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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は立秋
  
   被爆地に残暑の森や風軽し  雨宮抱星

  よく暦の上ではと表現されますが、
  秋といっても夏はまだまだこれから。
  ただ気候の挨拶は今日から残暑になります。
  昨日、井上ひさしさんの『父と暮せば』を
  紹介しましたが、
  今日は同じく井上ひさしさんの
  『太鼓たたいて笛ふいて』を
  紹介します。
  林芙美子を描いた評伝戯曲ですが
  もう一方で
  戦争にはまりこんでいった日本人と
  終戦後どう生きていくべきか
  悩んだ日本人の姿が
  描かれています。
  昨日も書きましたが
  井上ひさしさんはもっと評価されていいと
  思います。
  あれだけの小説、戯曲、日本語論などを
  残された作家なのですから
  しかもどの作品も小難しいものではなく
  少年少女たちにも
  読めるはず。
  子どもたちに残すべき作家なのですから
  もっと文庫本にはいるべきだと
  思うのですが。

  じゃあ、読もう。
  
太鼓たたいて笛ふいて (新潮文庫)太鼓たたいて笛ふいて (新潮文庫)
(2005/10/28)
井上 ひさし

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sai.wingpen  伝達者井上ひさしはもっと評価されていい                   

 2010年4月に亡くなった井上ひさしさんは小説家だけでなく劇作家と評されることがよくあります。
 多様な世界な生きた井上さんならではですが、私は小説家井上ひさしも好きですし、劇作家としてたくさんの功績をあげた人だと思います。
 劇作家としての井上さんは評伝戯曲と呼ばれるジャンルでさまざまな人の人生を描いてきました。
 『人間合格』の太宰治、『頭痛肩こり樋口一葉』の樋口一葉、そして最後の戯曲となった『組曲虐殺』の小林多喜二まで、作品と生涯を交錯させながら、人間を視る目はしっかりとしています。
 この作品では林芙美子の戦中から戦後、そしてその死までを描いています。

 井上さんの戯曲の歴史をみていくと、後期になるほど戦争の影が色濃くなってきます。
 この作品でもそうです。林芙美子の半生をつづりながら、戦争に翻弄される市民と文化人の姿がコミカルに描かれています。
 「戦さは儲かるという物語」を聞かされて戦地に勇躍する芙美子だが、戦地で見たものは華やかなものではなかった。戦後反戦争を打ち出した芙美子はがむしゃらに作品を発表していく。
 そんな芙美子のせりふ。
 「歴史の本はわたしたちのことをすぐにも忘れてしまう、だから、わたしたちがどんな思いで生きてきたか、どこでまちがって、どこでそのまちがいから出直したか、いまのうちに書いておかなくてはね」。
 これは、井上さんの決意表明でもあったのだろうと思います。

 この戯曲が発表されたのは2002年ですが、まるで井上さんは自身の残された時間をわかっていたかのようです。
 井上さんはきっとこれからもさまざまな分野で再評価されていくでしょう。しかし、もっとも評価されていいのは、伝達者井上ひさしなのかもしれません。
 原爆のこと戦争のこと、農業のこと、井上さんは何度も警鐘をならし、必死になって伝えようとしていたのです。
 それは「太鼓たたいて笛ふいて」過ぎ去ったものを忘れようとする日本人への警告でもあったのだと思います。
 井上ひさしさんが亡くなったいま、私たちは井上さんから渡されたものを、次へとつなぐ使命があるのです。
  
(2013/08/07 投稿)

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