表記すべきだし、被災者の声は「聴く」であるべきだろう。それを「聞く」で統一したのも、阿川さんらしい。
 阿川さんの「聞く」は、人と誠心誠意で接する仕方であるのだから、どういう漢字で書こうが構わないのだ。それが、最後にどう「効」いてくるかが大事なのだろう。

 この本はもちろん職場でも十分に役立つ。これを読んでいかに上司や部下、あるいは同僚と接する方法が間違っていたか反省しきりだ。
 あるいは、家庭内や仲間たちとの接し方にも参考になる。
 2012年もっとも売れた本は、一家に一冊の常備本でもある。
 
(2013/01/04 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  2013年最初の書評を
  何の本から始めようかと
  少し考えました。
  本のブログなんだから
  本についてか読書についてのものがいいかなと
  選んだのが、
  川上徹也さんの『本屋さんで本当にあった心温まる物語』です。
  この本を読みながら思ったのは
  そういえば本屋さんのチラシ広告って
  あまり見たことないなぁと
  いうことでした。
  どうしてでしょうね。
  チラシをいれる広告費などないのかも
  しれません。
  でも、さまざまな小売業は
  チラシをいれています。
  その店特有の工夫をしています。
  本屋さんに行けば
  たくさんの工夫があるのに
  そのことを知らない人も多いのでは
  ないでしょうか。
  そういうことから
  始めないと、
  いけないのではないでしょうか。
  今や本屋さんは厳しい産業ですが
  絶対に負けないで
  がんばって下さい。

  じゃあ、読もう。

本屋さんで本当にあった心温まる物語 (心温まる物語シリーズ)本屋さんで本当にあった心温まる物語 (心温まる物語シリーズ)
(2012/11/16)
川上 徹也

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sai.wingpen  本屋さんのトイレってきれいのだろうか                   

 本屋さんに行くとおトイレが近くなる人が結構いるらしい。確か斎藤孝さんだったと思うが、たくさんの本に脳が刺激されておトイレが近くなるという説を述べられていた。
私にはその症状はないが、本屋さんのトイレってきれいのだろうか。
 この本は書名通り、「本屋さんで本当にあった心温まる物語」が28篇収められています。残念ながら、本屋さんとトイレについての「心温まる物語」は、はいっていません。
 それは、続編に期待かも。

 冒頭の「心温まる物語」は、ニュースにもなったからご存じの人も多いと思います。
 2011年3月11日の東日本大震災のあと、本や雑誌の入荷がとまった仙台の小さな本屋で本当にあった物語です。
たった一冊だけ手にはいった「少年ジャンプ」。子どもたちのためにそれを無料で読んでもらった本屋さん。そして、この漫画雑誌は何百人の子どもたちに読まれていきます。
 東日本大震災という大きな悲しみの中で、一冊の漫画雑誌が子どもたちに明日への希望をもたらせました。
 本屋さんという職業の、なんと素晴らしいことか。

 本屋さんは、服を売ったり、食事を提供する小売業のひとつであることはちがいありません。
 ところがやっかいなことに、本屋さんが扱っている本は古今東西、過去現在未来の人間さまざまな感情や知恵であったりします。
 つまりは他のお店とは違うものを扱っているという矜持のものがあるように感じます。
 しかし、いくらいいものを扱っていても、売上が伸びなかったら、商売としては成立しません。
 この本で紹介されている本屋さんは、売るためのさまざまな工夫をしています。
 店長おすすめ本の紹介、たった一人のお客様へのミニフェア、激励メッセージ入りのブックカバー、など「普段本をあまり読まないような人に、本を手にとってもらえるような仕組みやコーナーづくり」を行っています。
 それでも、まだまだ街から本屋さんが消えていっているのが現状です。

 本屋さんに限らず、小売店はお客様と直接接する場所です。きっと数えきれないくらいの「心温まる物語」があるでしょう。
 もし、それが思いつかない本屋さんがあれば、お客様との接点をもっと大事にするべきでしょう。
 本屋さんは本のためにあるのではありません。お客様のためにあるのだということを忘れないでほしいと思います。
 そうすれば、もっとたくさんの「心温まる物語」が集まるにちがいありませn。
  
(2013/01/03 投稿)

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 以前にも書いたことがありますが
 元日の新聞が大好きです。
 何故なら、出版社各社の広告が掲載されているからです。
 昨日の朝日新聞関東版で
 見ていきたいと思います。

 まずは新潮社

広告1 この春刊行予定の
 「山本周五郎長編小説全集」の予告を兼ねながら
 山本周五郎の写真とともに紹介されていたのが、
 この言葉。

    胸を張れ、誇り高く生きよ!

 この広告、全文いいので、ぜひ読んで頂きたい。




 次は創立90周年を迎える文芸春秋
 広告自体はどうということないのですが(失礼)、
 90周年の記念事業に目をいきました。
 「丸谷才一全集」がこの秋刊行予定だそうです。
 うわぁ、いいな。これ。
 こういう広告があればこそ、今年も楽しみがあるというもの。
 期待しています。

 もっと古いのが
 創立100周年岩波書店
 広告の中にこんな文章が。

   人は、本を読むことで思考を広げられます。
   新しい自分や世界に出会う喜びがあります。
   そして少し階段をのぼったとき、また新たな問いが生まれる。

 本を読む、これこそが醍醐味ですね。

広告2 講談社のそれは、ずばり、

   本を、ひらこう。

 小学館のそれも、ずばり、

   今日の読者に。
   未来の読者に。

 さらに、集英社のそれも、ずばり、

   読書は、本能。


 出版社各社のこの気合に
 読み手の方も負けないようにしないと。

 山本周五郎の座右の銘は英国の詩人ブラウニングの言葉だったそうです。
 それが、これ。

   人間の真価は、その人が死んだとき、なにを為したかではなく、
   彼が生きていたとき、なにを為そうとしたかで決まるのである。

 今年もいい本に出逢えますように。

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