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プレゼント 書評こぼれ話

  直木賞の候補作品が
  単行本化されているという現象は
  そんなに古い話ではない。
  1996年の第115回あたりかららしい。
  最近では
  芥川賞候補作の単行本化も早くなっている。
  それまでは「文藝春秋」で
  まず受賞作を読んで、という
  パターンだったが、
  受賞後ほどなく単行本化されている。
  芥川賞も直木賞も
  本のセールスのための
  一大イベントになっていることは
  否めない。
  今日紹介するのは
  川口則弘さんの『直木賞物語』。
  川口則弘さんといえば
  ネット上で「直木賞のすべて」という
  HPを運営していて
  私も過去の直木賞受賞作を読む時は
  いつも活用させて
  もらっている。
  それほど直木賞大好きの川口則弘さんが
  書いた『直木賞物語』だから
  面白さはずば抜けている。
  この本を読んだら、
  受賞作すべて
  読みたくなってくる。
  それはそれで困るのだが。

  じゃあ、読もう。
  
直木賞物語直木賞物語
(2014/01/15)
川口則弘

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sai.wingpen  直木賞って、何?                   

 著者の川口則弘さんは「直木賞研究家」を自認し、「直木賞のすべて」という素晴らしいホームページを運営している。
 そんな川口さんに出版の話がきたのは、「芥川賞」のことだった。先に上梓した『芥川賞物語』である。
 その「あとがき」で川口さんは「芥川賞よりも直木賞が好き」と書き、それでも「自分の本が出せる誘惑に勝てず」と苦しい胸の内を吐露している。
 しかし、待てば海路の日和あり。ここに念願の『直木賞物語』が完成したのである。

 2014年に第150回を迎えた「直木賞」であるが。これまでの受賞者は実に179名に達する(ちなみに、本書は第149回までの受賞記録なので177人の受賞者が紹介されている)。
 回数よりも受賞者数が多いのは、二人受賞が多いせいだ。(もちろん、受賞者ナシの回もある)
 そこに、「直木賞」らしさがあるといってもいい。
 1934年(昭和9年)に菊池寛によって制定された「直木賞」・「芥川賞」だが、「芥川賞」の対象が「純文芸」だったのに対して「直木賞」は「大衆文芸」がその対象とされた。
 「大衆文芸」といってもその範囲は広い。推理小説。時代小説、ミステリー、経済小説等々さまざまある。そのせいで、直木賞の間口は広くなり、受賞対象者も多くなったといえる。

 本書は単にその時々の選考結果を記録したものだけではない。
 ここにあるのは「直木賞」そのものがもっている、不可思議さといえる。
 500頁近い大作ながら、では「直木賞」という文学賞はどんな賞なのか判明しない。「大衆」向きなのか、「文芸」向きなのか、さえわからない。
 川口さんは、それこそ「直木賞」の魅力だと考えている。
 「頼りなくて、だらしがない。とにかく頑迷で、世間知らず」と、「直木賞」のことを川口さんは評している。
つまり、とても人間くさい文学賞といえる。
 もしかすると、今まで受賞してきた「直木賞」の作品よりももっともその制定の趣旨に近いのが、賞自体かもしれない。

 これから先、「直木賞」がどのような作品を選び、どんな作家に賞を与えるのかわからないが、「芥川賞」よりは面白いといえる。
 たとえ、直木三十五がどんな業績の人だと忘れられても。
 
(2014/02/21 投稿)

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