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プレゼント 書評こぼれ話

  花房観音さんの『恋地獄』を読んだ
  女ともだちが
  「ちっとも官能小説じゃなかったわ」と
  言っていた。
  私はずっと
  花房観音さんを女性官能作家
  書いてきたから
  困った。
  よし、今度はもっと刺激のある作品を
  紹介しよう。
  その意気込みで
  『偽りの森』を読みました。
  何しろ
  主人公は、4人の美人姉妹。
  官能の数々をと
  期待?したのですが
  これでは
  また女ともだちに
  「官能小説ってこの程度?」と
  言われそう。
  もしかして、
  花房観音さんは直木賞
  ねらっているのかなと
  思うほど
  まっとうな娯楽作品でした。

  じゃあ、読もう。

偽りの森偽りの森
(2014/01/23)
花房 観音

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sai.wingpen  桜の樹の下に埋まっているのは偽りなのかもしれない                   

 花房観音は官能作家としてスタートしたが、最近の作品を読むと、京都という風土を生かしながら女性を描く作家として成長著しい。
 この作品は四人姉妹を生きるすべを描いた名作『細雪』を書いた、あの大谷崎(潤一郎)を意識したものであろう。
 はっきりと谷崎の名前がでてくる箇所もある。
 谷崎の『細雪』に描かれる平安神宮の枝垂れ桜の下を行く、花房観音の四人の姉妹たち。そして、もう一人、四人の母親。
 その誰もが、「艶やかで美しく」、けれど「儚く」見える。
 母親の死んだあとから、この長編小説は始まる。

 春樹、美夏、秋乃、冬香という四人の姉妹が主人公だから、それぞれに個性がある。それぞれの章に彼女たちの名前が付けられている。
 「春樹」という章では、頭脳明晰な長女春樹のことが描かれる。40歳になる春樹は恋愛べただ。いつも妻子のある男性か問題のある男性しか愛せない。
 不倫の果てに結婚までこぎつけた相手がいながら、年下の男と愛し合う春樹。そんな彼女が逃げ込むのは、いつもきまって実家の、古色とした大きな家。
 その家を守っているのが、次女の美夏。平凡な男が一番と結婚し、雪岡という「家」を必死になって守っている。
 性欲の強い夫の求めにうんざりしている美夏の心配ごとは、30歳を過ぎても結婚しない二人の妹たちのこと。
 秋乃は美しかった母四季子にそっくりの美貌を持ちながらも、男性に興味をもっていない。
 競い合うことを恐れるあまり、家を捨てることも男性を愛することもできないでいる。
 末っ子の冬香には秘密がある。
 彼女だけ父親が違うのだ、そのことを冬香は母の口から知ることになる。
 母四季子はそういう女だった。
 だから、冬香だけはかつて京都を離れたことがあるが、何故かひかれるようにして京都の実家に戻っている。

 彼女たちの「家」があるのは、「糺(ただす)の森」と呼ばれる場所。
 偽りを糺すところ。
 四人の姉妹たちの生活は、「艶やかで美し」いが、どこかに偽りがある。もちろん、それは彼女たちだけではない。
 偽りは誰にもある。
 それは、あるいは偽りですらないかもしれない。
 生きていくために見せてはいけないものを抱えながら、人は生きていくしかない。
 偽りがあるから、「糺の森」がある。

 桜の樹の下に埋まっているのは、死体ではなく、偽りなのかもしれない。
  
(2014/03/18 投稿)

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