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プレゼント 書評こぼれ話

  今日から8月です。
  この国にとって8月は鎮魂の月といっても
  いいでしょう。
  原爆、終戦。そして、お盆。

   原爆忌使徒のごとくに身灼きをり  小林康治

   暮るるまで蝉鳴き通す終戦日    下村ひろし

  夏休みも本番をこれから迎えます。
  そんな日こそ
  たくさんの本を読んでもらいたいと
  願っています。
  今日紹介するのは
  松浦弥太郎さんのエッセイ集
  『さよならは小さい声で』。
  いいタイトルですよね。
  暑い夏、木陰で冷たいお茶なんかと
  こんな素敵な本が
  読めますように。

  じゃあ、読もう。

さよならは小さい声で 松浦弥太郎エッセイ集さよならは小さい声で 松浦弥太郎エッセイ集
(2013/06/17)
松浦 弥太郎

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sai.wingpen  ラブレターのように                   

 松浦弥太郎さんの文章を読むと、「いい人」になれそうな気がする。
 少なくとも、「いい人」にならないといけないと、反省することが多い。
例えば、夕立のあと、いつもはどんよりとしている風景に鮮やかさと清々しさが戻ってくる感じに近い。いずれまた、どんよりと汚れていくにしても、その瞬間は心地よい。

 松浦弥太郎さんは「暮らしの手帖」の編集長だ。
 「暮らしの手帖」という雑誌そのものが清潔な感じがするからだろうか、その編集長である松浦さんも礼儀正しい、まじめな人という印象がある。きっとまじめなという言い方を松浦さん自身は喜ばないだろうが、「暮らしの手帖」の編集長という肩書に背筋が伸びることはあるのではないだろうか。
 松浦さんは日々の挨拶をとても大事にしていることが、この本の中にも書かれているが、「暮らしの手帖」の編集長ならばこそ、そんな教えも心の奥にはいってきやすい面はある。

 この本は「エッセイ集」とあるように、何かテーマがあるわけではない。
 しいてあげれば、松浦弥太郎流の「文章の書き方」ともいえる。「いい人」になれそうな文章などはあまりない。
 「文章の書き方」のコツは、「あなた一人を、誰か一人を、想って書くこと」だと、松浦さんはいう。
 そういえば、青春期の旗手として確固としてある太宰治の文章にも同じことがいえる。この人ならわかってくれると、太宰の作品を読んで思ったことがある人は多いと思うが、それは自分一人に語りかけてくる太宰の文章の魅力といっていい。
 松浦さんの場合も、先輩に悩みごとを相談しているような気分にさせる文章である。しかも、単に励ましだけでなく、悩みそのものを受け入れてくれる度量の大きさを感じる文章だ。
 松浦さんは若い頃からすべて順調だったわけではない。松浦さんだって、悩んだこともあるし、怒ったこともある。それらをうまくさらりと書いてしまう。
 そういう人に心を許してしまうということはないだろうか。

 松浦さんがある日知り合いの女性に言われた言葉。「夢を百人の人に話せば、その夢は必ず叶う、という諺があるの。その諺を信じてみて」。
 これをあえて自分の言葉ではなく、知り合いの女性から教えられたと書く、これこそ松浦弥太郎さんの文章のうまさだ。
  
(2013/08/01 投稿)

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