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プレゼント 書評こぼれ話

  時々人にどのように本を選ぶのか
  聞かれることがあります。
  本屋さんで偶然、
  新聞で気にかかり、
  好きな作家さんなら無条件に
  それはさまざまですが、
  白石一文さんの『快挙』の場合、
  宣伝文句にひきつけられました。

   変質しない夫婦関係などない。罪と罰を抱き共に生きる。それこそが、結婚――。

  編集さんが考えたのでしょうか、
  実にいいコピー。
  どんな物語だろうと思いますよね。
  昨日も書きましたが
  「夫婦」というのは
  難しい関係だと思います。
  一歩間違えば、
  いとも簡単に関係を解消できてしまう。
  そういう危うさをもっています。
  ともに白髪の生えるまで、と
  よくいいますが、
  そのこと自体「快挙」なんでしょうね。
  この本の中に
  こんな俳句が紹介されていました。

   夫婦とはなんと佳いもの向い風  三好兵六

  じゃあ、読もう。

快挙快挙
(2013/04/26)
白石 一文

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sai.wingpen  夫婦とはなんと・・・                   

 なんともそっけないタイトル。「変質しない夫婦関係などない。罪と罰を抱き共に生きる。それこそが、結婚――。」という宣伝文がなかったら、おそらく読まなかっただろう。
 しかし、読み終わった後、この夫婦の物語は短い、このタイトルしかないかもしれないと思った。
 この夫婦は「快挙」なのだ。

 誰にだって、これこそ「快挙」だと思えることが人生にひとつやふたつあるものだ。
 学生時代にカメラコンテストの賞をとったせいで、自分の能力を過信した主人公の俊彦。月島の町を撮影中に出会った二歳年上のみすみと結婚したが、写真の腕はあがらない。
 そのうち、小説なら書けるかもと方向転換を図る。生活費は妻のみすみが稼いでくれる。
 こういう男と一緒になった女は苦労する。
 男の側からいえばそれなりの理屈もあろうが、女の側から見れば、傲慢だしわがままだ。それでも、女は男を捨てない。
 けれど、二度の流産はみすみの心に空洞を生み、やがて、二人の「夫婦」の生活にも影を落としていく。

 その後、二人は阪神大震災後のみすみの実家の神戸須磨で暮らすようになる。
 俊彦の小説は文芸誌に掲載寸前で没になり、俊彦自身結核を患うことになる。
 互いの気持ちが荒んでいく。互いの心が離れていく。
 この物語にしばしば夫婦のセックスが描かれる。心が重なり合わない時、体もまた遠く離れていく。
 そんなある時、俊彦はみすみの浮気を知ることになる。

 もしかしたら、その時、「夫婦」は終わったかもしれない。しかし、俊彦たちはそうしなかった。
 須磨の土地を離れ、もう一度東京に戻った。
 のちに、俊彦は自分にとっての「人生の快挙」は、みすみに出会ったこととこの時のことと思うことがあった。
 妻であるみすみにとっても、それが「快挙」だったかどうかわからないが、「夫婦」になったことが「快挙」だと思える、俊彦はうらやましくもある。

 「夫婦」とはもともと他人が一つで暮らしていくだから、些細なことで食い違いが始まる。時に一緒にいることの意味を見失う。
 「夫婦」が「夫婦」であり続けることそのものが、「快挙」だといえる。
 ただ、そのことに多くの人が気付かないだけだ。
 これは、奇跡のような「夫婦」の物語だ。
  
(2013/05/22 投稿)

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