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プレゼント 書評こぼれ話

  昔、鬼畜という言葉が
  流行ったことがあります。
  野村芳太郎監督で映画化もされた
  松本清張の作品にもなっています。
  映画化されたのが1978年。
  当時は子どもを虐待する親というのは
  鬼畜生と呼ばれるくらい
  珍しいことでもあったのです。
  今では
  そんなことが日常茶飯になっていて
  あ、またかと思うくらいです。
  安易に子どもを産む。
  その始末に困った親たち。
  今日紹介する
  よしもとばななさんの
  『さきちゃんたちの夜』は
  そんな話ではないですが
  書評に書いたようなことを
  思わないでもありません。
  せっかくいい名前をつけた子どもたちの
  明日をなくしてはいけません。

  じゃあ、読もう。

さきちゃんたちの夜さきちゃんたちの夜
(2013/03/29)
よしもと ばなな

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sai.wingpen  名前がついた日、みんな幸福だったはず                   

 子どもに対する親の虐待があとを絶たない。「シンデレラ」の時代のまま母のイジメならともかく、実の親による虐待事件は心を暗くする。
 子どもが誕生し、その子にどんな名前をつけようかと悩んでいた時、それはきっと何ごとにも変えられない幸福の時間であったろう、親はその子の未来の仕合せを祈らずにはいられなかったはず。
 それなのに、名前のついたその子の命を自らの手で絶つという、なんという悲しさ。
 名前をもったその時から、子どもには生きる意味があったはずなのに。親が願った、名前の意味とともに。

 早紀、紗季、咲、沙季、崎、さき、「なんとも言えない明るいものや楽しいもの、ほうっておけない気持ち、いろんなものがこもって」いそうな、「さき」という名前のついた女性たちを主人公にした、よしもとばななさんの五つの短編集である。(表題作でもある『さきちゃんたちの夜』には、二人のさきちゃんが登場する)。
 よしもとさんの小説はいつもながら心がほっとして、この短編集の物語もけっして幸福な風景ではないにもかかわらず、けっして惨めでも不幸でもなく、ああ明日がまた来るのだとあまりに当然すぎてみんなが忘れているような、しかしそれは実はとって仕合せなことだということを、思い出させてくれるのが、とてもいい。
 子どもに何があったにしろその命に手をかけようと思い詰めている親がいれば、よしもとさんの作品を読めば、どんなに小さな命であれ、それがあったかいものだということがわかるだろうに。

 かつて自分の担当作家であった高崎くんの失踪事件にまきこまれる早紀を描いた「スポンジ」、宮崎で家族もなく一人亡くなったおばさんの家を訪ねる紗季は「鬼っ子」という作品の主人公。
 別れた父の祖父母たちが作る豆スープ作りに勤しむ咲の姿は「癒しの豆スープ」で描かれる。「天使」という作品は、自分(沙季)のことを天使と呼ぶ男との切ない恋物語。
 そして、表題作の「さきちゃんたちの夜」は、父親を不慮の事故で亡くしたばかりの小学生の女の子さきと、父親と双子だったおばさんの崎との、悲しみから希望へて向かう一夜の物語。

 「基本的にはきつい時代をなるべく軽々と生き抜こうとする」彼女たちの姿は、ほしよりこさんの挿画と合わさって、清々しい。
  
(2013/05/02 投稿)

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