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プレゼント 書評こぼれ話

  ずっと思っていました。
  手塚治虫さんのライフワーク
  『火の鳥』を
  このブログで紹介したいなぁと。
  角川文庫のラインナップに
  この作品が並んだ時はうれしかったなぁ。
  もう20年以上前の話です。
  手塚治虫さんの作品は
  何度でも読みたくなります。
  漫画の神様と呼ばれる所以でしょ。
  ところで、今回の初出は
  「COM」という漫画雑誌ですが
  この雑誌も手塚治虫さんがおこしたもの。
  だから、自分の最高傑作の
  連載を始めたのです。
  これから不定期になりますが
  『火の鳥』を読んでいきたいと
  思います。

  じゃあ、読もう。

火の鳥 (1) (角川文庫)火の鳥 (1) (角川文庫)
(1992/12)
手塚 治虫

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sai.wingpen  ふたたび、そして何度でも                   

 手塚治虫さんの『火の鳥』を読むのは何度めになるだろうか。
 それよりも、最初にこの作品を読んだのはおそらく今から40年以上も前になるから、そのことの方が自分でも驚く。
 昔でいえば、漱石とか芥川の作品を読み返すような感覚だろうか。
 それほどにこの作品は重厚で、飽きさせないし、いつも新鮮だ。

 長いシリーズの第一作となるこの「黎明編」は女王ヒミコの圧政する古代ヤマタイ国。ヒミコに隷従する防人の猿田彦は敵国クマソを焼き滅ぼす。ただ一人、猿田彦を恨むナギ少年を残し。
 猿田彦とナギの間にはいつしか父と子のような愛情が芽生え、ある事件をききっかけにヒミコの怒りをかった猿田彦は見るも無残な姿に変えられてしまう。
 そして、永遠の命が手にはいるという火の鳥を求めて、ヒミコや猿田彦やナギ、さらにはヤマタイ国よりもさらに巨大な国を巻き込んで、運命が交錯していく。

 手塚さんは「漫画の神様」と呼ばれたが、常に新しい表現方法を求めた漫画家であった。神様や王者ではなく、死ぬまで挑戦者であり続けた表現者といっていい。
 この作品の初出は1967年だから、劇画の時代がゆっくりと開こうとしていた。それでも、この作品におけるキャラクターの造形は、まだ少年少女漫画の域を越えていない。
 手塚さんは晩年期劇画に匹敵するようなものを数多く発表しているが、キャラクターの造形は生涯少年少女漫画だったといえる。

 この作品では舞台での上演のように背景も登場人物の立ち位置もほとんど変わらないコマの連続や影となって動きのある場面を描くなど、ストーリーの重厚さを表現で補完しようとする手塚さんの野心がうかがえる。
 手塚さんは映画に対抗しようとしていたのではないだろうか。

 手塚さんのライフワークと呼ばれる『火の鳥』。最初の連載は1954年の「漫画少年」発表だという。
 この角川文庫版では1967年発表の作品が採用されていることを書き添えておく。
  
(2013/08/03 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  夏の過ごし方。
  朝早く起きる。昼間、少しまどろむ。
  できれば、木陰で
  クーラーではなく、自然の風に吹かれて。
  手には一冊の文庫本。
  例えば、今日紹介する
  北原亞以子さんの『慶次郎縁側日記』なんかいい。
  眠くなれば、うとうとと。
  夢には江戸の町並みが。
  蝉の声が目覚ましがわり。
  ふー、少し寝たなぁ。
  『慶次郎縁側日記』はいいなぁ。
  心がふっとゆるやかになる。
  あれ、向こうの空があやしくなってきた。
  ひと雨でもくるのだろうか。
  あ、もう降ってきやがった。
  駆け出した手に
  しっかりと『慶次郎縁側日記』。
  夢みたいなこぼれ話になりました。
  今回はシリーズ第2弾。

  じゃあ、読もう。

再会 慶次郎縁側日記 新潮文庫再会 慶次郎縁側日記 新潮文庫
(2001/10)
北原 亞以子

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sai.wingpen  いい読書の時間                   

 このシリーズの主人公森口慶次郎はまだ49歳ながら、すでに現役を引退している。だから、「縁側日記」と題されてもおかしくはない。
 今の世の49歳で、慶次郎の心境にはなかなかなれないだろう。平均寿命が違うのだから比べようもないが、今なら60歳を越えたあたりとなるだろうか。
 人生が長いか短いか人によって違って当然。ただ、慶次郎のように濃い時間を過ごしたい。

