02/21/2014 直木賞物語(川口 則弘):書評「直木賞って、何?」

直木賞の候補作品が
単行本化されているという現象は
そんなに古い話ではない。
1996年の第115回あたりかららしい。
最近では
芥川賞候補作の単行本化も早くなっている。
それまでは「文藝春秋」で
まず受賞作を読んで、という
パターンだったが、
受賞後ほどなく単行本化されている。
芥川賞も直木賞も
本のセールスのための
一大イベントになっていることは
否めない。
今日紹介するのは
川口則弘さんの『直木賞物語』。
川口則弘さんといえば
ネット上で「直木賞のすべて」という
HPを運営していて
私も過去の直木賞受賞作を読む時は
いつも活用させて
もらっている。
それほど直木賞大好きの川口則弘さんが
書いた『直木賞物語』だから
面白さはずば抜けている。
この本を読んだら、
受賞作すべて
読みたくなってくる。
それはそれで困るのだが。
じゃあ、読もう。
![]() | 直木賞物語 (2014/01/15) 川口則弘 商品詳細を見る |

著者の川口則弘さんは「直木賞研究家」を自認し、「直木賞のすべて」という素晴らしいホームページを運営している。
そんな川口さんに出版の話がきたのは、「芥川賞」のことだった。先に上梓した『芥川賞物語』である。
その「あとがき」で川口さんは「芥川賞よりも直木賞が好き」と書き、それでも「自分の本が出せる誘惑に勝てず」と苦しい胸の内を吐露している。
しかし、待てば海路の日和あり。ここに念願の『直木賞物語』が完成したのである。
2014年に第150回を迎えた「直木賞」であるが。これまでの受賞者は実に179名に達する(ちなみに、本書は第149回までの受賞記録なので177人の受賞者が紹介されている)。
回数よりも受賞者数が多いのは、二人受賞が多いせいだ。(もちろん、受賞者ナシの回もある)
そこに、「直木賞」らしさがあるといってもいい。
1934年(昭和9年)に菊池寛によって制定された「直木賞」・「芥川賞」だが、「芥川賞」の対象が「純文芸」だったのに対して「直木賞」は「大衆文芸」がその対象とされた。
「大衆文芸」といってもその範囲は広い。推理小説。時代小説、ミステリー、経済小説等々さまざまある。そのせいで、直木賞の間口は広くなり、受賞対象者も多くなったといえる。
本書は単にその時々の選考結果を記録したものだけではない。
ここにあるのは「直木賞」そのものがもっている、不可思議さといえる。
500頁近い大作ながら、では「直木賞」という文学賞はどんな賞なのか判明しない。「大衆」向きなのか、「文芸」向きなのか、さえわからない。
川口さんは、それこそ「直木賞」の魅力だと考えている。
「頼りなくて、だらしがない。とにかく頑迷で、世間知らず」と、「直木賞」のことを川口さんは評している。
つまり、とても人間くさい文学賞といえる。
もしかすると、今まで受賞してきた「直木賞」の作品よりももっともその制定の趣旨に近いのが、賞自体かもしれない。
これから先、「直木賞」がどのような作品を選び、どんな作家に賞を与えるのかわからないが、「芥川賞」よりは面白いといえる。
たとえ、直木三十五がどんな業績の人だと忘れられても。
(2014/02/21 投稿)

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