03/01/2014 走れ!移動図書館: 本でよりそう復興支援(鎌倉 幸子):書評「たかが本かもしれないが」

今日から3月。
三月やモナリザを売る石畳 秋元不死男
そして、東日本大震災から
3年めとなる
3月でもあります。
今日紹介する
鎌倉幸子さんの『走れ!移動図書館』には
副題として
「本でよりそう復興支援」とあります。
本と人とのつながり。
大変多くのことを学ばさせて
もらいました。
この本の冒頭に
著者の鎌倉幸子さんが書いた
「手の記憶」という詩が
掲載されています。
鎌倉幸子さんが2011年4月に
被災地にはいった時に
書いた詩です。
その詩の一節にこうあります。
その手は、これまでも、そしてこれからも、
どれだけの涙をぬぐうのだろう。
どれだけの悔しさのために
こぶしを握るのだろう。
被災者の皆さんのそんな手に
どんな本が選ばれるのでしょうか。
いい本です。
じゃあ、読もう。
![]() | 走れ!移動図書館: 本でよりそう復興支援 (ちくまプリマー新書) (2014/01/07) 鎌倉 幸子 商品詳細を見る |

本書は、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会が、2011年3月11日に起こった東日本大震災の復興支援として行った移動図書館の活動の誕生経緯とどのような活動であるかをまとめた活動記録である。
シャンティ国際ボランティア会は1995年の阪神淡路大震災でも積極的な支援活動を行ってきた団体で、内戦後のカンボジアでも図書室設置の活動などの実績がある。
だからといって、日本国内での図書館プロジェクトの経験はなく、移動図書館そのものはまったく初めての取り組みであった。
いってみれば、素人集団がどのようにしてその活動を成功させていったかを知ることは、今後起こりうるかもしれない災害での対処の方法として学ぶべきことが多い。
彼らが復興支援の方法として「本」を取り上げた意味は大きい。
震災後、現地入りしたスタッフは当初食べ物や衣服といったものが多くの被災者を救済している姿を見ている。しかし、ほどなくそれらだけでは被災者の心を満たさないことを知るようになる。
「本を読みたい」という被災者の声を耳にし、改めて「心の栄養」が必要であることを痛感するスタッフ。
「人々が困難な生活を余儀なくされた時にこそ持つ、本や図書館の存在価値」は、支援者側には見えにくいものかもしれない。そのことは、稲泉連氏の『復興の書店』にも書かれている。
自分の手で本を選び、買う、あるいは図書館で借りるという行為は、「非日常から日常に戻るきっかけ」となる。
彼らが図書館を始めるきっかけはそういうことであった。
復興支援の難しさは、被災された側を特別扱いすることからどう普段の生活に戻していくかかもしれない。
そのあたりも、被災した側と支援者側の視点のズレが起こりやすい点だ。
また、彼らが常に意識した点はその土地土地にあった支援活動をどう行うかということでもある。
彼らは移動図書館に並べる本そのものを支援で手にいれることはなかった。募金活動で得た資金をもって、被災地の書店から購入する。
活動全体が被災地支援になることを意識することがいかに重要かだ。
たかが本かもしれない。
しかし、本の世界がどれだけ広いか、彼らの活動はそのことを教えてくれる。
(2014/03/01 投稿)

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