 シリーズの第2弾となるこの『再会』でも、慶次郎ばかりが主人公ではない。
 それがまたこのシリーズの面白さなのだが、短編一つひとつで主人公はいれかわる。慶次郎や慶次郎の娘婿の晃之助は時にその引き立て役でしかない。
 養子として育ててくれた父が盗賊であることを知って悩む「恩返し」、好きな男に会いたさ一心に万引きをして捕まる女を描いた「八百屋お七」、不良少年とその面倒をみる初老の男の切ない関係を描く「花の露」など、慶次郎たちは表だって活躍をするわけではない。
 ただ暖かく手をさしのべるだけだ。
 だから、「花の露」の不良少年卯之吉のこんなつぶやき、「俺・・・、思ってたより、いい人に出会ってるんだ・・・」は、このシリーズの本質をよく表している。
 もっとも、慶次郎にとっては「こそばゆい言葉」だが。

 表題となった「再会」は三話構成になっている。
 慶次郎を助ける辰吉、慶次郎、そして「蝮の吉次」という異名の吉次、三人三様の「再会」が描かれる。
 かつての日々に風のように通り過ぎた女たちと出逢う男たちの戸惑いとわきあがる思い。
 男なら、いいや女でも、そんな「再会」をどこかで待ち望んではいないだろうか。
 しかし、それはすでに通りすぎた風なのだ。
 今度もまたとどまることはない。
 そういう切ない思いも、49歳という慶次郎の年があってのことだろうか。
 人生の深みを知ったものだけがなしうる、「再会」。
 そんな慶次郎たちに読者は惹きつけられる。
 このシリーズが愛される理由はそんなところにあるような気がする。
  
(2013/08/02 投稿)

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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から8月です。
  この国にとって8月は鎮魂の月といっても
  いいでしょう。
  原爆、終戦。そして、お盆。

   原爆忌使徒のごとくに身灼きをり  小林康治

   暮るるまで蝉鳴き通す終戦日    下村ひろし

  夏休みも本番をこれから迎えます。
  そんな日こそ
  たくさんの本を読んでもらいたいと
  願っています。
  今日紹介するのは
  松浦弥太郎さんのエッセイ集
  『さよならは小さい声で』。
  いいタイトルですよね。
  暑い夏、木陰で冷たいお茶なんかと
  こんな素敵な本が
  読めますように。

  じゃあ、読もう。

さよならは小さい声で 松浦弥太郎エッセイ集さよならは小さい声で 松浦弥太郎エッセイ集
(2013/06/17)
松浦 弥太郎

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sai.wingpen  ラブレターのように                   

 松浦弥太郎さんの文章を読むと、「いい人」になれそうな気がする。
 少なくとも、「いい人」にならないといけないと、反省することが多い。
例えば、夕立のあと、いつもはどんよりとしている風景に鮮やかさと清々しさが戻ってくる感じに近い。いずれまた、どんよりと汚れていくにしても、その瞬間は心地よい。

 松浦弥太郎さんは「暮らしの手帖」の編集長だ。
 「暮らしの手帖」という雑誌そのものが清潔な感じがするからだろうか、その編集長である松浦さんも礼儀正しい、まじめな人という印象がある。きっとまじめなという言い方を松浦さん自身は喜ばないだろうが、「暮らしの手帖」の編集長という肩書に背筋が伸びることはあるのではないだろうか。
 松浦さんは日々の挨拶をとても大事にしていることが、この本の中にも書かれているが、「暮らしの手帖」の編集長ならばこそ、そんな教えも心の奥にはいってきやすい面はある。

 この本は「エッセイ集」とあるように、何かテーマがあるわけではない。
 しいてあげれば、松浦弥太郎流の「文章の書き方」ともいえる。「いい人」になれそうな文章などはあまりない。
 「文章の書き方」のコツは、「あなた一人を、誰か一人を、想って書くこと」だと、松浦さんはいう。
 そういえば、青春期の旗手として確固としてある太宰治の文章にも同じことがいえる。この人ならわかってくれると、太宰の作品を読んで思ったことがある人は多いと思うが、それは自分一人に語りかけてくる太宰の文章の魅力といっていい。
 松浦さんの場合も、先輩に悩みごとを相談しているような気分にさせる文章である。しかも、単に励ましだけでなく、悩みそのものを受け入れてくれる度量の大きさを感じる文章だ。
 松浦さんは若い頃からすべて順調だったわけではない。松浦さんだって、悩んだこともあるし、怒ったこともある。それらをうまくさらりと書いてしまう。
 そういう人に心を許してしまうということはないだろうか。

 松浦さんがある日知り合いの女性に言われた言葉。「夢を百人の人に話せば、その夢は必ず叶う、という諺があるの。その諺を信じてみて」。
 これをあえて自分の言葉ではなく、知り合いの女性から教えられたと書く、これこそ松浦弥太郎さんの文章のうまさだ。
  
(2013/08/01 投稿)

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