02/14/2014 秘事(ひじ)(勝目 梓):書評「どんな愛も困難」

今日はバレンタインデー。
いつ渡そバレンタインのチョコレート 田畑美穂女
なんていう俳句もあるくらい。
最近では女友だちにあげる習慣も
あるくらい。
女性にとって
男性ばかりが愛の対象でないのかも。
まあ、今はやりの
草食系男子には
チョコレートはきついかも。
今日紹介するのは
勝目梓さんの『秘事(ひじ)』。
ちょっと過激な内容ですし
情愛シーンもあったりして
まさに大人のチョコのような
作品。
しかもテーマは
同性愛に異性愛、さらには両性愛と
愛の日、バレンタインデーに
ぴったりの作品。
そういえば
こんな俳句もあります。
バレンタインデー心に鍵の穴ひとつ 上田日差子
あなたの心の鍵は
誰がもっているのでしょう。
じゃあ、読もう。
![]() | 秘事(ひじ) (2013/11/16) 勝目 梓 商品詳細を見る |

瀬戸内寂聴の『爛』は高齢者の性の問題を美しく描いた傑作だが、勝目梓のこの作品もまた同性愛、異性愛を描いて異色である。
ともにベテランの巧さが光った作品といえる。しかも、性という問題をとらえて。
勝目梓はバイオレンス作家として人気を博したが、もともとが北杜夫や佐藤愛子、さらには中上健次などが同人であった同人誌「文藝首都」で文学の道をめざした一人で、どうしても作品の内容で目を背ける人もいるかもしれないが、文章力をもった作家である。
この作品では異性愛と同性愛、それと両性愛の嗜好をもった三人の人物の、覚書ノートや日記の形式を交互に入れ込まれながら、さしずめ寄木細工のように出来上がっている。
中心となるのは両性愛者の純子である。学生時代に自分が「異性にも同性にも同じように情欲をそそられてしまう人間」である両性愛者であることに気づいた純子は、男と同棲しながらも仕事場の経営者の娘である綾子にもひかれていく。
その綾子は同性愛者(レズビアン)で、男性にはまったく興味をしめしていない。綾子もまた純子にひかれ、ついに二人は同性愛の妖しげな夜をともにする。
男性である勝目がどのようにしてレズビアンの性愛の様子を描けたのかはわからないが、女性作家が描くとまたちがったものになったであろう。
そんな二人にとってその性愛は人には知られてはならないものであった。
けれど、純子の同棲相手によってそのことが純子の家族に耳にはいることになる。驚愕する家族。それでも、純子は綾子と別れることはなかった。
さらに、両性愛者である純子は信雄という男性と知り合い、関係を持つようになる。
そのことを知って苦悩する綾子に純子もまた悩むことになる。
やがて、純子は信雄と結婚、子どもも誕生する。いっけんごく普通の家族のような信雄と純子であるが、純子と綾子の関係は続いていた。
純子という両性愛者を真ん中にして同性愛者の綾子と異性愛者の信雄がいる。
この作品は興味本位に情愛が描かれたものではない。
「同性愛でも異性愛でも、愛を信じ切るということはたやすいことではないのかもしれない」と綾子が日記に描きとめたように、どのような形であれ、愛の困難さは変わらない。
そういう点では、この作品が描こうとした世界は深い。
(2014/02/14 投稿)

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