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プレゼント 書評こぼれ話

  先日「第150回 芥川賞&直木賞FESTIVAL」で
  あこがれの川上弘美さんのトークを聞いて
  この人の普段の話し方は
  その文章に似ていることを
  発見して
  なんだかホッとした。
  あるいは
  川上弘美さんの文体は
  その話し方にそっくりだと
  いうべきか。
  今日紹介するのは
  川上弘美さんの人気シリーズ「東京日記」の
  4冊め、
  『不良になりました。』。
  この「。」のつけ方が
  絶妙。
  このシリーズは長期にわたっていて
  この巻では
  東日本大震災のこととか
  自身の入院。手術のこととかが
  書かれています。
  病気で胸が小さくなったとのこと
  早く元に戻るといいですね。

  じゃあ、読もう。

東京日記4 不良になりました。東京日記4 不良になりました。
(2014/02/14)
川上 弘美

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sai.wingpen  川上弘美は宇宙人かも                   

 川上弘美という作家のことがわからなくなることがある。
 この人は、どこか名も知られていない星から人知れずこの星にやってきて、人間の姿かたちはしているのだが、時に元の星を懐かしんで、ゆるりとしてしまう。
 いつか、その国に還える日が来るまでの、覚書のようにして書いたのが、「東京日記」シリーズなのではないか。
 そんなことはないだろうが、絶対ということがほとんどないように。それもまたありうるかもしれない。
 川上弘美のゆるり感がたっぷりと楽しめる一冊である。

 自身は「ぼやぼやと生きる日々の記録」と書いている「東京日記」も、この本で4冊め。
 2010年5月から2013年3月までのもの。
 この期間で興味深いのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の日付がはいっていることだ。
 その日の「日記」を引用する。
 「大地震。(中略)次々にあきらかになる大惨事に、言葉、なし。この先、被災地がたちなおるまで、いっさいソリティアをしないことを決意」とある。
 「ソリティア」というのは、パソコンゲームのひとつ。
 もちろん、それだけが真実ではない。
 この頃、朝日新聞に『七夜物語』を連載していた川上は、震災のあと書くということにも難渋したと連載終了時に書いていた。
 それほどショックをうけた災害を、この「東京日記」では「ソリティアをしないことを決意」と書く不思議。
 まさに、宇宙人川上の、真骨頂だ。

 その『七夜物語』を書き終えた時のことも、この本にある。
 「一年八カ月連載していた新聞小説の、最後の一頁を、ようやく書き上げる。/少し踊ってから、ゆっくりとお風呂に入る。」
 『七夜物語』を書き終えて、「少し踊っ」たんだ。
 さすが、宇宙人? だ。

 自身の入院、手術のあと、ゆるゆるになった胸がもとに戻るまで通販の安価な、まっさおなブラジャーをつけているという川上弘美は、故郷の星に戻ったら、この星の都会東京のことをどんなふうに思い出すのだろう。
 不思議な時間だったと、やっぱり思うのだろうか。
  
(2014/03/17 投稿)

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